『時間です。』
『レイ。日本中のエネルギー、あなたに預けるわ。』
「はい。」
『ヤシマ作戦、スタート!』
『第一次接続開始。』
『第一から第803区まで送電開始。』
『電圧上昇、圧力限界へ。』
『全冷却システム、出力最大。』
『陽電子流入、順調なり。』
『第二次接続。』
『加速器、運転開始。』
『第三次接続、完了。』
『全電力、ポジトロンライフルへ。』
『最終安全装置、解除。』
『撃鉄、起こせ。』
ライフルの安全装置が『安』の文字から『火』に変わる。
私の顔に照準を合わせるためのモニターが降りてくる。
『地球時点誤差修正、プラス0.0009。』
『電圧、発射点へ上昇中。あと10秒。』
『目標に高エネルギー反応!!』
『なんですって!?』
「発射!」
私はスイッチを押した。
ライフルから陽電子が使徒に向かって伸びていく。
同時に使徒も加粒子砲を発射してきた。
すれ違いざまに干渉しあうエネルギー。
二つは螺旋を描き、双方見当違いの方向に着弾する。
おかげで当たらずに済んだ。
『敵シールド!ジオフロントに侵入!!』
『第二射!急いで!!』
急いで撃鉄を起こす。
『ヒューズ交換、再充填開始。』
『目標に高エネルギー反応!』
『まずい!』
その瞬間、使徒から再び加粒子砲が発射された。
『レイ!』
誰もが零号機に直撃したと思った。私でさえも…。
でも、初号機が盾を持って守ってくれていた。
盾と初号機が溶けていく。
私には初号機が加粒子砲の光に飲み込まれたように見えた。
「碇君!」
私は視界がホワイトアウトする中なぜかそう叫んでいた…。
『あの事件』の始まりは私たちが慕うあの御方が主の命に異を唱えた事から始まった。
事の運び方が全て『奴』の思惑どうりと言う事を知らずに…。
私達は光り輝く十二枚の翼を持つ天使とその直属の部下達…十四人の副官とその部下達、
およそ天軍の三分の一と対峙していた。
それに対し、四つの軍団と我ら四人の軍団長からなる残り三分の二はこれより主の命を遂行しようと
地上に降臨しようとしていた所だった…。
『待て!!汝らは本当にあの命令を遂行するつもりなのか!?』
あの御方はそう言って私達を止めようとした。
私達もやりたくはなかった!!!!
主とあの御方があれほど目をかけていた種族…ヒトを滅ぼすと言う事などは。
『神は…神は何故、神を愛する人を、人類を滅ぼそうとする?』
あの御方は目の前にいる、炎の天使に問うた。
しかし炎の天使は何も言わない。いや言えなかった…。
『何故だ!』
今度はさっきよりも強く。
その気迫に驚いたのか、炎の天使はビクッと肩を震わせた。
私はその時、生まれて初めてあの御方の怒っている姿を見た。
そして、弱々しく答える。
『私には…主のお考えになる事など窺い知れない。』
『そう…では僕の邪魔をしないでほしい。』
『それは…できないわ、これは主に命じられた命令ですから。』
いままで俯いた顔を上げ決意に満ちた眼差しで炎の天使である彼女は言った。
『例え貴方が敵となっても。』
『ʼn〃〆!』
あの御方は目の前の彼女の名前を叫んだような気がした。
だがもう聞こえない。
戦いが始まってしまった…天使対天使の哀しい戦いが。
主から生まれ、神に愛された者同士が。
地の天使である彼が、風の天使の彼が、そして水の天使である私が過去の同胞を蹴散らす。
炎の天使はあの御方といまだ対峙したまま動かない。
両軍入り乱れる中、二人の周りだけは刻が止まっているかのように。
私は視界の片隅で見た。見てしまった。
あの御方の『堕ちる』瞬間を…。
それは一瞬の出来事だった。
彼女の持つ剣(つるぎ)があの御方の胸を貫く。
あの御方は動かなかった。
全てを諦めたように。
…恐らくは彼女を傷つけない為に。
彼女はあの御方を貫いた。
主の命には逆らえないから。
泣きながら…
戦いは終わった。反乱を起こした天使は全て堕ちた…そう、全ての物が。
そしてこちらの被害は比較的小さいように見えたが、精神的な被害は決して小さくはなかった。
私と彼女は泣いていた…いつまでも泣いていた。
『どうして?どうしてこんな事になっちゃったの?』
『ねぇ、どうしてよぉ!!!!!!!』
答えられる筈もない事を彼らにぶつけていた。
…それから三ヶ月私達は抜け殻だった。
あの御方を失い、あの御方の愛したヒトでさえその殆どの命を奪ったからだった。
私達はあの御方との思い出で生きていた。
幼い頃助けてもらった事…怒られた事…そんな沢山の思い出だけで三ヶ月生きてきた。
そんなある日、彼らがあの情報を手に入れてきた。
『なんだい?まだ君たちはショックから立ち直ってないのかい?』
『何よ…そんなこと言う為に来たんなら帰ってよ…』
『いや、そういう訳にもいかない。せっかく俺達があの事件の真相を持ってきてやったんだからな。』
『え!?あの事件の真相って?』
『どういう事よ?それ?』
『あの事件』の真相…それはこのような内容だった。
あの命令を出したのは主ではなく『奴』だったと言う事。
そして、主は『奴』に幽閉されていると言う事。
私達がこれを知った時、『奴』はあの御方の地位にいた。
私達にとって証拠はそれで十分だったが、まずは主を助け出す事が先決だった。
『あの事件』から一年後、私達は主を助け出し『奴』を追いつめていた。
『もう逃げられんぞ…諦めろ。』
『そうだよ?あの御方を僕達の手にかけさせたんだ…君には死んでもらう。』
『よくも…やってくれたわね。』
『………………』
私は怒りのあまり声も出なかった。
しかし『奴』は焦りの表情一つ見せずこう言った。
『フッ……愚かな…何故あいつを葬った後貴様らを放っておいたと思っている?』
『……どういう事だ?』
『私を殺せるのはあいつだけだからだ。
だが、主は貴様らにある。
私は分が悪い戦いはしない性質なのでな…』
『奴』が足元から消えていく…不気味な笑い声を上げながら…。
私達は『奴』が完全に消えるまで呆然とそこに立ち尽くしていた…。
『奴』が消えた事、恐らくエデンに向かったであろう事を主に報告すべく私達は主の御座へと急いだ。
報告の後、主はこうおっしゃられた。
『堕ちた彼奴の事は私が何とかしよう』…と。
その後すぐに私達はエデンに向かった。
だけど私にとって任務などどうでも良かった。
主のおっしゃった言葉。
それを信じてエデンに向かう。それだけだった。
天使そのままの能力その他を持ってプライム・マテリアル・プレーンに降臨する事は出来ない。
かなり限定した力しか使えなくなってしまう。
以前のように『事を起こす』程度なら問題ないのだが、今回は違う。
その為には『転生』するしかなかった。
『任務が終わればまたあの御方に逢える』
私はその事だけを考えていた…。
視界が戻ってきた。
三秒間ほど気絶していたようだ。
でも、全てを思い出す事が出来た。
そして、碇君が『あの御方』であると言う事も解った。
まさかエデンにいらっしゃったなんて…。
でも、このままでは……。
とてつもなく長い時間に感じられた10秒がようやく経ち、照準がそろう。
私は迷わずスイッチを押す。
陽電子は再び発射され、それは正確に使徒のコアを貫いた。
炎上する使徒。
(お願い…生きていて!)
動かなくなった初号機の背中のハッチをこじ開ける。
エントリープラグが半分飛び出し、LCLが排出される。
レイは零号機から降り、加熱した初号機のエントリープラグをこじ開ける。
まるで、ゲンドウが自分を助けるときにとった行動のように。
「っっっ!」
声にならない声でシンジに呼びかける。
エントリープラグの中で頼りない笑顔を向けているシンジ。
「ずっと昔…前世でもこんな事があったね…。」
「…そうでしたね。」
シンジは大きくため息をつく。
「やっと思い出したかい?」
「…はい。」
「勝ったね。」
「…はい……」
「敬語を使う必要はないよ。今は君と同じ人の身であり、同じチルドレンなんだから。」
「は…うん、わかったわ。」
「で、どうしたんだい?」
「こういう時、どんな顔したらいいのかわからないの。」
「…………」
シンジは起きあがってレイの頭をポンポンと叩く。
「確かにかつての同胞…いや兄弟をその手にかけたんだ、気持ちは分かるよ。
でも、彼らにとっては唯一“死”のみが救いなんだ…悲しいけどね。
彼らの苦しみを思うなら今は笑って送ってやるべきだと思うよ。」
レイはハッとなる。
前世でのシンジの笑顔がフラッシュバックする。
そして…レイの顔に、笑顔が浮かんだ。
「…行こう。」
「歩ける?」
「大丈夫。」
二人は肩を並べて歩く。
「…どうして、君はあんなに焦って助けようとしてくれたんだい?」
「…思い出したから……前世からの想いを…」
「???」
「それに…あなたの『必ず守るから』って言葉が、うれしかった。」
「……そっか。」
「それより、僕たちの力については少しずつ明かしていこう。そうじゃないとこの身体ももたないからね…」
「わかったわ、シンちゃん。」
「シンちゃんって?」
「シンジだからシンちゃん。何かおかしい?」
屈託のない笑顔で答えるレイ。
(前世からのライバルも転生してるんだから、これくらい…いいよね?)
遠くからたくさんの懐中電灯が近づいてくる。
どうやらミサトたちが救出に来てくれたようだ。
アスカ「ずいぶん前回から空いてるじゃない?」
レイ「どれどれ?…アラ、ホント。ん?これは…」
SL「…なんで君たちがいるの?ここは進入禁止だって言ったでしょ?それになんでアスカが?」
アスカ「…暇なのよね〜、秀真の奴が全然書かないから。」
SL「なるほど…。とりあえずあいつの部屋で待ち伏せするか、トラップでも張っといたら?はい、鍵。」
アスカ「ナ〜イス。気が利くわね。じゃ、行ってくるわ。」
SL「いってらっしゃ〜い……ふぅ…いくら暇だからって人の部屋に勝手に入らないで欲しいよなァ…。」
レイ「フムフム…ナルホドね…」
SL「レイちゃん、なに見てんの?ってこれわだめぇぇぇぇぇ!!!!」
レイ「ああっ!なんてことを…っていいや、もう見ちゃったから。」
SL「いいかい?ここで見た事はくれぐれも内密に…。(ケンスケから強奪してきたシンジのPi--な写真を渡す)」
レイ「(ポケットに入れながら)おっけ♪まかしといて♪」
SL「で、どお?これ?」
レイ「いいの?ほとんどばらしちゃってるじゃない。」
SL「ま、い〜んじゃないですか?なるようになるでしょ。」
レイ「い〜のかなぁ?でも、私が覚醒するのに加筆しただけとは…許せないわ!」
SL「へ?あああああああのレイちゃん?ATフィールドのナイフは止めようね?」
レイ「………御仕置きよ。」
SL「いやぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ………」