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−本編はどうしたという突っ込みにもめげす、性懲り無く突発短編(笑)−

 

−そりゃないよぉ、ミサトさぁん!−

 




(注・このお話は出来るだけ大きいフォント表示でお楽しみ下さい)

 

 

 とある日の出来事。

 今日は比較的早めに仕事から帰宅できたミサトさん。

 玄関のスリットにカードを通しながら、今夜の食事はなんじゃらほいなと考える。

 可愛い弟が、さも美味しい食卓にしてくれているのだろう。

 可愛らしい妹は、さぞその弟と相変わらずの痴話喧嘩を繰り広げているのだろう、と。

 

 ……痴話喧嘩ぁ?

 

「おーらなめんじゃないわよこのマセガキ共ォォォォォ!! アタシャ29にもなってキリキリと働き蟻してんのは、アンタ達の愛の根城の生育の為じゃないんじゃこの被扶養者ァァ! なんでこの容姿端麗美貌美麗の固まりのよーなアタシが一人モンで、14の身空のアンタ達はとっくに売約済みなのよぉぉぅうう!!」

 何をトチ狂ったか、ドアが開けば即座にゴネ出す始末のミサトさん。

 

 肝心の、家の中にいた二人の対処がまた不味かった。

「って言ったって、ミサトさんだし」

 シンジ、素っ気ない止め。

「そうそう、ミサトだもんねぇ」

 アスカ、しがない止め。

「ざけんなざけんなこのガキ共!! それじゃ何かい!? 婿なし甲斐なし『葛城ブランド』は生憎ご愁傷様とでも言いたいのかこの色惚けェェ!!」

 ミサトさんミサトさん、そういう態度がアカンのですよ。

「そうなんじゃない?」

 だからなんでそう素っ気ないのアスカ。

「だってミサトさんだから。それにミサトさんだし……」

 シンジ、何言ってる?

「そりゃ加持さんも逃げるっちゅーのよねぇ。

 家事能力はゼロ、作戦部長としての信頼はガタ落ちの一途。

 ご自慢の美貌とやらも歳のせいで低迷の一途。

 っていうかやっぱ三十路間近だしねぇ」

 両手をヒラヒラとさせ、アスカが逐一いたぶり続ける。

「駄目だよアスカ。そんな事言ったら。

 それもこれも、この間リツコさんのお見合いが成立したのが一番の原因なんだから」

 宥めるWith虐めるなシンジ。

 そりゃアスカと一日20回もディープな訳だ。(←関係ない)

「こっこっこっこっこっこっこっこっこのガキどもぬけぬけと……」

 養鶏場出身のミサトさん、いよいよブチ切れ五秒前。

 

 5,

 

 4,

 

 3,

 

 2,

 

 1,

 

 ……,

 

「うぇえええええええええええん!!」

 何故か突然泣きながら自宅を脱兎する!

 ミサトさん。お帰りはいつ?

 

「あ〜あ、泣かしちゃった」

 シンジ、さっきまでの自分は高級戸棚の上にポイ。

「まあいいでしょ。その内腹を空かせて帰ってくるわよ。

 それよりシンジぃ……」

 アスカが艶に満ちた顔を刷り寄せ、シンジに抱きつく。

「駄目だよアスカ、ご飯出来たばかりなんだから……」

 声は嫌がりつつも、顔はだらしなく緩んでいる。

「ばぁか。顔はバカ正直してるわよ」

「え?」

 えいっ! とばかり、そこでアスカが呆けたシンジの唇を奪う。

「んむ……」

「んっ……」

 

 まあ要するに、のろけに当てられて耐え難きを耐え、忍び難きを忍び……。

 玉音放送は、毎日のように葛城家に流れていたのであろう。

 毎日が終戦日のミサトさん。ああ、いとあはれなり。

 

 ちなみに、二人が本日17回目となるディープキスに興じている頃、リビングのテーブルに用意された二人分の食事が徐々に冷めつつあった。

 当然、シンジの分とアスカの分であった。

 


 

 その頃、ミサトさんは公園のベンチで、新聞にくるまりながら夜風に震えていた。

(なんで、なんでこの私がこんな惨めな思いをしなくちゃならないの!?

 シンジ君はアスカといちゃいちゃ、レイは渚君といちゃいちゃ。

 司令はユイさんといちゃいちゃ。マヤちゃんは青葉君といちゃいちゃ。

 この間なんか洞木さんまで、私の家に来てご丁寧にわざわざ鈴原君といちゃいちゃ。

 加持の阿呆は何処かにトンズラこいて帰ってきやしない……。

 許し難しはあのリツコまでお見合い相手とののろけ話ばっかり。

 

 それもこれも、あんな物を何処からか受け取ったのが全ての原因なのよ!

 そう、そうよ! そうでなけりゃ私がこんなにも……!

 

 待ってなさい、まだ若さのクーリングオフは効くのよ!

 効かないなんて言わせないわ、そこは作戦部長の権限と意地で……)

 

 おーっほっほっほっほっ。

 ミサトさんの笑い声が公園中に木霊する。

 

「こらっ! 誰だ!?」

 巡視の警官の持っていたライトがミサトさんの足下に迫る。

「あっ、やべぇっ! ズラかるか!」

 ミサトさんはまたもダッシュ!

 闇の第三新東京にそそくさと消えていった。

 


 

 数日後。

 シンジとアスカは妙な噂を聞いた。

 ネルフの女性職員の中に、どうも極端に出勤数が激減した者がいるらしい。

 集団の風邪か、とも思われたが、どうも違うようだ。

 しかも、対象の女性は皆29歳であると言うのだ。

「……これはおかしいわね」

「何が?」

「ミサトよ。ミサトが原因だわ。

 あの女、自分のひがみで同じ境遇の女性を陥れているのよ。

 そうに違いないわ!」

 自信に満ちた表情で断言するアスカ。

 やっぱり彼女の部屋にも高級戸棚は存在するようで。

「そうかなぁ?」

「そうに決まっているわ。そうと分かれば、行きましょ」

「行くって、何処に?」

 顔中に疑問符を張り付けたシンジも可愛いわね、などと思いつつ、アスカ。

「リツコの所よ。リツコの事だから、目敏く事情を知っている筈だわ」

「成る程……」

 流石はアスカ。そんな聡明なところも可愛いね、などと思いつつ、シンジ。

「それじゃ、行くわよ」

 と言いつつ、何故か一瞬後にはアスカの踵が浮いていたりする。

 って言うか中学生の身空で、という奴である。

 


 

「アスカの推理は尤もだけど、そうじゃないみたいね」

 リツコは顎に手を添えて、熟考する。

 原因は彼女にも掴めていない。

 但しそれなりに情報は集めていた。

「29歳の女性に限って被害者なのは事実だけど、

 既婚者はおろか未婚者も出勤して来ないのよ。

 未婚者は、むしろミサトの味方の筈じゃない?」

 言われてみれば、と二人は一つ頷いた。

「理由は調べたわ。既婚者は鬱状態、或いは極度の自己喪失症。

 未婚者は、自分が独身である事に対する極度の情緒不安定を訴えているの。

 どうも、既婚・未婚に関わらず、犯人は『29歳』そのものを陥れようとしてるわね」

「……つまり、犯人は29歳の女性その物に無差別に恨みがある、そういう事ですか?」

 シンジが精一杯事情を先読みするが、

「それも少し違うわね、シンジ君。

 29歳の女性に対する計画的な攻撃と言えるのよ」

「攻撃って、何で?」

 言い出したアスカの手に、一つの金属片が手渡された。

「何? これ」

「被害者の職員に秘密裏に行き渡っていたの。

 どうも、縁結びのお守りとか安産のお守りとかの袋に入れて頒布してたみたい。

 しかも、MAGIで調べても材質は不明。どうも、地球上では生成出来ない技術を

 利用している物だという事は分かったわ。

 MAGIがコード601を出したのは、第四使徒の時以来よ。

 しかし、全く以て非科学的な現象ねぇ……」

「ふ〜ん……」

 アスカはリツコの言葉に適度に相槌ながらも、その金属片をコロコロと掌の上で他愛なく転がしていた。

「あ、アスカ! 危ないよ、触っていたらもしかして……」

「その心配はないわ、シンジ君。

 対象は、あくまで29歳だけみたいだから。

 私は三日間持っていたけど特別何もなかったし、

 マヤにもサンプルを持たせているけど私と同じよ」

「そうですか、良かった……」

 シンジがほっ、と胸をなで下ろした。

 こんな事でアスカとの絆を絶たれたらそりゃー一大事な上にやり切れないだろう。

「心配してくれてんの、シンジ?」

「もっ、勿論だよ! アスカに何かあったら、僕……」

 それ以上は恥ずかしくて言えた物じゃない。

 目を逸らして照れ隠しするシンジを覗き込むように、アスカのはにかんだ笑顔。

「ありがと」

 

 今度はリツコが目を逸らした。

 って言うか舌と舌とがメビウスの輪って奴。

「ま、いいけどね」

 もうこんな光景にやっかむ事もなくなったもの、ね。

 赤木のりっちゃんは今日も平和であった。

 


 

「出てきなさいリツコぉぉぉ!!! ネタはあがってんのよおぉぉぉぅぅぅ!!!」

 そんな恋人同士の静寂を突き破り、独身怪獣カツラギーがリツコのラボに来襲して来た。

「「ミッ、ミサト!?」」

「ミサトさん!?」

「うがあああああああ!! 貴様ぁぁぁぁぁ!!!」

 いや違う。それは最早ミサトさんではなかった。

 復讐とリベンジに燃える一人の……ええい同義語だなんて突っ込みは後!

 復讐に燃える一人の「鬼」がそこにいた。

 まさに、怒髪天を衝くという奴である。

 

 ・後に証言者S,I君はこう語る。

 「初めて見ました、あんなミサトさんは。

  僕が知るミサトさんは、もっと優しくて慈愛に満ちた女性だったのに……」

 ・同様に証言者S,A,Lさんはこう語る。

 「いつも朗らかで笑顔を絶やさない、姉のような存在でした。

  いつからミサトはあんな風に豹変してしまったのか……」

 ・同様に証言者R,Aさんはこう語る。

 「ミサトとは、十年来の親友でした。そう、親友でしたわ。

  でも、その時の彼女はもう、昔の彼女ではなかったんです……」

 

 

「やっかましゃあああ余計はエピローグはいらんのじゃあああああ!!」

 エピローグではなくモノローグだと言い直す余裕もなく、異様な雰囲気に威圧された三人は、壁際に追いつめられていた。

「しゃああ、リツコぉぉぉ。

 よくも私をこんなにまで貶めてくれたわねぇぇぇぇぇ。

 白状しなさいな、金髪の女性がこのお守りを配布していたって、

 もっぱらの噂なのよぉぉぉぉほほ、のほ」

 鬼か悪魔か、或いは妖獣ミサトンガーか、恐怖の表情のリツコに向かってじりじりとにじり寄るミサトさん。しかも息はかなり酒臭いと来た。

「わ、私じゃないわよ」

「その台詞はベタベタで飽き飽きなのよぉぉぉぉぉ!!

 グワワァ! いーからとっとと吐きな!!!!! ……クケッ」

 もーこんなのミサトさんでも何でもないよぉ。

 一番嘆いているのは実は作者だった。なら書くな。

「ほ、本当に私、知らないのよ……」

 最早リツコの足は、起立が不可能なまでに震えていた。

 

 使徒だ、使徒はここにいたのね、うふ、ウフフ。その髭剃ったら、母さん。

 そんなんだからなまはげと間違われるのよ、ウフフゥ。

 

 想像を絶する恐怖の為が、リツコに精神汚染が始まっている。

「すかしてんじゃないわよこの似非金髪ううう!!

 似非とは言えネルフで金髪な女って言ったらアンタだけで生姜!」

 「み、ミサト。リツコがこれだけ知らないって言っているんだから……」

 隣で怯えていたアスカが、精一杯の勇気を振り絞って抗議した。

「ああん、お前もいっぺん浮かされてバシバシバシ、オウイェー!

 と行かれたいかこら、ア!?」

 翻してガンたれる視線が怖すぎ。

「ひっ!」

 アスカが恐怖にひきつった瞬間、シンジがアスカの前に出た。

 カバッ! と両手を広げ、ミサトさんに対峙する。

「あ、アスカには手出しさせないぞ!」

 声が震えている、肩が震えている、足が震えている。

 だけど、本気だった。

「シンジ……」

 例えアタシが斜上掌で浮かされたとしても、アタシはずっとシンジの事、好きだよ。

 アスカが、その背中にそっとしなだれた。

 

「いい度胸じゃないのほほ、今の私の前でちちくりあうなんて……ヒュ」

 何が「ヒュ」なのか、ミサトさんは確実に二人に死をもたらす為に、その掌の節をゴキリ、ゴキリと鳴らす。

 まさに今、若い二人の命は風前の灯火であった。

 

 

 

 

 

「……待てよ!?」

 シンジが首を一つ捻った。

「み、ミサトさん、アスカ。

 た、確かに、ネルフに金髪の女性は一人しかいないですけど……」

 恐怖に震えながらも、シンジはとある仮説を思いつく。

「「「いないですけど?」」」

 ミサトさんもアスカもリツコも、一瞬前のまでの自分を菓子棚に封じたか、シンジの言葉に耳を貸す。

 

「先輩!!」

 と、突如リツコのラボに女性が乱入してきた。

 ご多分の想像に漏れず、伊吹さん家のマヤちゃんである。

「マヤ、どうしたの!?」

「先輩、この金属の正体が分かりました!

 MAGIではなく、国連のデータベースから得た資料です!」

 数枚の冊子にファイルされた冊子を半ば奪い取るようにして、見入るリツコその他。

 

『―――材質名、オリハルコニウム。

 その構成元素は地上では殆ど発見されず、幻の金属である。

 第二次大戦中、戦場に散布されていたのを最初に発見され、

 後に地球連邦軍所属第13独立部隊「ロンド=ベル」所属の

 一マシンの装甲に使用されている事が判明。

 特殊な性質として、人の精神に反応して、意志や思考を伝達するという事から、

 心理学分野での注目を浴びるものの、その生産地は依然不明。

 但し、地底世界ラ・ギアスで生産されているとの未確認情報が……』

 

「……もういいわ、マヤ」

 リツコが呆れ返った表情で、資料をマヤに突っ返した。

「で、でもまだ最後まで……」

 最後まで資料を見ずに推測で物を言う人ではないのに……と一人思い詰めるマヤちょん。

「私達は大事な事を見落としていたのよ。

 或いは一部の賢明な読者はもう気が付いているわ」

「……どういう事、リツコ?」

 ミサトさん、既にしらふしらふ。

「簡単な推理だわ。それはね……」

「「「「それは……?」」」」

 一同、リツコに詰め寄ったりなんかしちゃったりして。

 

 

「この小説の作家は、彩羽だと言う事よ!」

 おひ、俺は金髪でもなきゃ女でもないって。

 ……え? そーじゃない? お前の落ちは読めてる?

 そりゃ手厳しいですな(笑)

 

「……成る程ね。謎は全て解けたわ」

 ミサトさんの先祖に、突如金田一姓が付加されたようだ。

 そして、携帯電話を取り出してポチっとな。

「あ、日向君? 悪いんだけどさ、作戦部部長として一つ指令があるのよ。

 え? ええそう、諜報部との加持とも是非連携取って欲しいのよね。

 厄介なのは分かるけどさ、借りを作ってまで絶対に遂行してほしいのよ。この任務は。

 それはね…………」

 ミサトさん、すぅ、と一息深呼吸して、自らの荒ぶりを一旦宥め、一瞬後に全解放。

 

 

 

 

 

 

「あの小娘を第三新東京中から草の根分けてでも探し出しなさいッッッ!!!!!
見つけ次第即死刑よ死刑、って言うかその場で首狩っタレや!!!!!!!!!!」

 

 


 

 一方その頃。

 発令所では謎の女性型ロボットが第三新東京市内に突如現れ、速攻でトンズラこいたという記録が残っている。

 

「ふっふっ、でも実験は大成功ね。

 既婚も未婚も関係ないわ。『三十路が近いぞ、三十路になるぞ』って

 これを通して暗示を掛けてあげれば、あの年頃なんかチョロいもんよ!」

 大仰に高笑いする事で振り翳されるその見事な金髪

 その少女の手には、例の金属製のペンダントが握りしめられていた。

「くすくす。これでウェンディさんを陥れれば、マサキはアタシ一人だけの物…………うふ

 

 

 

 後日。

 ペンダントはミサトさんから事情を聞いたマサキに不承不承取り上げられたそーな。

 そして彼が、当のウェンディ=ラスム=イクナートさん(29)との恋仲が進退したかどうか、は不明だとさっ。

 

 

 ちゃんちゃん。

 


NEXT 最悪な事に短期連載らしいです(爆)
ver.-1.00 1998+06/07 公開
感想・質問・「生姜!」以外の誤字情報などは こちらまで!

 

 言い訳はなしという事で(笑)……だめですか?

 

 そんな訳で、オチの解読に苦労している方はご一報を……Gir.さんに(何故?)

 嘘です、私宛にお願いします。

 善処出来るかどうかは不明ですが(爆)

 

 それでわ。

 

 

 

 ……でもこのシリーズは三部作予定です(核爆)






 彩羽さんの『そりゃないよぉ、ミサトさぁん!』、公開です。




 ふふふ

 ふはは


 ・・・


 元ネタ知らずです(爆)



 ウェンディさんって誰?
 マサキってどなた?

  そんな感じなの(^^;






 見せつけられ、
 邪険にされ、
 いじめられ・・・


 ミサトさん一人冬の時代(^^;
 春が訪れることを祈っています・・・





 さあ、訪問者の皆さん。
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