UN NERV /8154 665 /2015
スー・・・・・・・・・・・ シンジの部屋の襖が静かに開く。
「よしよし、まだ寝てるわね」シンジの部屋に侵入してきた栗色の髪の少女。 そう!いわずとしれた惣流・アスカ・ラングレーその人である。
「たまにはアタシが起こしてあげなきゃね」そう呟くと、アスカはシンジのベッドの脇に腰を降ろす。
「ムニャ・・・・・」シンジは未だ夢の中のようだ。
「まったく、カワイイ寝顔しちゃって・・・どんな夢見てるの?」アスカはシンジの寝顔をのぞき込みながら微笑む。
「んにゃ・・・アスカぁ・・・・・むにゃ・・・」シンジはナイスタイミングで、絶妙な寝言を漏らす。
ボン!という音が聞こえてきそうな程、顔を真っ赤にするアスカ。
「シンジぃ・・・夢でもアタシを見てくれてるの?・・・」恋する乙女という言葉は今のアスカにこそふさわしいだろう、目がウルウルしている。
「起こしてあげるね・・・」そういうとアスカは自分の唇をシンジのそれに近づける。
そして、2人の距離がゼロになったその時、
「ンン!?」シンジが舌を絡めてきた。
アスカは体を離そうとするが、いつの間にかシンジの両腕が背中と首に回されていて身動きがとれない。
・・・・・・・・・・・・・・・・1分経過・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
気が付くとアスカも腕をシンジの首に回している。
・・・・・・・・・・・・・・・・3分経過・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
やがて、二人の唇がゆっくり離れる。
「・・・・・・・・・はあっ・・・・・・・・・・・・・・・・・」
アスカが甘いため息をもらす。
シンジはそれを見て笑顔を向ける。
「おはよ、アスカ」
アスカはそれを見て紅い顔を更に紅くするが、シンジを見つめて元気よく、
「おはよう!シンジ!」
市立第壱中学校への通学路上
『サードチルドレン、セカンドチルドレンと共に登校。』
『以下の報告は諜報部作成の”最高機密報告書 第4031号”からの抜粋である。』
「シンジ!急がないと遅刻よ!」アスカはシンジより前を走りながらそう叫ぶ。
「アスカぁ、待ってよー」シンジは言葉とは裏腹に、なぜか楽しそうに走っている。
端から見れば、仲のいい恋人達が追いかけっこをしているようにしか見えない。
「ふふ!いやーよ!追いついてみなさい!」アスカはそう言うと走るスピードを更に上げる。が、
「キャッ!」
途端にシンジに追いつかれ、抱き止められてしまった。
「シンジ!・・・んんー!?むー!」
何をしているか・・・お判りかとは思うが・・・”口唇による一時的接触”である。
「・・・・・・・・・あふっ・・・・・・・シンジぃ・・・・・・・・・遅刻しちゃうよお・・・・・・・・・」
「大丈夫、昨日アスカの時計を10分進ませておいたんだ」
「えぇ!?・・・・・・・それじゃあ・・・・・・・・・」
「うん、まだ充分時間はあるんだ。ゆっくり歩いて行こうよ」
「・・・・・・・・・・・・・・うん・・・・・・・・・・・・・・・」
二人は肩を並べて歩き出す。
アスカはこれ以上無いほどシンジに寄り添って、
シンジはそんなアスカの肩を抱き寄せている。
二人は学校に到着するまでその体勢を崩さなかった・・・・・・・・・・・・
「シンジぃー、はいアーン」
「うん・・・モグモグ・・・おいしいよ、アスカ」
「あったりまえでしょお!シンジが作る物はなんでもおいしいんだから!」
「アスカにそう言ってもらえると、うれしいな」
この二人は何をしているのか?・・・・・・・・・・・・
みなまで言う必要は無いと思うが・・・・・・・
自分でつまんだ物は相手に食べさせ、相手がつまんだ物は自分が食べる。
要するに”食べさせっこ”である。
「だって・・・ホントにおいしいんだから・・・・・だから・・・・感謝してるわよ」
最後の方はごく小さい声だったが・・・
「ありがとう、アスカ」しっかり聞こえていたようだ。
この二人は自分達の作り出している情景がどれ程の破壊力を秘めているか知らない。
もし、この光景を彼女イナイ歴14年の相田ケンスケ氏(仮名)に見せたなら、ショックで1週間は起きあがれまい。
それはさておき・・・・・・・・・・・・・・・・・
いつの間にか二人は寄り添いながら眠ってしまったようだ。
「シンジぃ・・・・・・」
「アスカぁ・・・・・・むにゃ」
寝言でも息がピッタリな二人。
ちなみに二人はこのまま寝過ごして、午後の授業に大遅刻してしまった。
「ねー、シンジぃ、このままどっか遊びにいこーよー」アスカが甘ったるい声を出し、シンジの腕にしがみつく。
「だめだよ、アスカ。今日はミサトさんも早く帰るって言ってたじゃない。夕御飯の支度しなきゃ」
アスカはぷうと頬を脹らませると、
「あーんな三十路に片足突っ込んだ独身女の心配するのお?生活不能者には試練が必要なのよ!」と、なかなかキツイ事を言う。
「アスカ・・・ミサトさんも家族だよね?」シンジはちょっと悲しそうな顔をする。
アスカはシンジにこんな顔をされると自分も悲しくなってしまう。
「ごめん・・・シンジ・・・ちょっとでも長くふたりきりでいたかったの・・・」そしてシンジの腕に更に強くしがみつく。
「アスカ・・・・・・僕は何があってもアスカの側を離れない、絶対にね」
シンジはそう言うと自分の顔をアスカの顔に(より正確には唇に)近づけた。
それに気付いたアスカは静かに目を閉じる。
「んっ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
ちなみにここは往来のド真ん中である。
ふたりはお互いのことになると、完全に周りが見えなくなる。
超激甘ラブシーンを見せつけられる通行人の方々はたまったモノではない。
やがて、ふたりは名残惜しそうに唇を離す。
「・・・じゃあ、帰ろうか?・・・」シンジはアスカの目をのぞき込みながら言う。
そして、アスカは頬を紅く染めたまま、
「・・・・・・・・うん・・・・・・・・・・」
シンジはアスカの部屋にいる。
学校で出された宿題を片づけるためである。
アスカはともかく、最近ではシンジもメキメキと学力を上げている。
同級生兼、家庭教師兼、戦友兼、恋人のアスカがみっちりしごいたお陰なのだ。
今では学年順位の1番と2番はこの二人の指定席になっているのだが、それはまた別のお話。
「んー・・・終わっちゃったわね・・・」アスカがぽつりと呟く。確かに、宿題をはじめてから30分と経っていない。
「うん・・・でも、アスカと一緒にやるようになって、楽しくなってきたよ。勉強が」
「あったりまえでしょぉ!こぉーんなに可愛いくて頭もいい女の子が毎日一緒に勉強してんのよ?それに・・・」
「それに・・・?なに?」シンジは首を傾げる。
「シンジだって本当は頭いいのよ?今までは教え方が悪かっただけ」
「ありがとう。アスカに誉められると嬉しいな」シンジはちょっと恥ずかしそうに答える。
「そーよ!もっと自分に自信を持ちなさ・・・・・・・ん!・・・・」アスカの隙をついて唐突にキスをするシンジ。
アスカも最初は戸惑っていたが、一瞬後には両腕をシンジの首に回していた。
しばらくして、”でぃーぷ”なキスを終え、顔を離す二人。
「可愛い家庭教師さん、これは僕からのお礼。でも、イヤだった?」シンジはちょっと意地悪げな笑みを浮かべている。
アスカは顔をまっ赤にして少し俯くと、
「ばか・・・・・・・・・・・・イヤなわけないじゃない・・・・・・・・・」
「シンジー早く寝ようよー」ベッドの中からアスカの声が聞こえる。
「うん、もうちょっと待ってね。すぐ終わるから・・・・・・っと終わったよ」シンジは明日の学校の準備をしていたらしい。
そして、シンジもベッドに入る。
そう!二人はたまーに一緒のベッドで寝ているのだ!(別にヘンな事をしているわけではないらしいが・・・)
「よいしょ・・・ちょっと狭いね」シンジが体をモゾモゾ動かしながら言う。
「そーね、アタシ達二人とも成長期だしね」アスカもやっぱり体をモゾモゾ動かしながら答える。
「ミサトさんに言って、ダブルベッド買ってもらう?」シンジはとんでもない事をさらっと言う。
「そんなこと言ったら、ミサトの奴卒倒しちゃうわよ。ただでさえアタシ達に見せつけられて鬱憤が溜まってるのに」
「それもそうだね」シンジは納得顔だ。
すると、アスカは恥ずかしそうに顔をあさっての方向に向けて、
「それに・・・・アタシは少しくらい狭くてもいいな・・・・・ずっとシンジとくっついていられるから・・・」
「うん・・・そうだね・・・それじゃダブルベッドは二人になった時のお楽しみにとっておこうか」シンジはアスカの手を握って答える。
「”二人になった時”?」アスカは意味が解らないようだ。
シンジは片目をつむって微笑みながら、
「結婚したらっていう意味だよ」
アスカはその言葉を聞くとシンジに向き直り、ぎゅっと抱き締める。
「シンジぃ・・・・・・・・アタシ、すごく幸せだよぉ・・・・・・・・」
「僕だって幸せだよ。アスカのいない生活なんて考えられないしね」シンジもアスカを抱き締めながら言う。
「・・・・・・・・・・シンジ・・・もう寝る?」
「そうだね、明日も学校だし遅刻したらマズイからね」
「じゃあ・・・・はい!」アスカはシンジに向かって唇をつきだす。おやすみのキスのようだ。
シンジはちょっと苦笑しながら、
「はいはい・・・」
《ちゅっ!》小鳥のついばみのような軽いキス
アスカの表情は、嬉しいけど物足りない、そんな複雑な表情。
シンジは、そんなアスカに微笑みながら、
「おやすみのキスは軽い方がいいんだよ。大人のキスは明日にとっておこうよ」
アスカはシンジの言葉を聞き、顔をパッと明るくすると、
「じゃあ、早く寝よ!」
「そうだね、じゃあおやすみ。アスカ」
「おやすみ、シンジ」
二人は部屋を暗くすると眠りについた。
二人が眠りに落ちる前に考えていたのは奇しくも同じコト。
『『絶対に・・・離さない・・・・・・・』』
あとがき
みなさん、こんにちは。
P−31です。
うーーーーーーーーーん・・・・・・ごろごろごろ・・・・・・
なんて恥ずかしいモノを書いてしまったんだろう・・・・・・・・・・
でも、書いていて楽しいんです。
指先が軽いです。
Vol.1としましたが、続く予定は(今のところ)ありません。
でも・・・「続きが読みたいから書け!」というメールが1通でもくれば・・・・・・・・書きます(笑)
さて、読んでいて気付いた方もいらっしゃると思いますが、この作品はK−tarowさんのSSからインスピレーションを
いただきました。
K−tarowさんにはチェックしていただきました。
ほんとにありがとうございました(ぺこり)。
私の連載とはなんの因果関係もございません。
妄想のおもむくままに書きました。
楽しんでもらえれば、幸いです。
ちなみに情報閲覧資格α(あるふぁ)は、ネルフ内では指令・副指令・E計画担当者・作戦部長しか持っていませんが・・・・・・・・
一歩外へ出ると、インターネットを泳ぐ事ができる環境なら、誰でもおっけーです(笑)。
そう!あなたもネルフの最高機密に触れる資格を持っているのです!(大爆)
では、監視対象の二人に幸多からん事を祈りつつ、今回はこの辺で・・・