来ないで、綾波。
ただ、父さんに言われてEVAに乗っただけなんだ。
人類の存亡なんて関係なかった。
けど、EVAに乗ったら父さんは誉めてくれたんだ。
それに、みんなが必要としてくれたんだ。
でも、誰も「好き」と言ってくれなかった。
ううん、カヲル君は「好き」と言ってくれた。
僕が、何をしたんだようぅ・・・。
マナも「好き」と言ってくれた。
ミサトさんも僕の事を「好き」だったのかもしれない。
綾波は、僕の事を「守る」と言ってくれた。
アスカは、わからない。
僕の事を「好き」だったのかもしれない。
「憎んで」いたのは確かだ。
だけど・・・・・。
だけど・・・・・。
そう言われたけれど、「好き」と言ってくれた人を殺してまで生きてどんな意味があるのだろう。
マナは、結局あのパイロットを選んだ。
ミサトさんは、恐かった。強く優しいお姉さんだった。
けど、最後には何もしてくれなかった。
ミサトさんも、加持さん死んでつらかったのかもしれない。
僕の甘えかもしれない、逃げかもしれない。
僕も辛かったんだ。優しくしてほしかった。逃がしてほしかった。
綾波は、不思議な女の子だった。
「母さん」という感じがした。
セントラルドグマで、リツコさんに綾波の事を教えられた時は、ショックだった。
「母さん」のクローンだったなんて。
父さんは何を考えていたんだろう。綾波を「作って」。何をしようとしていたんだ。
綾波は使徒だった。たぶん。
使徒であり、「母さん」であり、僕と同じ年の女の子。
分けが判んなかった。ただただ、恐かった。
アスカ。
僕の同居人。
EVAにすべてを懸けていた女の子。
アスカの心は分からなかった。僕は、アスカの心に入ろうとしなかった。
けど、アスカは心の中を見せようとしないだろう。なぜかそんな気がする。
そう、僕と同じ。
EVAに価値を見て、他の人を必要以上に知ろうとしない。
でも、そんなアスカだからこそ、僕の事を判ってくれると思った。
甘えたかった。逃げたかった。
でも、アスカは僕を拒絶した。何も話してくれなかった。
アスカが恐くなった。だから、アスカにひどい事をした。
首を絞めて殺そうとした。おかずにして、頭の中で犯した。
僕が、アスカが思っている価値を奪い去った時、アスカは壊れてしまった。
そう、すべて僕が壊した。
だから・・・。
だから・・
ミサト。アタシは、あのがさつな女が嫌い。
ミサトは、加持さんの視線を手に入れている。
ミサトは、シンジばかりを誉める。
ミサトは、アタシを見てくれない。
ミサトは、『女』だった。汚い。汚れている。
だから嫌い。
加持さん。アタシは加持さんが好き? ううん、判んない。
加持さんはかっこいい。大人だった。唯一アタシを見てくれた。
けど、それはアタシを大人として見る目じゃなかった。
そう、子供として見守る目、妹を見るような目。
加持さんは、ミサトを見ていた。
加持さんの横にはシンジが居た。シンジにばかり期待する。
アタシを見てくれない。だから嫌い。
シンジ。アタシの同居人。
シンジには等身大のアタシを見せれた。
たいていの我が侭を聞いてくれた。
アタシは、シンジの事好きだったのかも知れない。
でも、シンジはアタシを見てくれなかった。
ファーストの事ばかり見ていた。
だから、アタシの初めてのキスをあげた。
だけど、シンジはアタシの方を振り向いてくれなかった。
いやな、キスだった。気持ち良くなかった。気持ち悪いだけだった。
シンジはアタシの裏返し。
それが判った時、認めたくなかった。
アタシが、「バカシンジ」と同じなんてアタシの人生を否定する。
そのくせ、アタシに近づいてくる。
アタシに助けを求める。
シンジは、アタシを傷つけるだけだった。
見たくもなかった。
アタシの価値を奪ったシンジが恐かった。
だから、シンジを傷つけた。壊したかった。
アタシを必要としてくれないなら、シンジなんて要らない。
でも、シンジがすべてアタシの物にならないのなら、
アタシはシンジの物にならない!!
みんなはアタシを観てくれない。
だって、アタシには何の価値も無いもの。
みんな、みんな大嫌い!!
けど、死ぬのも恐い。結局、唯の臆病者なのねアタシって。
もう、ママも居ないもの。