常夏の第三新東京市。今日は特に暑い。 がぁ〜。 もうすぐお昼という事もあり、気温は急上昇中、クーラーも全力運転中。 「ねぇ〜、シンジぃ〜」 なぜかシンジのベッドを占拠してぐったりだらけきった様子で寝転がっているアスカがシンジを呼んだ。今日は日曜日で学校もネルフも休みだ。タンクトップにジョギパンといういつもの格好でベッドに横になっている様子はまさにたれぱんだ。とりあえずたれアスカと命名しておこう。大胆な事にブラジャーすらしていない。 「ん〜?」 シンジは勉強机の椅子に腰掛けてゲーム雑誌などめくっている。本当はごろごろとしていたかったのだが、ベッドはアスカに占領されてしまったし、床に横になれるようなスペースはない。リビングに行けばいいのだが、そうするとアスカがボディプレスなどを仕掛けてくるのでゆっくりと本など読んでいられないのだ。 この二人、一つ屋根の下に暮らしているが恋人同士というわけではない。今のところ。ましてや同棲などでは断じてない。めったに帰ってこないが、ちゃんと保護者がいるのだ。 「退屈ぅ〜」 ちょっと甘えたかんじでたれアスカ。 「ん〜」 シンジはアスカの方を見ようともしない。 「たぁ〜いぃ〜くぅ〜つぅ〜」 シンジの方に寝返りを打ってたれアスカ。シンジのシャツを引っ張る。 「ん〜〜〜。掃除洗濯炊事、どれがやりたい?」 やっとアスカの方を向いてシンジ。 「やぁ〜よぉ〜、せっかくの休みなのにぃ〜。どっか連れてってよぉ〜」 シンジはため息をついた。アスカは当番があるのにほとんど家事をやらない。出来ないわけではないのだが、あまり好きではないらしく、シンジに任せっきりだ。 「アスカ、そういうことは彼氏にいいなよ」 アスカに特定の彼氏がいない事を知っていながらシンジ。いたら絶対こんな事は言わないだろう。ちなみにちまたの噂ではシンジがアスカの彼氏という事になっている。 「あんたでいいからさぁ〜、どっかいこぉ〜よぉ〜」 「やだよ、暑いから」 「え〜〜〜、いこぉ〜いこぉ〜いこぉ〜いこぉ〜いこぉ〜いこぉ〜いこぉ〜いこぉ〜」 枕を抱いて駄々をこね始めるたれアスカ。飛びっきりの美少女がこれだけお願いすれば普通の男なら心動かすところだが、いかんせんシンジはアスカと付き合いが長い。といっても一年ほどだが。それでも四六時中一緒にいればある程度免疫は出来る。耳をふさいで無視を決め込むシンジ。 アスカは効果がないのを見て取るとたれアスカモードを解除し、ベッドから降りてシンジを後ろからそっと抱きしめた。ノーブラの胸を背中に押し当てる事を忘れない。 「ねぇ〜、いこぉ〜よぉ〜、つれてってよぉ〜」 胸を背中に押し当てたまま体を左右にゆする。その感触にシンジの股間が反応しそうになるが、何とか鎮める事に成功した。 「あ〜もうわかったよ。どこに行きたいの?」 「ん〜、涼しいところ」 「じゃあスーパーに買い物に行こうか?」 「やだ。もっとロマンチックなところがいい」 「具体的にどこに行きたいのさ?」 シンジの質問にアスカはしばし考え込んだ。形のいいあごをシンジの肩に乗っける。 「……プラネタリウム! プラネタリウムにいこっ!」 「プラネタリウム? そんなのこの近所にあったっけ?」 「ちょっと待ってて」 アスカはシンジを開放すると部屋を出ていった。何やら自分の部屋でごそごそやってたかと思うと、すぐに戻って来た。 「ほらこれ」 部屋から持って来たパンフレットをシンジに見せるアスカ。最近出来たらしく割引券が付いていた。 「ふ〜ん。どうしたの? これ」 パンフレットの裏表を見ながらシンジ。リニアで二駅のところにあるようだ。アスカはベッドに腰掛けている。 「なんとかいう先輩がくれたの。デートに誘われたんだけど断ったら面白いから一度行ってごらんって」 「そ、そうなんだ。何で断ったの?」 デートと聞いてシンジは心穏やかでなかった。なぜだか自分でもよく分からなかったが。 「あたし好きな人いるもん」 「え!? じゃ、じゃあどうしてその人誘わないの?」 アスカに好きな人がいると聞いてシンジは自分でも驚くぐらい動揺していた。 「誘ってるんだけどさぁ、暑いから嫌だとか、スーパーに行こうかとかふざけた事ぬかすのよねぇ」 流し目をシンジに送るアスカ。だがシンジは動揺していて気付かない。 「へ、へぇ。アスカのお誘いを断るなんて恐れ多い事をする男もいるんだね」 「ほんとよねぇ」 ジト目になるアスカ。心の中ではシンジに対して「この鈍感男!」と悪態をついている。 「というわけで、お昼食べたらプラネタリウム行くわよ。ちょっと早いけどお昼にしてよ」 「う、うん」 シンジはふらふらと立ち上がり、キッチンで昼食の準備に取り掛かるのだった。 料理が出来上がるとシンジはアスカを呼びに部屋の前まで来ていた。 「アスカ〜、出来たよ〜」 「はーい」 がらっとふすまが開いてアスカが出てくる。ちらっと部屋の中が覗けたが、部屋中服が散乱していた。 アスカが席に付くと皿の上に見た事もない物体が乗っていた。箸で突つくアスカ。 「なにこれ?」 「かたヤキソバ」 シンジは中華なべを持つとおたまであんかけをすくってかけた。これで出来上がりだ。 「さ、召し上がれ」 「いただきます」 アスカは恐る恐る食べ始める。シンジもなべを置いてくると席に付き、箸を持った。 「いただきます」 「ふむ。なかなかいけるわね」 「そう。よかった」 にっこり微笑むシンジ。アスカはその笑顔にときめいてしまう。 「……あのさ、ユニゾンのときのマンボウのTシャツ、まだ持ってるでしょ?」 ユニゾンの訓練のとき、何枚かTシャツが支給されたが、音符の書いてあるのしか着なかった。 「え? うん」 「それ着てきて」 「いいけど」 かたヤキソバを食べる二人。 「……シンジ、お茶」 「ん」 立ち上がって冷蔵庫から麦茶を取り出し、アスカと自分のグラスに注ぐ。 「ごちそうさま」 「ごちそうさま」 昼食が終わるとシンジは洗い物、アスカは歯を磨いたり身だしなみを整え始める。洗い物が終わるとシンジも歯を磨いてから部屋に戻り、アスカの言う通りに着替えた。コミカルなマンボウがプリントしてある白いTシャツに膝丈のズボン、腰には財布や携帯電話などを入れたウエストバッグ、そして青い野球帽をかぶって準備は完了。リビングでアスカを待つ。 待つ事二十分あまり、やっとアスカが部屋から出て来た。シンジと同じマンボウのTシャツに細かいプリーツのあるきわどい長さの白いミニスカート、肩には赤いポシェットを提げていた。髪は赤いハンカチでポニーテールにしてある。なんとなく印象が違った。 「……どしたの?」 ボーッと自分の事を見詰めるシンジの顔をアスカが覗き込む。 「あ、いや、なんか印象が違うと思ったら口紅つけたんだね」 「まあね。あんたにしちゃよく気が付いたじゃない。さ、いこっ!」 アスカはシンジの手を引っ張ると玄関に向かった。シンジはスニーカー、アスカは白いサンダルを履き、家を出る。さりげなく腕を組むアスカ。シンジの背が伸びたおかげで収まりはいい。 「……暑い」 「……そうね」 うだるような暑さの中を、さらに温度を上げそうなかんじで、駅に向かって歩いていく。なんせペアルックでぴったり寄り添っているのだ。 「アスカ、暑くない?」 「暑い」 「じゃあ引っ付かないでよ」 「いや」 「どうして?」 「こうしていたいから」 立ち止まってシンジがアスカの顔を見ると、いたずらっ子のような顔をしていた。何を言っても無駄だと悟ったシンジは、ため息をつくと再び歩き出すのだった。 駅でクラスメートの女の子に会った。 「あら、アスカに碇君じゃない。デート?」 「こ、これは別に……」 「うん」 慌ててシンジが言い訳しようとしたのにあっさり肯定するアスカ。離れようとするシンジをがっちり掴まえて放さない。 「ペアルックだなんてお熱いわ〜。お邪魔しちゃ悪いわね。じゃあね〜」 女の子に手を振るアスカ。シンジはアスカとペアルックという事実に、いわれて初めて気が付き真っ赤になっていた。 「デ、デートだったの?」 「違うの?」 きょとんと聞き返すアスカ。 「だ、だってアスカ、好きな人いるんだろ? 僕なんかとデートしちゃまずいんじゃないの?」 「別に。だってそいつ今の今迄デートだって気付いてなかったんだもの」 「え? その人、来てるの?」 「うん」 きょろきょろとまわりを見回すシンジ。まわりに見知った顔はない。 「どこ? 僕の知ってる人?」 「よぉ〜く知ってると思うわよ」 不安そうなシンジの様子にアスカはくすくす笑い出す。シンジには何がなんだか分からない。 「さ、いこっ」 「う、うん」 きょろきょろとまわりを探すシンジを引っ張ってアスカは改札を抜けたのだった。 日曜の昼時だけあってリニアは空いていた。 「すずし〜、生き返るわ」 仲良く二人並んで座る。リニアは音もなく滑り出した。シンジはアスカの好きな人が気になって落ち着けなかった。 プラネタリウムは市立こども科学館という施設の中にあった。最新の立体映像を駆使しているので人気があるらしく、長蛇の列が出来ていた。二人も列に並ぶ。家族連れもいるが、やはりアベックが多かった。アスカは男達の注目の的で、一緒にいるシンジに嫉妬と羨望のまなざしが集まる。 「二時間待ちだって」 シンジが前に立ってた看板を見ていった。建物の中で涼しいぶん待つのは楽だろう。 「ふーん。……喉乾いた」 「わかったよ。何がいい?」 「いつもの」 「行ってくる」 シンジは自動販売機まで行ってジュースを買って来た。 「はい」 「ありがと」 待ちながらジュースを飲む二人。 「……ちょっとちょうだい」 「え? でも口つけちゃったよ?」 「いいから」 シンジから缶を奪い取って一口飲むアスカ。 「ありがと」 返された缶にはアスカの口紅が付いていた。シンジの胸は高鳴る。アスカはいたずらっぽい目でシンジを見ていた。 「……飲まないの?」 「の、飲むよ」 ぐいっとジュースを飲むシンジ。と、その時アスカがポツリと一言。 「間接キス」 「ぶっ、ごほっ! ごほっ! ごほっ!」 気管にジュースが入ったらしい。せき込むシンジ。 「大丈夫?」 アスカがくすくす笑いながらシンジの背中をさすってやる。 「……アスカ、僕をからかって楽しい?」 「うん、とっても」 にこにこと嬉しそうにいうアスカに、はぁ〜、とため息をつくしかないシンジだった。 30分ほど待つと列が動いた。入り口が見えて来たところで止まってしまった。 「……あのさ」 気になっていた事を勇気を出して聞こうとシンジは口を開いた。 「なに?」 「アスカの好きな人ってどんな人?」 「ん〜、そうねぇ。とりあえず鈍い、かな」 それなら自分じゃないな、と自覚のないシンジ。少しブルーが入る。 「他には?」 「普段はボケボケっとしているくせにいざというときは意外と頼りになってさ、あたしを助けてくれた事もあるのよね。それから男のくせに家事が得意でさ、料理なんかとってもおいしいのよねぇ」 「ふ、ふーん。ご飯作ってもらった事があるんだ」 「ほーんと、鈍いのよねぇ。いっつも人の顔色伺ってるくせに」 「こ、告白とかしないの?」 「やっぱり向こうからしてもらいたいしぃ。でも本っ気で鈍いから今晩辺り告白してみようかなぁ」 「そ、そう。がんばってね」 アスカがシンジの襟首をつかんでぐいっと引き寄せた。アスカの目が据わっている。 「な、なに?」 「あんた、ほんっとに分からないの? それとも分からないふりしてるだけ?」 「な、なにが?」 おびえながらシンジ。アスカはため息をつくとシンジを開放した。 「もういいわ。あんたに期待したあたしが馬鹿だった。ところでそういうあんたはどうなのよ? 好きな女の一人もいるの?」 「僕は……よく分からないよ」 「気になる相手ぐらいはいるんでしょ?」 「う、うん、まあ」 「どんな女?」 「とってもわがまま、かな」 それなら自分じゃないな、と自覚のないアスカ。かなりブルーが入る。 「他には?」 「今まで僕が見た女の子の中じゃ一番可愛いんだけど、プライドが高くて意地っ張りで気が強くってさ、本当はさみしがりやであまえんぼうなくせに人に弱いところを見せないんだ」 「ふ、ふーん。それで?」 もしかして自分かな、と浮上し始めるアスカ。 「いっつも僕の事馬鹿にしてからかうし。退屈だからどっか連れてけとかわがままいってさ、ほんと性格悪いんだ」 「悪かったわね、性格悪くて」 ぼそりというアスカ。もはやシンジのまわりで自分以外思い当たる人物はいない。アスカは今晩に向けてある決心を固めた。 「え?」 「なんでもない。そんな女のどこがいいの?」 「だから……よく分からないんだ」 「外見に惹かれたとか?」 「まったくないとはいわないけど、違うと思う。多分彼女の前向きなところに惹かれてるのかもしれない。……そういうアスカはどうしてその人を好きになったの?」 「ん〜、月並みだけど優しいからかな。あたしのわがまま聞いてくれるし。それにとっても強いの」 ますますもって自分とは違うと思うシンジ。かなりブルーが入る。 「……もしかして加持さん?」 「加持さんのどこが鈍いのよ?」 あきれたようにいうアスカ。 「そ、そうだね」 「もうこの話はおしまい。そういえばこのあいださ、……」 二人はたわいのない世間話をはじめるのだった。 更に45分ほど待ってやっと中に入れた。普通のプラネタリウムと違って映画館のように斜面に段々になって座席があり、その上に斜めにドーム状の青い壁がかぶさっていた。ドームの中心に太陽と思しき球体が輝いて、照明の代わりになっている。 ぶーっ。 ブザーと共にBGMが始まり、ナレーションが入る。太陽がだんだんと沈んでいった。青かった壁も赤から紫、そして黒になっていく。場内が暗くなると、アスカはそっと手をシンジの手に重ねた。シンジはそっと手を返し、アスカの手を握ってくれた。アスカがシンジの横顔を見ると、素知らぬ振りをしているが、照れているのは明らかだった。アスカは星を見ながら、甘えるようにこてんと頭をシンジにもたれかけたのだった。 日本から見える星々、見えない星々、セカンドインパクト前の星々を見た後、このプラネタリウムのうりである立体映像を駆使した宇宙旅行が始まる。ドーム内に美しい惑星や銀河、星雲が広がった。 「きれい……」 「うん……」 ぎゅっとシンジの手を握るアスカ。シンジも握り返してくれる。アスカの至福の時だった。 待つ時間は長く、楽しい時間は短く感じられるもの。あっという間に上映時間は終わり太陽が昇って来た。場内が明るくなり終了のアナウンスがある。 「……行こうか」 「……うん」 プラネタリウムを出ると三時を過ぎたころであった。 「シンジ、おやつ」 「わかったよ」 シンジはため息をつくとアスカに引っ張られて館内の喫茶店に入った。 「あたしマロンパフェ。シンジは?」 「僕はフローズンヨーグルトにしようかな」 注文を済ませるとさっき見たプラネタリウムの話に花を咲かせる。ここでもアスカは注目の的だった。 「なかなか面白かったわね」 「うん」 「この後どうする?」 「せっかくだからここ見てこうよ」 「そうね」 注文したものが来た。早速食べ始めるアスカ。シンジも食べ始める。 「シンジ」 「ん?」 「あ〜ん」 にこにこしながらアスカがパフェをすくって差し出した。 「い、いいよ」 赤くなるシンジ。アスカの顔が不機嫌なものに変わり、シンジを睨み付ける。 「あ〜ん」 再びにこにこしてアスカがパフェを差し出した。しぶしぶ口を開けるシンジ。耳まで真っ赤だ。 「シンジ、あ〜ん」 今度はアスカが口を開けて待ち構えた。シンジは真っ赤になったまましぶしぶとフローズンヨーグルトをアスカの口の中に入れる。アスカは嬉しそうに食べるのだった。 なんだかんだ遊びまわって家に着いたのは5時過ぎ。 「なかなか楽しかったわね」 「うん」 「それにしてもほんとに今日は暑いわねぇ」 クーラーをいれるアスカ。ところがいっこうに冷たい空気が出てこない。 「あっつ〜。なによこれ、壊れてんじゃないの?」 いろいろと操作してみるが全然涼しくならなかった。 「どれどれ」 シンジも操作してみたが同じだった。 「だめだ。え〜と、故障の際は……」 シンジが書いてある連絡先に電話したが、修理は明日以降になるという事だった。とりあえず窓という窓を全開にする。 「まったくこんな時にクーラーが故障するなんて。誰かの陰謀じゃないの」 「まさか」 笑いながらシンジ。 「い〜え、きっとミサトの陰謀よ! あたし達のデートに嫉妬したんだわ! まったく自分が一人もんだからって人に当たらないで欲しいわね」 「だぁれが人に当たったって!?」 突然かかった声に振り向くとミサトがむすっと立っていた。 「ミ、ミサト」 焦るアスカ。 「ミサトさん、お帰りなさい」 「ただいま。といってもすぐに出かけなきゃならないのよ」 「そうですか。じゃ、夕飯は?」 「いらないわ。……あら、あんた達ペアルックじゃない。はは〜ん、さてはデートして来たわね」 にんまりからかいモードに入るミサト。 「そうよ。いいでしょ〜」 自慢げにいうアスカ。 「ア、アスカ」 慌てるシンジ。ミサトに知られたという事はネルフ中に知られるというのと同義だ。 「はいはいご馳走様」 ミサトは自分の部屋に入ると着替えを持って出て来た。 「それじゃ行ってくるわ。明日は帰れると思うから。じゃあねん」 「いってらっしゃい」 「いってらっしゃ〜い」 シンジとアスカに見送られてミサトはあわただしく出かけていったのだった。 「あっつ〜」 ごろごろとテレビを見ながらアスカ。 「アスカ、ご飯だよ」 「は〜い」 アスカが席に付くとシンジがざるに入ったそばを持って来た。 「これ、何?」 アスカはざるの横の器に入った白いものを指差して聞いた。 「山芋をすりおろしたものでとろろっていうんだ。暑い時にはこれがいいって聞いたから」 「ふ〜ん。どうやって食べるの?」 「めんつゆにいれてそばと一緒に食べるんだよ」 スプーンでとろろをすくってみるアスカ。 「なんかねばっとして不気味〜」 「おいしいから食べてごらん」 恐る恐るめんつゆにとろろを入れ、そばを食べてみるアスカ。 「あら、なかなかいけるわね」 「だろ?」 にっこり微笑むシンジにアスカはちょっと赤くなったのだった。 夕飯がすむと、珍しい事にアスカはシンジを先に風呂に入らせた。 「アスカ、お風呂どうぞ」 「ん〜」 アスカはシンジが風呂に入っている間に念入りに選んだパンティだけもつと風呂場に消えた。それ以外のいつもは持っていくはずの着替えはなぜか持っていかなかった。 「ふ〜、あっつ〜」 髪の毛を拭きながら風呂から上がって来たアスカ。シンジはその格好を見て思わず目をそらした。 「な、なんて格好してんだよ!」 「いいじゃん。暑いんだし」 アスカはパンティしかはいてなかった。そのパンティも白い凝った作りのいわゆる勝負の時にはくような刺激的なものだった。 「と、とにかくなんか着てよ!」 横を向いてシンジ。顔は真っ赤だ。アスカの裸を見るのははじめてではないが、青少年には刺激が強すぎる。 「やぁよ、暑いもん」 「僕だって男なんだよ!? そ、そんな格好してると、お、襲うかもしれないよ!?」 アスカはシンジの前に回り込み、美しいバストをことさら見せ付けるようにする。 「出来るもんならやってみなさいよ。あたしは抵抗しないわよ」 ………。 この後何があったのか、二人のみぞ知るところである。ただ、次の日揃って寝不足で登校して来た二人はいつもと変わらないように見えて、それでいて今までとは違うなんともいえないいい雰囲気を醸し出していた。くびすじにあった赤いあざをキスマークではないかと女の子たちに追求されたアスカは、シンジと恋人同士になった事を白状したのだった。 おわり |