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大闘技場を埋め尽くした、100人の参加者。

中には「屈強の」という形容をするに相応しい戦士もいる。また逆にお祭り騒ぎに出てきてしまった、地元の若者といった雰囲気の人もいる。
そこで、シンジとトウジは、一際注目を集めていた。

なぜなら最年少であることが一目瞭然だったから。やっかみの視線を送られ、シンジは萎縮していたがトウジは気にも止めていない。

「何不景気な顔しとんのや、シンジィ」

「・・・やっぱり僕らは出るべきじゃないんじゃないかな?」

「今更なに言うとんのや!?ここまで来たんや、覚悟決めぇや!ほれ、予選が始まるで」

予選は、まさに簡単な方法で行われた。人数を絞り込む為に、大闘技場の外周をある程度の人数になるまで走り続けるというもの。
時間はかかるが、まこと身体的・精神的にに強い戦士しか残らない。

「何だよ、それは!無茶言ってんじゃねぇよ!リリス王家は何考えて大会運営してんだァ?」
参加者の一人がそう口火を切り、一気に参加者の不満が噴火した。

「バカにしてるのか?」
「やってられんな」
「戦いと走るのとは関係が無いと思いますが」
など口々に不平を述べていた。人良さげな審判員が困り果てて何か言おうとした。

「いや、あの・・・」

「文句がある者は棄権せよ!」
最後方から、重低音の叫びが発せられた。参加者全員が一斉に後ろを見る。
そこには極端に白い肌をした、顔が面長で極端に痩せた男が立っていた。

「汝等のような口ばかりの戦士が当方は一番気にいらん。実力なき者ほどよく吠える」
鮫の牙のような歯をしている。彼はその歯を見せて笑う。切れ長の、蛇の目を思わせる眼光を向けていた。

「ヤロォ、言ってくれるじゃねぇか!」
男を数名の参加者が囲む。だが男は笑みを浮かべたままで動かなかった。

「人数を・・・減らしておくか」
と剣を抜いた。

「ぶっ殺してやる!」

「弱き者よ、滅びよ!」
男を囲んでいた十数名が、男に飛びかかかった。

 
 
 
 
 
 
 

エヴァ三銃士
第六章 「御前試合の中で(前編)」

 
 
 
 
 
 
 

「ウウウウッ」
複数のうめき声が聞こえてくる。

水のような流れる動きで、見ている者を魅了するような剣技を披露した男は、静かに佇んでいた。

「シンジ、みたな」

「うん。強いよ、あの人・・・それも、とてつもなく・・・」
シンジは自分の手のひらの汗を拭った。

「審判員殿」
 
「は、はい!」

「いかかがであろう?この程度まで戦士が絞られれば本戦とやらができよう?」
剣を鞘におさめる動きもなめらかだ。

「そ、そうですね。の、残ったみなさんは闘技場へ戻って下さい・・・」
その男が先頭をきり闘技場へ入っていく。それに続くようにして、立ち止まっていた参加者達も闘技場の中に入っていった。

「お、おい。シンジ、中いくで」

「う、うん。・・・でもあの人・・・誰なんだろ?」
奥に消えた背中を見ながら、シンジも続いた。

闘技場内部は地の底から音が聞こえてきているようなざわめきが包んでいた。
リリスの役人が一人、デンテツ大臣に一礼し耳打ちをして、先ほどの男を指さした。そして続いてデンテツがレイに何事かを話して、そのまま前へ進み出る。

「観戦者ならびに参加者に申し伝える!予選はある事情により中止となった!!このまま御前試合本戦をとり行う。観戦者は今しばらく待たれよ!!」

さて、ここで御前試合本戦について説明せねばばるまい。
ほぼ毎年行われている、この御前試合はいわゆるトーナメント形式で行われる。
相手に「参った」と言わせるか戦闘不能にするかで勝利となる。記録によれば、生死を問わなかった頃もあったようだが、現在、殺人は反則行為となり、そのまま逮捕される。
平和的な試合になったというわけだ。
そしてその本戦は、籤引きで対戦相手が決定する。

「ホンマ、あないなヤツとは初っぱな、闘いとうないな」
籤を引き終えたトウジが、苦笑いしながらトーナメント表を見つめていた。

「でも勝てばいつかは闘う可能性があるってことだよね」

「まぁ・・・そうやな。勝てへんと思うたら、ホントに勝てへん。勝つ気でぶつからんとアカンな」
拳を握りしめるトウジ。

一番最後に、籤を引いたのが先ほどの男だった。

そして男の名が表に書き込まれる。

ゾロ・ガギエル。

自分の名が書き込まれたとき、彼は軽く微笑んだ。

「ゾロ・ガギエルかいな。覚えとかんとな。
ところで、シンジ!」

「なんだい、トウジ」

「こっからはワイ等も敵同士や。闘うことになっても手加減は抜きやで」

「わかってるよ。僕も本気でやる」
 
 
 
 

「リョウジさん!あれ、見て下さい!!」
観戦席の一角に、半ば変装に近い格好のある三人組がいた。風貌は一見すれば流れ者の剣士と見られるが、よくよく注意してみればそこらの参加者よりも猛者である。
リョウジ・カジ。
シゲル・アオバ。
マコト・ヒュウガ。
ネルフ王国から逃亡したとされている、元銃士隊のメンバーだ。

「まさか・・・な」
三人の視線は、トーナメント表の名前で止まっている。

「でもイカリっすよ。早々ある名じゃ・・・」

「まさか、あの少年が参加しているとは」
マコトはどこか嬉しそうである。

「奇遇としか言いようがないな。・・・ま、どこまで勝ち上がってくるか楽しみではある」
三人の視線が交わる先にあるのは、『イカリ・シンジ』の名であった。
 
 
 
 

第一回戦、二回戦と順当に突破していくシンジとトウジ。同じように、ゾロも勝ち上がっていた。

そして・・・。
 
 
 
 

「それでは、準々決勝第三試合を初めて下さい」
ご都合的で申し訳ないのだが、既に準々決勝に進んでいる。レイはゆっくりと視線を巡らせてから、再び座に戻った。

「第三試合、シンジ・イカリ殿!リュウ・アソウ殿!!前へ!!」
闘技場の中央に、膝までの高さに盛り上げられた正方形の舞台がある。試合はこの上で行われる。
二人が、対峙する形で距離を取って立つ。

「はじめぇっ!!」
会場が一気にわき上がった。シンジは剣を抜いて構える。リュウ、というその男は、非常に小柄だった。シンジも体躯の良い方ではないが、彼はさらに小さかった。
そして、目深に帽子を被っていてシンジから顔は見えなかった。見えたのはわずかに顎の下部だけ。

(何だろ・・・。懐かしい感じがする・・・)

「てやぁっ!」
リュウは剣を構えて、距離を詰めてくる。まっすぐだ。

カキーン

激しい金属のぶつかり合う音がして、次に訪れた静寂。二人の鍔迫り合いが始まった。 リュウの顔が、かなり近い位置にある。
 
何でアンタが出場してるのよ?

「えっ?」
リュウがわずかに声を出した。何かを訊いているようだ。

「何か用ですか?喋りかける暇があったら集中して下さい。若輩だからって舐めないで下さいよ!」

「・・・何でアンタが出場してんのって聴いてるのよ!バカシンジィ!!!」
下げ気味だった顔を上げて、シンジにだけ顔が分かるようにした。

「あ・あ・あ・あ・あ・・・」
そこには剣を振るうには可憐な表情をした少年・・・いや化粧の具合で少年と見て取れるが、注視すれば彼が女性の顔がある。
見覚えがある顔だった。というよりもシンジにとっては忘れがたい顔である。
「・・・アスカ・ソウリュウさん・・・」
紛れもなく、レイ王妃の侍女、アスカであった。

二人は一旦、お互いに体を離して構えなおす。

「こっちが訊きたいよ!なんで変装なんかまでして君が出てるんだ?」
シンジは構えを崩して叫んだ。

彼女は逆に柄を握る手に力を入れる。
ふわりと体を浮かばせて、彼の頭上へ剣を振り下ろす。
寸前で彼は剣で受け止めた。

「これでも一応リリス王家の関係者なんだから!変装でもしなきゃ出場できないのよっ」

「ならその理由を教えてよ、ソウリュウさん」

「だったらそのまま迫り合いの体勢のまま動くんじゃないわよ。この距離だったら他の人には聞こえないはずだから」
シンジは素早く一度だけ頷く。

「アタシとレイの親友にヒカリ・ホラキってコがいるの。ヒカリはあの通産大臣の娘よ。彼女、この試合の優勝者のお嫁さんにさせられちゃうワケ。分かった?」

「・・・で?」

「もぉ!何でわかんないのぉ?このバカっ!!いい?アタシが優勝すれば適当な理由をつけて断れるでしょ?だからよ。
悪いけどシンジ、そういうことだからワザと負けなさい」
シンジはアスカの剣をはじいた。

「・・・どんな理由があるにせよ、わざと負けるワケにはいかないよ・・・」

「何よ!じゃあ聴くけどアンタは好きでもないオンナと結婚させられてもいいってぇの?」
じりじりと上辺だけの鍔迫り合いだったが、再び剣を合わせてきたアスカのには力が入ってきている。

「そ、そりゃ僕だってイヤだよ、そんなの。けど・・・僕は・・・強くなりたい。強くなるには僕よりも強い人と闘って、強さを学ばなきゃいけないんだぁっ!」
リョウジたち三銃士。ゾロ、そしてシャノン。知っているだけで彼より上手は5人もいるのだ。トウジを見ているうちに、という理由もある。事実、シンジは参加を渋っていたのだから。その彼が急にやる気を出したのも、あのゾロの剣技を見てからである。

この世に生を受けてから、さほど目覚めたことがなかった闘志が、少しずつ目覚めようとしていた。

「一人のオンナの幸せがかかってんの!協力しなさい」
寸前で交わしたアスカの剣の起こした風がシンジの頬を撫でる。一瞬の恐怖が、彼の中に殺気を生んだ。

「だったら僕が勝つ!そして優勝する!・・・だぁぁぁぁっ」
アスカをはじき飛ばすシンジ。

きゃっ
(・・・強い・・・そうよね。コイツだって男だもん。いくらアタシが侍女のたしなみで剣が使えるからって、いちおー銃士を目指してるヤツとは違うんだ・・・)
「でもっ!」
奮い立つアスカ。
「ヒカリには幸せになってほしいものっ!」
剣を両手持って突きの体勢へ。そして少し腰を落として、彼目がけて走り出す!

だが。

彼女の動きが、突然止まった。額から汗が流れ頬を伝う。冷や汗だ。喉元数センチにシンジが突きつけた剣がある。

(ウソっ!?全然見えなかった・・・)
彼女は体を引くと、ゆっくり膝を落とした。

「・・・参った・・・」
その言葉を聴いたシンジはゆっくりと剣を下ろした。高らかに彼の勝利が宣言され、観客が一気にわき上がる。
その中で、シンジはアスカに手を差し伸べた。

「大丈夫?」

「・・・アンタ、っんとに責任取れるの?」

「・・・分からない。けど・・・頑張るよ、ヒカリさんの為にも僕自身の為にも。そして・・・君の為にも」
彼女の体を引っ張り上げて立たせる。そして、彼女の横をすり抜け舞台を下りた。

「頼んだわよ、シンジ」
うつむきながら、彼女はシンジの背中にそう言った。
 
 
 
 

しばらく時をおいて、アスカは侍女の姿に戻り、ヒカリとレイの待つ、闘技場の王族控え室へ向かった。

「アスカぁ!」
声と共に、彼女に飛びついた影があった。

「ごめんね、ヒカリ・・・。勝てなかった・・・」

「いいの。いいのよ。アスカが無事なら」
ヒカリは涙声になりそうなのを必死で堪えながら、アスカがそこに存在することを確かめるかのように、つよく抱きしめる。

「でもっ。ヒカリは・・・」

「いいえ。まだ可能性がないワケじゃないわ」
それまで二人の抱擁を見守っていただけだったレイが、そう強く言った。

「・・・そうね。トウジもまだ勝ち上がってることだし・・・シンジも協力してくれるわ」

「シンジって・・・さっきアスカと闘っていた人?」
やっと落ち着いたヒカリが、アスカから離れて呟く。

「・・・アスカ・・・彼・・・」

「ええ。レイも覚えてるわよね。銃士を目指してた彼よ。でも二人が強いって言ってもまだあのゾロがいるもの。・・・はっきり言うとね、アタシ、あいつには全く勝てる気がしなかった」
奥歯を噛みしめるようにしてアスカ。

「ゾロ・ガギエル・・・トウジの次の相手よね」
 
 
 
 
 

準決勝である。快晴の朝から始まったこの御前試合も、いよいよ日が傾きはじめた。 夕闇の訪れが近づいている。銀色に鈍く光っていた剣に、朱色の輝きがのる。

「只今より準決勝第一試合を始めます!ゾロ・ガギエル殿!!トウジ・スズハラ殿!!舞台へ」

風も吹かない闘技場の舞台に二人の男が立った。
一人は痩せこけた手足の長い色白の怪しげな男。もう一人は肩の肉付きはよいが、まだ少年のような顔をした男。

「それでは・・・はじめぇっ!!」
審判員の半分裏返ったような声を合図に、二人が同時に抜刀した!

「ゾロゆうたな。あんさんなかなかの猛者のようやけど、ワイは負けへんで」

「・・・汝の闘いぶりは見せてもらった。若き者よ!!汝はまだまだ花咲かぬつぼみ。それを教えよう」
今のところ傷一つ受けず、すべての試合を30秒以内で終わらせているゾロ。

「それは勝ってからの台詞やろぉがぁっ!」
最初に打ち込んだのはトウジだった。

彼がここ何年か漁船で働いていた蓄積は、すべてその両腕にある。妹を養うために始めた仕事だったが、それによって純粋な力を得られた。

彼にとって剣は腕の一部と思えるほど軽いものである。振り下ろすスピードは、評価すべきものがあった。だが。
振り下ろした剣は、ゾロの体にも剣にもあたることなく、舞台をたたいた。

「な、何やとぉ」
なめらか、という表現が正しいのか分からないが、ゆったりとした動きながらも確実にトウジの攻撃をかわしていた。

「それで終わりか。花咲かぬ蕾よ」
獣の牙のごとき歯をのぞかせてゾロが笑った。

「まだや!まだ始まったばかりやでぇっ」
トウジの猛攻がゾロを襲うが、すべてかわされている。

(まるで水のようや)
そうトウジが実感したのは、呼吸が乱れ始めた頃だ。

「疲れが見え始めたようだな」

「黙れやぁっ、ボケがぁっ!!」
力任せの攻撃ではまったくゾロに歯が立たなかった。

「剣とは力のみで扱うものではない。技術だ。汝は引くことをしらぬ。それが汝の命取りとなるのだ」
ゾロの呼吸は全く乱れていなかった。

(勝てへんのか、ワイは・・・。このおっさんが強過ぎるわ)

「では今度は当方の番だな」
その瞬間。
ゾロの瞳が赤く染まった。紅の竜のような瞳。

そして、ゾロを中心に底知れぬ殺気が闘技場の中央に発生した。まさにそれは渦潮だ。気を抜けば飲まれてしまいそうな激流。

「な、何やぁ?」

「汝の剣に恐怖を植えつける。そして手放すがよい、その剣を!」
渦がトウジを飲み込もうと動き始める。
トウジは足掻く。剣を振りゾロの姿を探したが、ゾロに目がけて剣を振るっても彼には当たらなかった。何度目かに、彼の腕から血が噴き出た。
斬られたのである。
それを皮切りに、二撃。三撃。

「ぐっああああああっ!」
トウジの全身に斬り傷が増えてゆく。それは大きな傷ではなく、彼をじわじわと痛めつけるような小さな傷であった。
石造の舞台に、トウジの血がこびりつく。

「トウジぃ!!」
隅で観戦していたシンジが、舞台に近づいて叫ぶ。

「もう・・・みてらんない・・・」
ヒカリはその場に座り込んで顔を押さえてしまった。

「アイツ・・・」
アスカは何か言いたげに舞台を見つめる。

「突破点がないわけじゃない」
同じように観戦席のある場所で、マコトが言った。

「そうだな。ヤツとて人間だ。どこかに迷いや隙があって当然さ」
真剣な瞳でシゲル。

「彼もまた若い。シンジ君同様まだまだ伸びる資質を持っている。・・・だがこれを乗り越えなければ・・・」
リョウジは膝においた拳を軽く握りしめた。

「再び剣は握れないってことっスか」

「まさに岐路ですね、トウジ君にとっては」
その瞬間、ゾロの攻撃が止んだ。一拍おいてトウジががっくりと膝をつく。そして、舞台の上に倒れ込んだ。

「若き者よ。汝は素質を持っていた。だがその素質を伸ばすことは今後できぬだろう」
ゾロの声が遠くに聞こえてるようだった。

(まるで海や、こいつは。しかも天気がころころ変わりよる。穏やかな波だと思えば、急に嵐になりおるんや。・・・ダメやで。打つ手あれせんわ・・・。疲れたで。ごめんなぁ、シンジ。ワイはここまでのようや)
『海はいいぞ、トウジ!』

(何や?ほか。ワイもう死ぬんやな。船長が迎えに来よったんやな)
トウジに聞こえた声は、彼が去年まで世話になっていた漁船の船長の声だ。その男は齢60になろうかというのに、体は若々しく肌も黒かった。だが突然襲った原因不明の熱病で彼はこの世から去った。

『海はいいなぁ、トウジ』
それはまだトウジが船に乗せて貰って間もないころである。

『海・・・でっか?船長』

『そうだ。こいつはいつも違う態度で儂らを出迎える。母親のような穏やかなときもある、また父親のように怒り猛るときもある』
昔、この船長は世界中の海を駆け回った探検家だったらしい。人生の大半を海で過ごしている。

『そうでんな。いつも違います』

『いいか、トウジ。海はな、時には逆らわなきゃイケねえが大概は海に任せちまえばいい』

『はぁ』

『荒れてる海の上じゃ、儂たち人間は無力だ。逆らえば逆らうほど逆効果になる』

『なるほど』

『そんな時は海の動きを見てそれに合わせてやればいいんだ。・・・いいかトウジ、海を、波を見ろ。必ず海には進むべき道がある。それを見つけるのが航海だ』

(そや・・・。ワイは逆らおうとしていたんや。・・・大バカやな。船長から何教えてもろうたんや、まったく)
全身に力が入らない。だが、トウジは強引に立ち上がった。

「もういい・・・。もうやめて!トウジ!!」
ヒカリの叫びは届かない。

「まだ立つか。よし!ならばこれが最後!」
再びゾロの殺気が渦になった。

(よぉ見るんや。相手が何人もいるわけやない。これだけ斬られても相手は一人なんや)
そう言い聞かせると迫ってくるゾロを睨み付けた。

殺気の奔流にゾロがいる。そして。

(・・・見えたで!左肩に抜け道がぁっ!!)
「くらえやぁっ!!!」
一気に距離を詰め、ゾロの肩に剣が刺さる。

殺気が止まった。

「何・・・」

「へへ、どうやゾロ。攻撃をくらった感想は」
苦悶の表情を崩して、なんとかトウジは笑おうとした。

「・・・汝の蕾は開きつつあるようだな・・・。楽しみだ。・・・ならば『参った』

「!?」
トウジはそれを聞き終えると、その場に倒れ込んだ。

「勝者!トウジ・スズハラ殿!!」
会場は一瞬の間を置いたあと、歓声につつまれた。

「トウジ!」
シンジが舞台に駆け上がる。

「汝は若き者の友か?」
肩に刺さった剣を抜いてシンジに訊ねる。

「・・・はい」

「この者の傷は深くない。生気に満ちあふれた魂を持った者であるから、明日には回復しよう。・・・トウジ・スズハラと言ったな。目覚めたら彼に伝えてほしい。
『次にあうときまでさらに強くなれ』と」

「・・・伝えます」

「汝もまた開きかけたつぼみ。精進せよ。さらばだ」
ゾロは剣を鞘におさめて、会場を去っていった。

「ゾロ・ガギエル・・・か。見た目より心得た人なんだな」
シンジはそう評価した。
観客席の間にある北側出入り口の闇にとけ込んでいくゾロの後ろ姿を見送りながら、シンジは南側出入り口から運ばれていくトウジに付き添った。
このとき、三人はまだどうのような形で再会するのか、まだ誰も知らない。
 
 
 

夜が近づき、月明かりが差し込もうとしている。
試合は明日に持ち越された。残す試合は、あと2試合・・・。
 
 
 
 

つづく

NEXT
ver.-1.00 1998+09/11公開
感想・質問・誤字情報などは hiro-sen@big.or.jp まで! 
一ヶ月ぶりの参上です、平岡です。
まずはGirさんと彩羽さんに謝罪をしなければなりません。

『彼が今回登場しなくてすみません』

あれほど出す、出すと言っておきながら結局間に合わなかった・・・。
ま、彼ならではということで許して下さい(苦笑)

さて第六章。
手こずりました。これほど戦闘シーンの描写で苦労したのは久しぶりです。
どうもスランプ、というか刺激的な文章を読んでないためか、
いい作品に仕上がりません。どうも単調で。
それにかき上げて見ると、ゾロ・ガギエルってどうも某漫画の
鷹の目のミホークみたいなキャラクターですね。
「強くなれ、スズハラよ!」とか言わなくて良かった・・・。いやでもそれらしい台詞は言ってますね・・・。

ところで大方の予想通りアスカさんがやってくれました。
シンジの強さを知った彼女がどう変わってくるかはどうぞお楽しみに。

第七章「御前試合の中で(後編)」は、
今回ほどお待たせしないことをお約束して、そそくさと退出致します。

果たして優勝するのはトウジなのか?そして準決勝、シンジの対戦相手は?
ヒカリ嬢の幸せは!

それではまた次回。
次回こそ、ずぇ〜〜〜たいに彼が出ますから。いやホントに。
だから待ってて・・・。






 平岡さんの『エヴァ三銃士』第六章、公開です。




 なるほどなるほど〜

 言われてみれば鷹の目さんに似ていますね(^^)


 『Hunter』とこの漫画は
 週間ジャンプで飛ばし読みしない数少ない漫画なんです(^^)

     『I’s』は絵だけ見る(^^;

 土曜の楽しみの一つ♪




 少年を試し、道を示す男。


 かっちょいいですよね(^^)

 それをクリアしたトウジも。


 シンジも格好良く決められるのか?
 まて次章!!

  って感じですね。



 待ちわび〜



 さあ、訪問者の皆さん。
 ”彼”とは誰だ? 平岡さんに感想メールを送りましょう!




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