シンジは夢を見ていた・・・
幼い頃、父親に捨てられた時の夢を・・・
世間一般では「悪夢」と呼ばれるモノだろう・・・
以前はよくうなされていた・・・
真夜中に飛び起きた事もしばしばあった・・・
いつからだろう?・・・
その夢を「悪夢」と認識しなくなったのは・・・
最初は、
『父さんはなにか事情があって一緒に住めなくなっただけなんだ』
という希望的観測。
だが、しばらくすると
『父さんが何を考えていようと、僕は生きる。僕は僕の道を進む。』
と、考えるようになった。
その時、シンジは7歳だった・・・
山梨県・甲府市
セカンドインパクトの影響がごく軽微で収まった土地。
そして、新しい首都の第二新東京市にも将来の首都である第三新東京市にも近いこの地に
は、第二新東京市に入ることを嫌った民間企業や中央官庁以外の公官庁が集まっていた。
その、人が集まりつつある甲府市の郊外に彼はいた。
国道からも離れた山の中、他の人家からも5キロは離れているその家の庭から大きな声が
聞こえてくる・・・
「シンジ!前ばかり見るな!」
裂帛の気合いと共に叱咤するのは四十すぎと思われる壮年男性だ。
「前を見るときは後ろも見ろ、右も見ろ、左も見ろ、全てに気を配れ!」
どうやら、目の前にいる少年に稽古を与えているようだ。
「はい!先生!」
シンジと呼ばれた少年は優しげな風貌に似合わぬ気合いのこもった返事を返すと「先生」
に飛びかかっていく。
それからの2人の動きは、格闘家でも完全にはとらえられなかっただろう。
それほど、2人の動きは洗練され無駄が無かった。
ドガッ
やがて、「先生」がシンジの蹴りを受けて吹き飛ばされた。
「先生!だいじょうぶですか?」自分が蹴り飛ばして大丈夫もへったくれもないが、
《稽古の間は本気でやらないと夕飯抜き》というペナルティがあるからだった。
これは、人を傷つけるのは嫌いというシンジの性格を考慮して「先生」が決めたものだった。
「あつつつ・・・俺もトシだな、こんな短時間でやられるとは」
「そんな・・・嘘言ったって駄目ですよ、手を抜いたんでしょう?」シンジが問いかける
「先生」はそれには笑みを返すだけで答えようとはしなかった。
「そろそろ夕飯にするか」彼がそう言う事は稽古の終了を意味している。
「はい、今夜は何が食べたいですか?」シンジが聞く、どうやら彼が作っているようだ。
「なんでもいい」彼は素っ気なく返す。
「もー、そういうのが一番困るんですよ」シンジはちょっと怒ったような顔をする。
「先生」は苦笑しながら、
「シンジ、早く買い物に行ってこい。スーパーが閉まるぞ」
「いっけない!」シンジはダッシュで家に駆け込んだ、買い物の準備だろう。
「先生」は純和風の作りが古めかしい家の縁側に腰を降ろした。彼が考えていたのは、
自分の老いに対する憐憫と、先ほどまで目の前にいた少年の天賦の才能。
『それに・・・』彼は更に考える。
『シンジの才能は格闘だけではない・・・』
シンジがこの家に来たのはシンジが3歳の時だった。
彼の父親は来なかった。
だが、電話で話はした。
「話すのも久しぶりだな、兄貴」彼は電話口にそう話しかけた。
「すまない・・・」電話の相手、六分儀・・・おっと今は碇か、碇ゲンドウはそう呟いた
「だー!何回言わせれば解る?今の状態はオヤジが種馬だったせい。俺達に責任は無いだろう?」
「すまない・・・だが、ありがとう」ゲンドウは少し救われたように答えた。
そう、俺と碇ゲンドウは母親の違う兄弟、異母兄弟だ。
あまり顔をあわせる機会は無かったが交流は続いていた。これも血のお陰だろうか?
「で、用向きはなんだい?そっちからの電話なんてえらく珍しいじゃないか」
「子供を預かってほしい」
「・・・・・・・・・・はあ?」不覚にも間抜けな声が出た。
「私の息子だ、名はシンジ、碇シンジだ」なんの抑揚も出さず淡々と話すゲンドウ。
「なぜ?・・・ユイさんも納得したのか?」彼の妻の名を出し思いとどまるよう仕向ける
「ユイは・・・もういない・・・」さすがにここだけはつらそうに話した。
「!」
「・・・・頼む・・・・」ゲンドウは絞り出すように声を出した。
「・・・いいのか?どんなにうまく育てても両親がいない事はトラウマになるぞ」
「今はこれしか方法が無い、いずれはこちらに迎えようと思う」
「俺の仕事も辞めろと?」
「すまん・・・」
「・・・・・・・・・・・・・・解った、引き受けよう」しばらく考え俺は答えた。
「ありがとう・・・」ゲンドウは淡々と、だが感謝も込めてそういった。
「いいさ、おれも第一線にでるにはトシをとりすぎたよ、それと兄貴」
「なんだ?」
「教育方針は俺にまかせてもらえるのかな?」
「好きにしてくれ・・・」
「了解、しかし難しい仕事だね。一個師団に喧嘩を売るほうがよっぽどラクだ」
「・・・・・・・・・・・・・」
「んで、いつこっちに来るんだ?」
「明日だ」
ドンガラガッシャン・・・・・・・派手にずっこけてしまった・・・・
これが・・・・・
謀略と暴力の世界で
《死神》と恐れられた
野分ユウジ一佐の
子育ての始まりだった。
to be continue
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はじめまして。P−31です。
入居第1作目にして連載を始めてしまいました(なんと無謀な!!)
本当はいきなり本編から入ろうと思っていたのですが、シンジの「強くなった理由」を
みなさんにも教えておかないと話しにならんな、と思い急遽外伝用のプロットを持ってき
ました。
そして、いきなりオリジナル・キャラを出してしまいました。
オリキャラに頼らなければ話の進まない私って・・・(ちょっと自己嫌悪)
でも、野分(のわき)ユウジさんはこの先しばらく出ません。(次回の冒頭でちょっとだ
け出ますが・・・)
この先はシンジ君一人でがんばってもらおうとおもいます。
・・・・・アスカはどうしたって?・・・・・
ごめんなさい、少し待って下さい。
出来るだけTV本編に沿っていきたいと考えております。(あくまで予定)
でも、TV本編最後までいくつもりはさらさらありません。
だって、私はLAS人間なんでーす!
・・・・・ま、それはいいや。
更新間隔は少し長くなると思いますが、がんばりますんでよろしくお願いします。