夜の繁華街を長身の青年が金髪の美女をおぶって歩いている。青年はベージュのスラックスに白いTシャツ姿、美女のほうは白と紺のセーラーシャツに赤いスカーフを巻いて、白いキュロットスカートをはいていた。青年の歩みに合わせて、彼女の長い金髪と赤いスニーカーがゆれる。 「キスから始まるミラクルだってあるよね〜♪」 美女は青年の背中でリズムを取りながら調子っぱずれの歌を大声で歌っている。かなり酔っ払っているようで顔が真っ赤だ。いつもは理知的な輝きを持った青い瞳も、今はアルコールでとろんとなっている。 「雨でも晴れでもあなたがいるから♪ こらシンジ〜、ノリが悪いぞ〜!」 美女はシンジと呼ばれた青年の首をしめた。 「ぐえっ。アスカ、おとなしくしてられないんだったら降ろすよ」 「なに〜!? ばかシンジの癖に生意気だぞ〜!」 アスカは再びシンジの首をしめた。するとシンジはアスカをおぶっていた手を放した。落ちそうになったアスカは必死にシンジにしがみつく。 「シンちゃんごめ〜ん! だからおんぶ〜!」 シンジはため息をつくと手を戻し、体をゆすってアスカをおぶいなおした。 今日はアスカの博士論文が通ったお祝いで飲み会があったのだ。まだ内定の段階だが若干22歳にして二つ目の博士号である。学位にそれほど興味を持っているわけではなかったが、それでも人から評価されるのはうれしいので、アスカは久しぶりに羽目をはずして飲んだのだった。そして足元がおぼつかなくなったアスカはシンジを迎えに呼んで、おぶってもらっているという訳だ。 シンジのほうは現在医大の4年生である。 「シンジ、ここ寄ろ」 アスカはラブホテルの前に差し掛かったとき、入り口を指差してそういった。いまどき珍しいお城の形をしたラブホテルだった。 シンジは一瞬立ち止まったがそのまま無視して歩き出す。 「よろ〜よろ〜よろ〜よろ〜よろ〜よろ〜よろ〜!」 シンジの首を絞めて体を揺さぶりながら駄々をこねるアスカにシンジはまた手を放した。 「休んでこうよ〜、ね〜ね〜ね〜」 シンジの首にしがみついてぶら下がりながらアスカがおねだりする。シンジの身長がかなり伸びたので首にしがみついているとアスカは足がつかないのだ。 「あのねアスカ。ここがどういうところか知ってるの?」 「よく知らないけどエッチするんでしょ? 一度あんたと入ってみたかったのよね〜」 シンジは無視して再びアスカをおぶおうとしたがアスカはさっと降りてしまった。おぼつかない足取りでラブホテルの入り口に向かう。 「だめだって」 シンジはアスカの手をつかんで引きとめた。するとアスカは振り返って目に涙を浮かべる。 「一緒に入ってくれないと泣くわよ!」 「だめ」 「ううっ」 アスカは涙をぽろぽろと流しながら唇をかんでシンジをにらみつけた。シンジは横を向いて無視を決め込む。 「うわ〜ん!」 「わかったよ! 一緒に入ってあげるから泣かないでよ!」 大声をあげて泣き出したアスカにはさすがのシンジも勝てない。いやいやラブホテルに入ることを承諾した。表通りから少し入ったところにあるとはいえ、人通りはそれなりにあるので、周りの人の視線が痛い。 「2名様ごあんな〜い!」 アスカはぴたっと泣き止むと、上機嫌でシンジの手を引っ張ってラブホテルに入った。 二人ははじめてはいるラブホテルの中をものめずらしそうに見回した。 「ふ〜ん。よしっ! この部屋にしよう!」 アスカはさっさと部屋を選ぶとかぎをもらってずんずん奥へといってしまう。と、思い出したようにシンジの元に戻ってきてその手を引っ張った。シンジはため息をついて後についていく。 その部屋はロココ調とか言うコンセプトの部屋のようだった。真中にあるベッドには天蓋がついていて、壁にはイミテーションの絵画。色調はピンクで統一されている。 アスカはシンジを部屋の中まで引っ張っていくとベッドに腰掛け、きょろきょろと周りを見回して突っ立ってたシンジの手を引っ張って隣に座らせた。 「んふふ」 アスカが周りを見回していたシンジの首に腕を回した。シンジはギョッとしてアスカの方を向くと、少し逃げ腰になって身を引いた。アスカはかまわずシンジの頭を抱き寄せると情熱的に唇を奪った。 長い口づけのあと、しばし見詰め合う。シンジの顔は酔っ払ったアスカに負けず劣らず赤かった。 「シャワー浴びてくるね」 そういってアスカは立ち上がった。バスルームへと歩くアスカをシンジはボーっと目で追った。 バスルームに入ったアスカはすぐにひょっこり顔を出すとシンジにくぎをさす。 「いっとくけど、逃げたらコロスわよ」 シンジはうつむいてため息をつくのだった。 ベッドに腰掛けたシンジが落ち着きなく周りを見回していると、バスルームから裸のアスカが出てきた。 「シンジ、シンジ!」 「ちょっ、バスタオルくらい巻いてよ!」 「いいからちょっと来て」 アスカはシンジの手を引くとバスルームに入った。 「ねえ、この棒なに?」 アスカが指差すところに手すりのような棒が横についていた。 「……エッチするときに女の人がつかまるんだよ」 「ふーん。……詳しいわね」 アスカが半眼になってシンジを見やるとシンジは決まり悪そうに横を向いた。 「ビデオで見たんだ。トウジんところで」 「あ、そ」 アスカは「あの馬鹿、シンジにろくなこと教えないんだから」と内心ため息をついた。気を取り直して棒につかまり、シンジのほうにお尻を突き出す。自分でも大胆なことをしていると思うが、アルコールが理性と羞恥心を麻痺させてくれている。 「シンジ、筆おろしさせてあげる。きて」 「ばっ!! なにいってんだよ!! 自分の言ってることの意味、わかってんの!?」 「わかってるわよ。……まさかあんた、もう済ませちゃったんじゃないでしょうね!?」 アスカは振り返ってシンジをにらみつけた。 「そ、そんなことしてないよ!」 「じゃあいいじゃない。あたしのヴァージン、あんたにあげるっていってるのよ。男だったら素直に受け取りなさいよ」 「そんなことできるわけないだろ!」 「なんで?」 アスカはシンジのほうに向き直った。両手を棒に乗せて後ろによっかかる。シンジはその最も美しいとされるプロポーションを持った裸身にしばし見とれていた。重力の影響をほとんど受けてないような張りのある適度な大きさの乳房、色の薄い控えめな乳首、折れてしまいそうなほど引き締まった腰、絶妙な曲線を描くお尻、すらりと伸びた手足、そしてほとんど毛の生えていない股間。股間の様子は中学のころとほとんど変わってないやと思ったところで我に返り、視線をアスカの体からそらせた。 「……アスカ、今酔っ払ってるじゃないか。酔った勢いでそんなことしたらきっと後悔すると思うんだ。だから酔っ払ってるアスカとはそういうことはできない」 「アルコールの力は借りてるけど、酔った勢いなんかじゃないもん」 「アルコールの力を借りることを酔った勢いっていうんだよ」 「何よ馬鹿! あたしの気持ちも知らないで! この唐変木! 出てけ!」 シンジは言われるままにバスルームを後にした。 シンジがベッドに腰掛けて待っていると、シャワーを終えたアスカが出てきた。ちゃんと服を着ている。 アスカはシンジの隣に腰を下ろした。 「こっち向きなさいよ」 アスカは両手でシンジの顔をはさんで自分のほうに向けた。 「あんたさ、好きな女いるの?」 「……うん」 「どんな人?」 シンジはしばし言いよどんだ。 「わがままで気まぐれでいつも強気で、でも本当は甘えん坊でさびしがりやかな」 「外見は? あたしのあったことある人?」 「金髪碧眼でスタイルもよくってとっても美人だけど、時々ものすごく凶悪な顔をする。表情が豊かなのも彼女の魅力かな」 「ふーん」 アスカはシンジの顔を挟んだ手を放した。 「あんたもシャワー浴びてきなさいよ。ちょっと汗臭いわよ」 「僕はいいよ」 「いいから浴びてきなさい!」 バスルームを指差し命令するアスカにシンジはしぶしぶシャワーを浴びに行った。 シャワーを終えて出てくると、アスカはベッドに横になっていた。 「アスカ」 「ん、眠い……」 アスカはのっそりと起きてベッドに座った。 「帰ろうか?」 「おんぶ」 腕を前に伸ばしたアスカにシンジは背を向けてかがんだ。アスカが背中におぶさると立ち上がり、体をゆすっておぶいなおす。 支払いを済ませてホテルを出るとアスカがぽつりと言った。 「今日あんたんち、泊まる」 シンジはため息をつくと、自分のマンションに向かって歩き出した。
マンションにつくとシンジはアスカをベッドに寝かせた。 「アスカ、着替え」 「めんどくさい。シンジやって」 アスカは半分眠りそうな物憂げな様子で答えた。シンジはため息をつくとクローゼットからアスカの白いネグリジェを取り出し、アスカの横に置いた。アスカは時々押しかけて泊まっていくので着替えが一式置いてあった。これは女よけの意味もあった。 「ほらおきて」 「ん」 寝ぼけ眼のアスカは言われるままにおきてベッドに座った。 シンジはセーラーシャツのスカーフを解いて、ボタンをはずした。 「アスカ、万歳」 「ん」 アスカが万歳をするとシンジはセーラーシャツを脱がせた。 シンジはしばし躊躇すると、白いレースのブラジャーに手をかけた。フロントホックをはずし、肩から落とす。 「たって」 「ん」 シンジはアスカを立たせると、キュロットスカートを脱がせた。ブラとおそろいのレースの勝負パンツが現れた。 シンジがベッドの上に置いておいたネグリジェを取るとアスカが言った。 「パンツも替える」 シンジはため息をつくとネグリジェを置いて引出しから替えのパンティを取り出した。かわいいプリントのあるパンティだ。 「僕出てるから自分でやって」 「や。シンジがやって」 シンジは小さくため息をつくとアスカのパンティを替えてやった。 「万歳」 アスカに万歳をさせると仕上げにネグリジェを上からかぶせた。胸元のリボンを結んで着替え終了。 「おやすみ」 「シンジ」 シンジが明かりを消して部屋から出ようとするとアスカがシンジを呼び止めた。 「おやすみのキス」 シンジはしばしの逡巡の後、アスカの元にやってくると軽い口付けを交わした。 「んふ」 アスカは満足そうに笑うと、深い眠りに落ちたようだった。 シンジは部屋を出ると、リビングのソファーをベッドに変形させて寝床を整えた。着替えてから戸締り火の元を確認するとシンジも眠りの床についたのだった。 明くる朝、シンジが朝食の準備をしているとアスカが起きてきた。よく寝たようで、すっきりとした顔をしていた。どうもアスカはどんなに飲んでも二日酔いしない体質のようだ。 「おはよ」 「おはよう」 シンジは昨日のこともあり、ちょっと顔を合わせづらい。料理に集中する振りをしてアスカのほうを向かずに返事をした。 朝食ができると差し向かいに座り食べ始める。 朝食を食べ終えるとシンジはアイスティーをいれた。 アスカはストローでアイスティーの氷をかき混ぜながら口を開いた。 「昨日聞き忘れたんだけど」 アイスティーを一口飲んで続ける。 「あんたの好きな人ってさ、もしかして目の前にいる?」 シンジは赤くなってせわしなくアイスティーをかき混ぜた。 「ねえ、答えてよ。どうなの?」 「い、いる」 答えを聞いてアスカも赤くなる。 沈黙。 二人がアイスティーをせわしなくかき混ぜる音だけが響いてた。 アスカはかき混ぜるのをやめると口を開いた。 「あのさ」 「え?」 シンジもかき混ぜるのを止める。アスカはアイスティーを飲み干すと軽く深呼吸をしてから再び口を開いた。 「結婚、しようか?」 アスカの突然の言葉にシンジは驚いて顔を上げた。 「え!?」 「いや?」 「い、いやじゃないけど」 「じゃあしよ」 「で、でも僕たちまだ学生だし」 「ちゃんと収入あるでしょ?」 「そ、それはそうなんだけど」 「だめ?」 真っ赤な顔で小首を傾げてかわいく聞いてくるアスカの魅力にシンジはくらくら来ていた。 「う、いや」 「いいの?」 シンジの頭の中をいろんなことがめぐっていた。だがその中にアスカと結婚することを否定するものはひとつもなかった。 「……う、うん」 「じゃあ、ん」 アスカは目をつぶって待ち構える。シンジは机越しにアスカにそっと口付けた。はじめは初々しいキスだったが、だんだんとエスカレートして今までで一番情熱的で激しいキスとなった。そのことはキスのあとのアスカの恍惚とした表情からもわかった。上気した頬のアスカはあまりに魅力的で、シンジはいとおしさでいてもたってもいられなくなっていた。 「アスカ、その……」 アスカはボーっとシンジの瞳を見つめるだけで答えない。シンジは意を決してアスカを掻き抱いた。その拍子に空のグラスが倒れる。アスカもシンジの背中に手を回し、抱きしめてくれた。シンジは二人の間を隔てる机が憎らしかった。もっとアスカを抱きしめて、アスカを感じたかった。 「ア、アスカ、その……、き、きき、きききき君が、ほ、ほほほ欲しい」 それに答えるようにアスカがシンジを強く抱きしめた。 「……シャワー浴びてくる」 そういうとアスカはシンジの体を軽く押し戻した。 「あ……」 シンジは名残惜しそうに手を放した。 アスカは立ち上がると着替えを取りに寝室に入った。残されたシンジは興奮しすぎて軽いめまいを覚えていた。どっかりといすに腰を落とす。 シャワー浴びてくるってことは……、い、いいってことだよな。 期待に胸と股間を膨らませる。昨夜の光景が頭に浮かんだ。 アスカは替えのネグリジェと下着を持つと部屋から出てきた。何か思いついたのか洗面室の手前で立ち止まり、振り返る。 「シンジ、一緒にはいろ」 「ぼ、僕はいいよ」 アスカはシンジの元までやってくるとその手を引っ張った。 「ほら、行くわよ」 「僕はいいよ」 アスカは手を引くのをやめてシンジをにらんだ。 「……あたし、不潔な男に抱かれるつもりはないからね」 「アスカの後にちゃんと浴びるから。だから先入ってよ」 アスカはため息をつくとシンジの手を放した。 「わかったわよ」 アスカはいまさら恥ずかしがることないのに、とぶつぶつ言いながら洗面室へと入っていったのだった。 シンジが朝食の片づけを終えたころ、アスカはシャワーを終えて出てきた。髪にタオルを巻いて白いネグリジェをまとっている。 「出たわよ」 「う、うん」 シンジは寝室で着替えを取ると、洗面室に入った。 シンジが上半身裸になったところで、アスカが洗面室に入ってきた。 「な、なに?」 「髪の毛乾かすのよ」 シンジのうちには手鏡を除けば鏡はここにしかない。当然ドライヤーもここに置いてある。 「僕がお風呂に入るまで待ってよ」 「いや」 アスカの表情が意地の悪いものになっている。 「アスカぁ」 「あんたはあたしの裸を何回も見たことあるのに、あたしはあんたの裸を一度も見たことないって不公平だと思わない?」 「思わないよ。大体いつもアスカが勝手に見せたんじゃないか」 「ふーん、そういうこと言うわけ」 アスカの目が細められる。何かよからぬことをたくらんでいるようだ。 「じゃあ、あたしたち婚約したんだから裸ぐらい見たっていいじゃない」 シンジは反論しようがなくて困ってしまった。アスカはシンジの困った顔を見るとうれしそうな顔をしてシンジの首に抱きつき口付けた。 「あんたの困った顔って大好き」 「勘弁してよ」 「しょうがないわね。今は勘弁してあげる。そのかわり後でじっくり見せてもらうわよ」 そういってアスカは洗面室を出て行った。 シンジがパンツを下ろしたところで再びドアが開いた。アスカはシンジの股間をじっくり観察してから口を開いた。 「あら、ちょっと早かったわね。ごめん」 ドアが閉じるとシンジは大きくため息をついたのだった。 いつもより念入りに磨き上げたが、それでもシンジの風呂は早い。シンジがシャワーを終えたときにはアスカはまだ髪を乾かしているところだった。アスカの腰まである長い髪はシンジのうちの小さなドライヤーではなかなか乾かない。 「アスカ、出るよ」 「いいわよ」 アスカは気にせず髪にドライヤーを当てている。シンジはあきらめて出ることにした。 なるべくアスカの視線を気にしないようにしてバスルームを出る。さっとバスタオルを取って体を拭き始める。 しばらくしてアスカが口を開いた。 「あんたってさ、毛深いほう?」 シンジがアスカの方を見るとアスカの視線は鏡に映ったシンジの股間に注がれているようだ。 「普通だと思うけど……」 「ふーん。じゃああたしが毛が薄いのかな?」 「多分そうだと思うけど」 「薄いのと濃いのとどっちが好み?」 「僕はアスカだったらどっちだって」 「あたしのことじゃなくてあんたの好みを聞いてるのよ」 「どちらかといえば薄いほうが……」 「ふーん。じゃあよしとするか」 シンジがタオルで背中を拭いていると再びアスカが口を開いた。 「あんたのってさ、……もしかして大きいほう?」 アスカの視線は相変わらずシンジの限界まで張り詰めた股間に注がれていた。 「普通だと思うけど……」 「……そんな大きいの入るかな?」 歳相応の知識をもっていながら経験のないアスカはどうやら不安なようだ。 「大丈夫だよ。やさしくするから」 アスカの不安を感じ取ったシンジは腰にタオルを巻くと安心させるよう後ろからやさしく抱きしめた。 「約束よ」 「うん。約束する」 アスカは首をまわしてシンジにちゅっと口付けると再び髪を乾かし始めた。シンジは持ってきた着替えを身につけると洗面室を後にした。 シンジが寝室でベッドに腰掛けて待っているとアスカがやってきた。アスカはベッドに乗ると正座してぽんぽんと自分の前をたたいた。 「ここに座って」 「う、うん」 シンジは緊張しながら言われるままにアスカの前に正座した。 シンジがアスカの前に正座するとアスカは三つ指を突いて深々と頭を下げた。 「あなたの妻となりますアスカ・惣流・ラングレーです。末永く可愛がってやってください」 慌ててシンジも頭を下げる。 「あ、うん、えーと、その、……あなたの夫となる碇シンジです。あの、これからもよろしくお願いします」 二人は同時に顔を上げて見詰め合った。アスカがそっと目を閉じる。シンジはやさしく口付けると、アスカをそっと押し倒したのだった。
愛の交歓の余韻に浸りながらアスカは口を開いた。 二人はアスカの卒業とともに皆に祝福されながら結婚式を上げた。身内とごく親しい友人だけの慎ましい式だった。 最も入籍は婚約してすぐにしていた。ヤキモチ妬きのアスカがシンジを縛るために。 婚約といえば、エンゲージリングはアスカが大粒のブルーダイヤをねだったため、シンジの貯金の半分がなくなってしまった。一般的な会社員の給料からすると、三年分にあたる金額だ。アスカに甘くなっていたシンジはねだられたとき二つ返事でOKしたが、値段を見て背中にいやな汗が流れたという。 さすがに悪いと思ったのか、式の費用はすべてアスカが出した。友人たちが出してくれたカンパはハネムーンの足しにした。ハネムーンは修学旅行でいけなかった沖縄に行った。アスカいわく、シンジによってくる女を追い払うのに忙しくてちっとも楽しめなかったとのことである。シンジに言わせると、自分よりよっぽど楽しんでいたとのことだが。 何はともあれ、二人は仲良く幸せに暮らしている。きっといつまでも。 おわり |