全てを無に戻すもの。
一つの魂に宿りし、
それは人に絶望をもたらすもの。
それは全てを守るもの。
一つの魂に宿りし、
それは人に希望をもたらすもの。
「われわれは神を作るつもりはない。」
「しかし、ここに神を作り出そうとしている男がいる。」
「碇ゲンドウ。彼は本当に信頼に足る人物か。」
「ロンギヌスの槍の正当なあるじの生成。彼の役目はただそれだけだ。」
「しかし、アダムを彼に付けたのは我々の手落ちだった。」
「彼には警告を与えねばなるまい。彼の立場を思い出させるために。」
「人類補完計画。全てはこの計画のために。」
Love-Passion
第五章
「ゆめ」
TIME/98
「ここは何処だろう?」
シンジはひびが入っている道の上に立っていた。
左右には崩れたビルの残骸が並び、
さながら、大地震直後の都市のようだった。
あたりに人の気配はなく、さながら、廃虚のようだった。
ふとシンジはだれかに呼ばれたかのように振り返った。
そして、通れそうな道を選びながら、彼は歩き始めた。
いくつかの通りを抜け、瓦礫の山を登って、彼は目的地にたどり着いた。
シンジはその瓦礫の山の頂上から周りを見渡した。
目の前には大きな湖が広がり、
その中心に赤い鉄骨の塔が斜めに傾きながら立っていた。
「どうして、ここに来たんだろう?」
シンジは誰にともなくつぶやく。
と、シンジの頭の中に声が響く。
「それは僕がそう仕向けたからね。」
「だ、誰?」
シンジはどこかで聞いた事があると思いながら尋ねた。
しかし、彼はそれには答えずこう言った。
「ま、それはいいとして。塔をよく見てごらん。」
その声はさからいがたい何かを持っていた。
シンジはその言葉に従って、塔に目を凝らした。
と、塔の真ん中で赤い閃光が走る。
一瞬遅れて、爆発が起こり、塔の破壊された鉄骨が湖に降り注ぐ。
煙が消えると、塔の上構部が消えていた。
「なんだ?」
彼は目を凝らす。
と、二度三度、閃光が発する。
今度はちいさな煙が数箇所から上がった。
「君の運命だよ。」
「何が?」
シンジは思わず問い返す。
「そこに行けばわかるよ。」
「どうやって?」
しばらくの沈黙。
シンジは声の主がくすりと微笑んだ気がした。
「目を閉じてごらん。」
シンジは言われた通りに目を閉じる。
「いいよ。目を開けてみて。」
恐る恐る目を開けるシンジ。
先ほど見ていたものとは違う光景が
目の前に広がっている。
「ここは?」
シンジは赤い鉄塔の上にいた。
鉄骨はさびが浮いて侵食が激しいようだった。
足元に砂が少し溜まっている。
そして、シンジの鉄塔の上の方から声が聞こえた。
「くそっ。洗脳されてるな。僕ではどうしようもない。」
そして、爆音。
シンジの上に爆発で破壊された鉄骨が降ってくる。
「うわぁ。」
シンジは慌てて顔をおおう。
しかし、いつまで経っても、衝撃を感じない。
恐る恐る目を開けて、あたりを見回すと、
彼の周りだけ鉄骨が降ってこなかったようだ。
「よかった、運が良かったのかな?」
首を振りながら、シンジはそうつぶやいた。
「エヴァの力だよ。」
突然、シンジの頭の中に声が響く。
「エヴァの力?」
「神が与えし、ヒトが触れてはいけない禁忌の炎。それがエヴァ。」
腕を組んで、考え込むシンジ。
エヴァという言葉に聞き覚えがあるように思い出そうとする。
「禁忌の炎?」
「喩えだよ・・ところで、彼女は平気なのかな?」
「彼女?」
「あそこにいるよ。」
何かに呼ばれたようにシンジは後ろを振り返る。
そこには…
「…アスカ?」
シンジは信じられないように小さくささやく。
赤い十字に組み合わされた鉄骨にアスカがはり付けにされていた。
両手はくぎでとめられ、赤い血が白いドレスを染め、
ぽたりぽたりと足元に流れ落ちる。
かなり時間が経過しているようで、大きな血黙りができていた。
「あすかーー!!」
シンジは叫び鉄骨の上を走り、アスカに駆け寄ろうとする。
そのシンジの一歩手前に光の矢が落下する。
反射的に顔を覆うシンジ。
轟音、そして、煙がもうもうと立ち込める。
しかし、何かに守られてるようにシンジには怪我が無かった。
「来たわね、碇君。」
シンジは声の方を見上げた。
「…レイ?どーして?」
レイが空中に浮かんでいた。
その左手に肘からちぎれた腕を持っている。
「さて、カヲル。遊ぶのはここまでよ。出て来なさい。
でないと、碇君が死ぬわよ。」
興味なさげに持っていた腕を放り投げると、
あたりを見まわすレイ。
「シンジ君、どうしてきたんだ?」
背後から声をかけられて、慌てて振り向くシンジ。
「カヲルくん?」
カヲルが左腕をかばいながら立っていた。
左腕は肘の部分からなくなっており、
止血はしているようだが、血が滴り落ちている。
「どうしてここに?君さえ無事なら、僕の命は必要なかったのに。」
「僕はそんな事は望んでいないからね。」
いきなりシンジの唇が動く。
その声はシンジの声であったが、異質な何かを感じさせた。
何がどうなったんだ?
シンジは手を動かそうとしたが、動かない。
どうしたんだ、僕の体は?
誰が話しているんだ。
そして、シンジは先ほどから頭の中で響いていた声の主に思い当たった。
ジュンだ。
でもどうして?
シンジを見ていた二人は
その瞳があざやかな金色に変化しているのに気がついた。
ひざを突き荒い息を吐きながらカヲルは呟く。
「つまり、事態は最悪なわけだ。エヴァが目覚め始めたらしい。」
にこりと微笑むレイ。
「そんなことないわよ。ここに寄代がある訳だし。」
彼女の左手に輝く槍があらわれた。
その槍はレイの身長よりも大きく、二股に分かれていた。
「なるほど、ロンギヌスの槍までご持参とは、
あの人も本気なんだ。」
「そうよ。あの人は本気。そして…私も本気。」
そう言うと、レイは貼り付けにされているアスカの方を向き、
ゆっくり槍を掲げる。
「やめろ!!レイ!!やめるんだ!!」
カヲルが叫ぶ。
そして、シンジも心の中で叫んでいた。
「……さよなら、アスカ。」
レイは槍を振り下ろした。
槍がアスカの胸に吸い込まれる。
飛び散った血がシンジの顔にかかる。
シンジの時が止まった。
槍の光は消え、槍自体が赤黒く変色する。
まるで、槍がアスカの生命を吸い取っているかのようだった。
「……アスカ。」
シンジは呟く。
そして、叫んだ。
シンジは一人で立っていた。
腕に息絶えたアスカを抱いて。
「僕はどうすればいい?」
みんないなくなってしまった。
「僕はどうすればいい?」
僕にはもう何もない。
「僕はどうすればいい?」
誰も答えない。
「僕はどうすればいい?」
僕にはわからない。
「僕はどうすればいい?」
もう、やめよう。
全て。終わらせてしまおう。
シンジは目を閉じた。
その瞬間シンジの背中から、
光る透明な羽が実体化した。
全て、そう全て。
羽の光度が増し、シンジ自身を覆い尽くす。
終わらせてしまおう…
そうすれば、楽になれる…
「まさかケルベロスが突破されるとはな…」
「しかたない、やったのは彼女だそうだ…」
「この世界に赤木博士の防壁を破れる者など、
そう何人も…まさか…碇。」
「そうだ、ユカリ君だ…」
「しかし……」
「つまり、彼も向こうに回ったということだ。」
「碇……」
「冬月、彼のことは私に任してくれ。
彼から全てを奪ったのは私なのだから…」
「…そうか…しかし…レイ君だったか…知らせるのか?」
「そうもいくまい、調査したが、彼女はまったく自覚がない。」
「…そうだな。それなら言わないほうが得策か…」
「そうだな。シンジ達も忘れている。それも後少しだけだろうが…」
「やはり……」
「そうだ…覚醒する。」
「……そうか……」
「ね、シンジ。」
腕の中のアスカがシンジに囁く。
「私のこと愛してる?」
恥ずかしそうに、でもはっきりとアスカは尋ねる。
「・・愛してるよ。」
シンジはアスカを抱く力を少し強めて、アスカの耳元に囁いた。
「ほんとに?」
アスカはくすぐったそうに、笑う。
「本当だよ。」
シンジはアスカの顔を覗き込む。
アスカは潤んだ瞳でシンジを見つめる。
「じゃあ、お願いがあるの。」
甘えるように、囁くアスカ。
「なんだい。」
「アタシのために・・」
アスカはそこで言葉を切って、
シンジをじっと見詰める。
「アスカのために?」
先を促すようにやさしくシンジは尋ねる。
「死んで。」
そして、シンジの腹部に鋭い痛みが走る。
「えっ、どうして。何が。」
シンジはアスカを見つめる。
アスカは表情のない顔をでシンジを見詰める。
「死んで。シンジ。アタシのために。」
ぱっと、アスカが離れる、しかし、手には何ももっていない。
シンジは腹部を見る。
何かで切り付けられたように傷口が開いていた。
そして、そこから、血が流れ落ちる。
「どうして?」
シンジはアスカを見つめる。
込み上げるものを我慢しきれず、
シンジは真っ赤な血を吐血する。
アスカはふんと鼻を鳴らし、答える。
「アナタがじゃまだから。」
「どうして。」
「アナタを信じられないから。」
「どうして!!」
そこで、アスカは目つきを和らげる。
「アナタはこの世界には存在してはいけないから。」
「この世界って・・」
「だから、アナタを殺すの。元に戻すために。」
屑折れるシンジ。
もう、足には力が入らなかった。
「あなたが、エヴァでなかったら、もっと違ったのに。」
エヴァ?
シンジはアスカを見上げる。
アスカの瞳から一筋の涙が光る。
そして、シンジの頬に落ちる。
アスカの涙は暖かかった。
「さようなら、あなたのこと忘れない。」
そして、全てが闇に包まれた。
「それってどーいうこと?」
「ま、想像にお任せするよ。」
「…その情報が確かだとすると、私たちは反逆者になるってこと?」
「そーいうこと。なんだ、わかってるじゃないか葛城。」
「もう、ちゃかさないでよ…でも、確かにゼーレが考えていることは、
常軌を逸しているわね。」
「まあね。純潔種のエヴァによる人類補完計画。
詳しい内容は分からないが、 かなりきな臭いな。」
「でも、純潔種のエヴァって、彼だけでしょ?」
「そうもいかないんだよな。もし、もう一人いるとしたら?」
「それって、もしかして噂の?」
「そう、しかも身近なところにいるんだよな。」
「身近な所…」
「え?なんだって?」
シンジは今聞いた言葉を理解できなかった。
「ジュンが…死んだ…わ。」
電話の向こう側でアスカ泣いているようだった。
「そんな…だって、一時間ほど前に会ったばかりだよ…そんな…」
「ほんとよ。今中央病院にいるの…みんなに連絡まわしてるから、
シンジもすぐに来て。」
「わ、わかった…」
シンジは我に帰り時計を見た。
電話に出てからもう三十分が経過している。
どーやら、受話器を握ったままぼぉっとしていたらしい。
「とにかく、病院にいかなきゃ。」
服を着替えて、部屋の外に出る。
空を見上げると、今にも雨か雪が降ってきそうだった。
「確か、中央病院って言ってたよな。」
自転車にまたがり、病院めざして走り出す。
不思議と涙は出てこなかった。
「なんだろ。なんか信じられない。」
今にも「嘘だよ。」とかいって
ジュンが出てきそうだった。
「だって、さっき会ったばかりなのに。」
病室の前にはもう数十人の人がいた。
「シンジ…」
アスカがシンジの側にやってきて、
シンジを見つめる。
その瞳は真っ赤になっていた。
「ごめん。遅くなって。」
シンジのその言葉に静かに首を振るアスカ。
「あの部屋にいるわ。会ってきて…」
「わかった…」
シンジはそれだけ言うと、部屋の前で入室の許可をもらって、
ドアを開ける。
中は薄暗かった。
そして、部屋の真ん中のベッドに…
「ジュン…どうして?」
ベッドの脇に来て、ジュンの顔を見下ろす。
まるで眠っているかのようにジュンはそこにいた。
「どうして…ねぇ、約束したじゃないか…」
シンジは泣いている自分に気がついた。
「約束したのに…ねぇ…どうして…」
ベッドの脇にくずおれるシンジ。
「約束…したのに…一緒に遊びに行こうって…」
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カヲルは自慢のワインを持って、
レイの部屋への道を歩いていた。
ここ数日、毎日のようにカヲルはレイの部屋に通っていた。
レイは強がっていたが、かなりつらそうにカヲルには見えたからだ。
ふと、カヲルは前方の人影を見つけて、立ち止まる。
彼の前には黒いロングコートを着た男性が立っていた。
「渚カヲル君だね。」
その男性はかけていたサングラスを外し、カヲルに笑いかけた。
もう中年だが、なかなかのいい男である。
瞳の赤がカヲルの目を引く。
そして、屈託のない笑い。
その笑みは彼がよく知っている女性の笑みとよく似ていた。
カヲルは、彼が誰だか悟った。
そして、遂に来るべき日が来てしまったことを。
「…ありきたりの挨拶はいいですよ。綾波タケシさん。」
カヲルは唇の端をゆがめて笑った。
その男性は驚いたようにカヲルを見る。
そして、サングラスをかける。
「……これは驚いた。どうして、私の名前を?」
カヲルは少し肩を竦めた。
「蛇の道は蛇ですよ…
で、あなたがここに現れたということは、
あなたは補完計画を遂行するわけですね。」
カヲルの瞳は真紅に輝いていた。
「…そうかもしれないな。」
タケシは少しうつむいて答える。
サングラスをかけているため、
表情が読み取れない。
「もちろん、顔見せだけではないんでしょう?」
「まぁね、本部の方は、ユカリ君がご挨拶に出向いてるはずだ。」
「なるほどね。リツコ博士にご挨拶ですか、律義なことですね。」
「さて、君の方だが、私が相手をさせてもらうよ。」
カヲルはにっこりと微笑む。
「…そうですか。」
次の瞬間、タケシは右手をカヲルの方へ向ける。
その手のひらに黄色い球体が発生し、
そこから光の矢が三本カヲルに向かって飛ぶ。
カヲルは左手はそのままに、
右手だけをその光の矢に向かって掲げる、
光の矢が今にもカヲルに突き刺さりそうになった瞬間、
カヲルの右手を中心に赤い六角系の力場が発生する。
三本の光の矢はその力場に衝突して消えてしまう。
それを見たタケシは、右腕に左手を添える。
と黄色い球体が赤く輝き、
光の矢が雨あられとカヲルに降り注ぐ。
光の矢は次から次へとその力場、ATフィールドにさえぎられ、
全てカヲルに届くことはできなかった。
「…なかなかいいATフィールドだな。
私の力を持ってしても貫けないとは、
さすがはアダム。純潔種のエヴァといったとこか。」
タケシは感心したようにため息を漏らす。
「その呼び名はあまり好きではないんですがね。」
ニヤリと微笑んだカヲル。
ふっと、カヲルの姿が二人の視界から消える。
そして、タケシの目の前に突然現れるカヲル。
「くっ」
間一発カヲルが繰り出した右手を避けるタケシ。
その右手は青白く光っている。
ある程度距離を置いてから、タケシはため息をつく。
「いや、若い子は瞬発力があっていいね。
僕はもう年だから、そんな動きはできないよ。」
軽い口調だが、カヲルの次の攻撃に備えて、
体は、緊張している。
「…そう思われるでしたら、引退することをお勧めしますよ。」
にこり微笑んで答えるカヲル。
「そうしたいのはやまやまだが、お返しはしないとね。」
「復讐ですか。」
確認するように尋ねるカヲル。
少し驚いた表情をしたタケシだったが、
それは一瞬だった。
「…聞こえは悪いが、そう言っても差し支えないな。
僕の大切な人を奪ったゲンドウには、
それ相応の報いを受けてもらわなければ。」
「事故だとしても?」
「…そうとは限らないよ。
あの事故がしくまれたものだったとしたら?」
「あの人たちに限ってそんなことは・・・」
にこりと微笑むタケシ。
「そう言い切れるのは若い証拠だね。残念ながら、
僕は年寄りでね、自分の考えを変えるつもりはないよ。」
「まぁ、期待はしてませんでしたが。
自分の体にエヴァを宿すくらいですから。
制御はできてるんですか?」
「なんとかね。」
「それはすごいですね。
大抵は精神崩壊を起こして、自滅するんですが。」
「さて、精神崩壊はしてるかもな。
人類を滅ぼそうとしてるのだから。」
「それは言えてますね。」
「…そうはっきり言われると、困るんだが。」
「そうですか?僕にとっては、
納得が行く理由だったんですが。」
「ふふふ、君とはウマが合いそうだな。」
「…僕もそう思います。」
「念のために聞くが、僕と一緒に来るつもりは?」
「まったくないです。」
「…そうか。非常に残念だが、予想通りの答えだ。」
「どうも。」
「そうだな。今日はこれでひきあげることにするよ。
君の力を見れたしね。 」
ニヤリと微笑み、肩をすくめるタケシ。
「そうしてくださると、僕もありがたいですね。」
カヲルはほっとため息をつき、答える。
「それから、ひとつ碇に伝言を頼むよ。
「近いうちに娘を迎えに上がる。」とね。」
「彼女を捧げるのですか?実の娘を。」
「それもやむをえんよ。それに言っておくが、
彼女は私の実の娘ではない。」
そして、カヲルは信じられない事を聞いた。
「あれは…純潔種のエヴァだ。」
レイがエヴァ。
それも純潔種の…
ショックを受けているカヲルにかまわずに
タケシは話を続ける。
「君が来ないとなれば、
今のところ彼女しか純潔種はいないからな。」
「彼女が?」
カヲルは驚きの表情を隠さずに
タケシに尋ねる。
「…あぁ、知らなかったのかい?
ゲンドウらしくもないな。
君に教えないとはね。」
ニヤリと笑うカヲル。
先ほどまでの余裕はカヲルにはなかった。
「しかし、彼女は…」
「生まれてから、もう十五年が経つ…な。」
「しかし、純潔種の製造方法は三年前にやっと確立されたばかり…
それも発生確立は 0.000001%ですよ?」
そして、その結果生まれた一番始めのエヴァが
アダム、すなわちカヲルのはずだった。
「確かに。しかし、その研究のきっかけを与えた、
偶発的な純潔種の発生があったとしたら?」
「それが…」
確かにタケシの言う通りだ。
何もないところから研究が始まる事は珍しい。
何か起こって、それから始まる事の方が多いはずだ。
タケシは断言した。
「そう、レイこそ最初の純潔種だ…
そして、ロンギヌスの槍の正当なあるじ。
ゼーレには隠しているがね。」
「レイが…」
ロンギヌスの正当なあるじ。
もしそうだとすると、
彼女は否応無しに巻き込まれてしまう。
呆然としているカヲルを見て、タケシはニヤリと微笑んだ。
「では、私は行くとするよ。
今度はお互い手加減なしでやりたいね。」
そして、カケシはカヲルの視界から消えた。
カヲルは空を見上げ、一人たたずんでいた。
「約束の日は近い。我々も急がねばなるまい。」
「使者を遣わせよう。そして、始めるのだ。」
「光の翼持てるものの誕生を。」
「そして、終わらせるのだ。」
「全てをあるべき姿に戻すのだ。」
「そして、人類の補完を。」
あとがき
ども、TIMEです。
みなさまお久しぶりです。
予定より二ヶ月も遅れてしまいましたが、
やっと帰ってきました。
しかし、めぞんのヒットカウンターが
97万超えてるとは、すごいですね。
早速100万ヒット用のSSを書かないと。
読者の方には5ヶ月近く待っていただいたということで、
今回のL.Pは「サービス、サービスぅ」って感じで書いてます。
って言っても今回の第五章は少し話が脱線しています。
最後の方のカヲル、タケシの部分が正規ルートですね。
残り、特に前半はかなりダークですが、
今後の展開と関係あるような、ないような。
#作者自身が決めかねてますので。
ま、これまでの章とは展開は変わる予定です。
なんか謎だらけで、ほんとに終わるのかって心配してるんですが、
気長に書いていこうと思ってます。
一応予定では十章で終わるつもりです。
#予定は未定ですが。
さて、次の第六章ではシンジが目覚める訳です。
四、五章で書いてきた事がどういった意味があるか
書ければなぁと思ってます。
では、第六章「覚醒」をお楽しみに。