何かに追いかけられて、私はそれから逃げようと必死だった。
追いかけてきているもの。
それが何なのかはわからない。
ただ、それに捕まってはいけないと思っていた。
必死に走った。
心臓が焼けつくほど痛い。
でも、我慢して走りつづけた。
そして、私は気がつくと、ある絶壁の上に立っていた。
後ろは海。
前からは私を追いかけてきたものが近づいてくる。
私は周りを見まわす。
もう逃げ場はない。
どうすればいいのか?
そして、それは私を見つけた。
私は崖の下を覗き込んだ。
なぜか下の方はもやがかかって何も見えなかった。
私は少しだけ考えた後、飛び降りることにした。
捕まるぐらいなら、飛び降りた方がマシ。
そういう結論に達したからだった。
そして、飛び降りる。
落下して行く私の耳にはっきりと追いかけてきたものが叫んだ言葉が聞こえた。
「お前は誰のものでもない、私のものなのだから、逃げても無駄よ。」
私は意識を失った。
Time Capsule
TIME/99
第26話
「プールに行こう」
私は目を覚ました。
ひどく汗をかいている。
身体もだるい。
まるでさっきまで運動をしていたようだった。
何だったのだろう?
すごくイヤな夢を見た気がする。
でも…
内容が思い出せない。
…
逃げていた?
何かから逃げていた?
そんな気がする。
でも、はっきりわからない。
…
小さく息をつくと、ベッドから抜け出す。
一瞬着替えようかとも思ったが、シャワーを浴びたい衝動にかられ、
とりあえず、シャワーを浴びることにした。
着替えを出し、部屋から出てバスルームの方に向かう。
シンジの部屋の前を通ったが、部屋の明かりは消えている。
途中リビングで時間を確認すると深夜の2時を過ぎたところだった。
バスルームに入り、少し熱い目のお湯を頭からかぶる。
まだ、身体中がだるい。
というか、少し夏バテしてるのかな?
旅行に行ったときに貧血で倒れたし、あまりご飯食べてなかったし。
ご飯はこっちに戻ってきて食べるようになったけど。
それもユイさんがいろいろ献立考えてくれるおかげだし。
もう少し、体力つけないと駄目なのかな?
髪を伝ったお湯が床に落ちて行く。
なぜか、何か起こる前のように胸が騒ぐ。
…
思い過ごしよね…
変な夢を見ちゃったから…
そう思うだけだよね…
窓から指しこむ日差しが髪を輝かせる。
二人は並んで座ってぼんやりとしていた。
車内は冷房が効いて涼しかった。
肩が出ている服を着ているマナにとっては少し寒いようだが。
少し身を震わせ肩を抱くマナ。
シンジがマナの方を見て尋ねる。
「寒い?」
マナはこくこく頷く。
「ちょっと…こんなに冷房効いてると。」
「そうだね…何か羽織る物があれば良いんだけど…」
マナはにっこり微笑んで見せる。
「ううん。大丈夫だよ。」
車内はさほど混んではいなかったが、
空いてる席は数えるほどしかない。
電車が揺れるのに合わせてつり革がゆらゆら揺れる。
「じゃあ、帰りは冷房が弱い車両に乗るようにしようか。」
「うん。」
二人は微笑み合う。
シンジはふと視線を上げ、車内の広告に視線を向ける。
マナはそのシンジの視線を追って広告をを見る。
「ハワイ?」
よくあるハワイの景色がその広告に映っている。
「うん。ワイキキだね。」
「シンジは行ったことあるの?」
「昔、一度だけね。マナは?」
「行ったこと無いよ…ね、どんな感じだった?ハワイって。」
腕を組んでシンジは考え込む。
「う〜ん、覚えてるのは…夕焼けかな。」
「夕焼け?」
「本当に空が赤く染まってすごく綺麗だったな。」
マナは瞳を輝かせて答える。
「いいな〜。私も行きたいな〜。」
そして、じぃっとシンジを見つめる。
「なに?」
にこにこ笑ってマナは首を振る。
「ううん。なんでもないよ。」
「何か嫌な感じだなぁ。」
「えぇ、そんなことないよ〜。」
マナは手を振って視線を向かいの窓の方に向けた。
更衣室を出たところでぼんやりと立っているシンジ。
半円形のドームは今は全開で青い空が輝いている。
思っていたよりはすいているな。
シンジはあたりを見まわす。
前に来た時の半分ぐらいかな?
まぁ、時間も早いせいもあるだろうけど。
と太陽の光がシンジの振りかかる。
手をかざし、頭上を見上げると、雲に隠れていた太陽が現れていた。
先ほどまでぼんやりとしていた影がくっきりと表れる。
「シンジ、おまたせ。」
その声に振りかえるシンジ。
そこには水着に着替えたマナが立っていた。
クリーム色の水着にデフォルメされた花柄がプリントされている。
シンジの視線を感じたのか、恥ずかしそうに頬を染めるマナ。
「あんまり見ないで…」
「あ、ごめん。」
慌てて視線をそらすシンジ。
沈黙が二人の間に流れる。
その二人の前を小学生のグループが走って行く。
シンジは鼻の頭をかきながら、マナの方を見ないで尋ねる。
「行こうか。」
「う、うん。」
シンジが前を歩き、マナがその一歩後ろを歩く。
マナはちらりと視線を上げてシンジの背中を見る。
瞳は潤んでいて、まだその頬は赤い。
どうしたんだろ?
分かっていたのに、すごく恥ずかしくなって…
すごくどきどきしちゃって…
シンジが見ていると思っただけで…
怒っちゃったかな?
別にシンジは普通だったと思うんだけど…
ごめんね…
マナはすっと手を伸ばしてシンジの手を握る。
別に変な意味で言ったんじゃないよ。
恥ずかしくてつい…
シンジが驚いたように振り向く。
その頬が少し赤い。
マナはうつむいていたが、顔を上げてはにかむ。
シンジはその笑顔を見て、微笑み返す。
「最初はどこに行く?」
「う〜ん。あっちの方に行かない?確かラグーンがあるんだよね。」
シンジはマナが指差した方を見つめてうなずく。
そちらの方には泳ぐと言うよりも、日光浴を楽しむために作られたちいさなラグーンがあった。
また、プールなのに砂を敷き詰めて浜辺を作っていた。
「じゃあ、そっちに行く?」
「うん、そうしよ。」
そのまま手を繋いで歩き出す二人。
さほど人が多くない遊歩道を並んで歩いていく。
「結構、すいてるね。」
マナがあたりをきょろきょろ見まわしながらそう言う。
確かに、混雑しているというほど人はいないように見える。
ビーチパラソルやデッキチェアも半分ほど、空いているようだった。
「まぁ、まだ開園したばかりだし、これからお昼にかけてじゃないのかな?」
「ふうん、そうかもね。」
マナはこくこくうなずく。
二人は分岐点でラグーンを指す方の道を選んで歩いていく。
足元もブラウンのアスファルトから白い砂へと変わっていく。
マナはちらりとシンジの横顔に視線を向ける。
そして、少しだけうつむくマナ。
どうしてだろ?
すごく安心する。
うん、何故かすごく安心する。
手を繋いだだけなのに。
どうしてだろ?
前はどちらかというとどきどきしてたことが多かったのに。
今はすごくほっとしている自分がいる。
何か変わったのかな?
シンジが?
それとも私が?
この感じは今までと違う。
でも、それはいやな事ではない。
すごく嬉しいような気がする。
どうしてだろ?
「ここだね。」
そのシンジの声に我に帰って、顔を上げるマナ。
目の前には、白い砂浜と澄んだ海に似せたプールが広がっている。
「うわぁ、思ったよりも浜辺っぽいね。」
「そうだね。結構本物っぽく見えるよ。」
二人は波打ち際に歩いていく。
プールではあるが、かなり穏やかな波が打ち寄せてきていた。
「どこまで砂があるんだろ?」
「ずっとらしいよ。水の入れ替えはポンプで古い水を吸い出してから新しい水を入れるんだって。」
マナは左足をそっとそのプールに浸してみる。
そして、シンジを見て、にっこり微笑む。
「…うん、思ったよりも冷たくないよ。」
「そりゃ、プールだから、ちゃんと水温管理はしてるんじゃない?」
「そうか。」
ラグーンにはそれほど人がいなかった。
その様子を見て取って、マナは不思議そうな表情を浮かべる。
「あんまり、人、いないね。」
「どちらかというと、日光浴用だから、太陽が昇らないと。」
確かに、他のプールに比べてデッキチェアが多く取りつけられていた。
「そうだね、ビーチパラソルが少ないのもそのせいかな。」
確かに円形テーブルとビーチパラソルのセットが数えるほどしか設置されていなかった。
「じゃあ、ちゃっちゃと泳ぎますか?」
シンジが大きく背伸びをしながら、言った。
「うん。そうしよ。」
「ねぇ、ちょっと深くなってきていない?」
マナは少し不安そうな表情を浮かべる。
水深が1mを越えた所に二人はいた。
そして、波乗りをして遊んでいた。
少しづつ深い方に向かって歩いていたのだが、
波も高くなってきて、ふたりとも頭から波をかぶっていた。
「変だね。普通は深いところに行けば波が低くなるはずなのにね。」
「でもここって、一定時間ごとに波の強さを変化させてるんじゃ?」
二人は顔を見合わせる。
「それはあるかも。」
またひとつ波がやってきたのをタイミングを合わせてジャンプしてかわす二人。
今のはそれほど波は高くなかった。
「今のは平気だったね。」
「うん。でも、やっぱり戻った方がいいかも。」
髪がぺったりと額に張りついているマナに微笑みかけるシンジ。
「そうだね、ちょっと戻ろうか。」
「うん。」
マナが差し伸べた手を握ってシンジが少しずつ戻り始める。
しかし、シンジは波に対して後ろを向いてしまっていたために、
その波に気がつくのが遅れた。
マナが慌ててシンジに注意を呼びかける。
「シンジ!後ろ!」
「何?」
慌ててシンジは後ろを振り返ったが、その瞬間頭から波が覆い被さる。
「ひえ〜!」
「きゃ〜!」
二人とも波に飲まれて流されてしまう。
幸いお互い手を握っていたので離されずに済んだが。
「シンジ、だいじょうぶ?」
マナがシンジにたずねる。
前髪が張りついて泣き笑いの表情になっている。
「げほっ、な、なんとか。」
シンジの髪がぴったりと顔に張りついて、ちょっとしたドザエモン状態だった。
お互いの顔を見詰め合う二人。
「ふふふ…」
「あはは…」
そしてどちらからともなく笑い出した。
「あれって大きなスライダーだね〜。」
立ち止まってマナが指差した方には、ぐねぐねとうねって、
さらにかなり高い位置にスタート台が設置されたスライダーが見えた。
「もしかして、乗りたいとか?」
シンジがおそるおそる尋ねる。
これはつい何日か前にアスカに騙させて一緒にすべらされたスライダーだった。
しかし、マナはふるふる首をふって答える。
「私、あんまりスライダー好きじゃないんだ。ちょっとした嫌な思い出が。」
「思い出?」
「聞かないで、本当に嫌な思い出なの。だから話せないし。」
シンジは首を傾げて答える。
「まぁ、僕もあんまり好きじゃないから、乗らないんだったらいいけど。」
そして、また遊歩道を歩き出す二人。
でも、なんだろ?嫌な思い出って。
さりげなく隣を見るシンジ。
マナの頬が少しだけ赤く染まっているような気がする。
日焼けのせいかな?
でも結構強力な日焼け止め塗ってたし。
もしかして、その思い出したくないとかいう記憶に関係あるのかな?
すると、マナ視線をシンジに向ける?
「今、アタシの話したくないことって何かなって考えてたでしょ?」
「い、いやそんなことは…」
口篭もるシンジにマナは不信げな表情を浮かべる。
「とにかく、絶対に嫌なんだから。」
そう言って、ぷいとそっぽを向くマナ。
それを見てシンジはくすりと笑みをもらす。
「何よ?」
マナがシンジを見る。
「なんでもないよ…だだ、かわいいなって思って。」
そのシンジの返事を聞いたマナは耳まで赤くなって、またそっぽを向く。
「もう、そんな恥ずかしいこと言わないで。」
「ごめん、ごめん。」
シンジはくすくす笑いながらそう答えた。
「ふぅ〜。泳いだねぇ。」
マナが大きく背伸びをしながらそう呟く。
シンジが時計を見る。
「結局3時間近く泳いでたんだね。」
「もう、おなかすいたよ〜。」
そのマナの言葉に頷くシンジ。
「じゃあ、メシにしますか。」
「メシにしましょう。」
二人は並んで歩き出す。
最寄り駅まで歩いてすぐだ。
「とりあえず、どこに行く?」
「新武蔵南の方まで出て、ご飯食べよ。」
シンジは少しだけ考えて答える。
「どこか行きたいお店ある?」
「ううん。全然。シンジにおまかせ〜。」
にこにこ微笑んでそう答えるマナ。
「じゃあ、駅近くにあるパスタ屋さんに行く?」
「うん、そこでいい。」
そして切符を買って、ホームに降りる二人。
額に手をかざして太陽を見上げるマナ。
セミ達の合唱がうるさいくらいにあたりに響く。
「う〜ん。今日も暑いね。」
「そうだね。もうそろそろ涼しくなってもいいのにね。」
「今年も残暑が厳しそうだね。」
「そうだね。学校行くのが嫌になるね。」
「ここだよ。」
そのお店の入り口には「サンマルコ」と名前が書かれた黒板が置かれていた。
そして、その下に今日のお勧めメニューが書かれている。
シンジがドアを開け、マナを先に通す。
柱は赤いレンガを組み合わされて作られていて壁はクリーム色の壁紙で統一されている。
店内は20人強の人が座れるスペースで、
4人がけのテーブルが5つとカウンター席がいくつかあるだけだった。
一段床が高くなっているところに置かれているテーブル席に座る二人、
その席からだけ、そとの歩道の様子を見ることが出来た。
店内はオレンジの温かい光で照らし出され、イメージ的には冬の暖かいリビングを彷彿とさせる。
「いらっしゃいませ。」
ウェイトレスがお水とメニューを持ってくる。
「何にする?」
シンジがメニューを広げてマナの方に見せる。
「シンジは何にするの?」
「僕はオムレツにする。」
マナは不思議そうに首を傾げる。
「オムレツ?」
「そう、オムレツの中身がパスタになってるんだ。」
「へぇ、それ面白そう。私もそれにする。」
ウェイトレスを呼んで、オーダーしてシンジは小さく息をつく。
マナはお店の中を見回す。
「すごく暖かい雰囲気がするところね。」
「そうだね。たぶん、照明がオレンジっぽいから。」
マナは照明を見てうなずく。
柱に垂直取り付けられて天井を照らしているスポットライトもオレンジだった。
「よくここに来るの?」
マナのその質問にこっくりうなずくシンジ。
「そうだね、このあたりで遊ぶときにはよく来るよ。
ここってパスタの大盛りとか出来るから、トウジが好きなんだよ。」
「メニューには2倍とかあったけど。」
「うん、トウジはここにくると必ず2倍を注文してたよ。」
「そうなの?」
少し驚いた表情するマナと苦笑を浮かべるシンジ。
厨房からは何かを炒める音が響き出した。
目の前に置かれたそれを見て感心したようにため息をつくマナ。
「本当にオムレツなのね…」
一見大きなオムレツに透明でオレンジっぽい色をしたソースがかかっている。
マナはいただきますの挨拶をするとフォークっで少しだけオムレツを切り開いて見る。
「うわぁ、ホントに中はパスタだ〜。」
「そりゃ、そうだよ。」
シンジは少し苦笑を浮かべてマナを見る。
「ふうん、すごいねぇ。どうやって作るのかな?」
「別に普通のオムレツと同じじゃないかな?」
「難しくないのかな?」
「どうだろ?」
フォークでくるくると器用にパスタをまとめてそれをぱくりと食べるマナ。
「どう?」
「うん。おいしい。」
「そう、良かった。」
しばらく、二人とも黙ってパスタを食べていたが、シンジが手を止めてマナを見る。
「そういえば、来週なんだけど。」
「うん。」
「みんなで集まって図書館で勉強することになると思う。」
不思議そうに首を傾げるマナ。
「毎年のことだけど、これぐらいの時期に集まって夏休みの課題をやるんだ。」
「誰が来るの?」
シンジは何人かのクラスメートの名前を数人挙げた。
もちろんその仲にはトウジ、ケンスケ、ヒカリの名前も挙がっている。
「まぁ、中学からの同級生が大半なんだけどね。」
「私が行っても良いの?」
「全然大丈夫だよ。別に参加者を限定してやってるわけでもないしね。」
マナはにっこりと微笑む。
「じゃあ、夏休みの課題はそのときに写させてもらえば良いんだ。」
ニヤリと笑って首を振るシンジ。
「いやいや、そういうわけにはいかないんだよ。なにせ洞木さんがいるからね。
あくまで自分でやって出来ないところを教え会うために集まるんだから。」
「ぶぅ。だって鈴原君や相田君は宿題なんてやらないでしょ?」
腕を組んで首を振って答えるシンジ。
「ところがあの二人にはちゃんと家庭教師がつくんだよなぁ。」
マナは首をかしげる。
二人に家庭教師が付いているなんて話は聞いたこともなかったからだ。
「家庭教師って?」
シンジはまたもニヤリと笑みを浮かべてボソッとつぶやいた。
「同級生の女の子。」
マナは納得したように大きくうなずく。
「なるほど。」
「そういうわけで、マナもちゃんと課題やっておかないとね。」
「はぁ。大変だぁ。」
「冷房、大丈夫?寒くない?」
シンジは席に隣に座ったマナにたずねる。
「うん。ここだったら平気だよ。」
にっこり笑ってシンジを見るマナ。
行きに乗った車両とは違って冷房はかなり弱めだった。
「はぁ…帰ったら夏休みの課題やるんだよね。」
マナが小さく背伸びをしてシンジを見る。
「そうだよ。」
「今日ぐらいはやめにしない?」
シンジの顔を覗きこむようにしてマナはたずねた。
「駄目です。」
きっぱりとシンジは答える。
その調子にマナはあきらめたように軽く肩をすくめる。
「とりあえず、来週までに半分は終わらせないと。」
「半分?」
「そう、それぐらいのペースでいかないとね。」
「はぁ、大変だぁ。」
ため息をついてマナはつぶやく。
と、寒さを感じたのかちいさく身震いする。
「やっぱり肩が出てる服にしたのは失敗だったね。」
小さくつぶやくマナ。
少し首をかしげて何気なくその言葉に答えるシンジ。
「そう?でもその服似合ってるよ、マナらしくて。」
まじまじとシンジの顔を見つめるマナ。
ちょっと意表を付かれたようだった。
「ほんとう?」
ゆっくりとシンジの顔を見つめながら尋ねるマナ。
「うん。」
にっこり微笑むシンジを見てマナは顔を伏せる。
はずかしい。
すごくどきどきしてる。
はぁ、どうしてだろう?
こんなちょっとしたことなのにすごく嬉しい。
シンジは怪訝そうにマナにたずねる。
「どうかした?僕何か変なこと言ったかな?」
マナはふるふると首を振って答える。
「ううん。なんでもない。」
少し頬が赤くなっていたが、なんとか顔を上げてシンジに微笑みかける。
「ありがと。」
「う、うん。」
その笑顔に見とれるようにシンジは小さくうなずいて答えた。
見詰め合う二人。
車内放送が二人が降りる駅にやってきた事を告げる。
「行こうか?」
そうたずねるシンジにマナは微笑んで答える。
「うん。」
あとがき
どもTIMEです。
TimeCapsule第26話「プールへ行こう」です。
しばらく更新がとまっていましたが、やっと26話が完成しましたので公開します。
どうも最近の状況のせいで、以前のように週一の更新ができないですね。
次から次へと予定になかったイベントが起こってたので。
さて26話は久しぶりにシンジ、マナの二人のお話です。
前回のアスカ達と来たときのプールとは違った感じで書ければなぁと思い、
あえてもう一度プールのお話にしてみました。
ストーリに従うと海なんですが。
以前シンジはマナと海に泳ぎに行く約束をしてますから。
まぁ、今後公開する「マナの真実」編でその約束は果たされるんでOKといえばOKなんですが。
さて、次回はシンジの記憶の奥底に封じ込められた出来事に関する話が出てきます。
マナでもないレイでもない3人目の女の子の思い出は何を意味するのか。
「3人目の思い出」編がスタートです。
では次回第27話「記憶の底に眠るもの」でお会いしましょう。