於、第三新東京市―――。
エヴァ初号機が地上に射出されて数瞬、意志の疎通し合わない筈の使徒と共に、暗黙の睨み合いをどちらともなく続けていた。
だが、相手は到底和気藹々と応じてくれそうな訳でもなし、手は先に打つのが吉と判断したミサト達は、シンジに初号機の稼働を求めた。
「用意はいいわね、シンジ君」
「……はい」
「最終安全装置、解除!
エヴァンゲリオン初号機、リフトオフ!」
背部拘束具を排除された初号機が、惰性に任せてユラリと前へしなだれる。猫背に立ちつくした初号機を動かして貰わなければ先がない。リツコはシンジに、この火急の状況下で如何に手早く稼働のコツを教えるかで脳裏が手一杯であった。
「シンジ君、今は歩くことだけを考えて、頭でイメージして見せて。
エヴァは操縦者の意志を汲んで動いてくれる筈よ」
「歩く……」
小さく呟いたシンジの意志の元、初号機がその鈍重な足を一つ前に踏み出した。眼下のアスファルトを踏み抜き、それでもなおバランスを保つエヴァ初号機の完成度に、発令所内からも思わず溜息を付く者が現れるほどであり、実際にエヴァが大地を踏みしめ立ち振る舞う様を見るのは、ミサトやリツコ達でさえ初めての経験であった。
「歩いた!」
リツコが叫ぶのを半ば無意識に聞き取ったシンジが、確信した事。
(歩ける……つまり、戦える!)
そして少年は静かに、暴走を始める決意を新たにしたのだ。
「3分―――時間を頂きますよ、葛城さん。
作戦命令無視だなんて小言は、後で纏めて聞きますから」
「え!?」
シンジの言葉の意味ががとっさに理解できなかったミサトの呆け顔を後目に、初号機が膝を抱え込むように屈み込む。
「な、何をする気なの!?」
先程のおぼつかない徒歩に比べれば、その屈伸行動は実にスピーディであり、手馴れていない物が扱われているという先入観が、皆から一様に払拭されてゆく。
そして、跳躍―――
発令所の面々の視線が呆然とメインスクリーンに注がれる中、ゲンドウが一人呟いた。
「もしや……奴が目覚めていたというのか」
次に彼が見たのは、滅菌完備の特別病室であった。
「……この天井を見る羽目になるって事は、僕もまだまだって事なんだね……」
「使徒再来か。余りに唐突だな」
暗室の中、円卓の一角に座する男が口を開いた。
「十五年前と同じだよ。災いは何の前触れもなく訪れる物だ」
「幸いとも言える。我々の先行投資が無駄にならなかった点に於いてはな」
口々を揃えて言いたい事は同じなのだろう、その口その口は別人でも、裏ではどうやら小言を一括りで纏めて吐き出したいらしい。
「そいつはまだ分からんよ。役に立たなければ無駄と同じだ」
つまりこの茶番の真打ちは、人差し指と親指で輪っかを作ってみせるのではダイレクト過ぎるから、暗に我々の言い分を察して早急に対応せよ、とでもいう事なのだろう。
「左様。今や周知の事実となってしまった使徒の処置。情報操作。
ネルフの運用は全て、適切かつ迅速に処理して貰わんと困るよ」
「その件に関しては既に対処済みです。ご安心を」
こちらとて最大限に気を配っている、そうでなければ貴様等の小言が待っているのだからな、手は打つさ。
ゲンドウがさも面倒そうに答えていた。
実際、既にネルフ広報部が「情報操作」として、全ての民放、国営放送を切り替え、昨夜の第三新東京市付近での騒動を、手際良くオブラート包装されたシナリオを以て「情報公開」の根回しを利かせていた。
「発表はシナリオB−22か。またも事実は闇ん中ね」
別に情報を100%公開して欲しいでもなし、広報部の仕事に嫌悪を感じているというよりは事態を楽観している節のあるミサト。多分、「馴れ」というのが一番事実に近いのであろう。
暑苦しい市内の一角に設置された緊急本部のテント内で、14インチのTVが垂れ流すそんな光景をリモコン片手に眺めながら、防護服姿のミサトがだらしなく椅子に座っていた。
自分の仕事は前以て済ませている、そう周囲に見知って貰えていれば団扇の一つくらい煽っても許されるだろうと、何とも言えぬ現場の雰囲気の片隅の出来事。
「ネルフも結構お気楽なトコよね〜」
そのお気楽な組織の一員であるという自覚もあるのだろう、ミサトがぼやいた。
「どうかしら? 本当はみんな、怖いんじゃないかしら」
ミサトの方を振り向こうともせず、黙々と一人作業に徹するリツコの呟き。
「……あったり前でしょう」
昨夜の出来事、それは厄災の出立点にしか過ぎないのだから。
「しかし、碇君。ネルフとエヴァ、もう少し上手く使えんのかね」
「零号機に引き続き、君等が初陣で壊した兵装ビルと初号機の修理代。国が一つ傾くよ」
という事は、瓦礫の一つも壊さず撃退できる使徒退治がご所望か。
現場の苦労を知らぬ節穴共ではない癖に、……愚図りおってからに。
「聞けばあの玩具は、君の息子に与えたそうではないか」
ふん、その玩具と人の息子に依存しなければ何も出来ぬのが我々の進む道だ。
「人、時間、そして金。親子揃って幾ら使ったら気が済むのかね」
もう大概にしろ。貴様等の悪態に付き合っていると欠伸が出る。
「それに君の仕事はこれだけではあるまい。
―――『人類補完計画』―――これこそが君の急務だ」
「左様。その計画こそが、この絶望的状況下に於ける、唯一の希望なのだ。
我々のね。」
そう、貴様等だけの……な。
「何れにせよ、使徒再来に於ける計画スケジュールの遅延は認められん。
予算については一考しよう」
キールの言い分が一番手早くて明確だ。「早くしろ、金もそんなに無尽蔵ではないのだ」その一言が言えぬのが馬鹿馬鹿しいが、言われても対処の仕様をこれ以上ピッチはあげられんのだ。
貴様等の計画の穴そのものが、私の元に皺寄っている。傍迷惑な物だ。
「では、後は委員会の仕事だ」
「碇君、ご苦労だったな」
まさに人に苦労を背負わせたまま、円卓からキール以外の男共が忽然と姿を消した。
「碇……後戻りはできんぞ」
そして、キールも消えた。
「……分かっている。人間には時間がないのだ」
背負わされた繰り言も脱ぎ捨て、ゲンドウは一人自らの計画の想像図を駆け抜けていた。
その頃、ミサトとリツコはUN仕様の特大運搬車で市内を移動していた。
先程と一転してクーラー完備の車内の涼しさに、ミサトはタンクトップ一枚のあられもない姿をしながら、上機嫌でシートに沈んでいた。
「やあっぱクーラーは人類の至宝、まさに科学の勝利ねぇ」
いつもならば鼻で笑う、リツコばりの科学信奉ぶりを見せるミサト。
そのリツコはと言えば、ネルフ病棟からの連絡を受け、受話器を置くと、
「シンジ君が気付いたそうよ」
「……で、容態はどうなの?」
「特に後遺症はなし。エヴァとの神経接続との弊害が出ていなければ問題はないわ」
「精神汚染の危機は防げた、って事?」
「そうね。そういう事になるわ」
「そう……。なら、安心したわ」
幾分狼狽していた様子のミサトも、何とか落ち着きを取り戻した。
「……それより、心の負担に問題があるんじゃないの?
鎮静剤打ってエヴァから引きずり下ろす羽目になったっていうのに……」
リツコにもわざと聞こえるように、ミサトが一人呟いた。
第三新東京市は、現在エヴァ用兵装ビルを中心とした市内地の兵装整備の最中である。エヴァンゲリオン稼働用アンピリカルケーブルの設置、各所兵装ビルに配備されるエヴァ用遠距離携帯兵器パレットライフルの砲身、弾丸装填の為の作業が、今回の使徒再来を起点に急ピッチで仕上げられている。現在、予定配備目標の62%程度の設営目途が付いている。
「エヴァとこの街が完全に稼働すれば、行けるかも知れない」
この街の防衛任務の最上責任者としての訓戒か、作業の様子を見守りつつミサトが自分に言い聞かせていた。
「使徒に勝つつもり? 相変わらず楽天的ね」
使徒迎撃の任に共に付いているとは思えないリツコの横槍に、
「あら、希望的観測は、人が生きていく為の必需品よ」
「……そうね。あなたのそういう所、助かるわ」
ミサトの苦労と気負いの与り知らぬリツコではない。そう、何故か気弱になっているのが本音なのだろう。それが分かるミサトだからこそ。
「じゃ、私そろそろシンジ君の所に行ってみるわ」
第一脳神経外科に運ばれたシンジの安否を確認する為に、ミサトが向かった。
ミサトがシンジを見つけるのは簡単だった。待合の椅子に足を組んで腰掛けていたからだ。
「……気分はどう? シンジ君」
「問題ありません」
「そ、そう……。それじゃ、付いてきてもらえるかしら」
ミサトは既に、この少年が苦手になりつつあった。
その無表情さに、もう一人の部下とも違う「達観的孤独」を感じる故である。
病棟のエレベーターに乗り、ネルフ本部へと向かおうとした二人。
だが、エレベーターを拾った所で意外な人物と遭遇した。ゲンドウである。
「…………」
目を合わせても、何一つ答える事無く居直るシンジに、
「……後で私の所に来い」
不躾に言い放つゲンドウ。
そのままエレベーターの扉は閉まっていった。
「……何故あの人が此処にいるんです?」
「一度目」の時に分からなかった事を、さりげなく問うシンジ。
「……多分、レイの見舞いじゃないかしら」
「レイ……?」
「そう。あなたと同じ、ファーストチルドレンの綾波レイ。
事情があって今入院しているの。
じき退院出来るから、その時はあなたとも会ってもらうわ。
あなたと同じ歳の女の子よ。是非仲良くしてあげてね」
(綾波……レイ! そうか、それで父さん……)
―――綾波レイ。そう、まだ会った事がないはずなのに、僕は知っている。
アスカ同様、僕がその心を引き裂いてしまった女の子。
誰より無垢な心の持ち主。僕を護ってくれた子。母さんの匂いのした子。
何よりも綺麗な、たおやかに綻んだ微笑みを見せてくれた子。
僕の代わりに、涙ながらに光の中へと消えて逝ってしまった子。
もう僕が永遠に触れる事の叶わなくなった存在―――。
ならば、僕には関係のない話か……。
「……行きましょう、葛城さん」
「え、ええ。ところで、私の事は『ミサト』でいいわよ。名字だと堅苦しいでしょ?」
「いえ、別に」
「…………」
ネルフ所属のサードチルドレンとして正式認定されたシンジは、これからこの都市に定住して貰うのが当然である。しかし、父ゲンドウに引き取る意志は皆目見られず、シンジは本部地下施設のF区画に一人用の居住地を用意して貰える手筈になっていた。
だが、その特別な親子の事情が飲み込めなかったのがミサトである。
「一人で、ですか?」
「そうだ。彼の個室はこの先の第六ブロックになる。問題はなかろう」
問題がないのはあくまでその旨を伝えに来た監査部員の手際の部分であろう。その男にしてみれば碇家の家庭の事情など構わずして当然と言った所か。
「……はい」
シンジは静かに二つ返事で了承した。
「それでいいの? シンジ君……」
14歳の少年一人を寂しく住まわせる事に抵抗を覚えたミサト。元々塞ぎ込みがちなこの少年の方向性を心配している、というのはシンジにも一目で見て取れた。
「……僕は構いませんよ」
だから、そう言ってやるしかないのだろう。
数分後、居たたまれなくなったミサトが本部内の電話の受話器を手にしていた。
「……もしもし? あ、リツコ? あたしー。
あのねぇ、シンジ君の住所の話、副司令から聞いているでしょ?
あたしねぇ、実はね、彼を引き取ろうと思って……」
ブツッ。回線がにべもなく切れた。
「もしもし? リツコ?」
だが、回線が切れた理由は直ぐに分かった。
何時の間にか隣に控えていたシンジが、受話器受けを落としていたからだ。
「し、シンジ君?」
「僕は本部内に住みたいんですけど、何か不都合でも?」
「ふ……不都合って訳じゃないけど、
一人じゃほらさぁ、色々と手の届かない部分もあるじゃない。
一人で住むより、二人で住んだ方がその辺りも……」
「……葛城さんの住所は、何処ですか?」
「へ?」
突然質問を返されたミサトが、しどろもどろで返答する。
「……一応、街の郊外にマンションを……」
「話になりませんね。
僕はネルフ所属のチルドレンとして、火急の事態に備えて、
最も本部に近い場所に居住する権利と義務が生じると思うのですが、
その辺りの融通は利かないんでしょうか、ここは?」
何を正論ぶっているのか、と一人心の内で失笑しながら、シンジは何か理由を付けてミサトとの同居を断ろうとしていた。理由は……問うまでもない。
「わ、私の家から本部もそう遠くないわ。
そうでなけりゃ私みたいな要職の人間が外には住めないわよ。
上の方にはもう私が話を付けといてあるから、
だから、一緒に住んでみない? 悪いようにはしないから、ね?」
それでも何とか明るく振る舞うミサトが、両手を顔の前で合わせて頼み込んだ。
「上の方には、葛城さんの申し入れは撤回しておくように僕が言っておきますから、
申し訳ないですけど僕は一人で住まさせていただきます。
それでは。」
つれなく答えたシンジが、きびすを返して早々にその場を立ち去った。
「なんて子なの……」
後には、呆然と佇むミサト一人が残された。
シンジがミサトに言い訳を述べた部分は半分本当だ。
以前の経験を元に、本部詰めの状態ならば以降の対処もし易い、例えば第九使徒戦の時のような事態が起こったって、元々本部にいる方が有利だ、と考えていたのだ。
だが、本音はミサトの「家族」としての温もりを避ける為、それだけであったのかも知れない。ただ難癖を付けて、彼女を引き剥がしたかったのかも知れない、と。
(……そうだ、あの人に呼ばれていたんだった)
シンジはそのまま司令室へと向かった。
司令室の重苦しい重圧な扉を、二度叩く音がする。
その音は、ともすると広大で異様な床画の雰囲気に掻き消えそうで、注意していないと聞き届ける事も出来ない。だが、科学というのはそんな問題も、入り口に一つインターホンを取り付ければ済むだけの容易な話である。即ち味気ないという意味だ。
「……お前か。入れ」
ゲンドウの傍らには冬月も控えていた。
「碇。この間お前が言った言葉の意味、どういう事だ?」
「それを知りたくて呼び付けた」
すげなく答えた後、つかつかと司令卓に歩み寄ってきたシンジをその鋭い眼光で見据える。
相変わらず顔の前で腕を組んでみせ、色眼鏡の奥から覗くその怪しい視線に捕らえられた者は、大抵の者が頭を押さえつけられているような圧迫感を経験するものだ。
だが、シンジはその視線が自分に向かっている事さえも楽しんでいるかのように、口元に軽い笑みを浮かべ、飄々と立ちはだかっている。
「私は気の長い方ではない。故に率直に聞く。
貴様は誰だ。」
次の瞬間、シンジがケラケラと場を弁えない程の大声で笑い出した。
「何がおかしい」
「くくっ……だって、これ程おかしい話はないですよ。
耄碌する歳になった訳でもないでしょう、父さん?
自分の息子を呼びつけて『貴様は誰だ』なんて聞かれたら、笑うなという方がおかしいよ」
「だまれ。
貴様はシンジの名をかたっているだけだ。
貴様の本性を、私は知っている」
「……へえ、一体誰の事を言っているのやら」
(この餓鬼め、完全に人を喰っているつもりでいる)
ゲンドウにしてみれば、この剛胆で不適な少年が自分の息子と信じるには到底無理があったし、驚異的なシンクロ率、或いはいとも簡単に初号機を操ってしまった事を―――裏付ける確信的根拠が確かにあった。
「貴様……目覚めたのだろう、ゼロ」
「お探しのゼロなら、とっくの昔に因果地平の彼方に消え果てましたよ。
生憎、僕は正真正銘あなたの息子なんですがね」
「!!」
「大方、それが確かめたかったのでしょうが、お生憎様ですね。
僕は正真正銘『碇ゲンドウと碇ユイの折半された遺伝子』の持ち主ですよ。
これで納得出来ないならば、僕の身体でも何でも御自由に調べてみる事ですね。
まあめぼしい結果は出ないとは思いますが」
言葉とは裏腹に、シンジの言葉遣いは至極他人行儀であり、まさにそれは司令と部下の立場の会話である。
「それが用で呼び出したと言うのなら話はここまでですね。
それでは、失礼しますよ」
場に居座るのを露骨に嫌がったような態度を取りつつ、早々に司令室を退室しようと扉に歩き出すシンジを、
「待て。ならばお前は何が狙いでネルフにいる。
お前の望みは何なのだ」
ゲンドウが今一度引き留めるように、静かに問い掛けた。
「…………」
さながら面倒そうな表情をしたシンジが振り向いた。
「つくづく疑い深い人ですね。
僕はあなたに呼ひ出されて、『使徒と戦う事を強要されているから』ここに居るんですよ。
用済みならば追い出すも始末するも、ここではあなたの命令一つで何でも出来る治外法権。
僕が目障りならば、どうぞ御自由に。
そうでなければ僕は、御所望のままに使徒と戦うのみですよ」
「シンジ……お前は……」
「あと一つ。
僕は別にあなたの何を邪魔するつもりもないのでお見知り置きを。
ただし、あなたが僕の行動を邪魔するというのなら話は別ですけどね。
くれぐれも御留意の程を。それでは今度こそ失礼」
重圧な扉が押し開けられ、閉じられるまで、ゲンドウは眉一つ動かさず控えていたものの、シンジの変貌は正直自らのシナリオの一端を見事に崩してくれたのだ。心の奥まで全て、無表情でいられる訳でもない。
「……冬月」
「何だ、碇」
ゲンドウが狼狽して見せたのも束の間、
「監査部のサードチルドレン監督担当に、再度資料の提出をさせろ。
特に、ここ一年の分は念入りにレポートしろ、と伝えておけ」
「……分かった」
思っていたより剛胆な物だな……まあそうでなくばやっては行けまい。
一人ごちた冬月が側の受話器を取った。
所詮は、あの人も人の子か。……まあ、分かっていた事だけどね。あの父さんが実は只の寂しがりやだった事も、本当は母さんを取り戻したいが故の補完計画に縋っていた事も。
あの人は、幸せになる方法をほんの少しだけ間違えていただけなんだ。あの人が心弱い人だったとして、今更僕が責めることなんか出来やしない。最も大事な人を失った哀しみ……それだけを背負って生きていかなければならなかった孤独感を、どうして僕が今更言えたものか。
シンジは回廊を一人彷徨いながら、これで父には釘を刺したのだから、当分は黙っていれば時が流れる、襲いかかる使徒を倒していくだけが僕の仕事だ……そう心で割り切っていた。
「……もう帰るか。帰って、何をするでもないけどな」
独りで黙って過ごしていればそれでいいか。使徒の来ない日は怠慢な物だね。
学校にも、行かなければならないのかな。中学二年の課程はこなした筈なんだけどな。……そんな問題じゃないな。トウジ達に出会うのが怖いだけなんだよね。
……そう言えば、トウジの妹さん、今度は無事だったかな……?
前の事があるから、出来るだけ街を荒らさないように済ませたつもりだったんだけどな。
綾波も無事だって言ってたよね。僕が迷わずにエヴァに乗れたから、瀕死の綾波を担ぎ出す事も無かったしね。
……関係ないんだった……僕には、もう。
その後ゲンドウが、何とは無しにふと立ち寄ったのが、零号機の実験棟だった。
先日、零号機起動実験を行った筈のその管制塔は、見るも無惨な光景を晒し、今はゲンドウの足下に無惨に、強化ガラスや鉄骨の廃材を散らかせている。
起動実験の最中に突如暴走に至った零号機が、隔離実験棟を見下ろす位置にある管制塔の強化ガラスを殴り掛かったのが元で、今は隔離実験棟の各部署共に封印中なのだが、ゲンドウ同様リツコもまた、その場所に密かに佇んでいた。その理由は彼女自身に問いただしてもおそらく分からないだろう。ただ……ゲンドウの後を歩んでいたら、辿り着いた場所なのだから。
眼下には、暴走のさなか電源が絶え、壁に殴り掛かったまま凍結させられている零号機が、薄燈色のライトに照らされ朧気な姿を醸し出していた。
そして、この零号機に搭乗していたファーストチルドレン、綾波レイが重傷を負う羽目となった訳である。
「レイの様子は如何でしたか? ……午後、行かれたのでしょう? 病院に」
開口一番、レイの様子を訪ねてみるリツコ。
レイ自身の心配をしているというのならば、それとは若干違う響きをも持っている。
「後二十日もすれば動ける。
それまでは凍結中の零号機の再起動を取り付ける予定だ」
「……辛いでしょうね。あの子達」
本当だろうか。本当に、子供達だけの心配が出来る大人なのだろうか、私達は。この人と同じように、私もあの子達をネジやチップのように部品程度にしか考えていないのが本当の所なのではないか……と。
「エヴァを動かせる人間は他にいない。
生きている限り、そうして貰う」
「子供達の意志に関係なく……ですか?」
「……そうとも言えまい」
ゲンドウが珍しく言葉を濁した。
夜―――地上のあらゆる場所を闇が占める時。
シンジは独身者対象の居住棟の隅の一室で電灯を付けぬまま、小さな簡易ベッドに黙って寝そべっていた。
荷物は既に手元に届いてはいたが、夕方に予め半分以上は捨てている。
残ったのは衣服と一部の学習用具、そして最低限の家具、たったそれだけだ。
SDATプレーヤー用の音楽テープは全て処分したし、荷物の中には、あの貴重なチェロも存在した。
初めは未練無く叩き割ろうかとも思ったが、何やら曰くのある貴重品らしいので壊すのも忍びなく、父に送り返すのが最上だと済ました。
後は娯楽遊技物の類、書物等も一切合切捨て去った。
(僕に必要なのは、この身体一つ。これだけあれば、他には何も要らない。
何かを持っていると、僕の心の殻にしかならないから。SDATなんてその良い例だった。
本当は「これ」が一番要らない筈なんだけど、今はまだそうは言ってられないんだよね)
シンジは灯りも付けずにただ呆けたように天井を見上げていた。
明日から僕は何をしよう、何がこれから役に立つのだろう。しばらくはそんな事を考えていたが、やがて…………もう一度自分を問い質す、非生産的な考え方に身を沈めるだけになってしまっていた。
(……どうして僕はここに居るんだろう……
僕は全てを裏切って、全てを捨てて、全てを無くした筈なのに。
何で、もう一度こんな事を繰り返さなければならないんだろう……
ゼロは、何が悲しくて僕をこの時代に引き戻したんだ……
どうして……どうして……)
闇の中で、独り、這いつくばって血眼で自らの影を探し求めるかのように「自分」を求めるシンジ。
だが、闇の中に影はない。闇に影は出来ない。
闇は世界の全てを覆う影であり、影は闇その物なのだ。
(だから……僕の生きる目的が、いや僕が「ボク」である事そのものが……闇なんだ。
闇……人が本能で怖がる物。なら……どうすれば闇は消えるんだ?
闇は……光に照らされれば消える。でも、光を遮る物があれば、その後ろは影になる。
ならば、その光を遮る物はなんだ? ……それもまた、僕なんだ。
僕が僕である限り、何処かに影が差す。……なら、何に影が差す?
……それは光を求める物に。ならば、何が光を求めるんだ?
……そうだ、光を求めるのは、みんな自身だ。
生きとし生ける者は全て、光があってこそ生きられる。
なら「光」は何だ? みんなは何を求めているんだ?
……希望だ。自分達が生きる目的、そしてその為の支え。
父さんの希望が母さんの心であったように、アスカの希望が人の温もりであったように、
綾波の希望……カヲル君の希望……人としての心と生を願って。
ならば、その希望を遮るのは何だ? 何がみんなの希望を挫くんだ?
それは光を遮る者。希望を求める者に、絶望の影を落とす物。
影は……僕。遮る者は……僕。闇は……僕。
そう、みんなの希望を挫く者……即ち絶望その物。
僕は「影」を弑し、「遮る者」を弑し、「闇」を弑する為にここにいる。そう決めたんだ。
……闇が闇を殺す為に、闇自身としてのさばるのか。本末転倒とはこの事だね。
結局、僕自身が消え果てれば、誰も悲しまずに済む、そう思い上がる事に馴れてしまったんだ。
何も今更、禅問答する事でもないよな。全部……分かっている事だから。
僕は何処まで堕ちていくんだ……。
もう二度と、誰も悲しませたくなかった、それだけが最後の良心だったのに、
もうそれも叶わない。僕は再びみんなを悲しませる為に転生してしまったんだから。
本当は、ゼロではなくて、僕自身の心の奥底に残っていた「未練」が具現化して、
こんな事になってしまったのかも知れない。
……思い知らせ方が足りなかったんだ。
「お前がそんな軽率な思い込みをする事が、如何に罪深い事か思い知れ」
それとも僕にそう言いたかったのか、ゼロ?
……なら、ならば、望み通りにしてやる。
今度こそ「こいつ」に、今自分が何をしているか、何を思い込んでいるか、
それがどれだけ果てない業の行き着く果てであり、許されざる事なのか、
……思い知らせてやる、この身に。
生も死も等価値にしてやるさ。
生きていようが、死んでいようが、この身体に永遠に安らぎがない事を。
その思い上がった魂を永久に、救いのない苦しみに藻掻かせてこそ。
そう、あとどれだけ転生を繰り返そうと、何処に逃げ出そうと、
お前の魂には永遠に「希望の光」は射さないのだという事を、今度こそ思い知らせる為に―――)
ふと見上げた天井を、シンジは知らない。
だが、その知らない天井もまた、長い間彼の行く末を静かに見守る役目を果たす事になる。
住み着いてまだ間もないコンフォートマンションに帰宅したミサトは、一人静かに自宅の扉を開け、しなだれるように中に滑り込んでいた。何時まで経っても片付かない室内を物ともせず、リビングまで一気に駆け抜け、おもむろに冷蔵庫の扉を開き、無造作な手つきで缶ビールを取り出す。
椅子にどかりと座り込み、プルトップを捲ると、五臓六腑にダイレクトに流し込むかのように、そのビールを鯨飲する。二、三本その調子で流し込むと、どうやら落ち着いたのか「ぷはり」と一息酒臭い吐息を吐き出した。
自分が何に苛立っているかが分からない。あの少年の事なのか、それとも任務上の不行き届きが元なのか。
そういう時はきっと両方ね……ミサトは最悪の選択肢と共にもう一本流し込んだ。
やがてそれも虚しくなると、風呂場に向かい、湯を沸かす。
「風呂は命の洗濯」そう思い込むのも、多分ビールに縋るのと同じ理由なのではないかと思いつつ。
とぽとぽと湯船に注がれる湯を眺めながら、ミサトは自分が「ミサト」である理由その物に虚しさを覚え始めていた。
一旦自分の部屋に戻り、箪笥から着替えを取り出すと、黙って衣服を脱いでそのまま湯船につかる。
しばらく湯船に無言でつかりながら、ふと天井を見上げて呟く。
「あの使徒を倒したというのに……何も嬉しくないのね、私」
ミサトはこの間の、あの衝撃の出来事の回想に浸っていた。
「3分―――時間を頂きますよ、葛城さん。
作戦命令無視だなんて小言は、後で纏めて聞きますから」
「え!?」
シンジの言葉がとっさに理解できなかったミサトの呆け顔を後目に、初号機が膝を抱え込むように屈み込む。
「な、何をする気なの!?」
先程のおぼつかない徒歩に比べれば、その屈伸行動は実にスピーディであり、手馴れていない物が扱われているという先入観が、皆から一様に払拭されてゆく。
そして、跳躍―――
初号機が、一足飛びで百数十メートルの跳躍という恐るべき道芸を披露した。そのまま勢いに任せ、サキエルの前頭部分に豪快な両膝蹴りを叩き込む。サキエルの頭上でバランスを保つ為に顔面を掴むが、サキエルも木偶の坊ではない。初号機を両腕で引き剥がそうと試み、惜しくも押し負けた初号機が、サキエルの押す力を利用して、サキエルの後方に飛び退いた。
すかさず背部に控えるサキエルを振り向いた初号機。その容姿は既に、完全に臨戦態勢を整えている「戦士」の風貌であった。
(……成る程、イメージ通り、か。行こうと思えば行ける物だね)
シンジにしてみても、初めて「一人」で初号機を動かす事に多少違和感があったものの、「経験」は前以て積んでいる。後は「実践」あるのみなこの戦闘に、何も不安はなかった。
反して、発令所の面々の顔が、一様に唖然としているのに目を引かれる。
つい昨日までは「動かせる」つもりで作った物が、その「動く」事さえおぼつかなかった物を、それが全身にバネかゴムでも取り付けたかのように奔走するその様が、余りに衝撃的だったのだ。
汎用人型決戦兵器などとご大層に宣って見せはしても、全長が40メーターを越える人工物が人間顔負けの運動性を見せる。それだけで、特撮映画など及びも付かない光景が繰り広げられている以上、何を建造に携わらずとも、その光景は誰にとっても圧巻の一言であった。
「エヴァが……動いた!」
リツコが、たったそれだけを口にするのに数秒の時を要し、その一言に感化されたかのように、発令所の機能が再活動する。
「シ、シンジ君!? あなた!?」
ミサトが言葉にならない言葉で問いかける。初号機を動かせるというならば、作戦の融通が利く、その判断にまだ頭が追い付いていないのだ。本来ならば彼女の役職としてあるまじき怠慢だが、肝心のゲンドウさえも、その事実の前に周章狼狽といわんばかりに口を開け、スクリーンに魅入られていた。
「碇……彼女は目覚めてはいないのだぞ!」
真実に近い男、冬月もまた、その事実に開いた口が塞がらないのか、取り乱した様子を見せる。それが部下には誰一人として知られなかったのが幸いか。
「分かっている。……まさかとは思ったが……」
「うおおおおおお!!!」
次に彼等が気付いたとき、初号機はサキエル目掛けて猛突進をかけている所であった。
「一人で行ける」と判断したシンジの絶叫の元、初号機は主人の意図通りに突撃し、サキエルを伏せようとすべく、攻撃を仕掛けようとした。狙いはコア一点。
だが、初号機が喰いかかるより一瞬早く体勢を立て直したサキエル、そして今将に喰いかかろうとする初号機を眼前で跳ね飛ばす、橙色の八角形が具現した。
「ATフィールド!!」
リツコに叫ばれるまでもなく、シンジにとっては見慣れた代物だ。
ATフィールド、その正体は、心を閉ざした者のみが持つ絶対的防護の心の壁、すなわち閉塞の象徴。
「ダメだわ、ATフィールドがある限り!」
「使徒には接触できない!」
だが、それは同じ心の壁を持つ者のみ、その領域を侵す事が出来るのだ。
ATフィールドに押し付けられていた初号機の右手が、袈裟懸けに振り下ろされた!
「うああああああっっ!」
次にミサト達が見たのは、ATフィールドのサキエル側に飛び散る、夥しいほどのサキエルの青い体液。
「あのATフィールドを……破ったいうの?」
オペレーターの一人が状況報告を叫ぶ。
「初号機もATフィールドを展開、位相空間を中和してます!」
「違うわ……ATフィールドを右手に凝縮させて斬り付けたのよ。
只でさえ未知のエネルギーを、あんな風に使える物なの!?」
「凄い……!」
ATフィールドの刃に斬り下ろされたサキエルが後ろによろめく。追い打ちを掛けんとする初号機。
だが、その瞬間、サキエルの両目が光る。
「!? しまっ……!」
シンジの叫びは続かなかった。使徒特有の眼光線が、初号機を真正面に捉え至近距離から狙撃したのだ。
今度は初号機が、エネルギーの奔流を受けて大きくのけぞる。初号機の脇を通り抜けた光線は、市街地を縦断して駆け抜けた。
しかし、次の瞬間、初号機が体勢を立て直す。その身体に損傷は殆ど見られなかった。初号機のATフィールドもまた、辛うじてサキエルの攻撃を受け流していたのだ。
「やってくれる……君も必死だって事か!」
初号機の反撃。光線の射撃で硬直しているサキエルに猛烈な体当たりを喰らわせ、倒れ込んだサキエルに被さるように馬乗りになる。
狙いは再び、サキエルの腹部に位置する真っ赤に輝くコア一点!
(……サキエル、悪いけど僕は君を倒すよ。
君だって無駄な殺戮を求める為にここに来たんじゃない事は知ってる。
使徒が人類を滅ぼす為に来襲したのではなく、
君達がその寂しさという名の心の隙間を埋めようとしたその時に世界が滅ぶから、
だから君達は結局僕達の敵になってしまうって事、僕は知っているよ。
許してくれなんて言わない、これから僕が君を殺す事には違いないのだから。
結局、喰うか喰われるかで生きなければならない僕達と君達だから。
本当は助ける方法があればそうしたい……でも、君達は人に絶望した種族だから。
人と交わらない為の心の壁を生み出す事に成功した種族……。
……君達は、僕と同じなのかもしれない。
世界の全てを拒絶している僕も、使徒と呼ばれて当然の存在なのかも知れない。
でも僕の自我が効くうちは、僕がみんなを「守る」から、手出しはさせない。
本当は、みんなを「護ってくれる」人がいれば、それに越した事がないんだけど、
残念だけど、この初号機は今、僕にしか扱えない。
何故なら……僕の母さんが眠っている場所だから。
本当は母さんの「意志」の生み出した綾波も、初号機は動かせるけど、
彼女は今瀕死の重傷を負っている筈だし、もし傷が治ったとしても、
戦う役目を彼女に背負わせるつもりは一切無いよ。
綾波だけじゃない、多分、やがて出逢う事になるアスカも……。
血にまみれるのが僕の役目、それだけが僕の存在価値。
彼女達の腕は、血に汚れる為にあるんじゃないからね。
だから君には悪いけど、彼女達の為にも僕は絶対に負けられない。
君のその憎しみも恨みも悲しさも、全て僕一人への物にして構わないから、
だから……せめて僕の手で倒すんだ!)
シンジの迷いと語りかけはほんの刹那の出来事。
次の瞬間には初号機の左手が、左肩に装填されていたプログナイフを俊敏に取り出し、コアへと大きく振り下ろされる。
「プログレッシブナイフ!? どうしてそれを!」
何のレクチャーも受けず、エヴァを完全に使いこなして見せているシンジへの喫驚は、今日何度目になるだろう。いや、初号機の扱いに限らない。今までも彼は幾度となく意味深な言動を繰り返していた。
そして、ゲンドウは確信する。
「奴め……シンジを乗っ取ったのか」
だかそれも、真実を指す物ではなかった。
「おおおおおおっっっ!!」
咆吼するシンジ、そして渾身の力で振り下ろされたプログナイフが、コアの表面でチリチリと火花を散らせている。コアには既に数カ所のひび割れが生じている。破壊出来るのももう直ぐだ。
「キュアアア!」
悲鳴と共に、サキエルが暴れ出した。そして、突然身体を流動体に変形させて、初号機そのものにくるまろうとする。
「自爆する気!?」
ミサトの叫びに、とっさの機転を効かせるシンジ。
「悪いけど……君に付き合わされる訳にはいかないっ!」
内から光り輝き始めたコアには目もくれず、初号機はサキエルを抱えたまま地面に背を付ける。そして、コアの輝きがより一層増した瞬間、初号機はサキエルを両足で遥か上空に蹴り上げた!
爆発―――。
使徒の自爆による爆発は相当規模であったが、幸い爆風という物は下への影響は薄い。爆風が市街地を焼く事がないまま、第三使徒はその姿を消滅させた。
人類の禁忌の生み出した、勝利の瞬間であった。
そしてそれは同時に、使徒以上の力を保有してしまった者達の恐怖の瞬間の始まりでもある。
戦闘が終わった後、市街地で佇んでいた初号機の回収が行われた。
パイロットの生命保護が最優先であった為、エントリープラグの回収が真っ先に取り行われる。
回収班の面々がプラグ内で見たのは、悪魔のような形相をした少年の姿であった。
戦闘後の極度の興奮からか、あまりに常軌を逸した言動を繰り返す為に鎮静剤が打たれ、ようやく寝静まった少年が脳神経外科へと運ばれたのが、事の顛末であった。
「お前を……お前だけは絶対殺してやる……お前だけは……シンジ……!!」
虚ろな瞳をした少年の両腕が、虚空の頸を絞め殺さんとしていた。
第十六章、公開させていただいています。
しかし、我ながらよくこんな敵ばかり作るシンジが書ける……(-_-;
前もって決めていた展開ですから、やはり覚悟していたとはいえ、こういう方向に話が進むのは書いている立場としてもあまり良い物ではないです。
読んで頂いている方はそれ以上の事かも知れないでしょうが……。このお話は、もう暫くはこんな沈んだ展開です。
掲載していただいている神田さん、並びにこんな拙いお話を読んで頂いている方々、本当に申し訳ありません。
シンジが過去、エヴァで一通り戦闘を経験している。まあここまでは良いのですが、だからと言って強すぎず、弱すぎず。孤独な戦いの難しさ……表現できれば、とは思いますが。
後書きだけでも気楽に……と思ってましたが、あまりやると不真面目にも取られそうなんで、こんな展開が続く内は静かに後書きしようと思います。
それでは、また次回……。
だから、彼女は出ないんですってば!(爆)