その時、部屋の外に人の気配を感じて傍らにある俺の愛銃を手に取った。
仕事の依頼にしろ、用心に越した事は無い。
何しろ俺を狙っている所はCIA、ICPO、モサド、そしてゼーレ…まあいろいろある。
一時期、非合法職員として所属していた所から狙われていると言うのも皮肉な話だが…。
俺の愛銃、グロック22カスタマイズ…。
コイツで両手両足では数え切れないほどの命を奪ってきた…俺の信頼できる唯一の相棒だ。
カチャ…
ドアノブが回ると共にハンマーを起こし、ドアにポインティングする。
しかし、そこから現れたのは俺にとって意外な人達だった。
「…久しぶりやな、シンジ。」
「ここを見つけるには苦労したぜ…。」
「トウジ…ケンスケ…どうしてここが?
いや、それより用件は何だ?」
「別に命を取りに来た訳とちゃうから、とりあえずその銃降ろせや。」
その言葉を完全に信用したわけではないが、とりあえずポインティングをはずす。
「…で、用件は?
やはり俺を連れ戻しに来たのか?
それとも、依頼か?」
俺の情報では、トウジのケンスケもネルフに所属している。
「…両方だよ。
まだ帰ってくる気は無いのか?
皆お前の帰りを待ってる。」
「今更帰れるかよ…俺は変わったよ…いや、変わらざるを得なかった。
あの戦いからずっと、俺は全身返り血で真っ赤だ…。
知ってるだろ? 俺はいろんな所から命を狙われてる。
俺と一緒にいる事で、皆を危険に晒す訳にはいかない。」
「まさかお前が『ナイト』とは思わんかったからな…。
ワシらが躍起になって探しとったのに、闇の世界で有名になっとった。
煙草、ええか?」
俺は無言で頷く。
「惣流なんて『馬鹿にしてェ〜〜!!』とか言って怒り狂ってたぞ。
もちろん、綾波も肉眼で確認できるほどの怒りのオーラを纏ってたけど。」
ケンスケがアスカの声を真似る。
…結構似てるな。
「それにしても、お前がワシらの前から消えて14年か…。」
「そうか…もう、そんなに経つのか…。」
「俺達も歳を食う訳だよな。」
………サードインパクトは起きた。
俺はまだ自分の事を『僕』と言っていた時の話だ。
トウジ…ケンスケ…アスカ…委員長…大人達…そして、綾波。
俺は皆がL.C.Lから還って来るのを見届け、そして皆の前から消えた。
俺の愛する人を守る為に…。
その時の俺は世界が復興し、平和になっていくのを感じて喜んでいたのは確かだ。
だが、一方でにじり寄ってくる危険も感じていたんだ…。
そう…EVAを無くした俺には、自分一人守る力も無かった。
まして、愛する人を守る事なんて無理だったんだ。
日本を出た後、力を得る為に傭兵部隊に入った。
除隊後、暗殺家業をして食いつなぎながらネルフに敵対する者を消すと言う生活をして今に至ると言う訳だ。
殆どの者は消し、残るは後一人。
そのおかげで、この世界で俺の名は半ば伝説になってしまった…。
ちなみに俺と同等に渡り合えるのは、二人しかいないらしい…。
そんな奴等に奴の側につかれたらと、思うとぞっとする。
今の俺は奴の情報を得る為に殺し、金の流れを洗い、奴につながると言われる女を抱いて…その繰り返しだ。
だんだんこの生活に嫌気がさしてきた…。
だが後一人、後一人なんだ…。
「…なあ、やっぱり戻る気は無いのか?」
「まだだ、まだ帰れない。」
「そうか、解った。
それやったらはっきり言うたるわ。
もうワシら…いや、違うな…あいつ等の為に戦わんでもええ。
この仕事さえ終わったらな。」
トウジが煙草をもみ消しながらこんな事を言った。
「!!……知ってたのか…。
それに、仕事…だって?」
「ああ、そうだ。
最初に言ったろ?『お前の説得と依頼の両方だ』って。」
ケンスケは意地の悪い笑みを浮かべながら言った。
コイツらは…。
「コイツやろ?
お前が探し取った奴は。」
トウジは奴の資料を俺に手渡す。
「…ああ、最後の一人だ。
コイツを消せば俺は帰れるんだ。」
「じゃあ、行こうぜ。」
「おう。」
「行くって何処へ?」
トウジとケンスケは意外そうに顔を見合わせている。
「あれ?
依頼内容言って無かったっけ?」
「コイツを消せばいいんだろ?」
俺のセリフに二人はもう一度顔を見合わせ、ため息をつく。
…何が言いたいんだ?
「あのな、シンジ。
依頼内容は、『ワシら二人と共に行動して、奴を消す事』なんや。
この世界で自分一人だけ名前が売れとると思とったらあかんで。」
「そうそう。
俺達にも不本意ながら二つ名はあるんだぜ?」
「???」
「解らんか?
ワシは『ルーク』ケンスケは『ビショップ』や。
聞いた事あるやろ?」
「!!!」
これには心底驚いた。
まさかあの『ルーク』と『ビショップ』がトウジとケンスケだったなんて…。
この世界で俺と同列に並べられるのはこの二人だけなのだから…。
「この仕事の報酬は?」
俺は笑みを浮かべながら尋ねる。
それに対して二人も笑みを浮かべて答える。
「「『お前を待ってる女』じゃ不満か?」」
「不満なんてある訳無いだろ…。
それじゃあ、行こうか?」
「よし、行こか。」
「最強の三人が組んだって事は、奴の死は決定だな。
それよりネルフと連絡取りたいんだけど、俺達のコードネームどうする?」
俺達三人は笑みを浮かべながら顔を見合わせる。
「そりゃあ、アレしか無いやろ。」
「そうだな。アレしかない。」
「それじゃ、全員一致で『三馬鹿トリオ』に決定だな。」
俺達にとって最初で最後のコードネーム。
そしてその名は闇の世界に永遠に刻まれた…。
でも、やっぱりこう言う雰囲気好きだからな…。
さて皆さん、ラブコメや痛い作品ばかりだと食傷り起こしますよ?
たまにはこんなのはいかがでしたでしょうか?
…短いですけど。
感想お待ちしております。