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CAUTION!!

1956年6月6日、全世界の黒魔術師たちは教義の違いを越えて謎の人物アレキサンダー・メルクリウスによって統合された。すなわち、<最後の審判>を魔王に有利な戦況に導くことを目的とした魔術的テロリスト組織S∵E∵E∵L∵E∵が誕生である。この秘儀組織は、以後13年間もの間、世界中の指導者達を恐慌に陥れたのだった。戦争、暴動、犯罪の多発、経済の混乱、狂気の増大といった魔王の糧を生産するため、S∵E∵E∵L∵E∵に忠誠を誓う黒魔術師達は、地上の闇という闇で暗躍をほしいままにしたのだ。
・・・だが、闇の集うところ、必ず光の照射がある。1969年6月23日、<国際宗教者平和協議会>の名のもとに結集した光の導師たちは、ついに対=S∵E∵E∵L∵E∵戦略のための、特殊戦闘部隊の設置を決議した。その名をN∴E∴R∴V∴という。
そして、以後N∴E∴R∴V∴とS∵E∵E∵L∵E∵の熾烈な戦いは30年以上続いたのだが、ついに2000年、アレキサンダー・メルクリウスの死をもって一応の終結を見た。
だがしかし・・・・・・









世界の王


第2話





グンッ。

アスカはアクセルをめいっぱい踏み込む。
急激なGがアスカの体をシートに押しつける。
助手席のシンジは何が起こったのかわからぬまま、急な加速に舌を噛みかける。

が、黒いベンツを引き離すことはできない。
それどころか、ベンツは徐々に間を詰めてくる。
ベンツは黄色く発光する窓ガラスを通してみると血のような不気味な赤い色に染まって見えた。

「あの色、やっぱりあの車には魔術師が乗ってるわ。それもかなり凶悪な奴。」
そうアスカは呟くと、左手を伸ばしてダッシュボードを開き中から一丁の銃を取り出す。
H&K MP5KA5サブマシンガン。MP5シリーズのうち対テロ用に銃身等を切りつめて小型化したタイプである。

もちろんだが、日本では銃の所持は基本的に禁じられている。
当然、助手席のシンジはサブマシンガンどころか、ピストルさえ直に見たことがなく、唖然としながらアスカの行動を眺めるしかできない。


その間にベンツは追いついてきて横に並びかけて幅よせをしようとしてきた。
そこでアスカは車を減速させ、ベンツの後ろに回り込んでそれをかわす。
そして窓から身を乗り出して反撃すべくMP5を構えようとするが、それよりも先にベンツの窓が開いて何かが放り出される。
危険を察知して車内に体を戻すアスカ。

ベシャ。

ジグザグ走行したものの、放り出されたそれをかわしきれずフロントガラスにぶつかって広がった。

「うわわっ。」

シンジの悲鳴はフロントガラスに張り付いた青白いそれが、アメーバのようにうごめきだしたためだ。

ぶつぶつと泡を立てるおぞましいアメーバ状のものによりふさがれた視界を取り戻すべく、ワイパーを動作させる。
ぬぎぃー、ぬぎぃー、ぬぎぃー。
気味の悪い音を立てながら、不気味な液状のものをぬぐい去る。
しかし、フロントガラスはアメーバにより溶かされており、有効な視界を得ることができない。
仕方なく銃のグリップの底でフロントガラスを割るしかなかった。

「つまんないまねをしてくれるわね。」

ようやく視界を取り戻してみると、ベンツは道を塞ぐような形で進路と横向きに停止している。
そしてその脇には長身で全身真っ黒な服装の男が立っている。
どうやら先ほどのアメーバは先行して道を塞ぐ時間を稼ぐためのものだったようである。

「N∴E∴R∴V∴ジャパン・ロッジ、4=7、哲人(フィロソファス)、惣流・アスカ・ラングレーだな。そのガキを渡してもらおうか。」
まだ20代半ばにしか見えない体格のその男の声はしゃがれた老人のようであった。

車から降りてアスカが対峙する。
「ご名答。そういうアンタはS∵E∵E∵L∵E∵の黒魔術師(ブラックアーティスト)ね。悪いけど、ご期待には添えそうにないけど。」
そして車の中でただ震えているシンジに声をかける。
「アンタはここでじっとしてなさいよ。」

続いてスカートをたくし上げると刃渡り20cm近くのアーミーナイフを取り出した。その握りには火星の天使ファレグ印形(シジル)が描かれている。
「至高の御名において、我は悪しきすべての力と種を追いはらわん!」
マジカル・ウォーリアーが聖戦を行う際には必ずこの聖句を唱えなければならない。
対する黒衣の男も懐から取り出したワンドを掲げて自らの所属する結社の誓言を行う。
「我ら、世界の王の御名にかけ、血には破壊を、民には虐殺を、光には闇を!」


アスカはナイフの柄を両手で握り刃を上にして頭上に構える。そして、白銀の刃に念を凝らした。
=7の位階は火に所属し、火星と関連が深い。ゆえに最も自らに近い力を呼びだそうという考えである。
まずは「ALHIM(エロヒム)」の名を唱え、上の頂点から右下に向かって五芒星を描きはじめる。<火>の召喚五芒星である。
アスカの視界には自らの念により形作られた深紅の正三角形が浮かび、その姿がナイフの切っ先へと重なっていく。
やがて、ナイフの刃が内側から輝き出した。

一方の黒衣の男はワンドに引き続き一体の蝋人形を懐から取り出して地に置いた。
その人形の姿は裸体の女性であり、さらに頭、両眼、両耳、口、両手、両足、腹、肛門、性器の13カ所に針が突き刺さっている。
「ベルセフォネ、エレスキガル、アドニス、ヘルメス、ソース、アヌビス」
ワンドをふるいながら唱える冥界を司る存在らの名に答えるように、蝋人形から4体の異形の怪物が沸き出してくる。
呼び出されたそれは人の姿をしていたが、その皮膚は腐り、はみ出した内蔵に蛆が沸いており、あたりに不快な腐臭をまき散らしている。

「ゾンビ!降霊術(ネクロマンシー)なんて。」
死者を冒涜する邪悪な技法を目にしたアスカはあからさまに不快な表情を見せると地を蹴って走り出した。
「嫌いなのよ、この腐った臭いとか。服に染み付いたらどうしてくれるの。」
口ではそんなことを理由にしてはいるが、その表情からはそれだけが理由でないことがはっきり分かる。
マジカル・ウォーリアーにとっては、すべての黒魔術は嫌悪の対象以外の何者でもないのだから。

<火>の力を帯びたナイフを右手でふるい、一体のゾンビの首をはねる。ゾンビは<火>の魔力により、傷口から炎をあげて崩れ去る。
そして、そのまま一直線に黒衣の魔術師へと向かうアスカ。
残る3体のゾンビには目もくれない。
それは降霊術は術者を倒せば解除されることをねらっての行動である。

しかしアスカは最も重要なことを失念していた。
今回の任務があくまで護衛であるということだ。

アスカがゾンビを無視して黒衣の男に挑みかかろうとしたとき、後方で悲鳴があがる。
「うわあわわあ!!」

後ろを振り返ると、ゾンビがシンジの隠れている車にとりつこうとしていた。

「しまった。」
アスカが舌打ちする。
普段なら、ゾンビ程度では破ることのできない結界が車に張って有るはずなのだが、先ほどフロントガラスを割ったため結界が破れていたのだ。


ぶんっ。

アスカがよそ見をした隙にうなりをあげて襲いかかってきた黒衣の男のワンドによる攻撃を、かろうじて地面を転がることですんでの所でかわすアスカ。
ワンドは、表面こそ木製だが内部には時期を帯びた金属が仕込まれており、その一撃は十分な攻撃力を備えている。
アスカは己の迂闊さを悔やみつつもそのまま転がって黒衣の男との間合いを取り、車の方へと引き返す。

だが、今から引き返しても間に合いそうにないのは明白だった。

ゾンビの一体が車のボンネットの上から車内に手を突っ込みかける。
もはやこれまで、とアスカがあきらめかけたその時、ゾンビの上半身がはじけ飛んだ。

「こら、アスカーっ!何やってんの!」

続いて残る二体のゾンビの腹や頭にも大穴が開いていく。

「ミサトっ!!」

危機を救ったのは車から身を乗り出しながらライフルを構えて近づいてくる仲間の姿だった。




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ver.-1.00 1998+04/25公開
感想・質問・誤字情報などは uji@ss.iij4u.or.jp まで!




ようやく第2話が書き上がりました。
前回は入居期限に滑り込ませるため、あとがきも付けないままの公開だったのですが、今回はその分も合わせて少々詳し目の説明などをさせていただきます。

この「世界の王」は、元々は「シンジが補完計画の鍵となる存在でありながらエヴァを操るなどの強力な力を持たなかったとしたらどうなっただろうか?」という思いつきから始まったものです。
ただ、原作の第1話から始まるタイプの物語は私のHP上でも公開しているので、同じ様な始まり方は避けたいと(巨大ロボットとしての)エヴァの登場しない別の世界の設定を用意することにしました。
しかし、そう都合よく新たな設定が思い浮かばなかったので、別の作品の世界設定を借りることにしたのです。
朝松健氏の「魔術戦士(マジカルウォーリアー)」がそれなのですが、未完のこの作品を私が勝手に自分なりの解釈で完結させて、その後の世界という設定で描いているのが「世界の王」になります。(もっとも、かなりうろ覚えなので、思いっきり間違った解釈をしているとは思うですが)
今のところ「魔術戦士」側のキャラクターは名前のみ登場の予定です。

なお前もって断っておきますが、作中、アスカはの守護神は火星の軍神マルスという設定になってます。火星は「暴力と破壊」の惑星であるともされていますが、この設定には他意はありません。あくまでアスカのイメージカラーである赤に合わせただけですので、アスカにんの皆様ご了承下さい。

また、本編中の魔術の技法は本来のものとはかなり異なっています。
これは私自身の技量や物語の展開上の事情によるものですが、私自身間違いについては自覚していますので「これはおかしい」といったご指摘についてはお手柔らかに願います。

なお、今回更新速度が遅かったのは、「4=7」のような特殊な表記を表現するため、htmlのタグを勉強し直すはめになったことが一番の原因です。
さらに、いずれは文字だけでは表記できなくなり、画像をフォント代わりに使わないといけなくなりそうで心配です。

元々が遅筆な方なので、上のような理由と併せてあまり更新速度は速くないと思いますが、今後ともよろしくお願いします。

それでは、次回、第3話でお会いしましょう。




このシリーズを書くにあたって参考にしている主な書籍。


「魔術 理論と実践」国書刊行会

「黒魔術」河出書房新社

「記号・図解 錬金術事典」同学社

「悪魔の辞典」青土社

「最新軍用銃事典」並木書房

等々

すみません。単に一度こういうのをやってみたかっただけです。
もう、しませんから。




 UJIさんの『世界の王』第2話、公開です。




 ゾンビ・・臭そうですね(^^;



 何年か前。

 国道を走っていたら、
 何時もはすいている区間が渋滞していたんです。

 しばらく進んで渋滞の先頭にたどり着いたら・・・
 でっかい肉の塊がおちていました。

 どういう経緯であんな所にあんな物があったのかは知りませんが・・・

 すっごい臭い。


 腐った肉つーのは、すっごく臭いんですよね


 それが動いて迫ってくる−−−


 おぇぇ です。


 ゾンビ・・・ (;;)
 アスカちゃんに触るな〜         (^^;




 さあ、訪問者の皆さん。
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