朝も早い時間、少女は鏡に自分をうつす。腰まで伸ばした自慢の
髪を整え、制服におかしなところがないか入念にチェックする。
(よし。今日もバッチリね!さ、いくわよ、アスカ。)
笑顔に気合いを入れて、アスカは日本に来てからお気に入りとな
っている日課へとむかい、玄関を出た。
朝も早い時間、女性は電信柱の影から1件の家の方をのぞいてい
た。白衣に金髪でその姿はとても目立っていたが、朝早いこともあ
って、とりあえず警察に通報されることはなかったようだ。
(あの薬、失敗だったのかしら。結構自信あったのに・・・)
徹夜疲れと期待外れかもしれないことへの失望を顔に浮かべつつ、
とりあえずシンジの姿を確認するまでは、とリツコは立ちつづけて
いた。
「おはよーございます!おじさま、おばさま。」
碇家の玄関から元気のいい声が聞こえてくる。この声で碇家の1
日が始まるといっても過言ではない。
「おはよう、アスカちゃん。」
「おはよう。」
ユイとゲンドウの返事がそれぞれキッチンとテーブルの方から返
ってくる。もちろん、シンジの返事がないのもいつものことである。
「それじゃ、シンジを起こしてきますね。」
アスカは笑顔でそう言うと、楽しそーにシンジの部屋へとむかっ
ていく。その様子を微笑みながら見送ってから、ユイはゲンドウに
いつもよりちょっと強めに声をかけた。
「もうそろそろ用意して下さいね。今日は大事な予算会議の日な
んですから。」
「あぁ、問題ない。」
珍しく、1回でまともな返事を返すゲンドウ。その目にはいつも
より強い輝きがあった。
「彼奴やキョウコ君には悪いが、今回は我々が研究費を頂く。
手加減なしだ、ユイ。」
お互いうなずき合うと、それぞれこれからの戦いの用意を始めた。
そーっとドアを開けて部屋の中に入ると、薄暗い部屋の中、やは
りシンジはベッドの中だった。
(ほーんと、幸せそーに寝てるわね。)
アスカはシンジの寝顔をちょっとの間、ホンワカした気分で見入
っていたがそうそうのんびりしていられる時間ではなかったので、
行動を開始する。
カーテンを開け放ち、すがすがしい朝の光を部屋に解き放つ。
「ほら、シンジ、起きなさい。早くしないと遅刻するわよ。」
一応声はかけるが、このようなことで起きるシンジではないのは
わかっていた。よって、シーツをつかんで、シンジごとベットから
ひきずり下ろす。
ゴロゴロン
「ふにゃ、んんっ・・・」
ベットから転がり落ちて何とか目を覚ましたのか、半分目の空い ていない状態で頭をあげたシンジの目にしたものは・・・・・
水色と白のストライプだった。
双方、一瞬の硬直の後、
パッチーン!
「きゃー!!エッチ、バカ、ヘンタイ!信じらんない!!」
真っ赤になったアスカの、平手打ち。
「な、なななな」
真っ赤になった顔に手の跡を張り付けたシンジ。
理由は違えど、いつも通りの朝の始まりだった。
「ねえ、僕が悪かったからさあ、機嫌直してよ。」
「・・・・・」
「ねえってば、」
「・・・・・・」
中学への登校路を走りながら、シンジはアスカの機嫌を取り戻す
べく話しかける。
「今日、転校生が来るんだよね。」
「・・・・・・・」
「どんな子だろうね。」
「・・・・・・・・」
頬を赤く染めたまま全く答えてくれないアスカに、シンジはもう
何を言って言いのかわからなくなってしまっていた。
一方、アスカの方はというと・・・
(シンジに見られちゃった。今日、ちゃんとしたのはいてたっけ?
って、何考えてるのよ!アタシは〜〜〜)
といったことが頭のなかをぐるぐるまわっていた。
こういった感じで走り続け、とりあえず時間ぎりぎりで遅刻せず
に済むだろうところまでたどりついていた。後ひとつ角を曲がれば
学校まで直線を残すのみ。
走るスピードそのままに二人がT字路に差しかかった瞬間、もう
一方の道から一人の人影が飛び出してきた。シンジはさっきからア
スカの方に意識を集中させていたため、気付いた時にはもう遅かっ
た。
「のわっ!」 「きゃっ!」
ガッツン!!
シンジと飛び出していた人影は見事に正面衝突したのだった。
シンジとぶつかった子は、空色の髪のショートカットの女の子で、
痛そーに頭をおさえながら、地面にシリモチをついていた。
「痛ーい。どこ見て走っているのよ。もう。」
空色の髪の少女、レイは自分とぶつかった相手にそう言いつつ
相手を見ようと顔をあげた。が、ぶつかったはずの男の子がいない。
目の前には、おそらく一緒にいたのであろう赤い髪の女の子しかい
なかった。
「ち、ちょっと、私とぶつかったやつはどこにいったのよ。」
レイはその女の子、アスカに尋ねる。が、アスカは呆然としたま
まある一点を見つめたままだった。レイもそちらに目をやる。
そこには、レイのくわえていた1枚の食パンが落ちていて・・・
小さな人がその上に倒れていた・・・・・
二人の女の子があまりの非現実に立ちすくむ中、彼女たちの学校
のチャイムが現実を告げるべくあたりに響き始めた。
【追伸】
さて、こーんなことが通学中の彼らの身に起こった原因となって
いる女性はというと・・・・・
全く変わりのない姿で玄関から出てきたシンジをみて、その成功
すら知らぬまま、その場に力つきていた。
合掌・・・・
どーも。jr-sariです。とりあえず、第1話(前編)書きました。
1本に収めようと思っていたのですが、長くなりそうなので
分けてしまいました。なるべく早く、次をあげようと思ってます。
それでは。
jr-sariさんの連載『Child Child』第1話(前編)公開です(^^)
やってくれましたね、マッド赤木(笑)
ちいさくなったシンちゃん、踏み潰されなくてよかったね。
レイちゃんの登場シーンをこういう風に利用するとは・・・上手い!
レイちゃんのをチラッとみるパターンを崩して、
アスカのをみるシンジというアレンジ・・・・ シンジが羨ましい(^^;
そして、見られたアスカは、怒りが湧かない自分に戸惑う・・・・か、かわいい!!
この小さくなったシンジと、今回やってきたレイと、アスカ。
さあ、一体どうなるんでしょう?!
訪問者の皆さん、貴方の感じたことをjr-sariさんに伝えて下さいね!!