キーンコーンカーンコーン
「じゃ、今日はこれでおしまい。
後片付けをちゃんとして帰るように。
お疲れさま。」
部活も終り、わいわいと楽器の片付けが始まる中、シンジは時計を
気にしつつ焦っていた。
(後30分はあるけど、先にいって待ってないと、また怒らせちゃう
もんなあ。)
赤い髪の幼なじみを思い浮かべながら、急いでチェロをケースにし
まおうとする。
ビィィィーン
「痛っつ!」
焦り過ぎてどこかに引っかけたのか、弦が切れてしまっていた。そ
して、それが手に当たったのだろう、手の平を切っていた。
「大丈夫か?」
「えぇ、平気です。それより、こっちを直さないと。」
心配して声をかけてきた先輩に、弦の切れたチェロを示す。
「そっちはやっといてやるから、保健室で手当てしてもらえ。」
「済みません。じゃ、お願いします。」
シンジは頭を下げると、保健室へとちょっと急ぎ足で歩きはじめた。
保健室。この学校では、通称 ”マッドの間 ”と呼ばれている。そ
れもひとえに担当の先生が原因なのだが、担当医である赤木リツコは
この部屋で法規制にひっかかるような危ない薬をつくっているらしい
という噂が学校中に流れていた。
シンジもこの噂は知ってはいたが、まさか自分が証人になるとは、
この時まだ思ってもいなかった。
コンコン
とりあえずノックをして中をのぞいてみる。
「はい、何の用?」
金髪にメガネをかけ、白衣を来たリツコ先生がこっちを見ていた。
「あ、あの、手を切ってしまって、それで・・・」
なんとなく,噂のことが頭をかすめ、どもってしまうシンジ。
「そう、こっちに来て、ちょっとみせて。」
中にはいって手の平をみせる。
「これなら、消毒してバンソウコウはっとけば大丈夫ね。」
そういって、薬品棚に向かって歩いていくリツコ。そんな様子をみ
て、どうやら取り越し苦労だったようだ、とシンジは安心していた。
が、しかし・・・
(チャンスだわ。昨晩徹夜で作った薬を試す時よ。これが成功すれ
ば、名が知れて、こんな場所とはおさらばよ!)
なーんてことを、リツコが考えていたと知ったら、即座に逃げ出して
いただろう。
(さて、どうやってこの薬を飲ませようかしら・・・、よし。)
「ごめんなさい、ちょっと新しい消毒液を出さなきゃいけないから、
このコーヒーでも飲んで待っててくれる?」
ポットに用意してあったコーヒーに目的の薬を混ぜてシンジに渡すリ
ツコ。怪しくメガネが光っていたりする。
だが、安心しきっているシンジは、当然気付かなかった。
「あ、ありがとうございます。」
時間を気にしつつ、受けとり口をつける。
ジィーと変化を見守るリツコ。
「あ、あの、どうかしました?」
自分を見つめているリツコに気付いて、何を勘違いしたのか、顔を赤
くしつつ尋ねるシンジに、慌てて目をそむけて消毒液を取りにいく。
(おかしいわね。効くまでに時間がかかるのかしら?)
そんなことを考えながら、とりあえず手当てをしてやると住所と名前
を聞き出す。後で確認を取れるようにだ。
「あの、ありがとうございました。」
シンジは礼をいうと、不審そうな顔で自分を見つめるリツコに気付き
もせず、校門に向かって駆けだしていた。
「遅ーい。」
校門にたどり着くと、予想通り機嫌悪そうなアスカ立っていた。
「ごめん。ちょっと、怪我しちゃって、保健室よってたんだ。」
時間を見るとぎりぎり間にあっていたのだが、そんなことを言おうも
のなら、ひどい目にあうのは永年の経験からわかっていたので、とり
あえず、謝る。
「保健室って・・・、大丈夫、なんかされなかった?」
やはりアスカも噂が気になるようだ。心配顔で聞いてくる。
「大丈夫だよ。いい先生だったよ。コーヒーとか入れてくれたし、
あっ。」
安心させようとして余計なことを口走るシンジ。気付いた時はもう遅
かった。
「そう、人を待たしといて、コーヒーなんて飲んでたわけね、あんた
は。」
「い、いや、あの、だから、」
「ふーん、ま、いいわ。帰りにマックでおごってくれるっていうので
手を打ってあげる。」
「え、そんなー。」
「イヤダナンテイワナイワよねえ、シンちゃーん。」
「・・・・・・はい。」
こうして、アスカは御機嫌に、シンジは心で涙しつつ、帰路へとつ
くのであった。
はじめまして。jr-sariといいます。以後、よろしくお願いします。
こういうのを書くのは初めてなので、おかしなところもあるでしょうが
何か気になるところがありましたら、ビシビシご意見ください。
メールアドレス jr-sari@mvb.biglobe.ne.jp
[ブラックジャックの21]人目の入居者がめぞんEVAに参りました。
jr-sariさん、ようこそ!!(^^)
jr-sariさんの第1作、『child child』第0話 を公開します(^^)/
こ、怖いです。
マッド赤木にモルモットにされたシンジ君に確実に訪れる”ヤバイ”事態・・・
命に関わるような物でなければいいのですが・・・(^^;
アスカちゃんには危害が及ばないのか?
前者より後者を心配する私はアスカ人(^^;;;;;
なんだか、とってもラブラブな予感がするのは私の願望ゆえ、なのでしょうか?
訪問者の皆さんはどう思いますか?
その感想をjr-sariさんに送って下さいね!