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[西垂]の部屋
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「原因が分からないってどう言う事ですか!」
黒髪の女が目の前に居る白衣を着た男に詰め寄る。
「そのままの意味ですよ。最初はこれと言った原因が無かったので栄養不足で体が
弱っているだけだと思い治療しましたがそれにもかかわらず彼の体は悪くなる一方で
す。
感染症はもとより遺伝子的にも問題は無いんです。
私達にも全く解らないんです」
男はカルテから顔を上げずに答えた。
「だからどうして解らないんですか!何故・・・・」
「ユイ」
背の高い男が声をさえぎる。
「先生、シンジはもう直らないのですか?」
「・・・・・・・・・。
シンジ君と同じような症状の子が世界中に何人もいます。
それもほとんどシンジ君と同じような年頃・・・・いえ、おそらくはあのセカンドイ
ンパクトから一年以内に生まれた子供だと思います。
ですからこの病状はいたるところで研究しているはずです。
近いうちに原因が解り、シンジ君もきっと良くなりますよ。」
「近いうちって何時ですか!!
シンジを直して!!
シンジを・・・」
すすり泣く声だけが辺りに響く・・・・・
だめだ!
まだきちゃだめだ!!
きみのちからはぼくにはつよすぎるんだ!!
まだぼくはきみとひとつになれないよ!!
きみのこころはぼくのこころ
ぼくもきみとひとつになりたい
ぼくたちはもともとひとつだったんだからね
でもいまはまだむりだよ!!!
いまむりにひとつになったらぼくたちはここにいられなくなる!!!
またなんまんねんもまつのはいやだよ!!
こんどこそあのひとにあうんだ!!!!
もうすこしまって!
ぼくのちからがつよくなるまでまって!!
こんどはあえそうなきがするんだ・・・・・
!!
だめだ!
まだきちゃだめだ!!
きみのちからは・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・
・・・・・
・・・
・・
黄昏
プロローグ
「ユイちゃん、今日もシンジの所に行かないのか?」
自室でコンピューターのディスプレーをじっと見ているユイにゲンドウが声をかけ
る。
「ゲンちゃん、これを見て。」
「これは・・・・ゲヒルンの例の計画かい?
いったいこれが・・・・・・・ん?違う・・・
これはゲヒルンの物では無いな。
過程はほぼ同じだが結果が・・・目指す物が全く違う・・・・・」
「これは私の計画よ。」
「なに?」
「私が大学にいた時、冬月先生に見ていただいた物。
それを死海文書にそって修正を加えたのがこれよ。」
「何故、こんなものを・・・?」
「ゲンちゃんは老人たちの本当の望みを、ゲヒルンの計画がもたらす物を知っている
でしょ!
老人たちの計画は絶対に潰さなければいけないのよ。
これはそのための計画・・・・・。」
「たしかにこれなら奴等を欺いて計画を実行できるかもしれん。」
「それにシンジも助かるかもしれないわ。
この計画には神の力の辿り着く所を決める者が必要なの。
その人は出来る限り神に近い者でないといけないのよ。
そのためにはその人に神の力を付与する必要があるの。」
「こら!シンジ!!
駄目じゃないの、またこんな所に来て!!」
ゲージ内にユイの声が響き渡る。
しかし、声を掛けられた子供・・・シンジはじっと見詰めている。
ゲージ内に張られた液体に浸かっている異形の物を。
「シンジ?
どうしたの?」
シンジは肩に手を置かれて初めてユイに気が付いたように振り替える。
「母さん・・・・何でもないよ。
もう戻ろう、ここは少し寒いからね。」
「え?ええ。
戻ったらゲンちゃんを誘ってお昼にしましょう。」
二人はゲージを出て行く。
(もう少し待ってて・・)
シンジは心の中で呟いた。
「何故こんな所に子供がいるんだね?」
『私が連れてきたんです、冬月先生。』
冬月は目の前にいる赤木ナオコに聞いたのだが返答はスピーカーから発せられた。
「今度は君の大切な実験なんだぞ。」
『だからこそですよ。
シンジには私達のやっている事、やろうとしている事を見ていてもらいたいんで
す。」
「いけない!!
まだだめだ!!!
早く実験を中止して!!!
母さんが!!!」
「急にどうしたの?
シンジく!!」
シンジが急に慌て出すのを見てナオコが声を掛けた時、サブディスプレイが赤く染
まった。
「パルス逆流!?
まだ危険なレベルでは無いのに!!
え?
これはエヴァからの侵食!?
そんな!!」
「ユイーーー!!!!」
「早く中止して!!」
ゲンドウの叫び声を聞いてナオコの指が一瞬躊躇するかのようにとまり・・・・・そ
して緊急停止プログラムを起動した。
ディスプレイが元に戻っていく。
ただ
“被験者LOST”
という文字を残して。
モニターからユイの姿は消えていた・・・・・・。
シンジの前にエヴァのむき出しにされたコアがある。
コアにそっと手を触れるシンジ。
するとコアが鈍い光を発する。
それを確認したシンジは手に力を込める。
ゆっくりとではあるが手がコアに入っていく。
肘までコアに入った時、シンジが呟く。
「おいで」
いままで鈍い光を発していたコアからゲージ内を埋め尽くすような強烈な光が溢れ出
す。
その光が収まった時シンジの手には一人の少女が抱えられていた。
「やっとあえたね・・・・」
しばらく少女の顔を見ていたシンジはゆっくり少女を床に横たえた。
そして、コアに手を触れて力を込める。
コアに変化は訪れない。
「やっぱり駄目か・・・」
シンジは少女を抱え上げる。
「必ずそこから解放するから、しばらく待ってて。」
そう言うとゲージから出るために歩き出した。
不意にゲージの扉が開きゲンドウが入ってくる。
「父さん!
なぜここに?」
シンジはゲージ内に起こった事を自らの力で外に漏れないようにしていた。
だから今ここにゲンドウが来た事に驚いていた。
「私はエヴァを・・・見に来たのだが。
それよりシンジ、おまえこそなぜここにいる。
それにその子はいったい・・・・・」
(エヴァと同じ・・・か。
一体あの子供は何者なのだ?
二人とも何も喋ろうとはしない。
自白剤を使っても良い物だろうか?
いや、今は下手に刺激するよりも様子を見るべきか?
ゲージのモニターには何も映っていない。
私の姿すらも。
通路のモニターには三人とも映っているのにだ。
シンジがどうやってゲージに来たのかすら不明だ。
しかし、もしあの子供が計画に使えるのならばシンジとは比べ物にならないくらい良
い依代となる。
シンジと違いエヴァと同じなのだからな。
準備ぐらいはしておくべきか。)
「あら碇司令その子は?」
「僕の従兄弟の綾波レイです。
これからはいつも一緒にいれるんだ。」
ゲンドウが答えるより早くシンジが答える。
「よろしくね、レイちゃん。」
ナオコが声を掛けるとレイはシンジの後ろに隠れてしまう。
「・・・・このおばさん・・怖い・・・・」
「ご、ごめんなさい、ナオコ・・おねいさま。
ほら、レイも謝って。」
「どうして?」
「誰でも気にしている事は言われたくないものなんだよ。」
会心の笑みを浮かべながらナオコは二人に聞こえるように呟いた。
「・・・・良い実験体が見つかったわ。
それも二体・・・・・」
「父さん、僕達は少し出かけてくるよ。
やっておかなきゃならないことがあるんだ。」
「そんな事で呼び出したのか。
くだらんことでよびだすな。」
「いくね。」
「好きにしろ。」
そうゲンドウが言ったとたんシンジたちの足元に漆黒の円い影ができる。
シンジたちがゆっくりとその影に沈んでいく。
「きっと、また会いにくるよ。」
そう言い残して二人は跡形も無く消えた。
そこには呆然としたゲンドウが残されているだけだった。
西垂さんの『黄昏』プロローグ、公開です。
入居後さっそくの新連載(^^)
作者さんの中では色々と設定が出来ているようですね、
この先にどう出てくるのかな。
危なげなナオコさんがでるのは
なかなか無いかも。
さあ、訪問者の皆さん。
連載を始めた西垂さんに感想メールを送りましょう!
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