ビィーッ!ビィーッ!ビィーッ! 「どうしたの!?」 突然の警報に慌てるミサト。オペレーターたちに緊張が走る。 「わかりません! 突然シンクロ率が急上昇! パイロット確認できません!」 マヤの報告に騒然となる一同。 「シンクロカット! 急いで!」 ミサトの指示にキーボードをたたき始めるオペレーター達。 「駄目です! あらゆる操作を受け付けません! 何者かがテストプログラムを書き換えた模様!」 「なんですって!? マヤ、何とかならないの!?」 「今やってます!」 信じられない速度でキーをたたくマヤ。だがプログラムは止まらずどんどん進んでいく。 「NMIも効かない!? なんなの!? このプログラム!」 年に数回行っているいつものシンクロテストのはずだった。被験者はシンジとアスカ。気を緩めていた事を悔やみ、つめをかむミサト。最悪の事態が頭を過ぎる。二人には4人の子供がいるのだ。 「シンクロ率低下! 正常値に戻りました! パイロット、生存を確認!」 オペレーションルームに安堵のため息が漏れる。 「シンジ君、アスカ、大丈夫!?」 「大丈夫です」 シンジの声が心なしか高い。 「気持ち悪い。なんか二日酔いしたみたい」 アスカの声もだ。 「なっ!?」 開いたモニタを見たミサトとマヤは絶句したのだった。 続・再会 「るんるるんるるん♪」 第壱中学の制服を着た一人の女の子がご機嫌で歩いていく。シンジとアスカの娘、碇マユカ13歳。ぴっかぴかの中学二年生だ。父親譲りの髪の毛と母親譲りの瞳を持った、母アスカの若かりしころよりも更に可愛いと評判の美少女である。背は13歳のころのアスカよりも若干低く、スタイルは戦闘訓練に明け暮れていたアスカよりも華奢で胸もワンサイズ小さめ。顔のつくりの基本はアスカのものだが、見るからに気の強そうだったアスカに比べて柔和でやさしい顔をしている。 「あ、キミエ、おはよ〜」 「おはよう、マユカ」 キミエと呼ばれた少女はマユカの幼なじみだ。目がくりくりっとして幼い顔をしているが、背が高くて出るところは出ており、黒髪をポニーテールにしている。頭が良いわりには多分に子供っぽいところのあるマユカのお姉さん役といったところだ。 二人は肩をならべて歩き出した。マユカの方が5cmほど背が低い。足の長さは若干マユカの方が長かったが。その分キミエは胸やお尻の発育がマユカよりも断然良い。 「ねえ、キミエんとこは誰が来るの?」 「うちは母さん。マユカんとこは?」 「パパとママ、両方くるって」 「ふ〜ん。それで今日はご機嫌なんだ」 「えへへ」 今日は土曜日で授業参観日。マユカは大好きなパパがきてくれるのがうれしくてしかたがないらしい。 「パパとママ見たらキミエ絶対驚くよ」 「どうして?」 「ひっみつ〜!」 「なによ、教えなさいよ〜」 「見てのお楽しみ!」 「気になるじゃなぁい」 「あ、シンちゃん、おはよ〜」 マユカが見知った後ろ姿に声をかけると、その少年は硬直してギギギ、と音が出そうなかんじで振り返った。ミサトの息子、加持シンジだ。ちょっとたれ目の中学一年生。 「マ、マユカ姉ちゃん、お、おはよう」 耳まで赤くなってぎこちなく答える加持シンジ。 「今日はミサトおばちゃんが来るの?」 「う、うん」 「そうなんだ。しっかりね。シンちゃんあがり性なんだから」 「う、うん。……あ、あのさ、俺、俺、マユカ姉ちゃんの事が!」 「なあに?」 にっこり微笑んで小首をかしげながら聞き返すマユカ。加持シンジはぼぼん、と音が出そうなかんじで更に赤くなる。 「な、何でもないっ!」 だっ! 加持シンジはうつむいて学校に向かって走って行ってしまった。 「どうしたんだろ? 変なシンちゃん。最近時々ああなるんだよね」 マユカの言葉にため息をつくキミエ。 「マユカって時々ほんっとに鈍いわね。可哀相な加持君。一年生じゃ人気ナンバーワンなのに」 きょとんとキミエを見返すマユカ、校門はすぐそこだった。 マユカとキミエが教室に入ると、生徒達はどこかそわそわしていた。 「おっはよ〜」 「おはよう」 「おはようマユカ。今日自慢のお父さん、来るの?」 「うん。パパもママも来るって言ってた」 マユカはクラスメートの女の子に嬉しそうに答えた。髪をショートカットにして縁なし眼鏡をかけたマユカより少し背の低いその娘はマイという。 「ねえキミエ、キミエはマユカのお父さん見たことあるんだよね。そんなに素敵なの?」 ハルナという髪をセミロングにした泣きぼくろのある娘が聞いた。背はキミエより高い。 「ん〜、優しそうなお父さんだけどマユカが言うほど素敵だとは思わないな」 「キミエは男を見る目が無いのよ。パパより素敵な男性なんてこの世にいないんだから」 ぷぅと膨れるマユカ。可愛い娘はどんな顔をしても可愛い。 「はいはい、『パパは世界一素敵なの』でしょ。もう聞き飽きたわよ。ねえ?」 苦笑しながらキミエ。まわりの女の子たちはみんなキミエに賛同してうなずく。マユカのファザコンぶりは有名だった。 「こんなに素敵なのにぃ」 マユカが生徒手帳に入れた写真を取り出した。マユカが4歳のとき初めてシンジと会ったときに親子三人で撮ったものだ。まわりの女の子たちは見飽きてるので見ようともしない。 「でもマユカも大変よね。好きになった人が妻子ある人だったなんて」 マイが茶化す。 「マユカったらね、ついこのあいだまで本気でお母さんの代わりにお父さんの奥さんになるつもりだったのよ」 笑いながらキミエ。 「あはは、どうしてあきらめたの?」 「だってDNA鑑定したらほんとに親子だったんだもん。いいの。あたし一生結婚しないんだから」 ハルナの問いにマユカは膨れたまま答えた。 「そんなこと言ってるのも今のうちだけだって。そのうち絶対好きな人が出来るんだから」 「出来ないもん。パパより素敵な人じゃないと好きにならないもん。そんな人いないもん」 ますます頬を膨らませるマユカ。クラスメートたちは処置無しと顔を見合わせ、肩をすくめるのだった。 担任の増田先生はホームルームで出席を採り終わるといった。 「みんな、お父さんお母さんの前だからって緊張しちゃ駄目よ! いつも通りにすればいいから。いいところ見せようなんて考えると失敗するからね!」 増田先生は30歳ぐらいの小柄の可愛いかんじの女性で、気さくで教え方もうまく生徒に人気がある。担当は数学。先生が出て行くと、親達が教室に入って来て後ろに並んだ。生徒達はひそひそと話し始める。 「マユカのお父さんってどの人?」 「えーと……、まだ来てない」 誰がだれそれのお母さんだお父さんだ言っているうちに授業が始まった。マユカの好きな数学だ。クラスメートには秘密にしているが、マユカはすでに数学と情報工学の学士の学位を持っていた。 授業が始まってしばらくしたころ、そっと教室の後ろのドアが開いた。私服の中学生くらいの男女が入ってくる。それを先生が見咎めた。 「こらこら君たち、どこのクラスの生徒かな?」 教室中の視線がその二人に集中した。 「いえ、あの、僕たちは……」 「娘がお世話になってます。碇マユカの母です」 栗色の髪の少女がぺこりとお辞儀した。ちょっときつい感じだが確かにマユカによく似ていた。隣の少年をひじで突っつく。 「父です」 少年もお辞儀をした。教室がざわめき出す。先生も呆然としていた。二人はどう見ても中学生ぐらいなのだから無理もない。 「ねえねえマユカ、本当?」 「うん」 「ちょっとマユカ、おじさんもおばさんもどうしちゃったのよ!? どうみても私たちと同じぐらいに見えるわよ!?」 マユカの両親を知るキミエも慌ててマユカに確認した。 「えへへ、秘密」 ぺろっと可愛く舌を出すマユカ。マユカの事を見ていた男子生徒は全員心ときめかせた。 「お邪魔してすみません。授業をお続け下さい」 アスカの言葉に、我に返る先生。 「あ、はい。それでは……」 生徒達はちらちらと自称マユカの両親という二人組を見ていた。ひそひそと会話を交わす。 「あれがマユカの自慢のお父さんなの? わかーい! でもなんか冴えないかんじぃ」 「ほんと頼りなさそ〜」 「でも可愛いんじゃない?」 「うんうん」 「タイプかも〜」 「お母さんもわっかーい!」 「よく似てるー」 ざわめく教室。さすがに先生も耐え兼ねて注意する。 「君たち、気になるのは分かるけど静かにしなさい。今は授業中よ」 生徒達はお喋りを止めた。親達は先生の毅然とした態度にそこはかとなく好感を抱いたのだった。 授業終了後、三者面談までのあいだに子供を連れて親達の挨拶が始まる。 「どうも、いつもうちのマユカがお世話になってます」 キミエの母マリエに挨拶するアスカ。 「碇さん、一体どうなさったんですか!?」 マリエはマユカの両親の変わりように驚いていた。数週間前にあったときより十歳以上若く見え、シンジは30cmほど、アスカは20cmほど背が縮んでいるように見える。 「それがその、詳しい事はいえませんがこの娘のいたずらのせいなんです」 マユカの頭を上からこぶしでぐりぐりするアスカ。アスカの方が少し背が高い。 「痛いよ、ママぁ!」 頭をかばうマユカ。 「まったくこの娘は! 下手したらあたし達死んでたのよ!」 ぐりぐり! 「そんなへましないよぅ」 「反省の色が無い!」 ぐりぐりぐり! 「パパぁ」 マユカはシンジに抱き着いて助けを求めた。シンジの背はマユカとほぼ同じだ。 「アスカ、無事だったんだしもう許してやりなよ」 「あんたは子供に甘すぎるのよ!」 「まあまあ奥さん」 マリエがアスカをなだめた。外見こそ若返っているが中身はマリエの知る二人だった。 「やっぱりネルフがらみなんですか?」 マリエは声を潜めて聞いた。マリエの夫もネルフの技術者なのだ。 「ええ」 そのあとアスカとマリエはうちの娘はどうだとかお宅のお嬢さんはどうだとか世間話をはじめた。遠巻きにしていた他の親達もだんだんと寄って来て挨拶を交わすのだった。 マユカはシンジを引っ張ってクラスメートの前に連れて来た。 「どう? これがあたしのパパだよ」 「えっと、その、マユカと仲良くしてくれてありがとう。はじめまして。マユカの父です」 ちょっと照れて頭を掻きながらシンジ。その笑顔だけでほとんどの女の子たちはシンジに惹きつけられ、マユカの言ってた事が本当だったと納得するのだった。きゃいきゃいと騒ぎながらシンジに質問し始める。 「あの、おいくつなんですか?」 「このあいだ三十になりました」 困ったような笑顔を浮かべてシンジは答えた。 「うっそー」 「みえな〜い」 「うちのパパと交換した〜い」 「だめ! パパは渡さないんだから!」 マユカがシンジをかばうように前に立った。 「や、や〜ね、冗談よ」 「ほんとマユカってファザコンよね」 「でもわかるー。こんなお父さんだったら好きになっちゃうよね〜」 「どうしてそんなにお若いんですか?」 「えっと、その」 困ったようにあいまいな笑顔を浮かべるシンジ。 「あたしが若返らせてあげたの!」 自慢げに胸を張っていうマユカ。 「えー、ほんとですかぁ?」 「う、うん、まあ」 シンジは苦笑しながら頭を掻いた。 「お仕事はなになさってるんですか?」 「大学で講師をしてます」 「すっごーい」 「偉いんだー」 「いやただの講師なんで偉いって事は……」 「パパはね、サイバネティクスの研究やってるんだよ。医学博士なんだから」 自慢げに言うマユカ。 「サイバネティクスって何ですか?」 「サイボーグって言えば分かるかな。簡単に言うと人の体の一部を機械などで置き換える技術の事なんだけど」 「ふーん」 「難しそう」 そのとき面談を終えた女の子が呼びにきた。 「マユカ、次だよ」 面談は今日はお休みの1年生の教室を使って行われている。マユカはシンジを引っ張って、世間話に夢中になっているアスカを呼ぶとその教室に向かうのだった。 一週間ほど前、ネルフ司令執務室。 「おじ〜いちゃん」 マユカがドアから顔を覗かせる。 「マユカか」 ゲンドウは書類から目を上げると表情を崩した。 孫に甘いゲンドウはマユカ達孫には執務室のフリーパスを与えている。大統領と電話中だろうがなんだろうが、孫が訪れると「孫が来た」といって切ってしまうのだ。 マユカはゲンドウの横までとことこと歩いてきた。学校の帰りなのか制服を着て学生かばんを持っている。 ゲンドウがいすをまわしてマユカの方を向くとマユカはいつものようにそのひざに座った。 「ねえ、おじいちゃん、お願いがあるの」 マユカはゲンドウの右手をいじりながら甘えた声を出した。 「なんだ? 何でもいいなさい」 「これ、やりたいの」 マユカはかばんから分厚い書類の束を出した。表紙には「高シンクロ状態を利用した肉体再生計画」とかいてある。ゲンドウは簡単に目を通していく。 「……成功確率99.97%か。この数字は確かなのだな?」 「もちろん。あたしがパパに危ないことさせるわけ無いじゃない。パパ達でデータが取れたら鈴原のおじさんにもやってみようと思うの。パパ、鈴原のおじさんの怪我のこと、ものすごく気にしてるから」 「ふむ。……まあいいだろう。やってみなさい」 そういってゲンドウは机の引出しからセキュリティカードを取り出した。MAGI−2にアクセスするためのもので、最上位の権限を持っている。 「パスワードはいつものだ。隣の部屋の端末を使いなさい」 「ありがと、おじいちゃん」 マユカはゲンドウに抱きつくと、執務室をあとにした。隣の部屋の端末を起動すると、セキュリティーカードを入れてパスワードを入力する。パスワードは時間によって変わるようになっていて、専用のパソコンでキーワードから計算して求めるようになっているが、IQ180を超えるマユカは暗算でパスワードを求めて入力した。 MAGI−2に接続すると、シンクロテストのプログラムを呼び出した。かばんからSDVD−RWを取り出しセットすると、そこからファイルを上書きコピーする。これでシンクロテストを行えばマユカの作ったプログラムが起動し、終わるまで誰にも止められない。 このプログラムの目的はシンジとアスカの若返りだ。レイの場合は通常のテストプログラムが走るようになっている。もしかしたらリツコでもプログラムの内容は理解できないかもしれない。 アクセスログ等を操作してファイル操作の痕跡をすべて消して作業は完了。ディスクとカードを抜いて端末を落とし、ゲンドウにカードを返しに行く。 「おじいちゃん、これありがと。そうだ、あれ、できてるかな?」 「ちょっと待ちなさい」 ゲンドウは電話をとって技術開発部試作課に電話した。 「できてるそうだ。帰りに受け取っていきなさい」 「うん。じゃあね、おじいちゃん」 「気をつけて帰るんだぞ」 マユカはゲンドウの執務室を後にすると、こんどは技術開発部試作課を訪れた。 「こんにちはぁ」 「やあ、マユカちゃんこんにちは。あれだね?」 壮年のいかにも技術屋といった感じの男がマユカに答えた。 「うん」 男は若い男に何か持ってこさせた。チョーカーのようなものが二つに一辺が20センチぐらいの菓子箱みたいな長方形の箱。 「一回の充電で大体一週間ぐらい使えるはずだけど、うちじゃテストできないからねぇ。まあ念のため回路のほうはうちの若いもん全員に二回ずつチェックさせたから大丈夫だと思うけど。しっかしこれ、いったい何なんだい?」 「えへへ、ひぃみぃつぅ。ありがとね」 マユカはその謎の機械を受け取ると、スキップでもしそうなぐらい上機嫌な様子で帰っていった。 そして数日後シンジとアスカのシンクロテストが行われ、冒頭のシーンとなったわけである。マユカの目論見どおり両親の肉体は二人が出会ったころの姿で再生された。慌てたスタッフはテストにかかわるすべてをチェックしたが原因をつかむことはできなかった。ただアスカだけは誰の仕業か即座に見抜き、放課後マユカを本部に呼び出しきつく尋問、しぶしぶ白状したマユカは久しぶりにきついお灸を据えられたのだった。 その後シンジとアスカの二人は検査のため入院。各種書類やIDなどの写真の書き換えなども行い、自宅に戻ってこれたのはマユカの授業参観の当日早朝だった。 授業参観から帰った晩のこと。 「パパぁ、お風呂入ろう♪」 マユカがリビングのソファーで新聞を読んでいたシンジの手を引っ張る。 「駄目よ、マユカ。シンジはあたしと入るの。あんたはユイカ達を入れてやりなさい」 しばしにらみ合うアスカとマユカ。マユカはシンジの手を離し構えに入る。 「ジャンケン、ぽんっ!」 掛け声とともに手を出す二人。アスカがチョキでマユカがグー。マユカの勝ち。 「シンジぃ」 負けたアスカが目を潤ませてシンジを見つめる。 「じゃあ明日はアスカとね。行こうか、マユカ」 苦笑しながら腰をあげるシンジ。マユカはシンジと腕を組むと勝ち誇った笑みをアスカに向ける。アスカは一応悔しそうな表情を作って見せた。外見こそ若返っているが、アスカは実の娘に本気で嫉妬するほど子供ではない。とはいえこのままだと癪なので牽制を入れておく。 「アスマ、お風呂お姉ちゃんと入る? ママと入る?」 小学一年生の末っ子のアスマはマユカに一番なついているので、こう聞くと7割程度の確率でマユカのほうを選ぶ。 「んと、お姉ちゃんとぉ!」 アスマは子供のころのシンジにそっくりなので、アスカとマユカに猫っ可愛がりされている。アスカよりもマユカになついているのはマユカよりもアスカのしかり方が厳しいからだ。 「じゃあ早く行きなさい」 余計な付録を押し付けてきたアスカのほうをマユカがにらみつけている。アスカはおとなの余裕で受け流す。 「ねえ、ママぁ」 小学三年生の次女のユイカがアスカのスカートを引っ張った。 「なあに?」 「あたし達もパパと一緒に入りたい」 ユイカと双子の三女のキョウカがいう。一卵性双生児だけあってユイカとキョウカはそっくりだ。一目で見分けられるのはアスカだけ。二人ともアスカの幼いころにそっくりで、金色がかった栗色の髪と青い瞳が特徴。二人のあいだには双子ならではのテレパシーのようなものがあるようで、デパートなどではシンジにユイカがアスカにはキョウカが付いてきてお互いの居場所などを知らせたりできる。二人ともマユカほどではないもののファザコンで、キョウカもシンジについていきたいらしいが、なぜかキョウカはユイカに逆らえないらしい。 「だってさ、シンジ」 「んー、ちょっと無理じゃないかなぁ。ユイカとキョウカは明日パパと入ろう?」 碇家の風呂場は普通の家のものよりもだいぶ広いが、さすがに5人ではいるのはちょっと無理かもしれない。 「パパ、いっつもお姉ちゃんとママばっかり」 「ずるいよ、お姉ちゃんもママも」 「ね〜」 最後の「ね〜」は小首かしげて見つめあい、ユニゾンで決めている。まるであいだに鏡があるような感じだ。ちなみにキョウカは左利き。 「わかったわかった。じゃあおいで」 「やったぁ!」 ユニゾンで歓声を上げるユイカとキョウカ。マユカはがっかりしたような顔をしている。アスカはマユカ以外の子供達の着替えを用意しにいくのだった。 アスカが鏡台の前で寝る前のお肌のお手入れをしていると、パジャマ姿のマユカがやってきた。アスカは若返る前の白いネグリジェを着ているが、身体が縮んだので少々大きい。シンジも同様に大きめのパジャマを着てベッドに横になって本を読んでいる。 「ねえママ、これつけてて欲しいんだけど」 マユカが差し出すのは例のチョーカーの片割れ。 アスカは受け取ると胡散臭そうに眺める。 「なんで?」 「ちょっと実験。お願い、協力して」 祈りをささげる乙女のような格好で目を潤ませるマユカ。 「い・や! なんであんたの実験に付き合わなきゃなんないのよ?」 「そんなこといわないでおねがぁい」 「甘えたって駄目よ、そんなわけのわからない実験」 アスカはチョーカーをマユカに返した。 マユカはアスカを後ろから抱きしめ、身体を前後に揺らしながら甘える。 「ねえ、おねがぁい、おねがぁい、おねがぁい」 「いやだって言ってるでしょ。あんまりしつこいと怒るわよ」 マユカは身体をゆするのをやめるとちょっと考え、隙を見てアスカの首にチョーカーをはめてしまった。 「こ、こらっ、はずしなさい!」 慌てたアスカははずそうとしたがびくともしない。 「もう明日の朝まで外れないよ。一応害はないはずだから。じゃね、おやすみぃ」 「マユカっ!」 マユカは脱兎のごとくアスカたちの寝室から逃げ出した。 自分の部屋に戻るとマユカは自分の首にもチョーカーをつける。そして例の箱を開けるとなにやら操作して起動した。カウントダウンが始まる。そのあとベッドの上で自分の足を縛り、口に猿轡をし、身体をベッドに固定してから手に手錠をかけた。これで自分では動けない。 カウントがゼロになる。その瞬間浮遊感とともに視界が一変した。鏡台の前に座ってブラシを持っている。鏡に映るのは母アスカの姿。 「どうしたの?」 ベッドからシンジが聞いてきた。 「ん、なんでもない」 マユカはアスカの振りをして答えた。実験は成功だ。これから起きることに胸を高鳴らせながら髪にブラシを通す。 ブラシを当て終えるとマユカはベッドの上に登り、シンジの隣に横たわる。 「ね、シ、シンジ。その、……し、しよ?」 マユカの、といっても本当はアスカのだが、心臓はばくばくいって爆発寸前だ。 「うん」 シンジは本を置くとマユカのほほに手を沿え顔を近づけてきた。ぎゅっと目をつむるマユカ。身体は緊張でがちがちだ。 「どうしたの? アスカ」 いつもと違う様子のアスカにシンジは怪訝そうな顔をする。 「べ、別になんでもない」 「そう?」 シンジは再びキスをしようと顔を近づける。マユカはなるべくアスカの真似をしてキスを受けた。シンジが舌で唇をつつくと、おずおずと舌を絡める。 おとなのキスにボーっとなってしまうマユカ。頭の中が真っ白になりそうだ。 キスを続けながらシンジはマユカの胸を愛撫し始めた。びくっと身を硬くするマユカ。 シンジは愛撫を止めてマユカを見つめた。 「……君は誰?」 マユカは目をそらす。 「ア、アスカよ。妻を忘れたの?」 「アスカは僕とするときにこんなに緊張したりしない。それにするときは脱いでからベッドにあがるんだ」 マユカが黙っているとシンジはマユカのほほに優しく手を添えて顔を自分のほうに向けさせ、その瞳を覗き込んだ。 「……マユカだね?」 マユカはじっとシンジの瞳を見つめていたが、その真摯な瞳に耐えかねてため息をつくと正体を明かした。 「……うん。どうしてわかったの?」 「さっき実験とか言ってたし、こんなことできるのはマユカぐらいだからね。アスカはどうなったの?」 「あたしの身体に入ってる」 「どうしてこんなことしたの?」 「だってぇ……、パパとエッチしたかったんだもん。でもあたしの身体でパパとエッチすると近親相姦になっちゃうから、だからママの身体を借りればいいって思ったんだもん」 シンジはため息をついた。 「マユカ、いずれにせよこんなことはマユカには早すぎるよ。それにアスカの断りも無く勝手に身体を借りちゃ駄目だろ?」 「はぁい」 怒られてしゅんとなるマユカ。 「さあ、元に戻して」 「それは明日の朝まで無理。ロックかけちゃったから」 「アスカはどうなってるの?」 「あたしの身体はベッドに縛り付けてあるの」 シンジはため息をつくとマユカの部屋に向かった。 ベッドの上にはマユカの身体のアスカが縛られてじたばたしていた。自分の身体に入ったマユカを見つけるとさらに激しく暴れる。マユカはシンジの後ろに隠れた。 「アスカ、じっとして。今ほどいてあげるから」 シンジが猿轡をはずすとアスカがマユカを怒鳴りつける。 「マユカ! あんた母親にこんなことしてただで済むと思ってんの!?」 「アスカ、暴れないで」 身体を縛っている紐をほどくシンジ。 「パパ、ちょっと待って」 マユカは何か決意したのか、怒りに燃えるアスカの前に進み出た。 「パパ、ちょっとママと女同士の話があるから外で待ってて」 シンジは怪訝そうな顔をしながらも部屋を出て行った。 「ねえママぁ」 アスカを拘束しているものをほどきながらマユカが話し掛ける。 「なによっ!?」 「ママ、今処女だよね」 「だからなによっ!?」 「初めてのときって痛かった?」 「そ、そりゃまあ」 「でしょ? だから代わってあげる」 「はあ?」 ほどき終わって、痛む手首足首をさすりながらマユカを見るアスカ。マユカはアスカの手を両手でつかんだ。 「ママ、お願い、ママの身体を貸して、パパとエッチさせて!」 「いやよ。あたしに何のメリットがあるのよ?」 「だから二回目の初めての痛みを代わってあげるの。ママは初めての痛みを感じずにすむし、パパはママ以外の女性を知るわけじゃないから浮気じゃないし、あたしは念願かなってパパとエッチができる。ほら、みんな幸せ」 「あのね」 わが娘ながらあきれるアスカ。とはいえ破瓜の痛みのことを考えると少し魅力的な提案に思えないこともない。初めてのときは痛いだけでぜんぜん気持ちよくならなかった。 「どっちにせよ明日の朝まで元には戻れないから、ね、お願い!」 「あんたにはまだ早いわよ」 「そんなことないよ。ママだってパパと初めてしたのはあたしぐらいの歳のときでしょ?」 「あんたより一つ上だったわよ」 「そんなの長い人生からすれば誤差の範囲じゃない。ね、ママぁ?」 アスカはため息をついた。自分も中学生で経験しちゃって、その上妊娠までしちゃっているのでその件に関しては強くいえない。 「はっきりいってものすごく痛いわよ?」 「いいよ」 「痛いだけよ?」 「それでもいい」 「あたしの身体で経験したからって、軽々しく自分の身体を許したりしないわね?」 「もちろん。そんな相手いないもん」 「ミサトんところのシンジはどうなのよ?」 「シンちゃん? なんで?」 ここでなんで加持シンジの名前が出てくるのかマユカにはさっぱりわからない。 「なんでって、あんた気づいてないわけ?」 あきれたように言うアスカ。 「なにに?」 「あの子、マユカに気があるわよ」 「またまたぁ、ママったらあたしをからかってぇ。シンちゃんがそんなわけないじゃん」 「あんた、間違いなくシンジの娘よ。鈍いところなんかそっくり」 「そんなのこの間のDNA鑑定でわかってるよぉ。もう、ママったらいやなこと思いださせるんだから。それにあたし、鈍くないもん」 ぷう、と膨れるマユカ。アスカは自分の身体もしぐさ次第でこんなに可愛くなるもんかと感心する。 「身体を貸す件はまあいいわ。エッチのほうは自分でシンジを説得しなさい。それと」 アスカはマユカの両ほっぺたを引っ張った。 「元に戻ったら、お・し・お・き、覚悟しときなさいよ!」 「ふみぃん」 半泣きのマユカ。シンジとエッチできるかもしれないのは嬉しいが、アスカのお仕置きはかなり恐ろしい。 「シンジ」 アスカが声をかけるとドアが開いてシンジが顔を出した。 「何? マユカ、じゃなくてアスカ」 「マユカが話があるって。あたしはここで独りさびしくオナニーでもして寝るわ。おやすみ」 「う、うん、おやすみ」 「ママ、あたしの身体大事に扱ってよ。パパ、いこっ!」 マユカはシンジと腕を組んで寝室に向かう。 「あたし達の話、聞いてた?」 「う、うん、まあ、聞くとは無しにね」 「じゃああたしとエッチしてくれる?」 「うーん」 悩むシンジ。シンクロテスト以降いろいろあってたまっている。今日するのはアスカが処女に戻っていることもあり結構楽しみにしていた。とはいうものの身体はアスカとはいえ実の娘としちゃってもいいものだろうか? 「ねぇ、いいでしょぉ、パパぁ?」 シンジの手を取って左右にゆするマユカ。 「うーん。……アスカがだめっていわなかったからいいか」 シンジとしてもアスカ以外の女性としてみたい気はある。アスカの許可があれば。今回は一応許可が下りていると考えていいだろう。問題は……身体はともかく中身は自分の娘ということだ。 「そうそう。ね、パパぁ」 シンジの腕を胸に抱きしめる。マユカはAカップだがこのアスカの身体はBカップだ。 「わかったよ。でも僕としてはマユカにはずっときれいな身体でいて欲しいなぁ」 「ママの身体だからいいでしょ?」 「心も純潔のままでいて欲しいなんて、僕のわがままかな?」 「パパ……」 マユカの気持ちは揺らいだが、このチャンスを逃せば二度と望みがかなうことはないだろう。 りぼんをほどくとネグリジェを落とす。恥ずかしそうに左手で胸を隠しながら、右手でシンジをベッドへいざなう。アスカもそのつもりだったのか、その身体は白いレースの凝った勝負パンティをはいていた。 二人はベッドの横たわると、シンジは優しくキスをした。アスカにするようなおとなのキスじゃなくて、触れるだけの優しいキス。 「緊張してる?」 「うん。……ちょっと怖い」 「大丈夫。優しくするから」 シンジは優しく優しく慎重に胸を愛撫し始める。こうしてマユカはアスカの身体を使って想いを果たしたのだった。 次の日の朝。 「もう、ママったら」 シーツにはお尻のしたあたりにしみができている。パンツも昨日入れ替わったときにはいていたものと違うのをはいていた。マユカは赤くなりながらシーツをはがして洗濯機に放り込む。自慰の経験はそれほどあるわけではないが、そのしみの意味は見当がつく。アスカは昨晩宣言どおりマユカの身体でしたのだろう。 洗濯機を回すと朝食の準備。休日はアスカはいつも朝寝坊だが他の家族はそこそこ早く起きてくる。マユカの次は大体シンジ、その次はアスマ、ユイカ、キョウカ、だいぶ日が高くなってアスカという順に起きてくるのがいつもの休日の風景。 マユカは昨夜のことを思い出してボーっと幸せに浸っていた。シンジが優しくしてくれたせいか脅かされたほど痛みはなく、マユカは初めての快感に翻弄された。その晩は4回もシンジに愛してもらい、最後はあまりの快感に気を失ったのだった。 朝食がもうすぐ完成というところでシンジが起きてきた。パジャマから覗く首筋に、つけた覚えのないキスマークが覗いていた。昨晩マユカがアスカの身体を借りていたときは、シンジにキスマークをつける余裕などなかったのだ。マユカはぴぃーんと来た。きっと今朝元に戻ったアスカがつけたのだ。幸せだった気分は半分ほどどっかに行ってしまい、嫉妬という痛みが代わりに襲ってくる。 「おはよう」 「おはよう、パパ。もうすぐできるから座ってて」 「うん」 シンジは玄関から新聞を取ってくると、自分の席について読み始める。 手際よく朝食を机に並べると、マユカはたれぱんだのエプロンをはずして妹弟を起こしに行く。 双子の部屋に行くとカーテンを開ける。晴天のすがすがしい空が広がっている。二階建てベッドの双子は大体同じタイミングでごそごそいいだし起きてくる。上がユイカで下がキョウカだ。 「おはよう、お姉ちゃん」 これまた同じように目をこすりながらユニゾンで挨拶してくる双子達。ただしキョウカは左利きなので左右が逆だ。 「おはよう、ユイカ、キョウカ。朝ご飯できてるから、顔を洗っておいで」 次に末っ子の部屋。同じようにカーテンを開けるとアスマは光に背を向けた。 「アスマ、おきなさい。朝ご飯できてるわよ」 「ぅん、ん」 「早く起きないとおはようのキス、してあげないぞ」 マユカが腰に手を当てこう宣言すると、アスマは少しぐずったが起きてきた。マユカはそのほほに口付ける。 「ほら、早く顔を洗ってらっしゃい」 マユカはアスマの背を押して洗面所に送り出した。 ダイニングに戻ってみると、シンジの大きいTシャツを着たアスカが髪の毛を拭きながら立っていた。どうやらシンジといっしょに起きてきてて、今までシャワーを浴びてたようだ。アスカはタオルを頭に巻きつけると席についた。ほどなくのほかの妹弟たちもやってきて席につく。 全員そろうと「いただきます」といって食事をはじめる。 「マユカ、あんた今日荷物もちね」 今日は家族そろって買い物に行き、主に若返ってしまってサイズの合わなくなった衣類を買う事になっている。当然荷物の量は多いことが予想される。 「え〜」 顔いっぱいに不満を表すマユカ。 「あんた、あたしに借りがあるわよね?」 「ふにゅぅ〜……。わかったわよぉ」 どうせシンジもいっしょにきて荷物は持ってくれるだろうと思ってしぶしぶ了承する。 「というわけでシンジ、荷物は全部マユカにもたせてね」 「え、う、うん」 「パパぁ」 マユカがシンジのほうを見るとシンジは「ごめんね」というしぐさをした。アスカがこうと決めたら道理に外れていない限りまずシンジは逆らえない。 母が父に荷物を持たせたときのことを思い出す。シンジは山のような荷物を持たされていた。とはいえお仕置きがこの程度で済んでよかった。 「いっとくけど」 そこでアスカはお茶を飲んでいったん言葉をきった。 「これはお仕置きのうちに入ってないからね」 「え〜!?」 マユカは目を潤ませてシンジに助けを求めた。 「実は僕も今朝お仕置きを言い付かってね。というわけでマユカ、がんばって」 「パパぁ」 一番最近のお仕置きは庭の穴掘りをさせられた。ただ掘って埋めるだけ、これを学校が終わってうちに帰ってからお風呂に入るまでずっと。アスカが横で見張っているので手を抜くこともシンジに助けを求めることもできなかった。泣いているマユカに見かねてシンジが止めに入らなければ徹夜でやらされたかもしれない。 そのときのお仕置きの理由が「シンジの唇を奪ったから」である。今回はいったいどんな苦行を強いられるのか想像するのも恐ろしい。 「そうそうマユカ、あの機械ってあたしとシンジでも使える?」 「使えないよ。だってパパとママ、血縁関係ないでしょ? あの機械は近い血縁者同士の肉体と精神を入れ替えてシンクロさせるんだもん。パパとママがいくら精神的な結びつきが強くても、肉体のほうは遺伝的形質に左右されるから無理だよ。エヴァの時だってパパとママの相互間試験はできなかったんでしょ? 試したわけじゃないけど多分親子か兄弟でないと使えないと思うよ」 「使えない機械ね。あたしとシンジを入れ替えることができるんだったらお仕置きは勘弁してやろうかと思ったけど」 アスカが鼻で笑った。 マユカは半眼になってアスカを見やる。 「ママ、パパと入れ替わってなにするつもり?」 「そんなの子供にはいえないわよ」 意味深な笑みを浮かべるアスカ。マユカの神経を逆なでする。 マユカにはわかった。二人で入れ替わってエッチを楽しむつもりだと。 「ごちそうさま!」 がたんと音を立てて立ち上がると、出かけるために身だしなみを整えにいく。朝食の後片付けはいつもシンジがやってくれる。たまにユイカ達が手伝うこともある。 マユカは前向きに考えることにした。余計なのがついてくるが、これはシンジとのデートと考えられなくもない。いや、そう考えることにした。 自分の部屋の鏡台の前で髪にブラシを通す。アスカと違う髪形ということで、ポニーテールにしてみた。唇にはピンクの口紅。他には一切化粧はしない。この辺は昔のアスカと同じ。首筋にコロンを塗っておしまい。 次に服を選ぶ。ライバルであるアスカがおとなの魅力を武器にしていたから、どちらかといえば少女趣味な服が多い。 服をベッドの上に並べていると化粧を終えたアスカがマユカの部屋にやってきた。化粧といってもマユカと同様口紅ぐらいしかつけてない。アスカは昔エヴァに乗っていたころにしていた髪型をしていた。インターフェースヘッドセットの代わりに赤いりぼんで止めている。 「服、借りるわよ」 アスカはずかずかと部屋に入ってきたかと思うと、一番のお気に入りの白いフリルのついたワンピースを手にとった。 「それはだめ!」 「なんで?」 「だってあたしのお気に入りだもん」 「今日着るわけ?」 ワンピースを片手に腰に手を当てるアスカ。 「それは……まだわかんないけど」 「ならいいじゃない。どうせあたしが買ってやったんだし」 涙を浮かべそうな目でアスカを見つめるマユカ。 「ああ、もう、わかったわよ。あんたはこれを着なさい」 アスカは白いワンピースをマユカに渡すとマユカの衣装ケースからきわどい長さの白いミニスカートと赤い袖なしのブラウスを取り出した。ついでに白いソックスも取り出す。 「じゃあこれ借りるわよ」 そういってアスカは部屋から出て行った。 デパートでは宣言どおりすべての荷物を持たされた。アスカはアスマの、シンジはユイカとキョウカの手を引いてやっている。 「ねえ、パパぁ、疲れたよぅ」 ユイカの言葉にシンジは時計を見た。 「そろそろお昼だし、一休みしようか」 デパートを出て近くのレストランに入り、料理が並べられるとアスカはシンジに「あーん」をやり始めた。シンジも子供達の目を気にしつつも嬉しそうに口を開ける。シンジもアスカにやり返す。ユイカとキョウカもアスマに対してまねをする。 マユカは母親に対して「この色ボケ女ぁ!」と悪態をつきながら、嫉妬に身を焦がし、黙々と食事をするのだった。 午後も買い物で、気を使ったシンジが少し荷物を持ってくれたが、あまりの荷物の量にうちに着くころにはマユカはへとへとになっていたのだった 朝の通学路。 「おはよう、マユカ」 「おはよう、キミエ」 「どうしたの? なんか疲れてるみたいだけど」 「うん、ちょっとね。それよりキミエ、聞いて聞いて!」 「なになに? まさかお父さんとエッチしちゃったとか?」 茶化したつもりのキミエ。まさか核心をついているとは夢にも思わない。 「うん、そうなの!」 嬉しそうなマユカの様子に冗談じゃないと悟り固まるキミエ。 復活するとキミエはマユカを人気のない路地に引っ張り込んだ。 「マジなの?」 「うん、もちろん」 「もう女になったっていうの?」 「それはまだ」 「はい?」 キミエはわけがわからない。 「ママの身体を借りてパパとエッチしたの! だからあたしのこの身体は処女のままだよ」 「なにがなんだかよくわからないんだけど?」 「んー、だからあたしとママの精神を入れ替えて、あたしがママの身体でパパとエッチしたの。仕組みも説明しようか?」 「いい。どうせ聞いてもわからないから。それで初めてのエッチはどうだった?」 「すっごくよかった! ママの身体も処女だったから最初はちょっと痛かったんだけど、パパとっても優しかったから、あたし最後は気持ちよすぎて気を失っちゃった。てへ」 キミエはため息をついた。おとなしそうなのに限って過激なのだ。キミエは姉貴分としてマユカにくぎをさしておくことにした。 「いい? マユカ。このことはほかの人には絶対に秘密よ。そうしないとおじさん、実の娘とエッチした変態にされちゃうからね」 「えー、みんなに自慢したかったのにぃ」 少しほほを膨らませてすねる様は反則的に可愛らしい。 「おじさんが変態扱いされてもいいの?」 「それはやだけどぉ」 「だったら絶対に秘密! いいわね!?」 「はぁい」 しぶしぶうなずくマユカ。 路地を出て学校に向かう。後ろから誰かが近づいてきた。 「マ、マユカ姉ちゃん!」 「あ、シンちゃんおはよう」 「お、おはよう」 「一昨日ママがさ、シンちゃんあたしに気があるなんていってたけど、そんなことないよねぇ?」 「え!? いや、その、えっと」 真っ赤になる加持シンジ。そのとき予鈴がなった。 「やばっ! 遅刻しちゃう! またね、シンちゃん」 「マ、マユ……」 声をかけようとした状態で立ち尽くす加持シンジ。彼の前途は多難だ。ため息をつくと気を取り直してマユカ達のあとを追い学校に向かって走り出す。 碇マユカ13歳、青春真っ只中! |