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僕は落ちていく。

どれくらい落ちているのだろうか?

ゆっくり底に向かって落ちている。

いや、潜っているのか?

いきなり、目の前に広がる、星々の海。

これは僕の意識の海なのだろうか?

この星の海の彼方に僕の探しているものがある。

その奥に向かって僕は潜っているのか?

どうして?

何のために?

誰のために?

わからない。

でも、やめようとは思わない。

どうしてだろ?

そうだ。

僕は探し物をしている。

この星の海に似たこの世界の中のどこかに、僕の探すものはある。

でも、それは何なのだろう?

わからない。

でも、探さないといけない。

それは僕にとっては大切なものだから。

それを見つけ出さなければ、僕は…

僕は…


 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 

Time Capsule
TIME/99
 
 

第25話
星々の彼方
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 

胸の上に何か思い感触を感じる…
なんだろ?これ?
でも、何処かで感じた重さだ。

まさか!?
僕は目を覚まして胸を圧迫しているものの正体を確かめる。
そして、それが僕の予想通りだったのを見て、思わず叫んでしまう。

「マナ!何してるの?僕の上に乗って。」

僕の上にちょっこんと座っていたマナは不機嫌そうに僕の顔を見つめる。
カーテン越しの朝日が差し込んでいるが、それがいっそうマナの表情を際立たせた。
はっきり言って、コワイ。
ジト目で僕をじぃっと睨んでいる。
どうしたんだろ?

「ユイおばさまから聞いたの。
シンジ、アスカさんにこうやって起こしてもらってたって。」

そのマナの言葉を聞き、シンジの表情が青ざめる。
もちろんそれは数日前にアスカがした事を指してるに違いない。
だって、あの時もアスカがこうやって僕を起こしたから。

「いや、それは。」

慌てて言い訳しようとするシンジにマナは顔を近づける。
そして、両手シンジの顔をはさんで問い詰める。

「アスカさんに何させてたの?」

シンジはその剣幕にたじろぎながら、答える。
どうしたんだ?
今日のマナはちょっと違うぞ。

「いや、これはアスカが勝手に…」

「女の子が自分で男の子の上になんて乗らないわよ。
さぁ〜白状しなさい〜アスカさんと何してたの〜。
私のいないことをいいことに〜。きぃ〜く〜や〜し〜。」

いきなりシンジのパジャマの胸ぐらを掴んで揺するマナ。
シンジはぐるんぐるん振りまわされながら答える。

「そんな〜何もしてないよ〜だいたいマナだって自分の意思で僕の上に乗ってるじゃないか〜。」

「それはそれ〜これはこれなの〜。」

マナはシンジをベッドの上に組み伏せシンジ顔を見つめる。

「さぁ、白状しなさい〜。」

「だから〜。」

と、部屋のドアが開き、ユイがひょいと顔を出す。

「二人とも、朝ご飯できたわよ。」

そして顔を引っ込めてぱたぱたと廊下を歩いていく。
まずあっけにとられ、次に見詰め合う二人。

「どうしよ〜見られちゃったよ〜。」

「はぁ…アスカの時と全く同じだな。」

マナはシンジの上に乗ったまま、すねるように口を尖らす。

「だって、シンジがアスカさんにちょっかいだすから。」

「ちょっと待ってよ。だいたい母さんからどういう風に聞いたの?」

シンジはマナを押しのけようとしたが、身動きがとれない。
だいたい今の態勢ってヤバイよね。
他の人に目撃されたら、確かにいらぬ誤解を招きそうだ。
前のアスカの時よりも。

「とりあえず、どいてよ。これじゃあ、起きあがれないよ。」

シンジはそう叫んだ。
 
 
 
 
 

「もう、母さん、お願いだからマナが誤解するようなこと言わないでよ。」

シンジは疲れた様子で、そしらぬ顔して味噌汁に口をつけているマナを見る。
TVから流れてくる天気予報では今日も言い天気のようだった。
その予報を売らずけるかのように空は晴れ渡っているようだった。
まだ早い時間なのにセミの鳴き声が聞こえてくる。

「別に、私はありのままの事を言っただけよ。」

ユイはにこにこ微笑みながら答える。

「そうだ、誤解されるようなことをするお前が悪いのだ。」

まるで興味がなさそうに新聞を広げていたゲンドウが割ってはいる。

「いきなり話にカットインしてこないでよ、父さん。」

シンジが苦笑してゲンドウにそう答える。
ゲンドウは新聞を広げたまま朝食を取っている。

「でも、家族4人揃うのって久しぶりね〜。」

ユイが自分の席につき、いただきますの挨拶をする。
シンジが首を傾げながら、サケの塩焼きに箸をつける。

「そう…なのかな?」

「そうよ、入れ替わりでいろんな人は来たけど。」

レイが箸の先を軽くくわえながらぼやく。

「私もレイちゃんに会いたかったなぁ。」

「大丈夫よ、またそのうち来るって言ってたし。」

ユイがそう答える。
碇家の朝食風景であった。
 
 
 
 
 
 

「はぁ、なんか気が抜けたなぁ。」

シンジはベッドに横になり天井を見上げる。
ここ数週間はあまりにイベントが多すぎて特に気にはしなかったが、
もう夏休みも半月も残っていない。

「でも、休みの最初のうちやっておいたけど、宿題も全部終わってるわけじゃないし…」

シンジはそう呟く。

「宿題…宿題か。」

そして、急に起きあがるシンジ。

「待てよ、そういえば、マナはちゃんと宿題やってるのか?」

別に自分が心配する必要は無いのだが、
確か夏休みはいる直前に、
「私はシンジに写させてもらうもの〜。」
とか歌ってた気がするぞ。
と、部屋のドアがノックされて、ひょこっとマナが顔を出す。

「ねぇ、シンジ。今いいかな?」

「うん。僕も聞きたいことがあったんだ。」

「なになに?私に?」

マナがいそいそと部屋に入ってきてベッドに座っているシンジの前の床に座る。
そして、嬉しそうに微笑んでシンジを見つめる。

「そういえば、聞くの忘れていたんだけど。」

「うん。」

「マナは夏休みの課題やってるよね、ちゃんと。」

マナは不思議そうな表情を浮かべ、首をふるふると振った。

「やってないよ〜。」

「って、どうして?」

「だって、私はシンジに写させてもらうから〜」

嬉しそうににこにこ微笑むマナを見て頭を抱えるシンジ。

「どうして?マナは学校の成績そんなに悪くないじゃない?
別に出来ないわけじゃないのにどうして?」

「だって、面倒なんだもの〜。」

その言葉を聞くと、シンジは身を乗り出して、むにっとマナの両頬をつまむ。

「何するのよ〜。」

マナがその手を離そうとするが、シンジは放さない。

「今日から、毎日午前中は夏休みの課題。」

「えぇ〜いやだもん、遊ぶんだもん〜。」

ふるふる首を振って答えるマナ。
シンジはそれにとりあわず腕を組んで答える。

「駄目、早速今日からやるからね〜。」

「どうして?シンジの見せてよ〜。」

「駄目!」

険しい表情を浮かべてシンジはそう言いきった。
 
 
 
 
 

「む〜。」

マナが唸っている。

「ん〜。」

シンジはそ知らぬ顔で自分の課題をこなしていく。
二人はテーブルに向かい合って座っていた。
今、二人がいるのはマナの部屋だった。
床はじゅうたんが敷かれている。
夏場は少しうっとおしい気がするが、床によく座るマナには
この方が都合が良いらしい。
マナはバンダナをつけて髪が瞳にかからないようにしている。
一方シンジは伸びた髪が瞳をほとんど隠している状態だ。
しかし、シンジにはそれを気にした様子はない。
ちらりとシンジを見るマナ。
そして、小さくシンジの名前を呼ぶ。

「ねぇ、シンジ。」

「何?」

「これわからないんだけど…」

そして、問題集のとある問題を指差す。

「教えて欲しいな。」

シンジはその問題を確認すると、立ちあがってマナの隣に来る。

「これは、確かに難しいね。」

マナの隣座り、メモ用紙に簡単に図を書き始めるシンジ。
その様子を見て少しどきりとするマナ。
少しは慣れたと思うんだけど、やっぱり近くに来られるとどきどきしちゃうな。
シンジの横顔を見ながら、小さく息をつく。
でも、仕方ないのかな?
好きだから、こんな気持ちになるのだし。
好きだから、こうして一緒にいるのだから。

「…で、ここをこうして…」

シンジが何やら、数式を書き始める。
マナはあわてて、そのメモ用紙に意識を戻した。
いくつかの数式を書いた後、その問題の解答が出た。
マナはうなずきながら、その回答を課題の問題集に書きこむ。

「でも…前に比べて、数学分かるようになったんじゃないの?」

シンジがマナの向かいに座りなおしてそう言う。
マナは書きこみを続けながら、ちょっと首を傾げて見せる。

「そうかな…あんまり実感無いけど…やっぱりシンジにいっぱい教えてもらってるからかな。」

そして、シンジににっこりと微笑みかける。
その笑みを見て、シンジは少しくすぐったそうにはにかむ。

「…そうでもないよ。最近は基本的な問題は解けるようになってきているし、
この調子でやれば、数学も得意になるんじゃないかな?」

「そうかな…もしそうだとするとシンジのおかげかな?」

顔を上げて、シンジを見て、にっこり微笑むマナ。
シンジも微笑み返す。
 
 
 
 
 
 

「む〜。疲れた〜。そろそろ休憩にしない?」

マナが大きく背伸びをしてそのまま後ろに倒れる。

「ふぅ〜。久しぶりに勉強するとちょっと疲れる〜。」

シンジも伸びをして立ちあがる。
そして、ドアの方に向かって歩きながらマナに言う。

「何か飲み物持ってくるね。」

「ありがと〜。」

シンジがドアのほうに歩いていく。
そして、ドアが開いて、閉まった。
かすかに廊下を歩いていくシンジの足跡が聞こえる。
マナは瞳を閉じた。
セミの鳴き声が聞こえてくる。
外は雲が見当たらないくらいに晴れている。
マナは息をついて窓に視線を向ける。
その位置からは空しか見えなかった。
真っ青な空。
夏なんだね。
マナはなんとなくそう思って、視線を天井に向ける。
そういえば、今年はシンジと一緒に泳ぎに行ってない。
でも、もうお盆過ぎたから、海には行けないね。
だとするとプールか。
でも、私がいない時にアスカさん達と行ったみたいだし。

なにか、悔しい。
やっぱりシンジとプールに行きたい。

と、足音が近寄ってきた。
ドアが開いて、シンジがトレイの飲み物を載せて部屋に入ってくる。
さらにドーナツが数個のっているお皿も見えた。

「はい、お待たせ。桃のアイスティがあったからそれにしたけど。」

そして、グラスをテーブルに載せる。
トレイを邪魔にならないところに置いてシンジも座る。
マナは起きあがって、課題の問題集をテーブルから下ろす。

「もう、今日はこれぐらいでいいよね?」

「そうだね、明日もあるし。」

それを聞いたマナの表情が曇る。
あきらかに嫌そうだ。

「えぇ〜、明日もするの?」

シンジはこくこく頷いて見せる。

「そうだよ。当然。」

「ふわぁ、大変だ〜。」

大きく伸びをするマナ。

「でも来年の今ごろはもっと大変だよ。」

「来年…の、今ごろ…か。」

マナは呟くようにその言葉を言った。
来年の今ごろは私はどうしているのだろうか?
やっぱり今のようにシンジの傍にいて、一緒に勉強してるのだろうか?
最近、不安になる時がある。
私はいつまでシンジの隣にいられるのだろうか?
いつまでシンジを見ていられるのだろうか?
そして、シンジは私を…

「まぁ、とりあえずは来年の勉強よりも、今年の夏休みの課題だね。
もうあと2週間ちょっとしかないんだから急がないとね。」

いつもと変わらない笑み。
その笑みを見るとすごく心の奥が暖まる感じ。
私がシンジにこと大好きだって思える感じ。
シンジと2週間だけど離れてて、そしてまた会えて。
最近、私は気付いたことがあるの。
でも、まだそれを言っていいのか分からない。
シンジは喜んでくれるだろうか?
それとも…

何か胸が痛くなってくる。
以前の私と違って、アスカさんに会ってから、私は弱くなった気がする。
自分に自信が無くなった気がする。
もともとそんなに自信満々だった訳じゃないけど。
何故か、昔のように安心していない自分がいる。
怖がっている自分がいる。
その原因がアスカさんなのだろうか?
確かにアスカさんに会ってからだが、それは私がこっちに戻ってきた時とも言える。
なんだろう?
今はまだその答えを私は見つけていない。
 
 
 
 

「ねぇ、プール行こうよ。」

私は先ほどから考えていたことをシンジに言ってみる。
シンジは壁に読んでいた雑誌から視線を私に移して、すこし首を傾げて見せる。
今はシンジの部屋で読書大会だ。
なんとなく二人とも雑誌を読んでいたところだ。

「プール?」

シンジのその疑問に、私は軽く頷いて答える。

「そう、プール行きたいの。」

シンジは少し考え込むように視線を宙にさまよわせる。
私は少しどきどきしながらその様子を見守る。
そして、小さく頷くとシンジは微笑みかけてくれた。

「うん。いいよ。よく考えるとマナとまだ泳ぎに行ってないよね。」

私はこくこく頷いた。
嬉しいな。
シンジとプールに行ける。
にこにこしている私にシンジが話かけてくる。

「じゃあ、いつ行こうか。今週はずっと天気がいいみたいだし、
僕も特にバイトとか入ってないから。」

私は間髪いれずにこう答えた。

「じゃあ、明日にしようよ。」

「へ?いきなりだね。」

「だって、こういうのは早い方がいいもん。」

シンジは少し不思議そうに首を傾げる。
そして、私にこう尋ねた。

「マナって水着とかあるの?」

大きく頷いて私はピースサインをシンジに投げる。
それは大丈夫なのだ。
だって…

「大丈夫。向こうで買ってきたのがあるから。」

「へぇ、向こうで泳いだの?」

「そのつもりだったんだけど、何故か暇が無くて。」

そう、向こうではなんやかんやと忙しく泳いでる暇が無かったのだ。
両親と一緒に行動したのだが、なぜか泳ぐと言う選択肢は無かった気がする。

「じゃあ、まだ着ていないんだ、その水着。」

「そうなの、だから明日が初公開だよ。」

「どんな感じの水着?」

「それは明日まで内緒。」

私は人差し指を唇に当てて内緒のしぐさをした。
シンジは軽く肩をすくめて苦笑を浮かべた。
クーラーが効いたシンジの部屋。
セミの声が外から聞こえてくる。
夏の強い日差しは薄いカーテンのおかげで分からない。
今、この瞬間シンジと一緒に時を過ごしている。
このまま時が止まればいいのに。
そうすれば、シンジとずっと一緒にいられるのに。
最近の私はすぐそんなことを考えてしまう。
 
 
 
 
 

その日の夕方。
僕はなにげなくベランダの前を通った。
夕陽が僕の顔を赤く染めた。
思わず、その夕焼けに心奪われる。
夕陽が沈む直前の光景はなぜかもの悲しくて、感傷を誘う。
僕はベランダに出た。
さすがに夕方ともなると、少しは涼しくなっている。
それでも、しばらくここにいれば、汗が浮いてくるだろう。
ゆっくりと太陽は山並みに消えていこうとする。
手すりに両手を置いて、その光景を見つめる。

最近に気付いたことがある。
ここ数日で気付いたことだ。
それまでは、いろいろ考えないといけないことが多すぎて気にも止めなかった。
いや、今にしてみれば、その傾向が少しは出ていたような気がする。
マナの雰囲気が変わった気がする。
何がどうとは言えない。
形になっているようで、形になっていない。
僕の中ではっきりと形を取らないいらだたしさがある。
わからない。
変わった気がする。
でも、何がどう変わったのかわからない。
話すときのしぐさ、僕に笑いかけるときの笑み。
何も変わっていないと思う。
でも、マナの何かが変わったように感じる。

なんだろう?
しばらく会わなかったせいかとも思ったが、そうでもないような…
ふと視線を山並みに向けると太陽は沈んでしまっていた。
暗くなって行く空には綺麗な黄道光が輝いていた。
小さくため息をつく。
僕の中で何か変わったのだろうか?
そのせいでマナを見る目が変わったとか…
確かにそれはあるかもしれない。
マナがいない間にレイがやってきて、そしてアスカも帰ってきた。
二人と関わる中で僕は、自分自身を知った。
変わらなければならない。
今の僕のままではいけない。
そう強く思うようになった。
今まで逃げてきたもの全てに立ち向かわないといけない。
そう考えるようになった。
だから、そのせいでマナを見る目が変わったのだろうか?
幼馴染から、僕が好意を持っている女の子として見るようになったからか?

「シンジ?」

僕は背後からの声にはっと我に返り視線を声のする方に向けた。
そこにはマナが立っていて、シンジを見てにっこりと微笑む。

「どしたの?」

その笑顔はいつもと同じだった。
でも、なぜかどこか違う気がする。
なぜそう思うのだろう?

「うん、ちょっと夕陽を見てた。」

マナが僕の隣にやってきて、手すりに手を置く。

「もう、沈んちゃったね。」

「そうだね。」

何気なく僕はマナの横顔に視線を向ける。
幼馴染から一人の女の子に…
やはり、そう思っているせいなのだろうか?
 
 
 
 
 
 

部屋のドアがノックされる。
ベッドの上に座っていたマナはドアの方に視線を向けて答える。

「開いてます。」

ドアから顔を出したのはシンジだった。
パジャマ姿のシンジは部屋に入ってくると、ベッドの傍にやってきて、
どうしようかときょろきょろ見まわす。
マナはベッドをぽんぽんと軽く叩いてシンジに言う。

「こっちに座ったら?」

そのマナの言葉に少しだけ躊躇してからシンジはベッドの端に腰掛ける。
ベッドサイドのラジオからはパーソナリティの声が流れてくる。

「あの、明日何時に行くか決めてなかったけど。」

その言葉にはっとするマナ。
そして、にっこり微笑む。

「そうだったね、何時ごろ出る?」

「とりあえず、午前中に行った方がいいよね。
午後はご飯食べた後とかだと難しいし。それに明日も課題やらないとね。」

それを聞きマナがあからさまに嫌そうな顔をする。

「えぇ〜、明日も宿題するの?」

「だから、午前中に行くの。それが嫌だったら、行かなくてもいいよ。」

にやありと笑いを浮かべるシンジ。
マナはしぶしぶ頷いて答える。

「わかった…じゃあ、10時くらいに出る?」

「そうだね。」

シンジは軽く頷いた。
なんとなく黙ってしまう二人。
ラジオから流れてくる声が二人の注意を引いた。

出会いは突然でした。

でも、その日から男の子は女の子の前に現れるようになったのです。

彼女はその彼が好きになりました。

理由はわかりません。

私はこの人がとても好きだと思い始めました。

でも、それを口に出して言わなかったのです。

そんなこと言わなくてもずっと一緒だからって。

でも、二人は離れてしまうことになりました。

彼女は、告白しようとしました。

でも、「好きです。」のその一言が言えませんでした。

そして彼とは音信不通になりました。

彼女は後悔しました。

あの時、ちゃんと彼に自分の思いを伝えておけば良かったと。

そして、決心しました。

彼を探し出してもう一度会って、自分の思いを伝えようと。

二人はどうなったのでしょうか?

彼女は彼に思いを伝えられたのでしょうか?

それとも、やはり伝えられなかったのでしょうか?

あなたはどう思いますか?

ふとシンジはマナの視線を感じて、マナの顔を見る。
そして、少し首を傾げて見せるシンジ。

「どう思う?」

そのマナの問いにシンジは黙ってしまう。
そして、マナの瞳を見つめる。

「どうなんだろ?僕にはなんとも言えないよ。」

そして、視線を逸らし、うつむく。

「僕には…ね。」

「そう…」

マナはそれだけ答えて、くすりと微笑む。
そして、シンジの腕に触れる。

「私は伝えられたと思うな。」

シンジは顔を上げてマナを見る。
マナはにっこり微笑むと軽く頷いた。

「じゃあ…」

シンジはそれだけ言って立ちあがる。

「明日、ちゃんと起きてね。」

マナがそう話しかけると、シンジは軽く頷いて部屋から出ていった。
ドアが閉まって、マナはラジオのスイッチを切ってベッドに寝転がった。
何か…
今、すごくシンジが遠くにいるような気がした。
どうしてだろ?
私も変わったような気がするけど、シンジも少し変わった気がする。
私がいない間にいろいろあったって言っていたけど、
それが原因なのかな?
シンジは少しずつ変わっていく。
私はそれを受け入れることができるのかな?
 
 
 
 
 
 
 
 


NEXT
ver.-1.00 1999_08/26公開
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あとがき

どもTIMEです。

Time-Capsule第25話「星々の彼方」です。

シンジとマナそれぞれが、相手の雰囲気の変化に気付きました。
シンジにとっては今の自分を変えて行きたいという思いが、
マナにとってはシンジとの関係の不安定さを自覚してしまったことが原因です。

そのお互いの変化が少しずつ二人の関係を変えて行きます。

さて、次回ですが、今回出てきているプールのお話です。
シンジとマナの二人きりでプールに出かけるお話です。

では、次回Time-Capsule第26話「プールに行こう」でお会いしましょう。
 






 TIMEさんの『Time Capsule』第25話、公開です。







 宿題

  vs

 プール



 考えるまでもなく、
 迷う暇もなく、


 プールの勝利です〜



 シンジ的にも
 マナ的にも

 読者的にも。





 今年の初水着。

 ラッキーですね、シンジ君。







 さあ、訪問者の皆さん。
 TIMEさんに感想を、メールを、送りましょう!













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