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標的は、第三新東京市。















 

 

 

It’s a Beautiful World
第14話「ナーバスブレイクダウン
(B−part)























TO:UNA

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手早い仕事ぶり、感服する。

本日午後、成功報酬を振り込む。

引き続き同地においての仕事を依頼したし。

連絡請う。
















TO:none

FROM:UNA





依頼の件了解。

ギャランティは前回と同額。

同意したならば、目標に関するデータを添付して転送せよ。
















TO:UNA

FROM:none








快諾感謝する。

目標に関する入手できる限りのデータを添付した。

成功を祈る。






























第三新東京市の中心近くにある、一見ただのオフィスビルにしか見えない建物。

他と違うところと言えば、入り口に24時間で制服を着た人間が立っていることと、その場所の住所。

第三新東京市、桜田門街1丁目無番地。

金色に光る桜の紋章が建物の素性を如実に物語っている。

(ちなみに無番地というのは国有地であることを示している)

そして、その建物の最上階にある会議室は、暗がりと沈黙と焦りに支配されていた。

数十人を超す男女のざわめきと、空気清浄機がフル回転しても拭いきれないタバコの煙。

「以上が科捜研(科学捜査研究所)からの初動報告だ。何が判るのかと聞かれれば・・・」

警視庁本庁舎、特別捜査本部。

そこでは、各捜査員に対する状況説明が行われていた。

年輩の警部補が場を見渡して続ける。

「ほとんど何もわかりゃせんということだ」

インパクトの影響で警察のエリートとも言える”有資格者”つまり国家一種採用枠は自然消滅していた。

いずれ復活してしまうだろうと言われているが、現在のところ大きな事件は、経験と実績のあるベテランに指揮権が渡されていた。

仕立ての良くない背広を着た警部補が壇上に立っているのはそのためだ。

指揮下には彼よりも上席の人間が何人かいるが、彼には今回の爆破事件全てに関する指揮権が与えられている。

「ま、数少ない事の中でわかることは・・・・」

警部補は色々な鑑定結果が映し出されているプロジェクターの投影面に歩み寄り、ある一点を示す。

「コイツだ」

”残留痕跡から鑑定した結果、使用されたのは軍事用に開発された混合爆薬と推定される”

そこにはそう記してあった。

「世界大戦が終わってからこっちの日本でも様々なテロが起きた。日本赤軍なんかはその代表格だな・・・・しかし、だ」

そう言って警部補は同じ箇所を再び示す。

「混合爆薬、おそらくはコンポジション系だろうが・・・・日本で”爆薬”がテロに使われたことは未だかつて無い」

50年代から70年代にかけて日本で頻発した爆破テロは、諸外国のそれとはいささか形態が異なる。

諸外国のテロ組織が好んで”爆薬”を用いたのに対し、日本のそれは”火薬”を多用していた。

それは”使わなかった”というより”使えなかった”と表現するのが正しい。

様々な規制、様々な対策が功を奏し民間人が爆薬を手に入れるのは限りなく不可能だったからだ。

そして、”爆薬”と”火薬”ではモノが全く異なる。

日本のテロ組織は火薬の威力不足を補うため、火薬に圧力を掛けることを思いついた。

その結果が圧力釜爆弾や消火器爆弾といった外国ではあまりお目にかからないユニークな爆弾達だ。

「インパクト前の旧ソヴィエトの崩壊、そしてセカンドインパクト後の混乱などで軍用爆薬も相当数出回っている。だがそいつを国内で使用されたのは初めてだ」

プロジェクターが切り替わり、瓦礫の山と化したサード・タワーが映る。

「ただし、爆薬を手当たり次第仕掛けりゃ良いってモンでもない。皆テレビで見たことぐらいはあると思うが、爆破解体というのは生易しい仕事じゃない」

スクリーンから離れ、警部補は壇上に戻る。

「俺はこの件のデータ一式を東大建築研究所(もちろん旧東京に置かれたそれではなく、第三新東京市に設けられた、新たな最高学府の事)に送った。科捜研経由だと時間がかかるからな」

会議室に失笑が起こる。

全員が科捜研の仕事の遅さには辟易していたのだ。

初動報告にも1週間の時間がかかっている(専門家にはまた別の意見があろうが)。

「まあそれで知り合いの教授に見てもらったんだが、これをただ単にビル爆破解体としてみても、相当な技術が必要とされると言うことだ」

またもやプロジェクターが切り替わり、今度はサードタワーの青図が映される。

そこには赤鉛筆で色々と書き込んである。

「大黒柱、というのはわかるな?・・・・最先端のビルでも、それがあることには変わりないそうだ・・・・そいつを吹き飛ばしてしまえばビル自体はえらく”脆く”なっちまうらしい」

そう言って警部補は青図で示された4カ所の柱を示す。

「もちろん、脆くなったからといってもビルを内向きに崩壊させるにはやはりコツがいる。東大のスパコンで計算した結果、あの爆破を再現するのに要する爆弾の数はおよそ500個」

その数を聞き、会議室がどよめく。

それがどれほど大規模なことか、全員が判るからだ。

「全員にこれだけは言っておく」

警部補はプロジェクターを切り、部屋の照明を点灯させ改めて会議室を見回す。

「これは日本犯罪史上類を見ないものだ。しかし、俺達のやることに変わりはない・・・・地取、勘取、その他あらゆる手管を使って犯人を追いつめる。この捜査が終了、つまり犯人が逮捕されるまで、諸君の人数が増えることはあっても減ることはない。肝に銘じろ・・・・」

説明は終了、今は動くときだ。

「それでは解散」

そして会議室は喧噪に満ち、若い人間などは駆けだして部屋を後にする。

警部補はようやく人心地付いたとでもいうように、演壇の椅子に座り込み懐から煙草を取り出して火を付けようとする。

それは脇から伸びてきた手に握られたライターによって阻止された。

「すまんね・・・・」

煙草が焦げ、紫煙が立ちのぼる。

「フウ、いい歳になっても止められなくて困ってるんだがね・・・・どうだい、ウチの若い衆は?意欲ではそちらさんにも負けんと思うが」

警部補はライターの持ち主にそう話しかける。

「いえいえ、そんなこともないですよ。ウチも官僚化からは逃れられませんでね・・・・そう言った意味ではむしろそちらの方が羨ましいですよ」

金属音を立ててライターの蓋を閉じた無精ひげの男。

「まあいいがね。それよりも君がネクタイをきちんと締めているところを見るのは初めてだな。髭はポリシーかね、加持君」

確かに、この男が身なりを整えているところはあまりお目にかかれない。

彼はネルフの捜査代表として出席した。

第三新東京市はネルフと関わる部分があまりにも多すぎるため、ネルフとしても不干渉というわけにはいかないのだ。

(現にサードタワーについても、ネルフの関与する部分が大きかった)

「ネルフから貰った監視記録は大いに参考になったよ。君の方から礼を言っておいてくれ」

「わかりました・・・・しかし、あれが役に立ちましたか?」

多少の疑念を込めて、加持はそう尋ねる。

「なに、大人数が出入りした形跡がないというだけでも収穫さ。基本的に犯罪捜査というのは消去法だからね」

「なるほど」

「しかし・・・あの記録はあまり表には出さない方がいいだろう?」

警部補は少々意地悪げな笑みを浮かべて言う。

監視記録がなぜ表に出てまずいかと言えば、人間誰しも常時監視されていて楽しくは思わないからだ。

「まあ公表されたら、ただでさえ悪いネルフへの印象がさらに悪くなりますね」

悪びれずに返す。

この程度ではこの男の飄々とした表情は崩せない。

「どっちにしろ今回は生易しい相手じゃない。人手を用いずにあれだけのことをやってのけたんだ・・・・正直、今この庁舎が崩れ落ちても不思議には思わんね」

「それについては同意見ですね」

「それに犯人の目星はついてるんだ。それがすぐに捕まえられるということに繋がらないのが頭の痛いところだ」

警部補は機嫌が悪いとでもいうように顔を顰めて腕を組む。

「といいますと?」

「コイツを読んでみろ。英語はできるな?」

「まあ人並みには」

警部補が演壇の引き出しから取り出したそれを受け取って眺める。

「・・・・ICPO?」

「その67ページを開いて」

「・・・・」

ページをめくる乾いた音が響く。

「なるほど、これが貴方の言う”目星”ですか」

「日本の右左問わないテロ組織にとって、今回のヤマはあまりにも荷が勝ちすぎる。そう考えてた所に飛び込んできたのがそいつだ」

「当時のアメリカを震撼させたテロリストが、実は年端もいかない子供だったとはね」

君たちだってそう変わらんことをやってるだろう?

警部補はそう思ったが、大人ということか口には出さなかった。

「問題は、その報告書自体にある」

「と、いいますと?」

「表題を見てみろ」

加持は分厚く綴じられた報告書の表紙を見てみる。

『全世界的なテロリストの活動活発化について』

「なんとまぁ・・・・」

そう呟いて、加持は目次をパラパラとめくる。

「有名どころがゴロゴロいますね」

「”活動活発化”なんて言ってるが、実際はICPOで行方の判らなくなった1級のテロリスト、テロ集団を一纏めにくくってるだけさ」

「そしてそのうちの1人がここに現れた・・・」

「ここからは私の妄想だ。聞き流してくれて構わない」

警部補は軽くそう言ったが、加持を見る目は鋭いままだ。

「もし仮に、ここに記載されている連中全てが日本を目指していたら?・・・・いや、もう国内に潜り込んでいるかもしれない・・・・そうだとして、どうやってテロを未然に防ぐ?そもそも未然に防ぐことなどできるのか?・・・・とね」

警部補は”妄想”と言ったが、その見方は本質を捉えていた。

彼自身、確証も何もないので口にするのをためらっているのだ。

「情けない話だが現在の日本警察は完全な防御組織だ。ほとんどの場合、事が起きてからでしか対処できない」

「どうでしょう?・・・ここに書かれている連中は職業的な人間を除けば、それこそ主義主張が全く異なります。同じ標的を狙うというのは・・・・」

「そいつにはまた別の意見がある。80年代後半のテロが盛んだった時期、テロネットワークとでも言うべきものが存在したのは知っているかい?」

「知識としては」

「俺だって記録でしか知らないさ。ただ、当時に可能だったことを今できないと言うことはないだろう?・・・・特にでかい後ろ盾があればなおさらだ」

加持の目が少しだけ鋭くなる。

「何か話でも来ていますか?」

「来ているも何も、第二新東京市の某国大使館は得体の知れない訪問客で満員御礼だそうだ。公安からペーパーで報告書が上がってる」

「・・・・・」

「それにこいつはオフレコだがな、ちょっとした知り合いが陸自の通信傍受関係の仕事に就いてるんだが・・・第二新東京市周辺は聞いたこともない暗号電波が飛び交ってパニック寸前らしい」

「なんと言いますか・・・・」

「”あまりにもあからさますぎる”かい?・・・・確かにその通りだね。しかし、大使館に出入りしてる人間はどいつもこいつも”クリーンな”人間ばかりだ。繋がりは見いだせない・・・故に確証は持てない」

「だが、貴方は確信を持っている」

「何かやろうとしていることは判っている。そしてそれがろくでもないことであろうことも。だが、それで後ろ盾たる連中が何を得るのか?何をしたいのか?・・・さっぱりだ」

「だからこそ、貴方は日本国内に存在する組織でありながら、その権限故に”攻勢組織”たるネルフに話を振った、というわけですか」

「その通りだが、何か不都合があるかい?」

「正直なお人だ」

「知っているか?最近では正直さは美徳には数えられんらしい」

二人の剣呑な男は声を上げて笑う。

笑いすぎたのか、少し涙目になりながら警部補は続けた。

「そちらにはあらゆる情報が届くようにする。捜査本部だけではなく警視庁公安、自衛隊の裏街道連中、内閣危機管理室・・・・おっと、海保の警備屋の情報網も侮れんな。既にいくらか物騒な話も入ってきてる。そちらがどう処理するかは任せる」

「こちらにも面白い話は入っています。色々とやってみましょう」
































「シンちゃーん」

ネルフ本部。

通路を歩いているシンジを見つけたミサトが、用があるのか声を掛けた。

「なんです、ミサトさん?」

ミサトはここ数日、シンジの顔色がすぐれないのに気づいていた。

何度か尋ねたが、健康的なものではないと答えるだけで、本音を語ろうとはしない。

それがミサトには悔しく、やり切れなくもある。

この少年は完全に自分を信頼しているわけではないと思い知らされるからだ。

「野分さんからシンちゃん宛に大荷物が届いてるわよ。シンちゃんの部屋に入りきらないような大きさだったから、ここの倉庫に入れておいたわ」

「わかりました。あとで確認しておきます」

「しっかし・・・貨物用大型コンテナ1個なんて尋常じゃないわよ。何送ってもらったの?」

シンジは少し考える素振りを見せたが、結局は少し微笑んで。

「内緒です」

と返すだけだった。














ネルフ本部内、管理倉庫。

ここは各セクションの範疇に含まれない物品を保管する倉庫だ。

それ故に場所は地上からもそれほど離れてはいない。

そしてそれ故に大きさは桁はずれている。

面積にしてテニスコートが10面ほど取れるスペースがある。

だが、消耗品の使用度合いは組織の大きさに相応しく、やはり桁はずれており、備蓄分もかなりの量にのぼる。

テニスコート10面のうち、8面はそうした物品が山のように積まれている。

残る2面は、急な資器材搬入などでスペースが必要になった場合に備えて常時確保されている。

今、そこには黒いコンテナがポツリと置かれている。

本部での用事を全て済ませたシンジがここに来たのは夜も遅い時間だった。

迷うことなくコンテナを見つけだし、ハッチに近寄る。

ハッチには指紋照合型のロックが取り付けられており、それはシンジが人差し指を押しつけることで戒めを解除した。

扉状になっている重い鋼鉄製のハッチを開き、中に入る。

貨物コンテナに照明などあるはずもなく、中はハッチから差し込む薄い光だけが頼りだ。

「・・・・こんなに送ってくれなくてもよかったのに」

シンジがため息混じりに呟く。

中はありとあらゆる”援助物資”が積まれていた。

武器弾薬は言うに及ばず。

ボディ・アーマーや通信機器、測位装置、対NBC防護服、催涙ガスやスタングレネード等々・・・・

だがシンジはそれらのものには目もくれず、奥に据えられた棚に歩み寄り、そこに置かれた物を手に取る。

それは古風なボルトアクション・ライフル。

10倍ほどのスコープが付けられたそれは、アメリカ風に言うならばディア・ハンティング・ライフルというものだ。

これはシンジが初めて使った、馴染み深い銃でもある。

「これさえあればいいんだよね」

左手で銃を支え、右手でボルトを開いて中を確認しながら呟く。

でも、これ自体まだ何かに頼ってる証拠かもしれない・・・

シンジはそれでも後ろ向きにはなれない。

守り抜くためだったらどんな汚い手でも使う。

きれい事は言ってられない。

「父さんの思惑に乗るのはしゃくだけど・・・・やるさ」

シンジは銃と弾薬を同じ棚に置かれていたケースに収めると、それを抱えてコンテナを出て再びロックし、人気のない倉庫をあとにした。


































第三新東京市はほぼ完璧といっても良いほどの計画都市だが、第二新東京市はいささか趣が異なる。

都市建設プランが策定される際、壊滅した旧東京の空気に加え、同じく壊滅した横浜のイメージ。

それに付け加えて先端都市としての機能美まで要求された。

第三新東京市が、計画段階から要塞都市として構想され、他の要素を排除したのとは対照的である。

おかげで第二新東京市は先端都市でありながら、どこか雑多な空気が拭いきれない街になっていた。

言ってみれば、その空気は旧東京にもっとも近いのかもしれないが。

旧東京の機能がほぼ全てこの街には集まっている。

行政、立法、司法。

分立したことなど憲法制定以後一度もない三権を初めとして、各種官公庁、大企業の本社。

ちなみに世界規模の企業ともなれば、その本社には一国の政府よりも高い情報収集能力等が求められる。軍隊で言えば総司令部のような物だ。

それゆえに、旧東京が無くなったからといって地方支社に肩代わりさせるわけにもいかないのだ。

そして、各国の出先機関としての大使館や領事館。

第二新東京市において、昔からの土地を確保している国など無い。

ゆえに大使館の敷地などはほぼ均等だったが、やはりそれ以後国力によって差が生じている。

特にアメリカは大使館を不必要なまでに大きくし、ビル一つ丸ごと買い取っている。

街の中心部から少し離れたところにある12階建てのビルがそれだ。













ステイツ
「本国からの訓電は?」

最上階フロア、そのかなりの部分を専有している部屋。

駐日アメリカ大使の執務室である。

「変更ありません。動くなというのが最新の訓令です」

豪奢すぎる執務机の前に立つ書記官が伝える。

「大使、あまり目立った動きは控えた方がよろしいのでは?・・・・既に大使館員は武官、文官に限らず24時間でマークされています」

「だが何もしないというわけにもいくまい。このままいけば手柄はCIA・・・・じゃないな、OSSの独り占めだ」

合衆国中央情報局、略称CIA。

この組織は最近、組織改革を行っており、その一環として名称も変更された。

戦略情報事務局、略称OSS。

その昔ナチズムと戦った先人達を見習おうという思いつきらしい。

「ですがこれ以上は不可能ですよ。大使館に訪れる各組織の連絡員は身元の綺麗な人間を使ってますが、その連中ですら警察の徹底的な監視下に置かれています」

「フン。日本の警察は働き者だな、本国の警察とは比べものにならん」

「それは彼らが私たちの感覚でいうFBIも兼ねているからですよ。防諜専門の組織というのは日本にはありませんからね」

あまり知られていないが、合衆国連邦捜査局の本業は凶悪犯を捕まえることではない。

彼らの本来の任務は国内にスパイ網を張り巡らせることだ。

「まあそれはいい。限界というなら仕方ない・・・・しばらくは動きを控えよう」

「はい」

「で、何か新しい知らせは入っているのか?」

「ロシアからニイガタに上陸したカルト連中はヤマナシに入りました」

「ヤマナシねぇ・・・そこから一気に攻めるという訳か?」

「らしいですね。今はどうやらカミクイシキ・ビレッジとかいうところに集まっているようです」

「馬鹿な連中だ。何のためにこっちが金を出してやったと思ってるんだ」

大使は忌々しそうに吐き捨てる。

「まあ所詮は狂信者の集まりですから。いくらかでもネルフが戦力を消耗すれば上出来でしょう」

書記官も肩をすくめる。

「だがな、奴らが武装したまま各地に分散して一斉に蜂起すれば、それだけで我々の目的は達成される・・・・それをあの馬鹿どもが!」

「行動の自由というのが条件でしたからね」

「仕方がないか・・・・まあそれはいい。その他には?」

「色々と入ってきています。まずは・・・・・・」






























「目標は第三新東京国際空港だ。ここを攻撃すれば日本政府へのダメージになると同時にネルフへの打撃にもなる。依頼主も納得するだろうさ」

某日某所。

そんな表現がピッタリな、陰湿きわまる地下室に彼らはいた。

「最終的には第三新東京市中心部にアレを仕掛ける」

リーダー格の男は部屋の片隅に置かれたオリーブドラブの金属箱に視線を向ける。

「成功すれば第三新東京市は壊滅し、少なくとも10年は再建もままならないだろう」

キリル文字を読める者ならば、金属箱の側面に書いてある言葉が判っただろう。

”ソヴィエト社会主義共和国連邦陸軍、カザフスタン共和国補給廠所有、戦術反応弾頭。取扱注意!”と。

中に入っているのは30キロトンの戦術反応弾であり、確かにこれ第三新東京市で炸裂すれば、ただでは済まないだろう。

しかし、彼らは見落としていることが一つあった。

50年代、60年代に日本で”流行った”極端な左翼思想を持つ人間達の子や孫である彼らには、都市部でのゲリラ活動についての基礎が親から叩き込まれていた。

そしてそれは日本警察にとってはお定まりのパターンだった。

警察は2000年を越えた今になっても彼らや、日本国内で彼らを支援する人間達から目を離さなかった。

実のところ、彼らは日本に潜入したときからマークされていたのだ。

それを今まで泳がせていたのはどこと接触をするか、それを見極めるためだった。

だが、警察はこれ以上は泳がせる必要もないと判断していた。




その証拠に地上へ続く階段、その上方から黒い筒状の物が投げ入れられた。

それが床に落ちる音で、中にいる人間全員がそちらを見た瞬間に筒は発火。

鼓膜が悲鳴を上げるほどの大音響と、瞳の許容範囲を超えた閃光。

それでいて爆風や爆砕された破片の嵐はない。

この手の音響閃光手榴弾で稼げるのは10秒から20秒。

それだけあれば十分だった。

食らった方は、自分たちが何をされたのか判っていたが、効果的な対処は不可能だった。

抵抗を止め、両手をあげたのは頭のいい人間だ。

彼らは両膝を撃ち抜かれるだけで済んだのだから。

真っ白な視界の中で、手探りで武器を取った人間にはもっと過酷な運命が待っていた。

頭部と胸部に必要以上の銃弾が送り込まれ、コンマ数秒前まで意志を持って動く人間だった物が、肉塊とタンパク質の固まりになってしまったのだから。











「まったく、運がいいよお前らは」

突入してきた男達、その隊長らしい男が被っていた目出帽を脱ぎ捨てながら言う。

警察ならば考えられもしない荒っぽい突入だが、彼らは立派な警察官だった。

「ここに反応弾を置いてなきゃ、グレネード放り込んで終わるところだ」

彼らは人命を尊重するのではなく、中に置かれていた旧ソ連製反応弾に影響が及ぶことをおそれて破砕型手榴弾を使わなかったのだ。

突入の様子から見て、彼の言葉が真実であろう事は疑いがない。

「赤軍の闘士が情けない格好だな、オイ」

両膝を撃たれて血を流し、床に這いつくばって見下される形になったリーダー格の男は、苦しげに呻きながらも隊長らしい男をにらみつける。

「権力の犬が!貴様らのような輩がこの国を腐敗させたのだ!地獄へ堕ちろ!!」

「そうか」

隊長はそれだけ言うと、腰のホルスターから拳銃を引き抜き、男の眉間に合わせる。

「犬が脅しをするのか!そんなものが効くと思うのか!」

引き絞られるトリガー。

はじき出される薬莢。

額にあく小さな穴。

後頭部から吹き出る脳漿と血液。

力無く床に崩れる肉塊。



「脅しじゃねぇよ」



隊長は低い声でそれだけ呟いた。

他の隊員達に取り押さえられている連中のなかで比較的元気な者が色めき立つ。

「貴様!人権を無視するのか!!・・・・我々にも人権があるんだぞ!!」

「人権か。インパクトからこっち、人の命は安くなってるんだ・・・・特にお前らみたいな連中はな」

不敵に笑いながら、隊長は文句を付けた男に近寄る。

「それにな、お前達はこの世に存在しない人間、いわば幽霊なんだ。幽霊に人権があると思うか?」

「わ、我々の支援者は日本全国にいるんだぞ!その支援者まで欺けると思うのか!?」

その迫力にたじろぎながらも男は重ねる。

「可哀相になぁ・・・お前らみたいなのと関わったおかげで彼らは内乱罪に問われて今頃全員しょっ引かれてる。良くて無期懲役、悪けりゃ死刑だな」

「ば、馬鹿な・・・・戦前の恐怖政治に戻すつもりか!?」

「そっちこそ馬鹿言っちゃいけない。日本という国がお前らを明確に”敵”と見なしただけだ。たとえ自国民であろうと、敵には容赦しない」

「・・・・・・・・・・・」

「禅問答やってる暇はないんだ・・・・そっちはどうだ?」

隊長は金属箱を調べていた部下   隊長以外は目出帽を脱いでいないので表情すら判らない   に尋ねる。

「情報通りですね。シリアルナンバーから見て、80年代後半に旧ソヴィエトが条約に基づいて解体したはずの弾頭です」

「ソヴィエトには解体する予算が付かなかったんで某アメリカに送られたヤツか」

「おそらくは。送られた200発の戦術反応弾、そのうちの1発でしょうね」

「ふん・・・・世は全てこともなし、か。よし、生き残ったヤツは連行しろ。秘匿度は特Aだ」

膝に応急手当を受けて、手錠をはめられて連行される彼らには死んだ方がましと思えるような運命が待っている。

彼らが好む言葉で言えば、これも革命に身を捧げた闘士の選んだ道、というヤツだろう。


















まずはファーストダウン。












NEXT
2000/09/09
ご意見・ご感想・ご質問・誤字情報・苦情(笑)などはこちらまで!

あ・と・が・き

Eパートに集約します

>なーばすぶれいくだうん(NERVOUS BREAKEDOWN)
   ノイローゼの発作、神経衰弱のために倒れること




 P−31さんの『It's a Beautiful World』第14話Bパ−ト、公開です。







 おっ、おっ、
 強いじゃーん
 やるじゃーん (^^)

 流石にセカンドインパクト&その後を乗り越えてきた警察〜
 今(2000年)のものとはモノが違うって奴だよね〜



 これならシンジが出るまでもなく
 それどころか戦自も出るまでもなく

 楽勝か?!



 いやいや・・・
 今回の相手はまだまだ甘い集団・・・


 本命の相手にはこちらも本命なのだ〜




 さあ、訪問者のみなさん。
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