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-----------AD 2020 27 Dec-----------
アスカは部屋で一人で泣いていた。
聞きたくなかったその言葉、
それをアスカは聞いてしまった。
どうして?
どうしてアタシじゃないの?
どうしてレイを選んだの?
アタシのこと愛してくれてなかったの?
アタシのこと抱きたいって言ってくれたじゃない?
きゅっと手を握るアスカ。
どうして?
どうして?
どうして?
アスカはうつむく、涙が頬をつたって、床に落ちる。
アタシはシンジのこと誰よりも知ってたのに。
アタシはシンジのこと誰よりも信じてたのに。
アタシはシンジのこと誰よりも愛してたのに。
どうして、アタシを選んでくれなかったの?
どうしてレイを選んだの?
キスしたのに。
抱きしめてくれたのに。
この胸の痛みはどうすればいいの?
何が悪かったの?
アタシの何が悪かったの?
約束したじゃない。
アタシのそばにいてくれるって。
シンジは忘れちゃったのかな?
アタシは覚えてるのに。
あの日、シンジは言ってくれたよね。
「どんなことがあっても、僕はアスカと一緒だ。」って。
すごく嬉しかった。
アタシがシンジの前で泣いたのはあれが初めてだったのよ。
もう駄目なのかな。
もうシンジはレイしか見えないの?
アタシのことは見てくれないの?
アタシはシンジじゃないと駄目なんだよ。
アタシに触れることができるのはシンジだけ
そう誓ってたのに。
アスカは虚ろに写真立てを見つめる。
その瞳には生気がない。
ねぇ、シンジ。教えて。
「幸せな恋をして欲しい。」
なんて、シンジなしでどうすればいいの?
アタシはシンジと一緒にいるのが幸せだったんだよ。
シンジ以外の人と恋なんてできないんだよ。
「シンジ、寂しいよ。」
もうダメだ、こんなに辛い思いをするくらいなら。
もう生きていたくない。
生きている意味もない。
もうどうでもいい。
シンジがアタシを大切にしてくれないのなら。
あなたなしでアタシは生きていたくない。
アスカはふらふらと立ち上がる。
そして、部屋から出ていく。
もうどうでもよくなった。
生きているのはイヤ。
アスカは屋上にやってきた。
悲しいけど、もう涙は出ない。
そうか、もう涙も枯れちゃったのね。
二日間ずっと泣いてたもんね。
でも、悲しいのはもう終り。
アタシは解放されるんだ。
フェンスの向う側へ回り込み下を見る。
何人かこちらを見て叫んでいる。
もういいや。どうでもいいよ。
アスカは顔をあげ、空を見る。
空は青く澄んでいる。
きれいだな。
目を閉じる。
心で、シンジに別れを告げる。
「さよなら、シンジ。」
アスカは左足を踏みだした。
落ちていく。どこまでも。
アスカは最後にシンジの声を聞いた気がした。
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Love-Passion 第三章 「夢じゃない」
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「ねぇ、今、なんか声が聞こえなかった?」
シンジはレイに聞く。
「そう?アタシは何も聞こえなかったけど。」
レイはにっこり微笑む。
「バイトのやりすぎなんじゃないの?」
「え、そんなことないよ。」
首をかしげてシンジは答える。
「どうかしたのかな、二人とも。」
青葉が厨房から出てきて声をかける。
「いえ、なんでもないです。」
「そう?でも今日はすごい暇だな。」
青葉がカウンターの席に座って背伸びをする。
「そうですね。年末だからしかたがないような気はしますけどね。」
シンジがその隣に腰かける。
レイが冷蔵庫からジュースを出して、人数分コップに注ぐ。
「ちょっと休憩にしましょうか。ちょうど三時ですし。」
コップをカウンターに置き、マヤを呼ぶ。
「マヤさーん、ちょっと休憩にしませんか。」
マヤがやってきて青葉の隣に座る。
「今日はヒマねぇ。この分だと早い目にお店閉めることになりそうね。」
「そうだね。マスターはもうすぐ帰ってくるから、
その時に聞いてみようか。」
少しジュースを飲んで答える青葉。
「あ、そうだ、今のうちにレイちゃんに渡したくものがあるんだけど。」
マヤがレイに言う。
「もしかして、例のCDですか?」
嬉しそうにレイが聞く。
「そうそう、持ってきてるから、今、渡すね。」
二人は更衣室に入っていった。
「ところで、シンジ君に聞きたいことがあるんだが。」
青葉が小声で聞く。
「なんですか。」
「君とレイちゃんがつき合ってるって本当なの?」
シンジは不思議そうに青葉に聞く
「どうしてですか。」
「いや、マヤちゃんがレイちゃんはシンジ君とつき合ってるから、
やめといた方がいいわよ。って言ってたから。」
ニヤリと笑う青葉。
「そうなんですか。」
「で、ほんとのところはどうなんだい?」
うつむくシンジ。
「そ、それは・・・」
突然、ドアが開き、一人の男が入ってくる。
「おやおや、全然お客がいないんだね。」
「マスター。どうでした?」
青葉は立ち上がり加持に聞く。
「まぁ、なんとかなりそうだよ。」
ニヤリと笑う加持。
「おかえりなさい。マスター。」
マヤとレイの二人も出てくる。
「さてと、この分だと夜も暇そうだから、
今日は少し早く店を閉めて、みんなでメシ食うか。」
加持は四人を見て明るく言った。
「あれ、おかしいな、灯りついてないや。アスカどうかしたのかな?」
シンジは鍵を開けて、中に入る。
そして、部屋の灯りをつける。
「うーん。アスカが来た形跡はないな。どうしちゃったんだろ。」
少しシンジは不安になって、もう一度コートをはおって、
外に出る、そして、隣のアスカの部屋のチャイムを押す。
アスカが出てくる気配はない。
「うーん。おかしいな。朝、一緒にごはん食べた時には
今日も待ってるから、って言ってたのに。」
首をかしげるシンジ。
そして、ドアのノブに手をかける。
「まぁ、開いてる訳も・・あれ、開いてるな。」
シンジはドアを開け、中をのぞき込み声をかける。
「アスカー。いないのー。」
返事はない。
「おじゃましまーす、と。」
部屋の中に入り、灯りをつける。
「うーん。もしかして寝てるのかな?」
寝室の方を覗くシンジ。
すると、ベッドで寝ているアスカがいた。
「なんだ。寝てたのかって、なんか変だな?」
アスカの顔をのぞき込むシンジ。
アスカはうなされてるらしい。
頬には涙の跡もある。
「起こした方がよさそうだな。アスカ、起きて。」
ゆさゆさと肩を揺さぶるシンジ。
アスカはびくっと震えて、ゆっくり目を開ける。
「・・アスカ。ただいま。」
アスカは虚ろな目でシンジを見あげる。
シンジはベッドの端に座って、アスカの髪をなでる。
「どうしたの?なんか、すごくうなされてたみたいだけど。」
「シンジ・・なの?」
微笑むシンジ。
「そうだよ。カヲル君に見える?」
アスカの瞳がうるみ、涙が頬を伝う。
起き上がり、シンジの首に抱きつくアスカ。
「ど、どうしたのアスカ。」
驚きながらもやさしくアスカの背中を撫でるシンジ。
「ねぇ、シンジはアタシのこと愛してくれてるの?
だったら、もう離さないで。ずっと側にいて。」
シンジは戸惑っていた。
「ねぇ、何かあったの?アスカ。」
首を振って答えるアスカ。
「よく、覚えてないの。」
「何を?」
いぶかしそうに聞くシンジ。
「すごく恐い夢。それだけ。内容は思い出せない。
ううん。思い出したくないのかな。すごく寂しくて恐かった。」
「そうなんだ。」
「ね、シンジ、アタシ言っておきたいことがあるの。」
「何?」
不思議そうな表情のシンジ。
抱きつくのをやめて、アスカはシンジの顔を見る。
頬には涙がつたっている。
見つめ会う二人。アスカの頬の涙を見て、
シンジはとてもきれいだと思った。
「あのね、アタシはシンジしか愛せないの。」
アスカはシンジの瞳をじっと見つめる。
「シンジはレイのことを好きなのかもしれない、
でもアタシはシンジ以外の人のことは好きになれない。
アタシは他の男には触れても欲しくない。
でもシンジは違うの、シンジだったら何をされてもいいと思うの。
シンジさえいてくれれば、他に何も望まない。」
シンジもアスカの瞳を見つめる。
「・・ねぇ、あの夜どうして抱いてくれなかったの?」
アスカはずっと疑問に思っていたことをシンジに聞いた。
「あたしが寝ちゃったから?それとも・・・」
アスカの瞳からまた涙がこぼれる。
シンジはアスカの瞳をじっと見て言う。
それをハンカチで拭ってシンジは答える。
「やっぱりはっきりさせないといけないね。」
アスカはシンジを不安げに見る。
「クリスマスパーティからずっと考えてたんだ、
もう、これ以上は二人を待たせる訳にはいけないって。」
シンジは壁を見つめる。
「やっとわかったんだ、自分の本心に。僕は誰を愛しているのか。」
そして、シンジはアスカを見つめる。
「・・僕はアスカのことを愛してる。いつもそばにいて欲しいと思ってるよ。」
アスカは少し驚いたような顔をしたが、すぐに聞き返した。
「・・本当に?アタシのことを?」
「うん。気がついたんだ。四人の関係を壊したくないっていうのは、
僕が逃げてたからなんだって。それで、考えたんだ。
僕がいつもそばにいたい、いて欲しい人はどちらなのかを。」
アスカはシンジを見つめる。
「じゃあ。」
「うん。アスカにいつもそばにいて欲しい。だめかな?」
アスカは首をふるふる振って、
「ううん。シンジ、ありがと。アタシもシンジのそばにいたい。」
シンジはアスカの顎を手を当て、アスカの顔を
シンジの方に向けさせる。アスカの瞳は涙でうるんでいる。
やさしくキスをするシンジ。
そして、シンジはアスカを抱きしめる。
「ねぇ、シンジ。」
「なに?アスカ。」
甘えるように囁やくアスカ。
「シンジってどうしてそんなにやさしく抱いてくれるの?
もっと強く抱きしめてもいいんだよ。」
「だって、自信ないから。」
「え?」
「強く抱きしめちゃうと多分我慢できなくなるから。」
「・・いいよ。我慢できなくなっても。」
「僕は困るんだ。」
不思議そうに聞くアスカ。
「どうして?」
「僕とアスカのことレイに言わないと。」
はっとしたようにアスカは答える。
「そうだね。」
「そうだよ。」
「じゃあ、しばらくこのままでいてくれる?」
「いいよ。」
「ありがと。大好きだよ、シンジ。」
アスカはシンジに腕枕してもらったまま、眠ってしまった。
シンジはアスカの髪を撫でていたが、ふと囁やいた。
「・・おやすみ、アスカ。」
-----------AD 2020 28 Dec-----------
レイは公園のベンチに座っていた。
太陽の日差しが暖かい。
公園にあまり人はいなかった。
もう年末だからしかたないよね。
レイはそう考えて、辺りを見回した。
「あたしに話って何?シンちゃん?」
やってきたシンジに向かってレイはやさしく聞く。
「レイに話さないといけないことがあるんだ。」
シンジはうつむいて答える。
レイはうなずいてシンジに聞く。
「アスカとのこと?」
びっくりした様子で顔を上げて聞くシンジ。
「・・・どうして?」
さみしそうに答えるレイ。
「なんとなくね。そんなことだろうと思ったの。」
「ごめん。何言っても言い訳にしかならないけど。」
「うん。何も言わなくてもいいよ。
こうなるっていうのはわかってたし。」
「えっ?」
レイは近くを歩いているハトを見ながら言った。
「知ってたから。シンちゃんはアタシよりも
アスカのことが好きなんだって。だから、アタシの方
を向いて欲しくてがんばったんだけど。でも、
アタシはシンちゃんも好きだし、アスカも大事なの。
だから、あと一歩踏み込めなかった。」
シンジはうつむく。
「ごめん。」
レイは立ち上がり背伸びをして、シンジの方を向く。
「シンちゃんがあやまらなくてもいいよ。でも、
いままでみたいにアタシと友達でいてくれる?」
シンジはレイを見つめる。
「それはもちろんだよ。」
少し微笑みレイは答える。
「そう。それならいいの。」
「・・・」
「じゃあ、アタシは行くから。さよなら、シンちゃん。」
そう言うとレイはきびすを返し、
シンジの方を振り返らないで、歩いていった。
やっぱりシンちゃんはアスカを選んだんだ。
家までの道をゆっくり歩きながら、レイは考えた。
思ってた通りだ、結論がでるのが遅過ぎたくらい。
もう、シンちゃんてば鈍感なんだから。
簡単なことなのに二年近くかかるなんて。
くすりと笑うレイ。
しかし、レイの瞳からは涙がこぼれる。
シンちゃんの前では泣かないでいようと思ってたけど、
もういいよね。やっぱり泣かないでいるのは無理だね。
レイは空を見上げた。
きれいな空だな。
この空の下で、みんな笑ったり泣いたりしてるんだね。
もしかしたら、私みたいな思いしてる人が他にいるのかな?
「レイ。」
振り返るレイ。そこには見慣れた姿が。
「カヲル?」
「どうしたのかな?ひまわりのようなレイが泣いてるなんて。」
カヲルは微笑みながら、ハンカチを出し、レイの頬を拭く。
「ごめん。ありがと。」
やさしく話しかけるカヲル。
「僕で良かったら話を聞くよ。」
こくんとうなずくレイ。
「そうか、ここじゃあなんだから、どこかに行こうか?」
上目使いでカヲルを見るレイ。
「カヲルの部屋じゃだめ?」
不思議そうに答えるカヲル。
「僕の?・・うん。ここからはすぐだけど。」
レイがうつむいて。
「あのね、たぶん凄く泣くから、人のいない所がいいの。」
納得したようにうなずきながらカヲルが聞く。
「そうか、レイがそんなこと言うのはシンジ君のことだね?」
大きくため息をつきレイが答える。
「うん。そう、アタシふられちゃったの。」
「そうか・・じゃ、僕の部屋に行こう。」
少し微笑んでレイは言う。
「でも、変なことしないでよカヲル。」
「いくら僕でもそこまでしないよ。」
「ほんとかな?」
すまして、カヲルが答える。
「本当だよ。レイがいいよって言わない限りはね。」
「じゃあ、安心だ。」
「そうなんだ。」
アスカはシンジに答えた。
「うん。レイはそう言ってた。」
首を振って答えるシンジ。辛そうだ。
「でも、なんかレイに申し訳ないね。
レイもそんな風に考えていてくれたなんて。」
「そうだね。すぐにとはいかないだろうけど、
いままでみたいにつき合っていきたいと思うよ。」
アスカもうなずいて、
「そうね。アタシもそう思う。」
シンジはテーブルから立ち上がり、アスカに声をかける。
「ごめん。一人になりたいんだけど、いいかな?」
アスカはにっこり笑って答える。
「いいわよ。じゃ、今夜の夕食はアタシが作るわね。」
「うん。頼むよ。」
シンジは自分の部屋に入る。
アスカはそれを見送りながら思った。
レイ、ごめんね。アタシがシンジを独り占めしちゃって。
「さて、夕飯の支度をしないと。」
アスカは声に出してそう言うと、
冷蔵庫を開けて、中をのぞき込んだ。
シンジは部屋に入り、ベッドに横になった。
ヘッドホンをつけて、DVDプレイヤーを再生する。
たちまち、オーケストラの演奏に交じり
狂惜しく歌う男の声が鼓膜を叩く。
テ・デウム。それを聞きながら、シンジは考えた。
自分の選択は本当に良かったのか?
それとももっと早くに答を出していれば、
こんなこともなかったのか?
僕はレイにつぐないをすることができるだろうか?
何をすればその罪をつぐなえる?
シンジはいつの間にか眠ってしまっていた。
「そうか、シンジ君はアスカちゃんを・・」
レイはカヲルの胸にもたれかかりながら、言葉を続けた。
カヲルの部屋で、話をする二人。
しらふでいられないというレイの意見により、
カヲルはワインをレイはウィスキーを飲んでいる。
部屋の中はこぎれいにかたづけられており、
クラシックのDVDが何十枚も、ラックにおさまっている。
レクイエム、その旋律が部屋を満たしている。
「うん。でも、わかってたんだ。アタシが
シンちゃんとアスカの間に割って入っちゃてるって。」
「そうなんだ。」
少し辛そうに話すレイ。
「うん。そう。それで、ずいぶんアスカを苦しめちゃたの。」
やさしく髪を撫でているカヲル。
「アスカちゃんはそうは思ってないんじゃないかな?」
「うん。レイのおかげでアタシもわかったことがあるから。
って言ってたよ。」
くすりと笑って、答えるカヲル。
「アスカ君らしいね。」
「そうね。」
心配そうに聞くレイ。
「ねぇ、アタシ重くない?」
「女の子に寄りかかられて嫌がる男なんていないよ。」
小悪魔的な笑いを浮かべて答えるレイ。
「ふーん。そうなんだ、今度アスカの前でシンちゃんにやってみよ。」
おどけて、答えるカヲル。
「おいおい。血の雨が振りそうだよ。」
「シンちゃんのでしょう?」
「そうだね。」
「でも、アスカ最近おとなしいから。」
「いやいや、わからないよ。」
「そうかな?じゃあ、実行だね。」
微笑み合う二人。
アスカはベッドで寝ているシンジを起こそうと、
肩をゆすった。
「ねぇ、シンジ。起きて、ご飯出来たわよ。ねぇってば。」
しかし、シンジは一向に起きる気配がない。
「うーん。よし。こうなったら。」
アスカはシンジの上に馬乗りになった。
「どう、これでも起きないの?」
シンジの胸をどんどん叩くアスカ。
シンジは目を覚まし、自分とアスカの状況を見て、びっくりして聞く。
「・・うーん。・・えっ、ア、アスカってば
なにやってるの?僕の上に乗って。」
アスカは少し赤くなり、答える。
「だって、シンジ起きないんだもの。上に乗れば起きるかなって。」
ジト目でアスカを見つめるシンジ。
居心地が悪そうに目をそらすアスカ。
「男の上に馬乗りになるなんて・・」
「そ、そんな。シンジ、そんな目で見ないでよ。」
「アスカってそういう子だったんだ。」
アスカは真っ赤になって答える。
「あぁ、もう誤解だってば。」
ニヤリと笑ったシンジ。
「へぇ、誤解だって。使い古された言い訳だね。」
「えっ、あの時のこと、覚えてるんだ。」
「あたりまえだよ。」
そう言うと、シンジは胸に置かれているアスカの手をそっと握った。
その手のくすり指にはシンジがアスカに送った指輪がつけられている。
「で、いつまで僕の上に乗ってるつもり?
もしかして、僕に襲われたいのかな?」
それを聞いたアスカが嬉しそうに答える。
「だから、好きにしていいよ。って言ってるじゃない。」
シンジはしまったという顔をする。
「しまった。ヤブヘビだった。」
アスカはシンジの上に乗ったままシンジに抱きついた。
そして、シンジの耳元で囁やく。
「ねぇ、このままこうしてたら、シンジ、狼さんになっちゃう?」
アスカの肩に手を廻してシンジは答える。
「なりません。」
シンジの顔を見て聞くアスカ。
「ほんと?・・ふー。」
シンジの耳に息を吹きかけるアスカ。
「こ、こら、そんなことしたらだめだよ。」
「へぇ、だめなんだ。」
くすりと笑ってアスカが聞く。
「こら、アスカ、ほんとにだめだってば。」
薄く笑いながらアスカが聞く。
「シンジはアタシのものなんだから、おとなしくしなさい。」
不思議そうに聞くシンジ。
「いつから、アスカのものになったんだ?」
抱きつくのをやめて、体を起こしてアスカは答える。
「昨日の夜から。」
「どうして?」
「アタシのこと愛してくれてるんでしょ?
だったらシンジはアタシのもの。」
「なんか、納得いかないな。」
アスカは上目使いでシンジを見て言う。
「でも、アタシもシンジのものなんだよ。
だからアタシのこと好きにしていいよ。
・・アタシが嫌がることはダメだけど。」
しめたとばかりシンジは聞く。
「だったら、僕の嫌がることもしないんだ?」
きっぱりと否定するアスカ。
「ううん。それはいいの。アタシがするんだったら。」
「やっぱり納得いかない。」
自慢げに答えるアスカ。
「いいじゃない、こんな美人を彼女にできるんだから。」
「うーん。やっぱり考え直した方がいいのかな。」
「遅いわよ。もう何があっても離れてやらないんだから。」
「まいった。結婚は人生の墓場っていうけど、これじゃ
つきあっても同じ目に会いそうだ。」
ジト目でシンジを見下ろすアスカ。
「ふーん。アタシといるのが嫌なんだ、シンジは。」
あわてて答えるシンジ。ここで変なことを言うと、とんでも
ないことになりそうだ。シンジの経験が警告を発していた。
「えっ、そんなことは絶対にないよ。」
「じゃあ、態度で示して。」
アスカは軽く目を閉じて、顔を少しあげる。
シンジはそれを見て起き上がり、アスカの唇に
自分の唇を重ねながら思った。
やれやれ、このぶんだとアスカにひっぱりまわされそうだな。
カヲルは、残っていたワインを飲み干した。
「やれやれ、やっとお姫様はお眠りになったか。」
レイは酔い潰れて、カヲルのベッドで眠っている。
さっきまではカヲルの手を握っていたが、
今は安らかに寝息を立てている。
やさしくそれを見つめるカヲル。
「・・シンジ君はアスカちゃんを選んだんだ。」
小さくつぶやくカヲル。
もう四人の関係は壊れてしまうのだろうか?
いや、少し変わるだけだ。そうあって欲しい。
ふと何かに呼ばれたようにあたりを見回すカヲル。
「・・・そう・か。」
そう言うとカヲルはもうワインの入っていないグラスを
見つめる。
僕はこのまま、ここにいてもいいのだろうか?
ふと、そういう思いが浮かぶ。
あの人達は、僕にも生きる権利がある。と教えてくれた
シンジ君、アスカちゃん、レイに出会って、そう思うようになった。
しかし僕はシンジ君達とは違う。
僕の存在はこの世界では歪みを引き起こす。
そのため、僕はあの人達により保護されここにいる。
遅かれ早かれ僕の正体は、みんなにバレてしまうだろう。
シンジ君達だったら、僕は僕だから関係ないと言ってくれるだろう。
あの人達の子供である三人だったら。
しかし、そのことによってシンジ君達に害が及ぶのは何としても避けたい。
僕だけが持っている力、それを使えば何も問題はない。
しかし、それだけ危険も身に降りかかるだろう。
「絶えざる安息を我らに与え給え。」
そうカヲルはつぶやくと、再び思考の海に潜っていった。
あとがき
どうも作者のTIMEです。
第二章の公開から時間が空いてしまいましたが、
第三章を公開します。
予定調和的な展開になってしまいましたが、
作者としては悩んだ挙げ句の決断です。
#前半部分の夢オチはお約束です。(^^;;
しかし、前半部分と後半部分のアスカが
全然違いますね。もうちょっと暗くした方が
よかったかなって気はしますが。
さて、いよいよLASなお話になってしまいますが、
もともとL.PはLASで行くつもりだったので、
これで、心おきなくつっ走れるというわけです。
#これで、18禁もおっけーさ。(わらい)
さて、次回ですが、やっとお互いの気持ちを
確かめあった二人ですが、愛に障害はつきもの。
二人はいつになったら結ばれるのでしょうか?
アスカの計画はどうなるのか?
第四章「甘い夢」でお会いしましょう。
TIMEさんの『Love Passion』第三章、公開です。
ぐおおぉぉ
し、心臓に悪いぃぃ
マジで読むのをやめようかと思いました(爆)
夢オチで良かった・・・
シンジくんをキープできたアスカちゃん、
一転してハイでしたね(^^)
「好きにしていいよ」
爆裂モノのセリフです(^^)/
誰がなんと言ってもシンジくんは幸せ者ですよね!
それと、
アスカちゃん、いけないよ。
鍵締めないで寝ちゃったら・・・
悪い奴が入り込んだらどうするの!
空き巣狙いが、かわいい寝顔にむらむらと。
なんて事もあり得るんだから!
戸締まりしっかりね(爆)
さあ、訪問者の皆さん。
びっくりTIMEさんに感想メールを送りましょう!
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