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”心地よい緊張”

大佐はそれを十二分に味わっていた。

それに

『願わくばこの後、冷や汗をかくような状況になりませんように』とも。
 
 
 
 
 
 
 
 

「・・・・ゼロ・・・・・・」
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 

ネルフの一番長い日が始まった。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 

 

 

 

 

 

It’saBeautifulWorld
第11話「鉄拳」
(C−part)

 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 

ネルフ本部内、エレベーター

12:00
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 

ガコン!!
 
 
 
 
 
 

ミサトと加持が乗ったエレベーターが唐突に止まる。

階数表示も消えた。

「あらぁ?・・・・・」

「停電か?」

まあ普通の人間ならそう考えるのがスジだ。

「まっさかぁ・・・・あり得ないわ」

ミサトが言下に否定する。
 
 

が、
 
 

何かが落ちるような音と共に電灯が切れ、赤い非常灯に切り替わる。
 

「変ねぇ・・・・事故かしら?」

頭の上にクエスチョンマークを浮かべているミサト。

「赤木が実験でもミスったのかな?」
 
 

加持は冗談で言っただけだったが、
 
 
 
 

『大いにあり得るわね・・・・』
 
 

冷や汗を流すミサトだった。
 
 
 
 
 
 
 
 
 

同時刻、エヴァンゲリオン零号機起動実験場。
 
 
 

「あ、アタシじゃないわよ・・・・」
 
 
 
 

回りからの疑惑の視線を一手に引き受けるリツコだった。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 



 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 

ネルフ本部、第2発令所。

12:00
 
 
 
 
 
 
 
 
 

「三佐!ネルフからの電源供給が途絶しました!」

コンソールにつく三尉が叫ぶように報告する。

「畜生、やりやがったな・・・・ここは大丈夫だろうな!?」

「通信は大丈夫ですが、ココの状況はまったく掴めません・・・・センサーの類も全部死んだみたいです」

「チッ!」

佐藤は舌打ちをすると、ヘッドセットのマイクを口に寄せる。

「バッド・カルマから総員へ・・・ネルフ本部全体の電源供給が途絶した。こっちで生きてるのは通信機能のみ、指揮機能を喪失した」

そこまでいうと大きく息を吸い込む。

「各班、独断専行せよ、繰り返す・・・各班独断専行せよ。バッドカルマは遊撃任務に移る」

《オメガ1了解》

《オメガ7了解、独断専行する》

佐藤はかたわらに置いてあった自動小銃を掴み、肉食獣の笑みを浮かべる。
 
 
 
 
 
 
 
 

「It’s Showtime・・・」
 
 
 
 
 

 

 

 

 

 



 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
ネルフ本部、発令所へ続く通路

12:07












「7分経っても復旧しないなんて!」

憤懣やるかたなし、といった様子のリツコが懐中電灯を片手に通路を闊歩する。

「ホント、どうしたんでしょう?」

その後に続くマヤが疑問を投げかける。

「それがわからないから発令所へ行くんじゃないの」

「それもそうですね」



彼女達は幸運だった。




今、彼女達が歩いている通路を1分前にデルタの猛者達が駆け抜けていったのだから・・・・・・












ネルフ本部内、エレベーター

12:07
 
 
 
 
 
 
 
 
 

「7分経っても復旧しないなんて・・・・ただごとじゃないわ・・・・」


付き合いが長いとセリフも似てくるのだろうか?

エレベーターの操作パネルを動かしながらそんな風につぶやくミサト。

反応はない。

「ここの電源は?」

「正・副・予備の3系統・・・・それが同時に落ちるなんて、考えられないわ」
 
 
 

加持は非常灯のお陰で赤く染まった天井を見上げる。

「となると・・・・」
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 

「やはり、ブレーカーは落ちたというより、落とされたと考えるべきだな」

発令所の指令席で結論に近い推論を上げるゲンドウ。

もちろんいつものポーズは崩さない。

「まさかこんな手で来るとは思わなかったな」

ロウソクに灯をともす冬月。

「古典的で単純だが、それゆえ効果的、かつ確実だ」

「しかし、これほど大規模になると・・・・一朝一夕にはできないな・・・・おそらく、内部に協力者がいたか」

「工作員そのものが以前から潜り込んでいたか・・・・」

「やりきれんな・・・・」

「言っただろう・・・人間の敵は人間だ」

「警備隊はどうする?」

「少しやり合ったら引くように伝えろ・・・・相手はプロだ」

「”上”にいる通常部隊は使わないのか?」

「これは戦車を持ってきて対応出来る事態ではない・・・・それに、どうやって”上”に連絡を取るのだ?」

「・・・・ふむ、それもそうか・・・・では、野分君に全て任せるのか?」

「それが最善だろう、アイツもプロだ」

「そうだ、な」
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 



 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 

ネルフ本部、通路

12:09

デルタ・フォース第1小隊
 
 
 
 
 
 
 

黒い影は通路を疾風のように駆けていく。

「ケージまでは!」

「あと4ブロック!」

疾走していた十数個の黒い影に前方から銃撃が浴びせられる。
 
 
 
 

軽い連射音と共に小さな死の礫が降ってくる。
 
 
 
 

「敵襲!」

「伏せろ!」

隊長とおぼしき人間が一喝すると、全員が素早く床に伏せる。
 

「軽機!反撃しろ!」

その声に答えてM−60(※1)()の射手と弾薬手が前に進み出て撃ち返す。

「がぁっ!」

「撤収だ!引くぞ!」

通路の向こうからはそんな声が聞こえる。

「くそっ!こんな遮蔽物ひとつ無いところで撃ち合いとはな!」

小隊長が吐き捨てる。

「タイムロスは!?」

「30・・・いえ、40秒です!」

「まだいける!」

影はまた疾走をはじめる。

駆けるその足元にはネルフの警備員と思われる死体がいくつか転がっていた。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 



 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 

ネルフ本部、第1発令所から数十メートルの通路

12:13

デルタ・フォース第2小隊
 
 
 
 
 
 

「小隊長、隔壁が閉まってます!」

「くそ!発令所はこの向こうなんだな?」

「はい!この隔壁の2ブロック先です」

「迂回ルートは?」

「事前計画で開いている予定だったココが閉まっているとなると、他の場所の開閉状況は把握できません・・・・迂回ルートの検索にも時間がかかります」

「クソッタレが!・・・・この隔壁を吹き飛ばせ!」

彼らはデルタ第2小隊。

重要人物の拘禁を命じられた小隊だ。
 
 

兵士達は素早く重厚な隔壁に爆薬を仕掛けていく。
 
 
 

「セット!」

完了したようだ。

「総員退避!」

全員が隔壁から距離を取る。

「やれ!」
 
 

閃光、衝撃、爆音・・・・・・そして大量の煙。
 
 

「傷ひとつついてないぞ!」

兵士のひとりが悲鳴を上げる。

小隊長は頭を掻きむしりたくなるのを堪えると、命令する。

「迂回ルートを検索しろ!多少時間がかかってもかまわん」

「了解」

小隊長は事の次第を報告するためにインカムを作動させる・・・・・
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 



 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 

ネルフ本部、エヴァンゲリオン操縦者用更衣室

12:15

デルタ・フォース第3小隊
 
 
 
 
 
 
 
 
 

更衣室前で突入準備をするデルタ第3小隊。

「扉はどうだ?」

「ロックされています」

「開けろ」

「了解」

兵士の一人がドアの操作パネルに端末を接続する。

CIAの調査によれば目標Aは今、3人ともこの中にいるはずだ。

「開くか?」

「問題ありません、ここいら一帯は現在メインコンピューターからの制御を離れています。こちらから電力を供給してやって電気信号さえ送れば・・・・」

彼の言葉を証明するようにドアは開いた。

「突入!ただし、危害は加えるなよ!」

「了解!」

小隊長の声に答えていくつかの黒い影が室内に飛び込む。

彼にしてみれば、ネルフからの散発的な抵抗よりも、彼の部下が誤って目標を射殺してしまう方が怖かった。

だが、状況は彼の予想を大幅に覆す。

「小隊長!目標見あたりません!」

「なに!?」

そして彼自身も室内に飛び込んで辺りを見回す。

確かに、目標どころかネズミ一匹いない。

もぬけの殻だ。

確かに、いつもならこの時間には3人はこの中にいるはずだった。

ただ、CIAは電源を途絶させるとチルドレンの足もなくなるということを失念していたのだ。

「このブロック内をくまなく捜索しろ!急げ!」

兵士達は二人一組になって四方に散る。

それを見届けた小隊長は以後の指示を扇ぐためにインカムのマイクを引き寄せる・・・・・・・・・
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 



 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 

ネルフ本部、使用されていない区画のひとつ

12:20

デルタ・フォース本部班
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 

「大佐。各小隊行動開始しました」

軍曹の報告を証明するように、どこからか爆発音が聞こえてくる。

そして、しばらくの間をおき、各小隊から報告が入る。

《第1小隊から本部班・・・・現在目標Cに向けて移動中。抵抗は軽微、繰り返す抵抗は軽微。以上》

《第2小隊から本部班・・・・目標Bへの経路が使用できない・・・現在迂回経路を探索中、以上》

《第3小隊から本部班・・・・予定地点に目標Aは見あたらず。現在付近を捜索中。以上》

目標Aはチルドレン。

目標Bはネルフにおける重要人物。

目標Cは3機のエヴァンゲリオン。

ハッキリ言って事前計画通りなのは目標Cに向かう第1小隊だけだ。

彼らの任務が陽動、というのが皮肉といえば皮肉だが。

「くそっ!CIAと組むといつもこれだ!」

大佐は低く罵りを漏らす。

だが、頭の中では色々な思考が錯綜する。
 

『このミッションでの優先順位・・・・目標Aが最優先だ・・・・だが、低いといっても目標Cへのとりつきはうまくいきそうだ・・・・止めることはない』

だが、すべてを元通りにするには頭数が足りない。

インカムを掴んで電波の向こうにいる相手を呼び出す。

「本部班から第2小隊」

《第2小隊》

「第2小隊、目標Bへの接近を中止し、第3小隊に合流・・・・第3小隊と共に目標Aを捜索・確保しろ」

《了解・・・現任務を放棄、第3小隊と合流する》

「急げよ」

《了解》

第2小隊への指示を終えると、大佐は振り向いて軍曹と視線を合わせる。

「軍曹、本部班の半数を連れて第1小隊に合流して連中の仕事を手伝ってやってくれ」

「了解」

「爆薬はすべて持っていけ」

「了解・・・・大佐、後ほどお会いしましょう」

軍曹はひとことそういうと、何名かの男を連れて風のように大佐の前から去った。

大佐は残った兵士達に向けて叫ぶ。

「さあ!ここにある全ての機材を使って目標Aの居所を調べろ!大至急だ!」

弾かれたように動き出す兵士達。
 
 
 
 
 

それを見た大佐はインカムのチャンネルを切り替えマイクを引き寄せる・・・・・・・・・
 
 
 
 
 
 

「本部班から第4小隊・・・・・応答せよ」
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 



 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 

ネルフ本部、メインゲート

12:20
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 

「あれぇ?おかしいなぁ・・・・」

「シンジ?どうしたの?」

ジオフロント入り口、重々しいゲートの前までやっとたどり着いたチルドレンの3人。

シンジがスロットにIDカードを通している。

「反応しないんだよ・・・・」

「そんなことないでしょう、カードが悪いんじゃないの?」

シンジはアスカに場所を譲り、アスカは取り出した自分のカードを通す。

が、やはりゲートはウンともスンともいわない。

「なによコレぇー!?壊れてるんじゃないのぉー!?」

「とりあえず、発令所と連絡を取ろう」

シンジがそういうと、レイは鞄から携帯電話を取り出し、アスカは公衆電話に走った。

『・・・・・・・・・・・考えうる事態・・・・・・・・』

シンジは考える。

『・・・事故・・・・なわけはないね・・・』

シンジもジオフロントのエネルギー供給がダブルどころかトリプルセイフティになっていることは知っている。

『偶然は3回も続かない・・・・もし続いたとしたらそれは必然だ・・・・』

そう考えるのが”当然”だろう。

「・・・・考えられることは・・・・ひとつ、か・・・」

誰にともなくつぶやく。

「ダメ・・・繋がらない・・・・」

レイが携帯電話を離して首を横に振る。

「有線も切れてるわ!」

アスカが公衆電話から叫ぶ。

シンジはフッと短く息を吐く。
 
 
 
 
 
 
 
 
 

「とにかく発令所へ行こう」
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 



 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 

ネルフ本部、第1発令所から数十メートルの通路
 

12:30
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 

「いた!」

オメガの面々は重要物   標的なりそうなところを片っ端から調べていた。

そして見つけた。

身を隠すような所は何処にもないので通路を折れたところから鏡を使ってのぞいてる。

「連中、隔壁の前でなにやってやがんだ?・・・・平岡、わかるか?」

鏡を凝視しながら小松がうめく。

「なにか仕掛けてるみたいだな・・・・隔壁を爆破して破るつもりなんじゃないか?」

平岡と呼ばれた方の男はどこかとぼけた表情をしながらも声音は厳しい。

「総員退避!」

指揮官らしき男が声を掛けている。

「ヤベぇ!こっちに来るぞ!隠れろ!」

「どこへ!?」

「もっと後ろに下がるんだ!」

二人は素早く後方に下がり、もう一つ後ろの角に隠れる。

その瞬間、通路の向こうから轟音が聞こえ、減殺された爆風が頬を撫でる。

「ったく、ムチャしやがる・・・・そこの角にはいないな?・・・・よし、前進」

そして元の位置に復帰して鏡を突き出す。

「傷ひとつついてないぞ!」

鏡に映る兵士のひとりが悲鳴を上げている。

ネルフ本部の隔壁はすべて耐爆仕様で設計されている。

120o砲をブチ込んでも弾き返されるだろう。

「迂回ルートを検索しろ!多少時間がかかってもかまわん」

兵士の一人がバックパックから端末を取り出し検索している。

そう怒鳴ると、指揮官らしき男はインカムに向かって語りかけている。

さすがにインカムの会話が聞こえるほど近くはない。

小松は慎重に、音を極力出さないように短機関銃   MP5SD6(※2)()の安全装置を解除し、そのままセレクターをフルオートに合わせる。

平岡も同じ動作をする。

「小松・・・・ここでやるのか?」

「ああ・・ここなら俺達は遮蔽物があるが連中は何処にも隠れられない・・・」

「よし・・・やるか」

平岡はそういうと手榴弾を取り出し、ピンに手を掛ける。

「よし!迂回路の検索は中止だ!第3小隊に合流する!」

小隊長は任務変更を伝えると移動を開始    つまり小松達の方に近づいてくる。

「平岡!」

言うまでもなかった。

平岡は既にピンを抜き、安全レバーも離していた。

「1・・・2・・・3!!」

そして体を敵にさらすことなく手榴弾を投擲する。

放り込まれたデルタの行動も迅速だった。

後方にいた兵士達   小隊長もこの中にいる   は投げ込まれた方向とは逆向きに伏せる。

前方にいた兵士は手榴弾の発火時間を考えてそれを投げ返そうとするが・・・・・・・・・

彼が手榴弾を掴もうとした瞬間に発火。

轟音と爆風で5〜6人の兵士を吹き飛ばす。

平岡は投げ返されることを見越して、わざと手の中にある内に安全レバーを外し、発火時間を短くしたのだ。

小松は手榴弾の爆風が収まらない中、床に寝そべり、角から射撃に必要なだけ体を露出させると躊躇無く銃弾を送り込む。

消音銃特有のくぐもった発射音と、ボルトが連続的に作動する金属音が通路を支配する。

手榴弾を投げ終えた平岡も射撃に加わる。

デルタの方からの反撃は無かった。

全員が手榴弾によって何かしらの傷を負っており、比較的傷が浅かった者も次々と銃弾に倒れた。

「よし!」

小松は確認をするため倒れ伏している男達に慎重に接近する。

平岡は通路の角で銃を構えて小松を援護する。

「オーケーだ」

小松が平岡を呼ぶ。

「全員死んだのか?」

「いや、生きてるヤツもいるが・・・これじゃ抵抗できまい」

小松はそういうとインカムのスイッチを入れる。

「オメガ7からバッドカルマ」

返答はすぐに返ってきた。

《こちらバッドカルマ》

「ポイント323にて対抗部隊1チームを捕捉撃滅。負傷者等はどうします?」

《そこの処理はネルフに任せろ・・・・オマエらは引き続き捜索に当たれ》

「オメガ7了解・・・・まったく人使いが荒いな」

インカムを切ってぼやく小松。

「しかたないよ、それで金をもらってるんだから」

「ちがいない・・・・よし、他のゴキブリを探しに行こう」
 
 

たった二人でデルタの小隊を潰した二人はさらなる敵を求めて通路を駆け出した。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 



 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 

ネルフ本部、使用されていない区画のひとつ

12:33

デルタ・フォース本部班
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 

「大佐!CIAの要員から連絡です!目標Aを発見したそうです!」

無線機についていた兵士が叫ぶように報告する。

「どこだ!?」

「13番非常用通路を東から西に歩いていったそうです!」

『くそ!後をつけて第3小隊を誘導するぐらいしたってバチはあたらんだろうが・・・』

大佐がそう考えたのはほんのわずかな時間。

それにCIAの工作員は戦闘が任務ではない。

この任務が成功しようと失敗しようと情報収集が本職の彼らはココに残らなければならない。

極端な危険を冒すわけにはいかないのだ。

「本部班から第3小隊!目標Aは13番非常用通路を東から西に向かって移動中!急行しろ!」

《第3小隊了解》

「第2小隊、聞いているか?」

しかし、返ってくるのは空電のみ。

「第2小隊応答せよ!」

「無線通話が不能な地域に入ったのでは?」

大佐もそれを信じたかった。

だが、頭の中をイヤな予感が駆け巡る。

「よし、定期的に第2小隊を呼び出しつづけろ・・・・出たら13番非常用通路の捜索にあたらせろ」

「了解」
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 



 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 

第二新東京市、防衛庁

中央指揮所

12:35

 
 
 
 
 
 
 
 
 

「で、衛星が見つけた不審な影というのは?」

中央指揮所、日本自衛隊全てを統括する(戦自はまた別だが)その場所にて、部屋の主が報告を受けている。

「はい、”はやぶさ7号”が14分前に捉えた映像がこれです」

空自の制服を身に着けたニ佐が報告している。

スクリーンに比較的低軌道からものと思われる映像が映し出される。

「・・・・何かが映っているのはわかるが・・・・よくはわからないな」

「はい、コンピューターで分析したところ、この”影”はかなりの大きさ・・・それこそ山一つ分くらいの大きさがあります・・・・そして、それだけの図体があれば”はやぶさ”が捉えられない筈がありません」

航空自衛隊が運用する偵察衛星”はやぶさ”シリーズ。

防衛技研とニコンが共同開発した新型高倍率カメラを搭載した、単体としては世界で最も優秀な偵察衛星だ。

その能力は、地表の30cmの物体を完全に識別できるといわれている。

もっとも、これはカタログデータなので、気象条件その他によってこの数字は落ちる。

だが、優秀なことに変わりは無い。

「・・・・これを見ると・・・影と言うより、”蜘蛛”に見えるな」

「”蜘蛛”、ですか」

「そんな気がするだけだ・・・・で、針路は?」

「まもなく熱海市に上陸、針路は300度・・・・・」

「第三新東京市、か」

「はい」

「ったく、次から次へと・・・どこから来るのか・・・」

「では?」

「間違いあるまい、例の奴だ・・・・ネルフから連絡は?」

「それが・・・」

言葉を濁した報告者を見て部屋の主   統合幕僚会議議長は怪訝な顔をする。

「どうした?」

「ネルフとの連絡が取れないのです」

「なんだと?」

「有線、無線、衛星回線・・・・どれもこれも不通になっています」

「・・・・どういうことだ?・・・で、こちらの対応は?」

「ヘリを飛ばして直接連絡に行かせています・・・・それと・・・」

「?」

「偵察機からの報告で、第三新東京市の市民の避難がまったくおこなわれていないようです」

「なんだと!?」

議長が悲鳴に近い声をあげる。

彼らの任務は国民の生命、財産を外敵より守ること。

「はい、間違いありません・・・・そこで私の独断で第1空挺団、第2ヘリ団および近辺の部隊を動員して市民の避難誘導に当たらせています」

「そうか・・・よくやってくれた。君の判断に間違いは無い」

「ありがとうございます」

「では、ネルフに連絡が取れて連中の体制が整うまでの時間ぐらい稼ぎたいもんだな」

「全力出撃ですか?」

「ああ・・・第2、第3航空団、第1、第2機動護衛艦隊それと陸自の誘導弾連隊も出せ」

「JSS−01が使えないのが痛いですね・・・」

「仕方あるまい、最新鋭機器と頻繁な故障はワンセットみたいなもんだ」

「ネルフの方はいかがしますか?・・・・なんでしたら第1空挺を連中の本部に回しますか?」

「いや、いいだろう・・・向こうには野分君がいる。いいようにやるさ」

「わかりました・・・では各部隊に全力攻撃を指令します」

「うむ」

そういってニ佐は通信コンソールの方へ去る。
 
 
 
 
 
 
 
 

議長は壁面のディスプレイに映る使徒の予想針路と、その線上にある第三新東京市を見る。
 
 
 
 

「頼むぞ、野分君・・・・あまり時間は無いぞ・・」
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 


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1999_02/03
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かいせつ

(※1)M−60
合衆国陸軍がドイツの軽機関銃を参考にして開発した多用途機関銃。
口径7.62ミリ、ベルト給弾。
ランボーが左手にベルトを巻いて、右手一本で撃ちまくってるアレです。
イメージとしては「ランボー2」でクライマックスに味方の基地で撃ちまくっていた奴を思い浮かべてください。
これを片手で撃てるのはスタローンとシュワルツェネッガーぐらいでしょう。
本来は射手と弾薬手に分かれ、さらに機銃弾は隊員全員が手分けして持つのが普通です。

(※2)MP5SD6
ドイツ、ヘッケラー&コッホ社が開発した短機関銃(サブ・マシンガン)。
口径は色々バリエーションがあるが、オメガが使ったのは9ミリ。
装弾数、これも色々あるが、オメガは30発入りマガジンを使用。
特殊部隊御用達の銃ともいえるシロモノで、アクション映画などでよく出てくる。
「ダイ・ハード」(1作目ね)においてマクレーン刑事が敵から奪い取った銃もMP5である。
多彩なバリエーションも特色のひとつで、このSD6は消音装置を組み込み、伸縮式の銃床を備えたバージョン。
ペルーの日本大使公邸人質事件で、ペルーの特殊部隊も使ってました。
 



あ・と・が・き

みなさまこんにちわです。

P−31です。

第11話Cパートをお届けします。

・・・・今だ終わりが見えません。

Dパートで終われるかどうかも自信が無くなってきました(爆)

ま、いっか(笑)

次回はさらにドンパチります。
 

チルドレンに迫るデルタの魔手!

ゆっくりと、だが確実に近づいてくる使徒!

時間稼ぎを試みる自衛隊!

出番の少ないネルフの面々!(笑)

出番どころかこのパート1回も顔を出さなかったユウジ!(爆)
 

果たして人々は戦いに間に合うのか?

Dパート、お楽しみに。
 




 P−31さんの『It's a Beautiful World』第11話Cパ−ト、公開です。






 迫るデルタに
 迎え撃つネルフ組!


 いよいよ始まりました(緊)


 序盤、とりあえずは、
 デルタの流れには持ち込まれていないよね。


 でもでも、
 デルタもプロ。プロ中のプロ。

 このままじゃ・・・


 激しい戦いのヨ・カ・ン(はーと)      (^^;


 手に汗握ろ!





 さあ、訪問者のみなさん。
 さらにD!P−31さんに感想メールを送りましょう!





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