TOP 】 / 【 めぞん 】 / [P−31]の部屋 / NEXT


・・・・・・・・・・・碇・・・・・・・・・・・補完計画、どうするのだ?」

「あんなモノは老人達の繰り言だ・・・・彼らがあくまでも計画を遂行しようとするなら、我々は最終的に彼らと対立せざるをえまい」

「・・・・・・・・・・それを聞いて安心したよ・・・・・・・・やはり父親だな、自分はともかく息子の未来までは奪えんか」

「冬月・・・・・・・・からかうなと言った筈だぞ・・・・・・・」

「ふふっ・・・・・・・・・・」

その時、ゲンドウの机の一部が紅く光る。

「・・・・・・・・・委員会がおよびだ・・・・・・」

「ふむ、忙しいことだ」

そして二人は、彼らが内心で侮蔑しきっている人間達と会話する為に指令公室を出た・・・・・・・・・・


















It’s a Beautiful World



World:2「コミュニケーション」
(B−part)













戦闘後の発令所は喧噪に包まれている。

人々は戦いに何も関与できなかった   実際、シンジだけが戦っていたようなものだ   悔しさからか、必要以上に忙しく振る舞っている。

ちなみに、シンジは戦闘終了後に義務づけられている精密検査を受けていてここにはいない。



「ミサト、ちょっといい?」リツコがミサトを呼び止める。

「なに?」あちこちに指示を飛ばしていたミサトが振り向く。

「シンジ君の事、ざっと調べたわ」

ミサトは、この喧噪の中でも周りにいる女性職員が、「シンジ君」という単語を聞き分け、耳をダンボにしているのがわかった。

「ここじゃ、マズいわね」

「じゃあ、私の部屋に行きましょう」リツコが促す。

女性職員多数は、それを聞いて露骨に悔しがった。











「はい、これ」リツコがコーヒーをミサトに差し出す。

「ありがと・・・・・ズズッ・・・・・で、なんかわかったの?」コーヒーをすするミサト。

「ミサト、あなたなら知ってるでしょ?野分ユウジの名前」

「野分ユウジ・・・・・・・・野分・・・・・・・・・・・・野分ぃ!?あの ”死神”野分!?」

ミサトはコーヒーカップを取り落としそうになる。

「そ、陸上自衛隊 野分一等陸佐のコトよ」

「・・・・でもなんで、そこで野分一佐が出てくるの?・・・・・・ズズッ」コーヒーを飲みながら尋ねるミサト。

「シンジ君の ”先生”、彼よ」

ブブゥー!!

ミサトが派手にコーヒーを吹き出す。

リツコはちょっと顔をしかめて、

「汚いわね」

「ちょっと!それホント!?」

「ええ、間違いないわ。その証拠にシンジ君を引き取ったと同時に予備役になってるわ」

「・・・・・・・・・それでここ最近はハデな噂を聞かないワケね・・・・・・・」

「でも、今日付けで現役復帰を志願して即座に受理されたみたいよ」

「死神が舞い戻った・・・・・・か・・・・・・」

「・・・・私はよく知らないんだけど・・・・彼、そんなに凄いの?」

「裏の世界で彼を知らないのはモグリね・・・・でもそれだけじゃないわ、部隊指揮・諜報活動・戦略立案・・・・もちろん一兵士としても、そのどれもが超一流よ」

「あなたよりも?」リツコがいたずらっぽく聞く。

「私の作戦指揮なんて、彼の足元にも及ばないでしょうね」

「・・・・・・!」

リツコは正直、驚いている。

ミサトがこうもきっぱり自分の負けを認めるなどほとんど無いからだ。それに、こと作戦   無論、人間同士が戦う場合の”作戦”だ   に関する彼女の有能さも知っているからだが。

「諜報活動なら、加持でもかなわないでしょうね」

「!!」リツコはさらに驚いた。

今はドイツにいる彼女達の友人でもあるその男は、世界でも指折りのエージェントだからだ。

リツコは少し考えると、

「でも、なぜそんな人がシンジ君の保護者をやってたのかしら?」リツコが首を傾げる。

ミサトはリツコに向き直ると

「それよ、解らないのは。陸自だって彼ほどの人材をそう簡単に手放すとは思えないわ。なんかわかんないの?そこんとこ」

「それが・・・そこのところだけはデータに最高度のプロテクトがかかってるの」

「アンタがデータを見れないって・・・・どーゆーコト?」

「おそらく、指令か副指令がプロテクトをかけたのね・・・でも、こんな手の込んだ事するのだからプロテクトはダミーで本物のデータは消去済みね。たぶん」

「・・・・なにかあるわね」

「ええ、それは間違いないでしょうけど・・・・今の私達ではどうすることもできないわ」

ミサトが唇を噛みしめる。


《葛城一尉、サードチルドレンの精密検査終了しました》


リツコの机に埋め込まれたスピーカーから声がした。

「リツコ、話はまた今度ね」

「そうね、また調べておくわ」

「お願い」













その頃、シンジは病院の通路で待ちくたびれていた。

『ここで待っていて下さい。間もなく葛城一尉が迎えに来ますから』という看護婦の言葉を聞いて待ったはいいのだが、それから45分が経過している。

「おっそいなあ、ミサトさん・・・・・・・また迷ってるのかな?」

すると、通路の向こうから

「ごっめーん、シンジ君。待ったぁ?」と、ノーテンキな声が聞こえた。

シンジは溜息をひとつつくと

「待ちましたよ、ここで寝ようかと思ってたところですよ」

ミサトは片手で拝むようにすると

「ゴミン!ここって作りが複雑なのよねぇ・・・・また迷っちゃったわ」

シンジ、大当たり。

「はあ・・・・いいですよ・・・・それよりも、これからどうするんですか?」

「んーとね・・・・シンジ君の住む所決めなきゃいけないんだけど・・・・その前に・・・・」

「その前に?」

「仲間に会っておいて欲しいの」

「仲間?僕みたいなのが他にもいるんですか?」

「ええ・・・・でも、実験中に事故っちゃってね、今この病院に入院してるのよ」

「そうだったんですか・・・・」

「ええ・・・・しかも!可愛い女の子よぉ!」ミサトは顔をニヤけさせながら言う。

「へーえ・・・・・」意外と冷めているシンジ。

「もう!リアクションぐらいしてよ・・・・まあいいわ、行きましょ。病室はこの奥よ」

ミサトがつかつかと歩き始めたのでシンジも慌ててついていく。

そして二人はひとつの病室の前に立つ。



「レイー、入るわよー」

ミサトは返事も聞かずに扉を開けると中に入った。

シンジもおずおずとミサトの後に続く。

中は病室特有の無機質な雰囲気で、有る物といえば、ベッドにサイドテーブルぐらいしかない。

そして、ベッドには包帯を巻いた少女が横たわっていた。

「レイ?寝てるの?・・・・って起きてるわね」

レイと呼ばれた少女は返事もしない。

「どう?具合の方は?」

「・・・・退院は二十日後の予定です・・・・」

レイはミサトの問いに淡々と答える。

「そう・・・・良かった・・・・あ、そーだ、紹介するわね。この子は碇シンジ君、サードチルドレン、初号機専属操縦者よ」

ミサトは手振りでシンジを示しながら言う。

「シンジ君、こっちは綾波レイ、ファーストチルドレン、零号機専属操縦者よ」

「碇シンジです。よろしく、綾波さん」

だが、レイの反応はなにもない。すると、ミサトが慌てて

「シンジ君、レイは人見知りが激しいのよ。それに怪我してるしね」

『・・・・・・違う・・・・・・・・これはそんなものじゃない・・・・・・・なにか異質なモノを感じる・・・・・』

シンジとて、伊達や酔狂で心理学の博士号をとった訳ではない。

しかし、そんな考えはおくびにも出さず

「そうなんですか、じゃあ怪我にさわったらいけませんし、おいとましましょうか?」

「そうね・・・・じゃあレイ、お大事にね」

「はい、葛城一尉」

最後までレイの淡々とした口調は変わらなかった。



















「碇シンジ君、君の住まいはこの先の第8ブロックだ」

総務部から来た男は決定事項だといわんばかりに横柄に言った。

シンジとミサトに渡されたペーパーには、シンジが集合住宅に一人で住むことが書かれていた。

「ちょっと!彼を一人で住まわせる気?」ミサトが口調を荒くして尋ねる。

『これじゃ、レイと同じじゃない・・・・』

「その予定だが?何か不都合でも?」

やはり横柄に言う男。

「シンジ君、それでいいの?」

「ええ、僕は何処でも同じですから」

シンジがミサトに微笑みながら答える。

『シンジ君の事、調べるなら・・・・一緒に暮らした方がいいか・・・・・それにシンジ君カワイイし』

多分に下心の入っているミサト。

「彼の住居は作戦部で検討・決定します。何か問題は?」

ミサトは声に感情を込めずに言い放つ。

男は見苦しいほどうろたえると

「な!何の権限があってそんな事を・・・・」

ミサトはみなまで言わせなかった。

「作戦部長としての権限よ。なんか文句ある?」

たかが総務部の平職員に文句が言えるハズもなかった。












「だーかーらー、シンジ君はウチで引き取る事にしたからー」

ミサトは相変わらずのお気楽な口調で電話を掛けている。

受話器の向こう側はリツコだ。

《ちょっと、ミサト・・・本気?》

「本気よぉ。・・・・大丈夫だってば、いくらアタシでも手ぇ出しゃしないわよ」

《・・・・本当に?》リツコが訝しげに問いただす。

「・・・・・・・・・・・・い、いやーねえ!当たり前でしょお?」

《なんなの、今の間は?》

「う・・・・・・・・・・じ、じゃあリツコ、そーゆーコトで!あとお願い!」

《ちょっとミサト!?まちなさ・・・》・・・ガチャン・・・

ミサトは強引にも一方的に電話を切ってしまった。

「はーあ・・・・うるさいったらありゃしない・・・・シンジ君、じゃあ帰りましょう」

「ミサトさん、いいんですか?」

「いいのよん。さ、二人の愛の巣へ帰りましょ!」

そう言うとミサトはシンジの手を握って歩き始めた。

「ミミミミミミサトさん!?」顔をトマトのようにしているシンジ。

「やーねぇ、冗談よ、ジョーダン」

そう言っているミサトの顔もシンジに負けないくらい紅いのは何故だろう?

その様子を監視モニターで見ていたリツコが地団駄を踏んで悔しがったのだが、それは別の話。













峠道をひた走るブルーのアルピーヌ。乗っているのはシンジとミサトだ。

助手席のシンジは両手一杯にコンビニのビニール袋を抱えている。

「ちょっち、買いすぎたかしら?」

ここに至る前にコンビニで買い物をしたのだ。

シンジはその時、ミサトが他のモノには目もくれずビールとつまみを買い込んだのを思いだし、ちょっとイヤな予感がしていた。

ちなみに、この後シンジの予感は大当たりする。

「ま、まあこんなものじゃないんですか?」シンジは少し顔をひきつらせながら答えた。

「そお?・・・そーよね!」

ミサトはハンドルをさばきながらウンウンと頷いている。

シンジの口からは溜息がこぼれたが、何かを思いだしたようにハッとすると

「ミサトさん」

「ん?何?」

「ミサトさんの家、パソコンありますか?」

「パソコン?アタシのお古ならあるけど・・・なんで?」

「いや、インターネットに繋げられるかな、と思って」

「うん、大丈夫よ。最近使ってないけど・・・・あ、勉強するの?」

「ええ、それもあるんですけど・・・・」

「・・・?まだなんかあるの?」

シンジはニコッと笑うと

「後で教えますよ」

この笑顔を見せられると赤面してしまうミサトであった。

















「さ、ここよ」

第三新東京市のはずれにあるマンション   コンフォート17というらしい   の一室に着いたシンジとミサト。

二人はドアの前にいる。

「はい、どうぞ」

ミサトがドアを開けてシンジを促す。

「おじゃまします」

それを聞いてミサトは口調をちょっとキツめにする。

「シンジ君、ここはア・ナ・タの家なのよ」

シンジは顔を赤らめ、おずおずと

「た・・・ただいま・・・」

「おかえりなさい!」







二人はコンビニの袋を抱えて室内に入る。

「チョーッチ、散らかってるけど、気にしないでねぇ」

シンジは、誰に言われずとも自分の予感が当たった事がわかった。

『こ・・・・これが・・・・”チョッチ”??』

部屋一面に散乱するビールの空き缶、ウイスキーの空き瓶・・・・床にはウォッカの空き瓶まで転がっている。

「あ、ごめーん、食べ物冷蔵庫に入れといてぇー」

ミサトのお気楽な声をうけてシンジは、冷蔵庫に近づく。

・・・・ガラッ・・・・『氷・・・・』

・・・・ガラッ・・・・『つまみ・・・・』

・・・・ガラッ・・・・『ビールばっかり・・・・・・・・』

シンジはミサトの実生活を垣間見て、心底から呆れていた。

そして、ふと傍らを見ると、ビールを入れた冷蔵庫とは別に、大型の冷蔵庫があるのに気付いた。

「ミサトさーん、こっちの冷蔵庫は?」

「ああ、そっちはいいのー。まだ寝てると思うからー」

「寝てる・・・・?・・・・ペットかなんかかな?・・・・でも冷たくなきゃいけない生き物ってなんだろ?」

シンジ、なかなか鋭い。










チーン!

電子レンジが高らかに自分の仕事が終わった事を告げる。

「「いただきます!」」二人が元気よく声を揃える。

「んぐっ・・・んぐっ・・・んぐっ・・・プッはー!!くぅー!!やっぱ人生この時の為に生きてるよーなモンよねぇ!」

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」

もはや、呆れることすら空しくなってきた感のあるシンジ。

「ん?食べないの?・・・・結構うまいわよ。インスタントだけど」

「インスタントって、あまり食べたこと無いんですよ」

「だめよぉー、好き嫌いしちゃあ!」

『好き嫌い以前の問題だと思うんだけど・・・・』さすがにその心中を口に出す勇気は無いようだ。

「それはともかく・・・・二人で暮らすに当たって決めなきゃいけないことがあるわね・・・・」

「?・・・・なんですか?」

「生活当番よ!」

















「「じゃーんけーん・・・・ぽん!」」

「ありゃ、・・・・・ミサトさんすいません・・・・」シンジがばつが悪そうに言う。

「・・・・・・・・・・・・・・・・・んがぁ!!ぬわんで勝てないのよおおおおお!!」

ミサトの悲鳴が部屋に響く。

確かに悲鳴のひとつも上げたくなるだろう。

対戦成績、28戦中、シンジが24勝、ミサト4勝・・・・・

今日のミサトは厄日か、天中殺か!?

ミサトは全ての精気を使い果たし、テーブルに突っ伏している。

「ミサトさーん・・・・食事だけは僕が作ってもいいですよー」

それを聞いてガバッと起きあがるミサト。

「ホント?」

「ええ・・・・ミサトさん、普段食事なんて作ってないでしょう・・・・」

「う・・・・なぜそれを・・・・」

これで解らなければただのトンチキだろう。

「栄養とか、カロリーとか考えてますか?最近、肌の荒れが気になりませんか?」シンジは痛いところをビシバシ突く。

「・・むう・・・・・・」流石のミサトもぐうの音も出ないようだ。

「と、言うわけで・・・・食事に関しては僕がやります。いいですね?」

「・・・・お願いします・・・・」

「じゃあ、そういうコトで」

「はあ・・・・まあ、いいわ・・・・お風呂に入って、今日一日の汚れを落としてきなさい。その間にパソコン準備しとくわ」














かぽーん・・・・・・・・・・

脱衣所で衣服を脱ぐシンジ、天井からはカラフルなミサトの下着がぶら下がっている。

「はあ・・・・ミサトさん、僕のこと男と思ってないのかな・・・・?」

それはないだろう。おそらくただ単にズボラなだけだ。

かららら・・・・・・・・・・・・

そして、浴室の扉を開けるとそこには・・・・・・・・・・・

「!?・・・・・・ペ、ペンギン!?・・・・なんで?・・・・・・・」

確かにそこには一匹のペンギンがいた。首(?)からタオルを掛けていて、ちょうど風呂から上がるところだったようだ。

「キュ?」

「ミサトさーん!このペンギンなんですかー?」シンジはリビングにいるミサトに問い掛けた。

「ああ、彼ぇ?新種の温泉ペンギンで名前はペンペン。もう一人の同居人よ」

「へーえ・・・・温泉ペンギンかあ・・・・よろしく、ペンペン」シンジはしゃがみ込み、ペンペンに挨拶する。

「キュッキュ!」ペンペンは一声鳴くと、そのままリビングへと歩いていく。おそらくあの冷蔵庫が彼の部屋なのだろう。

「くすっ」シンジは少し微笑むと風呂に入る。








ミサトはシンジに頼まれたパソコンを用意しながら考えていた。

『ちょっち、わざとらしくはしゃぎ過ぎたかしら・・・・見透かされてるのはコッチかもね・・・・』

ミサトがそんなことを考えている時、シンジもまた考えていた。

『葛城ミサトさん・・・・悪い人じゃない・・・・けど、隠し事も多そうだ・・・・』

碇シンジ博士の目はごまかせなかったようだ。

「まあ、いいや。なんとかなるだろう・・・・」

そう言うと、シンジは浴槽から立ち上がる。








「あ、シンジ君上がったのね。パソコンはシンジ君の部屋にセッティングしといたから」

「ありがとうございます。じゃ、早速」

そう言うと、シンジはタオルで髪を拭きながら自分の部屋に入る。

「さて、勉強じゃないもう一つのやつ、教えてもらおうかしら?」ミサトはニヤけながらシンジの部屋に入る。

「大したことじゃないですよ」シンジはパソコンを立ち上げながらそう答える。

「あら、使い方解る?」

「ええ、大抵のやつなら解りますよ」シンジは事も無げにかえす。

『流石、”死神”の一番弟子、といったところかしら?』ミサトは声に出さずに呟く。

「えーと、メールのチェックと・・・・」シンジはマウスを操作して、メールソフトを起動する。

「メール?」

「友達ですよ・・・・顔をあわせたことはありませんけどね」

「メールフレンドってわけ?」

「まあ、そうですね・・・・あ、来てる」シンジはディスプレイを食い入るように見つめる。

ミサトも横から眺めている。





===============================================


Dear Shinji

     元気してる?引っ越しは終わった?

     こっちは忙しくててんてこ舞いよ!

     なんで忙しいかはヒ・ミ・ツ!

     あ、そうそう。

     近い内に日本へ行くことになるかもしれないわ。

     その時はいろんな所案内してね!

     そういえば、顔をあわせるのは初めてよね。

     アタシに釣り合ういい男じゃないと許さないからね!

     それじゃ、会えるのを楽しみにしてるわ。

     bye!

                            A

===============================================






「へーえ・・・・女の子なんだ。・・・・でも、ハンドルのA(エイ)ってなんのこと?」

「僕も聞いたんですけど、『これはA(エイ)じゃないの、A(エース)なの』っていうんですよ」

「エース?・・・・なんか意味でもあるのかしら?」

「自分の名前でもあるらしいんですけど・・・・まあ、いいですよ。もうすぐ会えるみたいですし」

「自分の写真とか、送らなかったの?」

「送ろうと思ったんですけど、『会った時の楽しみが減る!』って・・・・」シンジはちょっと苦笑して答える。

「ふーん・・・・純情ねえ・・・・そーかー・・・・シンジ君には心を決めた人がいたかあ!」

ミサトはチェシャ猫のように笑いながらシンジをからかう。

「ミ、ミサトさん!!・・・・そ、そんなわけないでしょ!」シンジはうろたえて顔を真っ赤にする。

「でも・・・・文章だけ見ると、キツそうな子ねえ」

シンジは表情を少し暗くすると

「・・・・・・・・・この子は頭が良いんですよ・・・・でも、頭が良過ぎて、周りから浮き上がってしまって・・・・幼少期にはひどい経験もしてますし・・・・」

「・・・・・・・・・・・・・・」

「僕が心理学を専攻したのは第一に彼女の為なんですよ」

「そうだったんだ・・・・・・・」ミサトはちょっとすまなそうにする。

「いや、いいんですよ・・・・少なくとも、僕には心を開いてくれるようになりましたし」シンジは微笑む。

「そっか・・・・それじゃあ、たぶん彼女はシンジ君しか見えないわよお!・・・・べた惚れってやつね!」

「ミサトさん!!・・・・そんなわけないじゃないですか!」やっぱり顔が真っ赤なシンジ。

「ふふふ・・・・ま、そーゆーコトにしときましょ!・・・・・・・んじゃ、アタシは明日も早いし寝るわ・・・・ゆっくりメールの返事でも書きなさい」

ミサトはそう言ってシンジの部屋を出ようとするが、襖のところで振り向くと

「彼女によろしくね!」

シンジは顔を真っ赤にしたまま

「ミサトさん!」

しかし、そう言った時には既にミサトは音速の逃げ足を駆使して立ち去った後だった。

「んもう・・・・・まあいいか、返事を書こう」





================================================

Dear A

      何とか無事に引っ越しが終わりました。

      心配してくれてありがとう。

      Aも忙しそうだけど、体だけは大事にしてね。

      日本に来るの?

      楽しみだね。

      来るときはメールしてね。

      迎えに行くよ。

      それから・・・・

      僕はAに釣り合うような男じゃないと思うよ。

      あんまり期待しないでね。

      それでは、早く会えることを祈って。

                              Sinji

================================================





「できた。送信しちゃおう」

マウスを何回かクリックすると、送信完了の文字が出る。

「よし、OK」

シンジはそう呟くとパソコンの電源を落とし、ベッドに潜り込む。

そして、ベッドから窓の外を眺めてみる。

そこには星の瞬く夜空が広がっていた。








「おやすみ・・・・」








NEXT
ver-1.00 1998+05/14公開
御意見・御感想・ご質問・誤字情報などはこちらまで!

あ・と・が・き

みなさんこんにちは。

P−31です。(ワンパターン化してきたな・・・・)

えー、第2話Bパートをお届けします。

ここでの「コミュニケーション」の意味、解っていただけたでしょうか?

ミサトとのコミュニケーション。

あの方とのコミュニケーション(笑)。

オヤジさんとのコミュニケーションは・・・・・まだ考えてません(笑)。

ま、人にはいろんなカタチの繋がりがあるということで・・・・・・

すいません。ホントはそんな高尚なことこれっぽっちも考えてません!(本性がバレるぞ・・・)

それでは・・・・次回予告!!



エヴァの訓練、学校、同居と、新たな生活をそれなりに楽しむシンジ。

さらにエヴァのパイロットであることかバレ、学校の人気者になる。

だが、その事実は一人の少年から冷たい視線を送らせる事になる。

次回、「隙間」

さーてこの次も、さーびすしちゃうわよん!





 P−31さんの『It's a Beautiful World』第2話Bパ−ト、公開です。




 シンジくん危うし?!


 ここのミサトさんはマジもんみたいな感じが・・・する(^^;




 おねいさまの魅力に耐えられるのかなぁ


 大丈夫かな?


 ここのシンジはとてもしかっりしているし、
 なんとも言い雰囲気のメールフレンドもいるしね(^^)



 大丈夫でしょう・・たぶん




 さあ、訪問者の皆さん。
 貴方の感想をメールにしましょう!



TOP 】 / 【 めぞん 】 / [P−31]の部屋