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見渡す限りの大地に天使が。

そこには権天使も在る。

そこには主天使も在る。

そこには力天使も在る。

そこには能天使も在る。

そこには座天使も在る。

そこには智天使もある。

そこには織天使も在る。

そして・・・神に弓ひく堕天使も・・・

全ての天使がそこに集結している。

(ここは・・・どこ?)

そこにはあるはずの無い体を動かし、『それ』は辺りを見回す。

その中央に光り輝く12枚の翼を持つ者がいる。

(あれは・・・僕?)

(そう・・・あれは僕、僕でない僕・・・僕が僕である前の僕。)

(これは夢?)

(そう・・・でも・・・夢じゃない。)

(忘れたい記憶・・・)

(でも忘れてはいけない記憶。)

(神を見限った瞬間・・・)

(光り輝ける者が堕ちる瞬間。)

(輝ける者?)

(そう輝ける明けの明星、神より生まれし最も古き天使。)

(最も古き天使・・・)

(そう・・・神に最も愛され、絶大なる力を持ち12の翼を持つ神の右腕。)

(神の寵愛を一身に受けていた・・・)

(神と共に世界を創り、神と共にヒトを愛でる。)

『それ』はゆっくりと光り輝く者に意識を向けた。

すると何かを言い争う声が『それ』の意識の中に入ってきた。

『神は・・・神は何故、神を愛する人を、人類を滅ぼそうとする?』

光り輝く者は目の前にいる、自分とうりふたつの姿をした天使に問い掛けた。

しかし6枚の翼を持つ目の前の天使は何も言わない。

『何故だ!』

今度はさっきよりも強く。

その気迫に驚いたのか、目の前の天使はビクッと肩を震わせた。

そして、親に叱られている子供のように弱々しく答える。

『私には・・・主のお考えになる事など窺い知れない。』

『そう・・・では僕の邪魔をしないでほしい。』

『それは・・・できないわ、これは主に命じられた命令ですから。』

いままで俯いた顔を上げ決意に満ちた眼差しで彼女は言う。

『例え敵になる貴方でも。』

『ʼn〃〆!』

(なんだ?うまく聞こえなかった。)

輝く者は目の前の彼女の名前を叫んだ。

だが『それ』には聞こえない。

戦いが始まる、天使対天使の悲しい戦いが。

神から生まれ、神に愛された者同士が。

地の天使が、風の天使が、水の天使が堕天使を蹴散らす。

火の天使は光り輝ける者といまだ対峙したまま動かない。

両軍入り乱れる中、二人の周りだけは刻が止まっているかのように。

無限の時とも思えるその場に亀裂が生じる。

それは一瞬の出来事。

それは誰の目にも留まらない二人だけの瞬間。

彼女の持つ剣(つるぎ)が彼の胸を貫く。

彼は動かなかった。

全てを諦めたように。

彼女を傷つけない為に。

彼女は苦しみながら彼を貫いた。

絶対者の命には逆らえないから。

涙を流しながら。

彼女の愛する者の名を叫びながら。

そして・・・

彼は堕ちた。

地獄の底に。

冥府よりもなお暗き所へ。

(これは夢幻・・・)

(これは過去、そして未来、いつ果てるともわからない永遠。)

(これは僕の業、魂に刻まれた業。)

そして『それ』の意識は徐々に薄まっていく。

眠りから目覚めるために。

今を生きるために。





「夢・・・か。」

シンジはベットからゆっくりと身を起こし洗面台へと向かう。

「何故あんな夢を見たのかな・・・」

鏡に映った自分を見る。

そこにはひどく疲れた顔をした少年がいる。

「彼女に逢えたら謝らなくちゃね。」

「でもたぶん昔の事は憶えてないかな。」

シンジが鏡の前で感慨にふけっていると何時の間にか鏡の中にこの家のもう一人の

同居人の姿が映っている。

「あらシンちゃん、朝からなに難しい顔してんの。」

「そんな事だから『老けてる』ってみんなから言われるのよ。」

朝から機嫌のいいミサトがシンジに軽い冗談をとばす。

「ミサトさんより『大人』って言ってくれませんか?」

こちらも負けじと冗談で返す。

ミサトの額に青筋が浮かぶ。

「シンちゃん言ってくれるわね、まぁいいわ食事お願いね。」

(冷静にいくのよミサト、私は『大人』なんだから。)

「はいはい。」

リビングで朝食を作ったシンジがパンを食べていると、

ビールを片手にミサトが話し掛けてきた。

ペンペンは大人しくシンジの用意した食事を取っている。

「ねぇシンちゃん、今日ネルフに呼ばれてるわよね。」

「ええ、そうですけど?」

「何でか知ってる?」

「さあ?父さんからは何も聞いてないけど。」

「そう・・・シンちゃんでも知らないか。」

「なんでですか?」

「ん?今日全員集まる理由が解んないのよ。」

「確かに主要メンバー全員が集まりますね。」

「何があるのかしら。」

「行けば解るんじゃないんでですか。」

そう言ってシンジは食べかけのパンを飲み込んだ。

「ところで出勤前にビールなんか飲んでていいんですか?」

怪訝な顔でミサトを見る。

「私がこのくらいで酔っ払うと思うわけ?」

「思いませんけど・・・」

(ミサトさん量に関わらず酔えるじゃないか・・・)

「クェッ」

「ほら、ペンペンもこう言ってるし、所でシンちゃん準備はいいの?」

「はい・・・え?もしかして僕も一緒に行くんですか?」

「何言ってんの、当ったり前じゃない。」

ニコニコ顔でミサトが答える。

しかしシンジの顔は半ば蒼ざめていた。

それもそのはず、以前ミサトの車に乗せてもらった時はあのシンジも死に掛けた。

それほどミサトの運転は殺人的なのである。

「電車で行こうと思ってたのに・・・」

「なんか文句あんの?」

「ありません・・・(とほほ・・・)」

ニコニコ顔のミサトに顔をしなだれてシンジが答える。

「じゃっ行くわよん♪」




−ネルフ−

ここはネルフの会議室。

奥の中央にはいつものポーズを取っているゲンドウ、その隣には冬月がいる。

すでにレイやリツコ、オペレーター三人組みも集まっている。

「お、遅れてすみません。」

「遅いぞシンジ。」

蒼い顔をしたシンジが謝ると間髪入れずしてゲンドウがつっこんできた。

「ちょっち道が混んでたもんで。」

ミサトは言い訳をするが、事実は飲酒運転がばれて職務質問されていたからだ。

「まぁいい、今日ここに君たちを呼んだのは他でもない。」

「君達はネルフドイツ支部で弐号機を建造していたのは知っているな?」

いつもの如くゲンドウの後を冬月が引き継ぎ説明する。

それに全員がうなずく。

「ふむ・・・よろしい、その弐号機と共にセカンドチルドレンが来る。」

冬月が一同を見回し満足そうに肯くと続きを説明する。

「・・・でだ、その護衛には太平洋連合艦隊が付いてるのだが。」

「ふん、最新鋭の技術と骨董品・・・アンバランスだわ。」

リツコが冷淡に皮肉を放つ。

「まぁ・・・そうかもしれんが、そこでネルフからは葛城一尉に行ってもらいたい。」

「え?私がですか?」

「うむ、君ならセカンドチルドレンとも面識があるしな。」

「はぁ〜、どうしても行かなきゃいけないんですか?」

ミサトはくるっとリツコの方に向くと羨ましそうな視線をぶつけた。

「あらいいじゃない、逢いたい人にも逢えるかもよ。」

「うぐっ。」

ミサトの顔にはとても再開を望んでいそうな顔ではなかった。

「シンジ君、葛城さんの車に乗っただろ、顔が真っ青だぜ。」

「ええ・・・そうなんですよ、勘弁して欲しいですよ。」

「マヤ、今日の実験付き合って頂戴ね。」

「はい!先輩!」

「はぁ〜、今日も夜勤か、ここのメニュー食い飽きたなぁ・・・」

「・・・・・・・・・」

ミサトの言葉を皮切りにその場は談合の場とかした。

若干一名、喋らない者もいるが・・・

「それから・・・」

ゲンドウが突然口を挟んだ、その場に沈黙が走る。

「葛城一尉と一緒にシンジにも行ってもらう。」

「僕も・・・ですか?」

「ああ・・・それから残った君達にはJAの妨害工作に協力してもらう。」

「JA?」

「ふむ、平たく言えば俗に言うロボットと呼ばれる物だ。」

「なんで妨害工作なんてするんですか?」

マヤが分からないといった顔でゲンドウに尋ねる。

「我々には都合が悪い。」

「まぁ詳しい事は書類で皆に渡すよ。」

冬月はいつも冷静にフォローする。

「分かりました。」

「はい。」







−移動中のヘリの中−

「それにしてもネルフもやる事がえげつないわよね〜」

「ほんとですよ、わざと事故を起こらせて採用させないなんて。」

「まっ仕方ないわよね〜、ネルフも沢山の職員を抱えてるわけだし。」

「父さんと僕には色々と計画があるし・・・」

「なんか・・・私たち一生懸命正当化してない?」

「そうですね・・・ところでセカンドチルドレンってどんな子なんですか?」

「あら、気になるの〜?シンちゃん。」

「えっ、まぁそうですね、これから一緒に戦っていく訳だし。」

「ん〜、そうね、シンジ君とは別の意味でマセてるわね。」

「なんですかそれ?」

「無理して背伸びしてるって感じかな、シンジ君は老成。」

「・・・そうですか。」

シンジは視線を窓から見える外に向けるとそこには一面のブルーが広がっていた。

「シンジ君それぐらいですねないでよ〜。」

「・・・14歳で老成してるねって言われて嬉しがる人はいないと思いますよ。」

「ね〜機嫌直してってば。」

「一週間、洗濯と掃除してください・・・」

「わかったわよ、もぉっシンちゃんのイジワル・・・」

「あっ!見てくださいよミサトさん、軍艦が見えてきましたよ。」

窓から視線を外さなかったシンジがミサトに呼びかける。

「あと数分で着くわね。」

「ケンスケが見たらよろこぶだろうな〜。」

シンジは此処にはいない親友のことを思い出していた。





−オーバー・ザ・レインボウ−

フライトデッキに一人の少女がヘリを見上げて佇んでいる。

海の風にクリーム色のワンピースをたなびかせながら。

「あのヘリにサードチルドレンが乗っているのね。」




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ver.-1.00 1998+06/10公開
感想・質問・誤字情報などは sl@555.104.net まで!


楽屋裏

秀真:ふう〜、できたナリ。

SL:結局二話構成にしたわけだな?

秀真:前振りは大切ナリ。

SL:はいはい、そう言う事にしとこうな。

秀真:ただ今学校の授業中の作業時間を使って書いてるナリ。

SL:言うてはならん事を・・・

秀真:したがってあまり時間が無いのでコメントが短くなるナリ。

SL:その辺は我慢したってください。

秀真:あと次回はちょっと更新が遅くなるかもしれないナリ。

SL:何で?

秀真:課題が差し迫ってるからナリよ・・・

SL:あ、やっぱり?俺もなんだよな・・・

秀真:やっとシンジ君の過去がちらほらと出てきたナリね。

SL:そやな。でもさ、言い回しが回りくどいって言うか、何と言うか・・・

秀真:曖昧な表現は便利だね、日本の文化の極みだね。

SL:確かにな・・・っておい!時間がもうないぞ!早いとこ教室に戻らんと!

秀真:それではさようナリ〜。







 SL&秀真さんの『Seraphic feather』第八話Aパート、公開です。





 曖昧な表現は便利だね(^^)


 でも、作者以外には非常に分かりにくくて
 意味不明になりかねないことも。。。。


 当然ながら設定を全部知っている作者と、
 受け取って考えなくてはいけない読者。


 前提が違いすぎるもん・・・(^^;


 ”考える”まで行って貰うのも作者さんの力。だしね。


 なかなかそこに行くのは難しいよね、
 設定が凝っているほど。



 設定集が出ているので、まずはそこから。かな。




 さあ、訪問者の皆さん。
 あなたの感想をSL&秀真さんへ!




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