TOP 】 / 【 めぞん 】 / [TIME]の部屋に戻る/ NEXT







 
 
 

全部夢だったら良いのに…

僕とアスカは平凡な大学生。

どこにでもいる普通の大学生。

僕達の周りには高校からの付き合いの仲の良い友達がいる。

その友達と毎日を平和に過ごしていく。

今日も明日もあさっても、変わらない日常。

いつものように朝起きて、大学に行って講義に出て、バイトに行く。

そんな毎日がずっと続く。

僕は、そんな日常をつまらないと思ったことはない。

大切な、とても大切な僕の人生なのだから。

たわいのないことを言い合う高校時代からの友人も、

バイト先で知り合った人達も、

僕と一緒に人生を歩んでくれる人だから。
 
 
 

だから…
 
 
 

夢であって欲しい。
 
 
 
 

すべて…
 
 
 
 

夢であって欲しい。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 

Love Passion
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 

あぁ、そんなところにいたんだね。

なによ、そんなところっていう言いかたないでしょ?

ごめん、ごめん。
だって、約束した場所なんていうから。

む〜。

もしかして、結構待った?

そうだよ。
時間感覚がなくなったからわからないけど、
これだけ待たされたのは始めてよ。

でも、必死に探したんだから。

どうしたの?

見ちゃった?

うん、見た。

参ったわよね。

参ったね。

どうする?

どうしようか?

やめる?

そうだね、それができるんだったら…

…無理よね。

やっぱり、そうだよね。
でも、信じるしかないよ。

私達の息子が立派にやりとげることを?

そう、僕達の息子なんだから。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 

TIME/99
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 

その力はすべてを滅ぼす諸刃の剣。
 
 

持つべきものはただ一人。
 

紅蓮の炎となってすべて燃やすか

聖なる光となってすべてを守るか
 

すべてのその一人の委ねられる。
 

そして契約の日。
 

未来のための破壊か。

過去のための維持か。
 
 

決断はその一人に託される。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 

第8章
 

交差する思惑
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 

私は誰なの?
 

ずっと私は平凡な何処にでもいる一人の女の子だと思っていた。
 

でも…
 

私は…
 
 
 
 
 
 
 

人間じゃない
 
 
 
 
 
 
 
 

私の父親を名乗ったあの男はそう言っていた。
 

じゃあ、私は一体誰?
何なの?
これからどうすれば良いの?
 
 
 

わからない。
 
 
 
 
 
 
 

その答えは何処にいけばあるのだろう?
 
 
 
 
 
 

すべての答えは何処にあるのだろう?
 
 
 
 
 
 
 
 
 

座り込んでいるカヲル。
そしてその傍らに寝かされているレイ。
そして、どこにでもある路地。
しかし、彼らがいる場所はまるで、日常からかけ離れていた。
周りの壁や電柱がなぎ倒されて、さながら隕石でも落ちてきたような光景。

「さすがにシンジくんの力は別格だな。
結界も効力がなかったらしい。」

カヲルは小さく息をつく。

しかし、僕が知っていることと現実はかなり違ったみたいだ。
まさかレイとシンジくんの二人ともがエヴァだとは。
それにまさかアヤちゃんまで、関係してくるとは。
くすりと笑みをもらすカヲル。
でも、そのおかげで少しづつ分かってきた。
いままでパズルの空白だった部分がすっぽり埋まったようだ。

僕を生み出す原因になったのは、
十年以上も前の実験だった。
その事故で生み出されたのはレイ。
そして、そのときの事故を意図的にかつ安全に再現しようとした人々がいた。
その人達の研究結果が僕。
シンジくんは契約者の父になるべき適合者。
でもシンジくんが適合者になった経緯は不明。
そして、たぶんアスカちゃんとの間にできる子供が契約者になるはず。
鈴原君も適合者の候補であり、さらに洞木さんとの間に生まれた娘のアヤちゃんが管理者になる。

しかし…

あんまりに関係者が固まりすぎている。

そう、まるであの人の周りの人々で関係者が構成されているような。

碇ゲンドウ。

彼の身近な人間があまり多くこの計画に関わっている。

今日、会ったタケシさんにしてもゲンドウ氏の昔の研究仲間だったはず。
やはり原因は、レイが生まれたというその実験に関係しているのではないか?

そして…僕自身も…この人の…

もの想いにふけるカヲルの前に数台の装甲車両が停車する。
その車両の中から顔を出したのは…
 

「ゲンドウ…さん」
 

ゲンドウは手早く同行してきた部下に指示を出す。

「半径200メートル以内は立ち入り禁止にしろ。」

「はい。」

ゲンドウの右手を並んで歩いていた部下が返事をして
ゲンドウから離れる。

「一部警察車両がこちらに向かっているそうですが?」

「その対応は任せる。いざとなったら我々の名前を出してもかまわん。」

「了解しました。」

「本部から連絡です。半径1Km以内には対象の反応なしとのことです。」

「そうだろうな、同じところに長居する人間ではない。」

ひとしきり部下への指示を行い、ゆっくりとカヲルの元に歩いてくる。
そして、カヲルの元に片膝をついてしゃがみこむ。

「ケガは?」

「大丈夫です。でも、いきなりでしたね。」

そのカヲルの返事にゲンドウは眉一つ動かさない。

「そうだな。我々も彼の性格を読み間違えていたようだ。
以前の彼ならこんな街中で騒動を起こさなかったのでな。」

「エヴァの混血種を複数体取り込んでいました。」

少しだけ間を置いて吐き出すように答えるゲンドウ。

「そうか…」

それきりゲンドウは何も答えずに視線を隣に寝かされているレイに向けられる。

「彼女はできれば、巻き込みたくなかった。
甘い考えだったのかもしれないが。
しかし、やはり運命は彼女を巻き込むことを望んだようだな。」

「では、僕に話さなかったのは…」

ゲンドウは軽くうなずいた。

「このことを知っているのは補完計画実行委員会の一部だけだ。
私達は彼女を影響のないところに移した。」

「だが、何物かの手が入った…」

うなずくゲンドウ。

「そのせいで彼女は戻ってきてしまった。
最初は委員会の老人どものしわざと思ったのだが、どうもそれだけではなさそうだ。」

「もしかして最高評議会が?」

「わからない。しかし、彼女はこうして巻き込まれてしまった。そして、自分が…」

「人間でないことを知ってしまった。」

うなずくゲンドウ。
一瞬彼の表情が曇ったのは気のせいだろうか。

「管理者も出てきましたよ。まさか、あの子が管理者だなんて。」

「そうだな。ただの偶然か…」

メガネに手をやって視線をカヲルに向けるゲンドウ。

「あらかじめ決まっていた運命なのか…」

「それはシンジくんが適合者になったのと関係があるんですか?」

「わからない。適合者は我々が作成した候補者の中から選ばれると思っていた。
そのために候補者リストを作成したのだからな。」

「シンジくんは入っていなかったのですか?」

「シンジには取り立ててその傾向は現れていなかった。だから除外した。」

「でも鈴原くんは…」

ずっと不思議に思っていた、鈴原くんだけは他の面々とは比べると
どうしても関係が薄いように感じられる。
もちろん、彼が関わっている理由として適切なものがひとつあるが、
それが正しいのかを確認したかったからである。

「彼の父親も私達の研究にかかわっていたのだよ。あの事故で亡くなったが。」

「やはり、そうですか。」

やはり、予想は当たっていた。
すべてはあの実験から始まっている。

「そう、すべてミユキくんを失ったあの事故にさかのぼるのだよ。
あの事故に関わったもの皆がこの補完計画の重要な部分を占めている。
これが何を意味するのか我々には理解不能だ。
すべての謎に一番近いはずの我々でさえこのありさまだ。
当然、委員会の老人達も最高評議会もわからないだろう。」

「この補完計画のどこが完璧なんですかね。」

あきれたように肩をすくめるカヲル。

「そうだな。確かに穴だらけだ。しかし、所詮人間はアナログな生き物だ。
その人間が計画したものに、デジタル的な完璧さを求めるのは不可能だろう。」

「なるほど。」

軽くうなずいてゲンドウは立ち上がる。

「さて、無駄話はこれぐらいにしよう。
今から君達をネルフ本部に連れて行く。
詳しい話はそれからだ。」

カヲルは息をついて答える。

「そうですね。まだ肝心なことががいくつか残っていますから。」

そして、隣に寝かされているレイを見つめる。

「彼女にも全てを話さないといけませんし。」
 
 
 
 
 
 
 
 
 

「お帰りなさい。予想外の展開だったわね。」

そこは薄暗いマシンルームの一角。
そこで、コンソールに向かって座っている女性は、
背後のドアから入ってきた男性の方を振り向かないでそう言った。

「そうだな。確かに予想外の展開だ。」

くすくす笑って彼女は背後の立っている彼の方に振り返る。

「それは私も同じ。まさかリツコがここまでやるとはね。
さすがに母さんに認められただけはあるわ。」

彼はその言葉に首をかしげる。

「そんなに強固だったのか?ネルフの防御は。」

「そうね。予想していたほど簡単ではなかったわ。」

机に持たれるようにすわり、コンソールを覗き込む。

「さすがにネルフの要になるだけあってマギの守りは堅いか。」

「まぁ、そう簡単に入れるとは思ってなかったけどね。」

くすくす笑って答える様子を彼は楽しげに見つめる。

「何?」

「嬉しそうだな?」

その言葉に彼女は口元の笑みを大きくする。

「そうね。嬉しいわ。やっとどちらが優秀か
はっきりとさせることが出来るんですもの。」

「なるほど。」

彼は軽く肩をすくめて見せる。

「姉妹ケンカのネタに使われるとはね。
これでも人類の運命をかけた戦いなんだけどな。」

「あなたが言うとまるで現実感がないわね。」

「そりゃ、ひどいな。自分の体を捨ててまで人類のために戦っているのに。」

彼女は彼のその言葉にくすくす笑い出す。

「そうね、あなたは正義の味方だから。」

「そうさ、だから、人類が許せない。」

先ほどまでの口調とうってかわって、低い声。

「どう思う?奴らは俺達が思っているほど、間抜けではなさそうだが。」

彼女も口調を改める。
先ほどまでのなれなれしい口調は消えていた。

「そうね、少なくとも、適合者に管理者まですでに決まっているなんて…」

「計画通りなのだろうか?それとも…」

「誰かが針を進めたのか?」

「すくなくとも我々以外の誰か、が。」

「でも委員会も評議会もそれらしき動きは。」

「第三者か?」

「でも、そんな存在、私達だけじゃなく、
この計画全てに関わるもの全てから隠しとおせる?」

ため息をついて天井を見あげる。

「何にしても委員会の計画よりはスケジュールは進んでいるはずだ。」

「そうね、どちらにしろ私達がやるべきことはひとつ。」

二人は顔を合わせた。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 

「アスカちゃんが…」

「シンジは追っていったそうだ。現場には二人はいなかった。
捜索させているが、依然として消息は掴めん。」

いつものように椅子に座っているゲンドウ。
心なしか表情は青ざめている。

「シンジは覚醒したのですか?」

「カヲルの話によると、ほぼ覚醒したところから管理者によって封印されたようだ。」

「管理者…ですか?」

「どうやら、管理者に関しても我々が知り得ない能力を持っているらしい。」

「両親は?」

「当然知らない。知る必要もない。関係者は最小限にしたい。」

「でも、今の状態の彼女を守らないと。」

「その必要はない。相手に感づかれてはいない。
今、返って動くことは危険に巻き込むだけだ。」

「でも…」

「大丈夫だ。これまでもカヲルやレイとの親交があったのだから、
彼らがそれとなく守ってくれる。そう依頼もしてある。」

その言葉を聞いて納得したようにうなずくユイ。

「しかし、当初のスケジュールよりもかなり早くコトが進んでいるようだ。
これには注意する必要があるな。」

「原因は、何なのかしら?」

「わからない。我々のスケジュールの解読が間違っているのかもしれない。
それとも我々以外の何物かが、スケジュールを引きなおしているのかもしれない。」

「もしかして、委員会か評議会が。」

「その可能性はある。ネルフはあくまで実行機関であって、
決定権は我々にはないのだからな。」

「気づかれている?」

「そうかもしれない。全ての消滅が進むべき道であるという考え方をする連中だ。
我々も全面的に信頼されていないかもしれない。」

「でも今さら、後戻りは出来ない。」

「そうだな…」

黙ってしまう二人。
沈黙が部屋を支配する。
まったくの静寂。
どれほど時間が経っただろうか、ゲンドウが口を開く。

「シンジは知ってしまっただろうな。」

その言葉に思わず顔をそむけるユイ。

「そうですね。私達を恨んでいるでしょうね。」

「あの時、私が…」

その言葉をさえぎるようにユイは言った。

「それは言っても仕方がないことよ。過去ではなく未来を見つめないと。」

そして、そっとゲンドウの手に自分の手を重ねる。

「そうだな。今やれることをやるだけだ。」

そのゲンドウの言葉にユイはにっこり笑ってうなずいた。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 

「アスカとシンジくんが…」

「今のところ、何処にいるのかさえも皆目見当がつかない。」

加持が首をかしげて飲みかけのコーヒーカップをデスクに置く。
対照的にミサトはデスクに置いてあった自分用のカップに手を伸ばす。

「リツコはどう言ってるの?」

「まったくのお手上げだって、彼女の知識では彼らがどうなっているのか、
理論立てて説明できないとさ。」

その言葉に苦笑を浮かべてミサトは答えた。

「怒ってるでしょうねぇ。彼女が一番納得してないんじゃない?」

「マヤくんを助手にしてずっと自室にこもってるよ。
マギも使ってるようだしね。」

笑顔を浮かべ、こくこくうなずき、コーヒーを一口飲むミサト。
そして、何か思い出したように加持にたずねる。

「そういえば、マギの防御の件はどうなったの?」

「さぁ?とりあえず、しばらくは大丈夫って言ってたが。」

首をかしげるミサト。
しかし、すぐ首を振る。

「まぁ、いいでしょ。リツコがそう言ってるんだったら。」

「現在の最優先事項はシンジくん達の所在の確認と、その身柄の確保だからな。」

カップをデスクに置いて椅子に座ってコンソールに向かうミサト。

「でも、どこにいったのかしらね。」

「カヲルくんから話を聞いたんだが、
シンジくんが覚醒するきっかけとしてアスカちゃんが…」

「…聞いてるわ。」

ミサトの表情が変わる。
加持もいつになくまじめな口調でミサトの耳元にささやく。

「最悪、聖槍を使うことになりそうだ。」

いつのまにか爪を噛んでいることに気づき慌てて、それをやめるミサト。

「聖槍…ロンギヌスの槍ね。でも、あれは厄介だわ…」

少しだけ間だけ考え込み、何かを思い出したようにミサトは告げる。

「でも、カヲルではあの槍は…」

「だから、レイくんを使うんだろう。
彼女の肉体であれば、槍の能力のいくらかは使えるだろう。
その代わり体の半分は、もっていかれるだろうがね。
槍を使いこなせるのは契約者のみ。
純血種ではその身と引き換えになる。」

「所有者の精神への汚染、そして侵食…か。」

「それに彼女が納得するか。
彼女自身が、まず自分を理解しないといけない時なのに。」

「それもそうね。」

「でも、委員会は使うだろうな。」

大きくため息をつくミサト。

「なりふりかまっていられない…か。」

「そうだな、ベストなのは覚醒していない状態のシンジくんの身柄を確保することだな。」

「どう思う?」

そうミサトにたずねられて加持は肩をすくめて見せる。

「俺にも分からないさ。カヲルくんの話では管理者によって封印されたそうだが。」

「でもシンジくんが望めばいつでも彼は出てこれる。」

「あぁ、浄化されていない状態では抑制が効かない。」

「ある意味最悪ね。一般人に核兵器の発射ボタンを持たせているようなものだから。」

「辛いだろうな。もしこれでアスカくんが…」

二人は顔を見合わせた。
思わず、ミサトは身震いした。
もしかして、人類には未来などないのではないか、
そう思えてならないのだった。
 
 
 
 
 
 
 

「そうなんですか…」

レイはうつむいたままユイの話を聞いた。
どのようにして自分がこの世界に現れたのか、
どうして、そのような事が起こったのか、
そして、自分に関わる人達はいったい何を考えていたのか。

「私はその人が亡くなった時に代わりに現れたんですね。」

今まで母だと思っていた人物は、そうではなかった。
でも、今更お母さんとは呼べない。

「そういうことね。タケシがああなる前は、彼があなたの面倒を見ていたのだけど。」

「あの人が…」

レイは顔を伏せる。
ユイと話をするまでに過去の記憶を探ってみた。
かすかにではあるが、そんな男性のことを覚えてているような気がする。

「すいません。何か混乱しちゃって…少しだけ一人にしてもらえますか?
続きは明日にして欲しいんです。」

ユイはうなずいて席を立つ。
その背後に立っていたカヲルも一緒に部屋を出ようとするが、レイに呼び止められる。

「ねぇ、カヲル。」

その声は少し震えていた。

「なんだい?」

「あなたは私のこと知っていたの?」

首を振って答えるカヲル。

「いいや、全然知らなかった。
あの人達はなるべく君に関わらないようにしていたんだ。」

「そう…じゃあ、もう一つだけ。」

カヲルはこくりとうなずいた。

「あなたも…その…」

「僕もエヴァだよ…この世界で数少ない君と同じ生き物だ。」

「私…と同じ…」

にっこりとカヲルは微笑む。

「いろいろあって疲れただろ?
今日は何も考えないで寝たほうが良いよ。
細かいことは明日から考えよう。」

そして、レイの額に軽くキスをする。

「じゃあ…」

部屋を出て行こうとするカヲルの背中にレイは小さく声をかける。

「ありがと。」
 
 
 
 
 
 
 
 
 

さて、教えてもらえるんでしょうね。

あぁ、そのつもりで君を呼んだ。

シンジくんはどうして適合者になったのですか。

いきさつ…か?

そうです。先ほどの話では候補者の中にはシンジくんは含まれていなかった。
それなのに彼は適合者になった。何があったんです?

事故…だ。
しかし、今となってはそれも仕組まれていたものなのかもしれないが。

事故ですか?

そうだ、それはシンジが高校に入学した夏だった。
我々はとある避暑地に来ていた。
我々と言ったが、私、ユイ、シンジに惣流の家族も一緒だった。

アスカちゃんも?

そうだ、一緒だった。
前日にひどい雨が降ったことを我々は誰も知らなかった。
だから、その避暑地に到着して、
シンジがアスカくんと二人で散歩に出かけることを許してしまった。

二人は?

散歩の途中でシンジとアスカくんはつり橋から足を滑らせ、増水していた川に落ちた。

幸いというか、二人は下流で発見された。
アスカくんは軽傷だった。
しかし、シンジは…

命が危険だった…

それで、私は研究結果を使うことにしたのだ。
もちろんその当時の研究結果ではエヴァなどは到底作り出せない。
しかし、人体の再生は可能だった。
君は驚くかもしれないが、最初は人体の再生に関する研究も平行して行われていたのだよ。
それに騙されて、研究に参加する研究者も数多くいたがね。

それを、シンジくんに…

何も害はないはずだった。
LCLも再生用のものを使用した。
再生プロセスも完全だった。
それでも…シンジは…

適合者になった。

DNA組成が変化したと聞いたとき、私は自分を呪ったよ。
シンジは助かったが、その代償は…

適合者は覚醒したのですか?

あぁ、覚醒して私に挨拶したよ。

先ほど、仕組まれていたこととおっしゃったのは?

委員会のエージェントが動いた形跡があった。
調べようにもそのエージェント達はすべて消されていたがね。

なるほど。

しかも、シンジにもアスカくんにも事故直前の記憶がなくなっているのだ。
なぜそうなったのかわからない。
専門家は記憶の浄化作用だと言ったが、
そんなものは信じられなかった。

だから、しくまれたものだと。

そうだ。あの時から、委員会と評議会は私の敵になった。
でも、ひとつだけ感謝していることがある。
そのシンジの体の再生をヒントにして、君を生みだすことができたのだから。

僕が?

そうだ。
我々は君達の特殊能力に耐えうる体を作らなければならないと考えた。
しかし、シンジは通常の人間の体でありながら、
エヴァのもつDNA構造にそのDNAを変化させた。
ならば、もともとEVAのDNAをもつ体を作らなくともいいのではないかと。

それでは僕の体は。

私の体の一部に受肉した存在だ。

あなたの…

カヲル、君の右腕は私の右腕だ。
私の今のこの右腕はまがいものにすぎん。

再生は?

行わなかった。自分の罪をいつも認識しているために。

僕は人間から発生した。それでは純血種ではないのでは?

「純血種」は正式には「次なる魂を持つもの」と記されている。
それをある研究者が「純血種」を訳しただけだ。
その方が生物学の研究対象としては響きがいいと言っていたよ。
良い研究者だったが、その娘は父親に似ずお転婆だな。

つまり「純血種」とは言葉通りの意味ではないと?

そういうことだ。

では、教えてください純血種とは?

人間から発生した新しい存在。
それが、全くの無から作り出されようと、人間の肉を使おうとも、
新しい存在でさえあればいい。
それが、先ほどの研究者の見解だった。

新しい存在。
ではレイも誰かの肉体に?

彼女はミユキくんの体に受肉した存在だ。

なるほど、しかし、ロンギヌスの槍は彼女にしか反応しないと。

そうだな。しかし、それが何を意味するのか、やはり我々には想像がつかない。
君とレイには何かの違いがあるのだろう。
それがロンギヌスにはわかるようだ。

もう一つだけ、純血種と混血種との違いは?

簡単だ。彼らはエヴァには変異できなかっただけだ。

つまり、エヴァのできそこないと。

偏った言い方だが間違ってはいないな。
それに彼らには意思がない。
自己認識を行えないのだ。

だから、あんなに簡単に。

意思がないゆえに人間に取り込むことが可能だ。

取り込んだ人間はどうなるのです?

意思を持った混血種になる。
しかし、誰にもなれるわけではない。
純血種を取り込む方法は最高評議会に管理されている。
私がアクセス可能な情報ではない。

なるほど。
しかし、タケシさんは取り込んでいた。

何か評議会には理由があったのだろうな。

そう簡単にはいかないようですね。

そうだな。我々の行動は監視されていると見て間違いないだろう。
彼らからは信用されていないようだな。

そうですか…
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 

そこはとある丘の上だった。

その丘からは海が良く見えた。

草原がその丘を埋め尽くしていて、今も風になびいていた。

その丘のとある場所でそれは起こった。

最初は小さな光の輝きだった。

それが徐々に大きくなっていく。

そして、その光の中から一人の男性が現れる。

丘に降り立つと彼は大きく息を吸込む。

辺りを見まわして空を見上げる。

「アスカ、約束通りに僕は戻ってきたよ。」

そしてゆっくりと丘を上っていく。

風がシンジの髪と服をなびかせる。

一瞬シンジの瞳が青く輝く

「戦いはこれからだ。」

そうつぶやくシンジの声は木々のざわめきにかき消された。






















NEXT
ver.-1.00 1998_09/28公開
ご意見・ご感想は sugimori@muj.biglobe.ne.jp まで!!

あとがき
 

どもTIMEです。

Love-Passion第八章「交差する思惑」です。

どうもすっかりお待たせしちゃいました。
半年振りの更新です。
別に忘れてたわけではないのですが、いろいろ設定考えたり、展開考えたり、
他の連載書いたり、SS書いたりしてたらいつのまにかこんなに空いちゃいました。

で、この八章ですが、予告とはタイトルを変更し内容も違う形になっています。
当初、アスカとシンジのお話でアスカはどうなるのかを書く予定でしたが、
あまりにネタばれになるので、ちょっと置いておいて、その他の登場人物のお話を並べてみました。
#二人とも未来を見てしまうので、現時点でそれを書くのはちょっと…

後半はシンジが適合者になったいきさつとカヲルの生まれたいきさつを簡単に書いています。
#ちなみにSweet-Dreams第10章にその部分のお話がいくつかに別れて出ています。

最後に帰ってきたのはシンジ一人ですが、ちゃんとアスカも生きてます。
というか生きかえっています。
ただ彼女には非常に重要な使命ができたのでしばらく別行動です。
#そうです。女性にしかできないお仕事です。
そのため彼女の出番はLove-Passionではもうないかもしれませんね。

さて次の第九章ですが、
カヲル、レイ、そしてロンギヌスの槍のお話がメインです。
それとアスカ、シンジのお話が少し入ります。
では第九章「聖なる槍と次なる魂を持つもの」でお会いしましょう。
 





 TIMEさんの『Love Passion』第八章、公開です。






 アスカも
 シンジも

 あれやし、

 レイも
 カヲルも

 こうやし、

 ミサトも
 加持も
 リツコも

 そこやし、



 いろんなことがありありありーので
 いろんな謎が出てきて見えて解決し増えて分裂して・・・


 盛り上がっていますです(^^)




 どこへ向かう!






 さあ、訪問者の皆さん。
 色々書いているTIMEさんに感想メールを送りましょう!




TOP 】 / 【 めぞん 】 / [TIME]の部屋に戻る