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「ダメ! よけて!!」

 正八面体の使徒からレーザーのようなものが打ち出される。

 それはビルを飴のように溶かして初号機に迫る。

(クッ、しょうがない『あれ』を使うか…)

 初号機はとっさに両手を前につきだした。

ΔΕΞΨζ!」

『初号機の前方の空間に正体不明の力場が発生!』

 初号機の作り出した空間では、なんと使徒の加粒子砲が動きを止めていた。

「今のうちに戻してください!」

『戻して! 早く!!』

 ジオフロントに戻される初号機。

 初号機が戻ると同時に空間が消え、今まで初号機の立っていた場所で爆発が起こる。

 同時に使徒の加粒子砲が止まった。

「目標! 沈黙!!」

「シンジ君は!?」

『大丈夫ですよ。ミサトさん。』

 大きくため息をつくミサト。

「シンジ君。今の防御はどうやったの?」

 リツコが問う。

『すいません、言えないんです。』

「何故言えないの?」

『いいかな?父さん。』

「お前の判断に任せる。」

『解ったよ。あれは手のひらの前方の空間に干渉して、あの空間の時間を止めたんです。』

「何故そんなことができるの…?」

 ミサトのみならず、皆驚きを隠せない。

(…まあいいか、いずれ解る事だし。)

 シンジの頭の中はこの力の事をどうやって説明するかでいっぱいだった。

「使徒、移動を開始。」

 そして、使徒はネルフ本部の直上で止まる。

 使徒の下部から一見ドリルのようなものが出てきて、穴を掘りながら進んでいく。

 初号機は収納され、作戦の立て直しとなった。




 まずは使徒の特徴を得るために、初号機の1/1バルーンダミーを接近させる。

 ダミーが銃をかまえた瞬間、使徒から加粒子砲が発される。

「ダミー、蒸発。」

「次。」

 トンネルから独12式自走臼砲が現れ、使徒を攻撃する。

 しかし、ATフィールドにあっさりと弾かれ、逆に加粒子砲が直撃する。

「12式自走臼砲、消滅。」

「…なるほどね。」

 ミサトは笑みを浮かべて言う。




「これまで採取したデータによりますと、目標は一定距離内の外敵を自動排除するものと推測されます。」

「エリア侵入と同時に加粒子砲で100%狙い撃ち。エヴァによる近接戦闘は危険すぎますね。」

「ATフィールドはどう?」

「健在です。相転移空間を肉眼で確認できるほど強力なものです。」

「生半可な攻撃では泣きを見るだけですね。こりゃ。」

 意外に楽天的な口調の日向。

「攻守ともにほぼパーペキ。まさに空中要塞ね。で? 問題のシールドは?」

「現在、我々の直上、第三新東京市0エリアに侵攻。

 直径17.5mの巨大なシールドがジオフロント内のネルフ本部に向かい、穿孔中です。」

「敵はここに直接攻撃を仕掛けるつもりですね。」

「しゃらくさい。で?到達予想時刻は?」

「明日午前0時6分54秒。

その時刻には、全ての装甲防御を貫通してジオフロントに到達するものと思われます。」

 ミサトはチラッと時計を見る。

「あと、10時間足らずか…」

『敵シールド、第1装甲板に接触。』

「初号機の状況は?」




 ケイジ

「シンジ君の不思議な能力のおかげで無傷よ。いつでも行けるわ。」



 作戦室

「了解。零号機は?」



 ケイジ

「再起動に問題はありませんが、まだフィードバックに誤差が残っています。」

「戦闘はまだ無理ね。」



 作戦室

「初号機のパイロットは?」

「プラグスーツのまま、パイロットの待機室で睡眠中です。」

「…そう。」



 待機室

「すぅ…すぅ…」



 作戦室

「状況は芳しくないわね。」

「白旗でも上げますか?」

「その前にチョッチ…やってみたいことがあるの。」



 司令室

「目標のレンジ外、超長距離からの直接射撃かね?」

「そうです。目標のATフィールドを中和せず、高エネルギー収束帯による一点突破しか方法はありません。」

「MAGIはなんと言ってる?」

「MAGIによる回答は、賛成2、条件付き賛成が1でした。」

「勝算は8.7%か。」

「最も高い数値です。」

「反対する理由はない。やりたまえ、葛城一尉。」

「はい。」

 力強い表情のミサト。

作戦部長の本領発揮である。



 エスカレーター

「しかしまた、無茶な作戦を立てたものね。葛城作戦部長さん。」

 少し呆れ顔でリツコが言う。

「無茶とは失礼ね。

 残り9時間以内で実現可能。おまけに最も確実な作戦よ。」

「…これがねぇ。」

 二人はエヴァ専用のポジトロンライフルの置いてある場所に来ていた。

「でも、うちのポジトロンライフルじゃ、そんな大出力に耐えられないわよ。どうするの?」

「決まってるじゃない。借りるのよ。」

「借りるって…まさか…。」

「そ、戦自研のプロトタイプ。」



 筑波、戦自研格納庫

「以上の理由により、この自走陽電子砲は特務機関ネルフが徴発いたします。」

「しかし…かと言ってそんな無茶な…」

「可能な限り原形を止めて返却できるよう努めますので。」

 渋る軍人たちを無視してさっさと話を進めていくミサト。

「では、ご協力感謝いたします。いいわよ〜。レイ。持っていって。」

 天井を剥してぬぅっと現れる零号機。

「精密機械だからそうっとね。」

「しかし、ATフィールドをも貫くエネルギー産出量は最低1億8千キロワット。

 それだけの電力をどこから集めて来るんです?」

「決まってるじゃない。日本中よ。」



 待機室

 着々と戦闘準備が進んでいる。

 作戦は「ヤシマ作戦」と命名され、二子山の山頂からポジトロンライフルで使徒を射撃することとなった。

 そんな中、シンジはいまだ爆睡していた。

 すると扉が開きレイが入ってきた。

扉の開く音で起きるシンジ。

 食事を乗せたコンテナを押している。

「…綾波…」

「明日午前0時より発動されるヤシマ作戦のスケジュールを伝えます。

 碇、綾波の両パイロットは本日17:30ケイジに集合。

 18:00エヴァンゲリオン初号機、及び零号機、起動。

 18:05出動。

 同30二子山仮説基地に到着。

 移行は別名あるまで待機。

 明日0:00作戦行動開始。」

「…どんな作戦なの?」

「二子山からエヴァによる超長距離からの直接射撃。」

「ATフィールドを中和せずに?」

「そうよ。」

「ふぅん…さすがミサトさんだね。ラミエル相手にはもっとも確実な戦術だね。」

 シンジは口の端を少し上げて薄く笑った。

「食事。」

 そんな事に興味を持たないかのように、レイは食事の乗ったトレイをシンジに差し出す。

「ああ、ありがと。」

「60分後に出発よ。」

「わかってるよ。」

「そう。」

 レイはトレイとコンテナを置いて出て行く。

「じゃ、さよなら。」

「…さよなら、か…」



 学校、屋上

「えらい遅いなぁ。もう避難せんならん時間やで。」

「パパのデータちょろまかして見たんだ。この時間に間違いないよ。」

「せやけど出てこ〜へんなぁ。」

 その時、山の方から鳥の鳴き声が聞こえてきた。

 同時に、山が扉のように開く。

「山が…割れよった。」

「エヴァンゲリオンだ!!」

 喜々として立ち上がるケンスケ。

 初号機が射出口から現れ、次いで零号機も現れる。

「綾波も一緒やないか。」

 歩き始める二体のエヴァ。

「がんばれよぉ〜っ。」

「頼んだぞー!」

 口々に声援を送るトウジたち。



 二子山、仮設基地

 シンジは置かれたポジトロンライフルを見ながらリツコに問う。

「こんな野戦向きじゃない武器。役に立つんですか?」

「仕方ないわよ。間に合わせなんだから。」

「…………」

「理論上は問題ないけど、銃身や加速器が持つかどうかはわからないわ。

 こんな大出力で発射したこと、一度もないもの。」

「本作戦における各担当を伝達します。シンジ君。あなたは砲手を担当して。」

「…………」

「…返事は?」

「僕は防御を担当します。」

「シンジ君!?」

「あの盾は防御用でしょ?」

 シンジは置かれている盾を見てリツコに聞く。

「ええ。そうよ。あの砲撃にも17秒は耐えるわ。」

「それも理論上は、でしょ?

 万が一、盾がもたなかった場合には、

盾無しでも奴の攻撃を少しでも防げる僕が防御を担当した方がいいんじゃないですか?」

「でも、今回はより精度の高いオペレーションが必要なのよ。

 シンクロ率の高い、シンジ君が砲手を担当した方が命中率は高いわ。」

「女の子を守のは男の仕事ですよ、ミサトさん。

 大丈夫ですよ。綾波なら必ず命中させてくれますよ。」

「…わかったわ。」

 シンジの言葉にミサトが同意する。

「葛城一尉!?」

「シンジ君は盾で防御を担当。レイは砲手を担当して。」

「「はい。」」

「じゃ、二人とも準備して。」

「「はい。」」



 エヴァ、搭乗タラップ

「明かりが消えていく…」

 自分たちの周りの必要最低限な光を除き、全て消え去った。

「綾波。」

「なに?」

「なぜ、綾波はこれに乗るの?」

「絆だから。」

「絆?…父さんとの?」

「みんなとの。私には他に何もないもの…」

「なにもない?」

「もし、エヴァのパイロットをやめてしまったら、わたしにはなにも残らないから。

 それは死んでいるのと同じだわ…」

「…そう…」

「時間よ。行きましょ。」

「うん。」

 レイはシンジを見向きもせず、零号機に乗ろうとする。

「綾波!」

 レイは黙ってシンジを見る。

「必ず守るから。」

「…そう。じゃ、さよなら。」



 0:00:00

「時間です。」

「レイ。日本中のエネルギー、あなたに預けるわ。」

『はい。』

「ヤシマ作戦、スタート!」

「第一次接続開始。」

「第一から第803区まで送電開始。」

「電圧上昇、圧力限界へ。」

「全冷却システム、出力最大。」

「陽電子流入、順調なり。」

「第二次接続。」

「加速器、運転開始。」

「第三次接続、完了。」

「全電力、ポジトロンライフルへ。」

「最終安全装置、解除。」

「撃鉄、起こせ。」

 ライフルの安全装置が『安』の文字から『火』に変わる。

 レイの顔に照準を合わせるためのモニターが降りる。

「地球時点誤差修正、プラス0.0009」

「電圧、発射点へ上昇中。あと10秒。」

 カウントダウン開始。

 カウントが6秒にさしかかったとき、マヤから焦りの混じった報告がもたらされる。

「目標に高エネルギー反応!!」

「なんですって!」

「発射!」

 レイがスイッチを押す。

 ライフルから陽電子が発射される。

 同時に使徒も加粒子砲を発射。

 すれ違いざまに干渉しあうエネルギー。

 二つは螺旋を描き、双方見当違いの方向に着弾する。

 移動指揮車には爆発の衝撃が襲い、ガラスが割れ、リツコが転ぶ。

 やがて、それがおさまるとミサトはガバッと起きあがり、

「ミスった!!」

と、叫んだ。

「敵シールド!ジオフロントに侵入!!」

「第二射!急いで!!」

 急いで撃鉄を起こす零号機。

「ヒューズ交換、再充填開始。」

「目標に高エネルギー反応!」

「まずい!」

 その瞬間、使徒から再び加粒子砲が発射される。

「レイ!」

 誰もが零号機に直撃したと思った。

 しかし、初号機が盾を持って零号機を守っている。

「碇君!」

「盾がもたない!」

「まだなの!?」

「あと十秒!」

 盾と一緒に初号機が溶けていく。

 そして、ついに盾が完全に融解する。

「クッ…ΔΕΞΨζ!!」

 初号機の手の前方に停止空間が発生する。

 しかし、完全な防御とはいえ、限定空間から漏れる加粒子砲は防ぎようが無い。

 人々にとって、とてつもなく長い時間に感じられた10秒がようやく経ち、照準がそろう。

 レイは迷わずスイッチを押す。

 陽電子は再び発射され、それは正確に使徒のコアを貫いた。

 炎上する使徒。

「よっしゃぁ!!」

 そして、ネルフ直上でシールドも停止する。

(お願い…生きていて!)

 動かなくなった初号機の背中のハッチをこじ開ける。

 エントリープラグが半分飛び出し、LCLが排出される。

 レイは零号機から降り、加熱した初号機のエントリープラグをこじ開ける。

 まるで、ゲンドウが自分を助けるときにとった行動のように。

「っっっ!」

声にならない声でシンジに呼びかける。

 エントリープラグの中で頼りない笑顔を向けているシンジ。

「ずっと昔…前世でもこんな事があったね…。」

「…そうでしたね。」

 シンジは大きくため息をつく。

「やっと思い出したかい?」

「…はい。」

「勝ったね。」

「…はい……」

「敬語を使う必要はないよ。今は君と同じ人の身であり、同じチルドレンなんだから。」

「は…うん、わかったわ。」

「で、どうしたんだい?」

「こういう時、どんな顔したらいいのかわからないの。」

「…………」

 シンジは起きあがってレイの頭をポンポンと叩く。

「確かにかつての同胞…いや兄弟をその手にかけたんだ、気持ちは分かるよ。

でも、彼らにとっては唯一“死”のみが救いなんだ…悲しいけどね。

彼らの苦しみを思うなら今は笑って送ってやるべきだと思うよ。」

 レイはハッとなる。

 前世でのシンジの笑顔がフラッシュバックする。

 そして…レイの顔に、笑顔が浮かんだ。

「…行こう。」

「歩ける?」

「大丈夫。」

 二人は肩を並べて歩く。

「…どうして、君はあんなに焦って助けようとしてくれたんだい?」

「…思い出したから……前世からの想いを…」

「???」

「それに…あなたの『必ず守るから』って言葉が、うれしかった。」

「……そっか。」

「それより、僕たちの力については少しずつ明かしていこう。そうじゃないとこの身体ももたないからね…」

「わかったわ、シンちゃん。」

「シンちゃんって?」

「シンジだからシンちゃん。何かおかしい?」

屈託のない笑顔で答えるレイ。

(やれやれ、性格は180°変わっちゃったな・・・まあいいけどね。)

 遠くからたくさんの懐中電灯が近づいてくる。

 どうやらミサトたちが救出に来てくれたようだ。




NEXT
ver.-1.00 1998+06/01公開
感想・質問・誤字情報などは sl@555.104.net まで!


楽屋裏

SL:やっと終わった・・・

秀真:前回の問いでわかった人いるナリか?

秀真:(昨日Aパートをアップしているはずなので現時点ではわからない)

SL:解ってんなら聞くなよ・・・

秀真:いや、今回の話で結構わかっちゃうと思ったからナリよ・・・

SL:そうかも知れんな・・・

秀真:おいらのクレームがつく前なんかモロに名前出てたナリ。

SL:別にええやないか・・・

秀真:だめナリ、まだまだ読者の方々には想像してもらうナリ。

秀真:あのお方も登場してないのにバレたら自動的にあのお方の

秀真:素性もわかってしまうナリ!

SL:あのお方ねぇ・・・別にええやんか・・・

秀真:いやナリいやナリいやナリ!(駄々子)

SL:子供かおまえは・・・

秀真:けっ!やってられっか、ナリ。

SL:おまえなぁ・・・やる気、ある?

秀真:ある、そんな訳でJAどうするナリか?

SL:農協の話は任せる。

秀真:の、農協って・・・おいらはその次の話が書きたいナリ、いや書くナリ!

SL:書いたらええやん。

秀真:じゃあ、農協どうするナリ?

SL:今回の俺みたいに二話分を一話に圧縮したら?

秀真:え〜・・・やだ。

SL:わがまま言うな!

秀真:だって、前編、後編にならないナリよ。

SL:其の一其の二にしたら?

秀真:邪道ナリ・・・・・・

SL:なら、こうしてああしてここをこうすれば・・・

秀真:なるほど・・・ふむふむ・・・そうすれば何とかなるナリね。

SL:だろ?ご都合主義全開だけどな・・・

秀真:アスカ人はきっと了承してくれるナリよ。

SL:さて、プランが決まったという事で・・・さっさと書けぃ!

秀真:おいらの拳が光って唸る〜ナリね!

SL:お前を倒せと・・・ってちがうわぁ!!!

秀真:おいらはヤルナリよ・・・ニヤリ

SL:ぢゃあさっさと書いてこ〜い!!ドガッ←蹴った音

SL:お〜、飛んどる♪飛んどる♪

秀真:ひっひっひっ・・・(別世界へ逃避中)

SL:でわみなさんさよおなら〜

謎の声:さようナリ〜







 SL&秀真さんの『Seraphic feather』第七話Bパート、公開です。





 6月一発目の公開♪

 あ。

 5月一発目も、
 SL&秀真さんだ。

 タイミングだね(^^)



 その5月の公開作数は58。

  前年同月比50%。

 うん、そんなもんですね。



 この位のペースだと、
 余裕を持ってやっていけて・・・助かるなぁ(^^;






 強力バージョンシンジの力で、
 比較的楽に使徒を撃破です(^^)


 それなりに苦労はありましたが、
 大きなおまけを得られたし−−


 助かるね♪




 さあ、訪問者の皆さん。
 交互なSL&秀真さんに感想メールを送りましょう!




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