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葛城ミサトのとある一日

番外シリーズ・休日編




第3新東京市中央駅 噴水前

サングラスを頭に引っかけ、ノースリーブのシャツにスリットの入ったスカート。
シャツからは、豊かな胸がこぼれんばかり。
周りの男性の視線が、必然的に集まる。文句無しの美女。
そう、葛城ミサトである。
普段では考えられないような、ふやけた顔をしてして立っているが、それはそれで女性の魅力を 引き出している。
では、このミサトの頭の中身をのぞいてみよう。

リョウジとデート リョウジとデート キャッ!

そう、加持リョウジとデートなのである。頭の中では、すでに加持君はリョウジになっている。
しかも、最後の言葉は30前、あっ失礼、20代の言う言葉ではない。
しかし、その顔が突然険しくなる。
噴水の近くの時計を睨むミサト。その視線で、時計が時間を進めるのをためらってしまうほどだ。
そう、約束の時刻はとっくの前に過ぎている・・・・。

何やってんのよ! アイツは!!

その時、携帯電話の発信音が鳴った。
ハンドバックから電話を取りだし受信のボタンを押す。

「おっ。葛城か?」

そう、今日のデートのお相手からのお電話である。

「何が、葛城かよ!! アンタどこに居るのよ!!」
「すまん。すまん。ちょっと急に仕事が入ってな。」
「なっ。なによ! 今ごろ!!」
「はは、じゃあな。」
「ちょっ。」

プツン! ツー。ツー。

「加持!!」

切れた電話を片手に呆然となるミサト。だが、そこはネルフの作戦部長だ。
すぐに立ち直り、加持の携帯に電話を掛ける。
だが、そこから流れる音声は・・・・・。

「現在、電波の届かない場所にあるか、電源が入っていないのでお繋ぎできません。」

無常にも流れるアナウンス。その瞬間、周りを威圧するようなオーラを放つ葛城ミサト。
もしかしたら、そのオーラで使徒が倒せるかもしれない・・・・。
男性の視線を一身に浴びていた美女は周りの誰からも目を背けられる存在となる。

加持のばっきゃやろー!!

心の中でそう叫ぶ葛城ミサト。だが、そこはネルフの作戦部長だ。臨機応変な考えが勝敗を分ける。
かくして、作戦は変更された。やけ食い、やけ酒、やけ買いだ。

「フン!!」

鼻息を鳴らし、その場を去る葛城ミサト。そのミサトの背後のコンクリートによく見ると半円の穴が 開いている。
何か?
ミサトが付けたヒールの足跡だ。恐るべき葛城ミサト。今のミサトは使徒を踏み潰せるかもしれない。
ヒールの後を付けながら、歩くミサト。誰もが道を譲る。そう、あの手の商売の人もしかり。
こうして、道を譲られながらデパートに向かう。まるで、十戒の1シーンをみる様であった。




駅前デパート 婦人服売り場

初号機が使徒を食い漁るがごとく、バーゲンの洋服を漁るミサト。
その姿に、ミサトの周りにディラックの海ができている。

「あー。いいの無いわ。」

所詮はバーゲン品である。ミサトの満足させるような物はなかなか出てこない。
そう諦めかけて、別の場所に移ろうとしたその時!!

「アスカ。ちょっ、ちょっと恥ずかしいよ・・・・。」

そこに、聞きなれた弟の声が・・・・・。

「だめ。シンジに選んでもらうんだから!」

もちろん、かわいい妹の声もだ。
いかにも、バーゲン品漁っていますよという振りをしながら、聴覚に全神経を集中させる。
声のする方を横目で伺うと・・・・・。

下着売り場

そう、下着売り場の看板が。

あの色ガキ!! 本当ならアタシも加持と!! 〈-後者が本音か?

そう、嫉妬の嵐、いや失礼、怒りの嵐が心の中に吹き荒れる!!

「シンジ。これなんかどう?」

アスカの手にしたのは、赤いレースのブラジャー。

「えっ。」

シンちゃん、下着売り場に連れてこられて上の空。答えも、動作もぎこちない。

「もう。ちゃんと見てよ!!」
「ごめん。」
「さっ、これよ!」

そう言って、先ほどのブラジャーを胸にあてて、シンジを伺うアスカ。

「そんなのわかんないよ!!」

顔を真っ赤にしながら、そっぽの向くシンジ。
そんな、シンジに少しご立腹のアスカちゃん。
しかし、アスカはニンマリした顔をすると、シンジに耳打ちした。
瞬間湯沸器のごとく、シンジの頭から湯気が出る。
ア、アスカちゃん、一体シンジ君に何を言ったの?

その様子を影にで見ながら、暴走寸前の葛城ミサト。今にも、二人の前に出て行かんとす。
が、そこはネルフの作戦部長、作戦行動は臨機応変がモットーだ。
チシャ猫のような笑みを浮かべると新たなる作戦行動に出た。

今晩の酒の肴ね! これは!

そう、ストーカー、いやもとい、監視行動に出た。
ミサト、だからアンタは・・・・・。

しかし、その作戦を何度諦めかけたことか。理由は一つ。

「シンジ、この服似合う。」
「アスカには、何でも似合うよ。」

「シンジ、ハンバーグ食べたい!!」
「えー、昨日も食べたじゃないかぁ。」

「アスカ。ハイこれ。」
「シンジ。うれいし!!」

そう、二人に当てられるのである。
さらに、気付けと言わんばかりに飲み干されるエビチュ。
ミサトの行くところつぶされたエビチュの缶が!!
もう、ミサトは妙齢の美女ではなくただの酔っ払い・・・。
アルコールのオーラを纏いつつ、ストーカー、、 いやもとい、監視を続けるミサト。
エビチュすでに、6本目!!

シンジとアスカは、休憩を取るため喫茶店に入って行く。
ハンドバックから双眼鏡を取り出し、電柱の影からその様子を見るミサト。
アンタ、もしかしていつも双眼鏡持っているのか?
もう、警官でさえも見て見ぬふりをして注意しない。
注意されたところで、ネルフのIDカードで物も言わせないだろう。

さて、双眼鏡からミサトの目に映ったものは・・・・・。
大きな器に盛られたパフェを仲良く突付き合う二人の姿。
しかも、今にも額と額が引っ付きそうだ。
ミサト暴走寸前!!

が、その時、ミサトに近づく一つの影が!!

「碇君・・・・。」
「レイ!」

そう、綾波レイだ。レイは、胸の前で手を握り締め、涙が振り子のように揺れている。
ミサトは、レイの方を向き驚いた様子で尋ねる。

「レイ。ここで何してるの?」
「命令だから・・・・。」
「は?」

その答えに、しばし唖然とする。
しかし、そこはネルフの作戦部長。予想外のことにでも冷静に対処だ。

「もう一度聞くわ、レイ。ここで何してるの?」
「命令だから・・・・・。」
「誰の?」
「・・・・・・。」

レイはあくまでも無表情だ。でも、そこは東大卒の頭脳を持つ葛城ミサト。
MAGIのように審議開始だ!!

&%%(’(&(%&$”$。

審議完了!!その間、およそ5秒。

「シンジ君が気になるのね?」

ボッソと漏らすミサトの言葉にレイがピクリと反応した。

かかった!!

「ふ〜ん。そうなんだ。」

またもや、チシャ猫のような笑みを浮かべる葛城ミサト。
また、新たなる作戦を思い付いたようだ。

「でも、あの様子じゃね〜。」

ミサトは持っていた双眼鏡をレイに差し出す。
それを奪い取るレイ。
双眼鏡からレイの目に映ったものは・・・・。

お互いのパフェを食べさせ合っている、碇君と赤毛猿の ラブラブな姿。
レイの赤い瞳が、さらに赤くなる。

「このままじゃ。シンちゃん取られちゃうわよ〜。」

悪魔のようにレイにささやく葛城ミサト。
アンタ、だから・・・・・。

「関係ないわ・・・・。」

そう言いつつも、双眼鏡を持つレイの手が震えている。

「そっ、でもいまシンちゃんの前出ていったらデートできるかもよぉ〜。」
「そう・・。」
「そうよ。だって、シンちゃん誰にでもやさしいから。」

つづく、悪魔のささやき。その時のレイの頭の中は。

碇君とデート 碇君とデート うれしい。 あっ、私嬉しいのね。

レイ。妄想、もとい暴走寸前。
さらに、そのレイの戒めを解くがごとく放たれる言葉は・・・・・。

「レイ命令よ! シンちゃんとデートしてきなさい!!」
「碇君とデート。 そう、命令。 葛城三佐の命令・・・・。命令なのね・・・・。」

そう言って、双眼鏡を放り投げて喫茶店に向かうレイ。
オット!危ない危ない。
放り投げられた双眼鏡を慌てて受けるミサトの顔にはゲンドウ笑いが浮かんでいた。

受けた双眼鏡から喫茶店の様子を伺うミサト。
双眼鏡からミサトの目に映る光景は、阿鼻叫喚の地獄絵図・・・・。
アスカが暴走初号機の様に、レイに襲い掛かり、それをATフィールドで受けるレイ。
周りの客を巻き込み、破壊活動を続ける二人。
止めるべき碇シンジは・・・・・。

僕はここの居ちゃいけないんだ・・・・・。

そう、現実逃避、自閉症モードに突入していた。

ふふ、アタシをコケにするとこうなるのよ!!

ミサトさん、弟と妹に八つ当たりしてどうするの・・・・・。
それに、あの二人ミサトさんをコケにしたわけじゃ・・・・・・。
その様子を背に、ミサトは夜の帳に消えようとする。
そう、最後の目的、やけ食い、やけ酒を達成するために・・・・・。






深夜、葛城家玄関

そう、葛城家当主、葛城ミサトのご帰還である。
すでに、5軒のはしごをすまし、上機嫌で出来上がっている。
カードキーをスリットに挿し込み、暗証番号を打つ。

アリィ? おかしいわねぇ?

もう一度、カードキーを挿し込み、暗証番号を打つ。
結果は同じ、そう玄関のドアは開かない。

「シンちゃん、アスカ開けてー!!」

ドンドン、バキバキ!!

そう言って、ドアをたたき続けるミサト。
しかし、ご近所からは何の文句も言われない。
もう既に、いつものことらしい。

「シンちゃ〜ん。アスカ。開けてー!!」

しかし、答えは無い。
では、中をのぞいてみよう。

「アスカ。ハイ、あ〜ん。」

パク!! モグモグ!!

そう、いつもの光景。食べさせ合いだ。

「シンジのハンバーグ、おいし。」
「今日は出来が良かったからね。」
「そんな、謙遜しない。謙遜は日本人の悪徳よ!!」
「けど、もう一つ理由があるかな・・・・。」

すこし、アスカの視線から顔をそらし、頬を赤くするシンジ。そして・・・・。

「アスカへの愛情が篭もっているから・・・・。」

アスカちゃん、顔が真っ赤。

そう、つまり二人には聞こえていなかった・・・・・。
しかし、なぜ家主のキーで開かないか?続きがある。

「けど、ミサトさん遅いね。」

シンジが心配そうな顔をする。

「ほっときゃ、いいのよ!あんな、行かず後家!!」

アスカは、目尻を上げてご立腹の様子だ。

「でも・・・。」

やっぱり、シンちゃん。保護者の方を心配する。律義な性格だ。

「ふん。デートを邪魔したのよ!! 顔もみたくも無いわ!!」

そうである。戦いの後、レイの白状した言葉・・・・。

「命令。そう、葛城三佐の命令・・・・。」

作戦部長より部下の方が一枚上手か?!
情けないぞ! 葛城ミサト!!

「だからといって、番号変えなくても・・・・。」

シンジが申し分けなさそうに言う。
そうなのである。ドアの暗証番号がアスカの手によって変えられていた。

「ふん! いいのよ、加持さん所にでも行っているでしょ。」

ま、予定ならそうかもしれない。 だが、ミサトの愛しの加持は・・・・。

「だから、こっちもね? 下着似合うか見てもらいたいしぃ・・・。」

上目づかいでシンジに迫るアスカ。
シンちゃん撃沈。もう、ミサトのことなどディラックの海に沈み込める。
けど、こっちも何・・・。 下着っていったい・・・?





再び、葛城家玄関

「シンちゃん、アスカー。」

一通りの抵抗を諦める、ミサト。そこは、ネルフの作戦部長、どんなときにも臨機応変にだ。
携帯を取り出し、電話を掛ける。

プルルルル。プルルルル。カチャ。

「あっ、加持君?!」
「なんだ、葛城かぁ。」
「なんだってなによ。」

加持の返答は何か焦ってるように思えた。だが、気にしてはいられない。
なにせ、今晩の宿が懸かっている。

「ねぇ? 加持君。 今晩、そっちに泊めてくれない? サービスするしぃ。」

普段は聞けないような、甘える声。
けど、なにをサービスするの? ミサトさん?

「ワリィ。 まだ、仕事が残ってって。」

ミサトの希望を打ち砕く加持の宣言。さらに・・・。

「リョウジ。つづきぃ。 早くぅ。」
「ちょっと、おい止めろ。」

受話器の向こうから聞こえる、見知らぬ女の声とそれを遮る加持の声。

「ちょっ、ちょっと誰?! そこに居るのは!!」

電話に噛み付かんばかりにミサト。

「じゃっ、じゃあな葛城。 愛してるよ。」
「かっ、加持君!!」

プツン! ツーツー。

無情にも切られる電話・・・。

何が「愛してるよ」よ! あの浮気者!!

握り締められる左手に持った携帯電話。

バキ!!

耐久強度を超えて、破壊される電話の外装。
今のミサトなら、使徒も握り潰せるかもしれない。

しばらく呆然と玄関の前に立つ、葛城ミサト。
目から涙が振り子のように揺れ、心の中には木枯らしが吹く・・・・。


いと哀れなり。葛城ミサト。かわいい同居人に当てられ、男に浮気され・・・・。
30まで後xxx日。ミサトの幸せは誰が運んでくるのか・・・・?
がんばれ、葛城ミサト!!


ちなみに、シンジとアスカの登校時間まで、ミサトはドアの前で固まっていたそうだ。






幸せは何処なの・・・。
ver.-1.00 1998+07/16 公開
感想・質問・誤字情報などは こちら まで!



どうも、葛城ミサトのとある一日の番外シリーズです。
まあ、番外シリーズは区切りのhit記念ということで。

それと、掲示板の方にも書くと思いますが、作者7月中旬から一ヶ月ほど旅行です。
そのため、感想のお返しが出来ませんのでよろしくお願いします。
もちろん、更新も無いです。
あと、「感想書いたのに返事帰って来ていない」という人が
いらっしゃったらもう一度メールをください。
必ず、返事はしているので。

では、次回は「人として〜」 または、「葛城ミサト〜」にて。








 伊勢さんの『葛城ミサトのとある一日』番外シリーズ・休日編 、公開です。






 救い、救い、・・・

 あぁ、救いがない・・・・


 可哀想だ・・ミサトさぁぁん



 辛い、辛い、・・・

 あぁ、辛すぎる・・・・


 可哀想すぎる・・みさとさぁぁぁぁん




 大丈夫、お星様があなたを見ているよ。

 第三新東京市は山の中、
 星はきっといっぱいあるでしょう(^^;



 浮気者の加持、わるいっやちゃぁぁ
 シンジもアスカもはた迷惑ぅぅ

 そのうち罰当たるぞ(笑)



 さあ、訪問者の皆さん。
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