・・・助けて
・・・誰か
・・・助けて
行かないで
アタシを置いて行かないで
アタシを一人にしないで
お願い
・・・ママ
・・・・・マ・・・マ・・・
ハァハァハァ、
深夜。
草木も眠るという時刻。
少女は荒ぶる動悸と、自ら発した叫び声で飛び起きた。
ハァハァハァハァハァハァ、
「・・・いや・・・いや」
涙の粒が水滴となり、眼から溢れ出す。
暖を求めるように自らを抱きしめる。
「いや、いや、助けて、置いてかないで、一人にしないで」
母親を探して泣きじゃくる幼子のように、少女は慟哭を続けた。
二割の雑然さと、八割の整頓で構成された、六畳ほどの部屋のベッドの中で身を震わせ続けていた。
「アスカ?」
滑らかな木の柱で上段を支える形状となっている二段ベッドの上から、黒髪の少年が下部を覗き込む。
アスカと呼ばれた少女から返答は無く、少年ははしごを伝って床へ降りた。
「アスカ?」
少年は再び呼びかけて、手を差し伸べた。
「いやっ」
その手を払いのけると、膝を抱きかかえ泣きじゃくった。
「・・・アスカ」
少年は壊れやすいガラス細工に触れるかのように、両腕でアスカを抱きかかえた。
「・・・☆%#」
最初は声にならない叫び声を出していたが、しばらくすると、少年の温もりにそっと包みこまれたかのように、アスカは動きを止めた。
少年は温厚な性格を思わせるような口調で、アスカに話し掛けつづけた。
「僕がいるから。・・・ずっと一緒だから。・・・一人にはしないよ。安心して、アスカ」
アスカの震えがだんだんと弱まっていき、微かに頷いた様に見えた。
アスカを抱きかかえたまま少年は横になり、少女が眠りに就くまで姿勢を保っていた。
涙の跡がついた横顔を見守りながら、そっと髪を撫でる。
「一人にしないで、か。どんな夢を見ていたんだろう」
そう呟いて、少年はそっと身を放そうとした。
しかしアスカの細い指先がしっかりと背中に食い込んでおり、離れることが出来なかった。
しばらくして少年にも夢魔の手が伸びて、軽く欠伸をした後、目を閉じた。
アスカ、こんなに華奢だったけ
失いつつある意識の中で、少年は思った。
外の小さな庭から虫達がチィチィと鳴いていた。
空には月が浮かびあがり、静かな夜だった。
碇シンジ、アスカ、15歳の夏の夜。
今まで片時も離れたことのない2人の、
始まりの夜。
間が開いてしまいました。
しかも新しいシリーズ。
この話が短くなるのか、長くなるのか。
まだ見当もつきません。
今回は導入部のため、短くなりました。
次回は早めに掲載できたらと思います。
本編はこちら”めぞん”で。
外伝は僕のHPで、発表していきたいと思います。
最近、自宅のMacが死にかけていて、書き辛いんです。
仕事もあるし、FlashMovieも作り始めたし。
1日36時間欲しい今日この頃。
それでは、近いうちにまた。