舞い降りる雪。
からかうような微笑み。
焼けるような砂浜。
アースカラーのマフラー。
打ち寄せる波。
絡みあう指。
満員電車。
ビルの谷間。
公園の噴水。
金のイヤリング。
霧に霞む後ろ姿。
夕日に染まる顔。
教室の黒板。
落雷の光。
ざわめく木々。
落ちてくる星々。
誕生日のケーキ。
ブーツの音。
雲に隠れる月。
二人で通った通学路。
ウィンドウショッピング。
街灯を映して輝く瞳。
真っ赤なブーケ。
カモメの泣き声。
寝ぼけ眼。
柔らかい芝生。
頬杖ついた横顔。
白い灯台。
夕日に染まる髪。
雨に濡れる桜。
風に揺れるスカート。
君の伏せた横顔。
落雷の大きな音。
かざした指の間に輝く太陽。
青く澄んだ海。
にっこりと微笑む君。
教室でのたわいのない会話。
黄金に輝くイチョウ
鞄の中のチョーカー
月光で輝く髪。
霜の降りた道。
雪をかぶった木々。
手編みの手袋。
輝く君の涙。
二人は出会った。
そして…
「永遠の時を」
"Forever and Ever "
Written by TIME/98
SIDE B "ASUKA"
Episode.1 "Party/Spring"
シンジはアスカをおぶって、歩いていた。
花見で羽目を外したアスカはぐったりとシンジに
もたれかかって安らかな寝息を立てている。
もう日付は変わっているのだが、シンジが歩いている、
堤防沿いには桜が植えられており、
大勢の人たちが花見を楽しんでいた。
「明日、平日なのにいいのかな?」
そう呟き、はしゃいでいる大人たちを見るシンジ。
先ほどまでシンジ達も同様にはしゃいでいたので、
あまり人の事を言えたものではないのだが。
苦笑し、アスカを抱え直すシンジ。
もう夜中であるが、寒いというほどではなく、吹く風は心地よいぐらいだ。
左手の方に目をやるが川の方は真っ暗だった。
ただ、堤防の土手に座って、肩を寄せ合っているカップル
が時折おぼろげに見える。
月は満月ではないが、辺りを薄く照らし出していた。
シンジは堤防をしばらく黙って歩いた。
アスカはさほど重い方ではないが、
それでも、もう既に二十分ほど抱えて歩いているため、
シンジの額にはうっすらと汗をかいている。
少し強く風が吹き、シンジの髪をなでる。
その風とともに桜の花びらが、ひらひらと舞っていた。
ふと足を止めて、その光景に見とれるシンジ。
と、アスカが目を覚まし、けだるそうにシンジの耳元に囁く。
「ねぇ…シンジ。」
少し寝ぼけているような、はっきりしない声。
「あれ?起きたんだ。」
シンジは歩き始めながら答える。
その足取りはゆっくりだ。
「…アタシ…重くない?」
少し、意識がはっきりしたのか、
先ほどよりもはっきりとした声でアスカは尋ねる。
シンジは少し苦笑して答える。
「そうだね、結構重いかも。」
それを聞いたアスカは眉をしかめ、泣きそうな声をだす。
「…ぇ…アタシ…重いの?」
「嘘だよ…ほらちゃんとつかまって…」
シンジはアスカを抱え直す。
アスカはまだ意識がはっきりしないようで、
ぼんやりと桜の木々に目をやる。
と、辺りが急に暗くなった。
さきほどまで、辺りを照らしていた月が
雲に隠れたようだ。
「まだ…いっぱい人いるね…」
「そうだね、明日も会社とかあるだろうに大丈夫かな?」
「そうだね…」
アスカはそれだけ言うと、シンジの背中に顔を埋める。
「…シンジの背中広いね。」
「そうかな…」
シンジは照れたように答える。
おとずれる沈黙。
お互いのぬくもりを感じる二人。
そして、シンジは桜の並木を抜け、住宅街に入っていく。
「よく、幼稚園の時に通ったよね。」
今、歩いているコースは幼稚園の時に
二人で通ったルートだった。
家がお隣で一緒に通っていた二人だったが、
よく友達にからかわれた事を、シンジはなくかしく思い出していた。
「そうだね、もう、あれから十年近く経っているんだよね。」
くすくす笑うアスカ。
まだ、お酒が残っているらしい。
普段はしないその笑いかたにシンジは何故かどきどきしていた。
「そう、シンジってば、泣き虫だったよね。」
さすがに、こちらの住宅街は深夜ということで
ひっそりと静まりかえっていて、道沿いの家々にも
明かりが灯いているところは少ない。
その路地をゆっくりとシンジは歩いていく。
遠くで虫たちが鳴いている声が二人の耳に入る。
見上げると、星たちがきらきら輝いていた。
「もう、アスカってば、そんな事覚えてるんだ?」
シンジは恥ずかしそうにうつむく。
と、アスカが急にシンジの耳元に小さく囁く。
小さく囁かれた言葉は、シンジを少なからず動揺させた。
「だって…シンジのことだから。」
とっさに返事の出ないシンジ。
「…ずっとシンジの事見てたんだよ。
アタシはあの頃からずっとシンジをみてたんだから…
だから…アタシは誰よりもシンジの事知っているの。」
シンジはただ肯く事しかできなかった。
「そうよ。だから…」
「だから?」
二人を包む沈黙。
風が吹き抜け二人の髪をやさしくなでる。
アスカは小さくため息をつき囁いた。
「…なんでもない。」
それきりアスカは黙ってしまった。
ずっと、シンジの背中に顔を埋めて。
シンジはアスカをベッドに横たえた。
アスカは少し身じろぎしただけで、
また安らかな寝息を立てはじめる。
「どうしよっか?」
誰ともなく呟くシンジ。
アスカの家には誰も居なかった。
さらにシンジの家には誰も居なかった。
とりあえず、アスカを自分の部屋に連れては来たが、
これからどうするべきなのかシンジは迷っていた。
「…とりあえず、留守電でも聞いてみるか。」
シンジはリビングの方へ音を立てないように歩いていった。
ふと、シンジは留守電が無いか確かめる。
電話には一件伝言が登録されていた。
内容を聞き、ため息を吐くシンジ。
それは親が泊りで帰ってこない事を告げたものだった。
「お泊りか。しかもアスカの親もなんて、どうしよう。」
シンジとアスカの両親は同じ会社に勤めていた。
四人は大学時代からの付き合いで、
同時期に結婚し、隣あって住んでいた。
「うーん。しょうがないよな。」
しばらく考え込んでいたが、
シンジは自分の部屋に戻った。
アスカはふと目を覚ました。
寝ぼけ眼で辺りを見回してみる。
いつもの自分の部屋ではなかった。
しかし、アスカはよく知っていた。
シンジの部屋だ。
でもどうしてアタシここで寝てるのかな?
アスカははっきりしない思考をまとめようと、
直前のことを思い出そうとする。
みんなと飲んで、シンジにおぶってもらってて、
それからどうしたんだろ?
薄く開いたドアから明かりが漏れていた。
シンジはあっちの部屋に居るのかな?
アスカはゆっくり立ち上がると、明かりのもれている
ドアを開けて、覗き込む。
「あれ?誰もいない。」
テレビはついているがボリュームは絞られていた。
ソファの上にシンジが着ていたジャケットが畳まれていた。
「シンジは…どこなんだろ?」
とりあえずアスカはソファに座る事にした。
テレビはつまらない深夜番組を放送している。
ちいさく欠伸をしてアスカは思い出したように時計を見る。
時計の針は2時20分を指していた。
「…もう、そんな時間なんだ。」
ぼおっと辺りを見回す。
見慣れた光景だ。
よく、小さい頃は遊びに来てはしゃぎまわった部屋だ。
あのころはシンジって頼りなくって、
すぐ泣いちゃう子だったのに、今は…
「…うーん。なんか眠い。」
大きく背伸びをsるが、睡魔には勝てず
アスカはいつのまにかソファに横になり、
うつらうつらと眠りだした。
ふわっと持ち上げられる感触がする。
なんだろ?
アスカは夢うつつに感じた。
そして、背中に柔らかい感触。
うっすらと目を開けてみる。
と、目の前にシンジの顔がある。
少し、頬は上気している。
え?なんで?
アスカは胸が大きく打った。
アスカが起きた事を確認して、シンジが照れくさそうに話す。
「あれ?起きちゃった?」
アスカは起き上がってシンジをしげしげと見つめる。
どうやらお風呂に入っていたようだ、
髪が少し濡れているのが見てとれる。
「お風呂入ってたの?」
「うん。とりあえず帰ってきたんだけど、
アスカの家、誰もいなくて。で、こっちに連れてきたんだ。
親は、今日は徹夜だって留守電が入ってた。」
アスカは髪をまとめるよう手をやりながら答える。
「ということは、アタシの親も?」
シンジは軽く肯く。
「うん。そうみたい。」
「なーんだ。」
アスカはぱたっとベッドに倒れ込む。
「なんかがっかりしてない?」
不思議そうにシンジはアスカを覗き込む。
「ううん。なんでもないの。」
慌てて起き上がるアスカ。
「そう?」
「じゃ、アタシもお風呂入ろっかな。」
「そうだね、アスカは鍵持ってるんだよね?」
あっさり首を振るアスカ。
「ううん。忘れちゃった…たぶん、アタシの机の上。」
ぺろりと舌を出すアスカ。
シンジはあっけにとられる。
「え?」
「だから…」
ベッドの上に正座するアスカ。
「ふつつかものですが、よろしくお願いします。」
「よろしくって…」
絶句するシンジ。
「だから、お風呂とか貸して。」
にっこり微笑むアスカ。
「で、でも。」
「いいじゃない。昔は一緒に入ったんだし。」
と言うと、すたすたと部屋から出ていくシンジ。
「いや、それは…そうだけど。」
慌てて後を追うシンジ。
リビングから脱衣所に入ろうとするアスカ。
「ほんとに?」
「だって、部屋の鍵ないもの。」
「……」
「じゃ、バスタオルお願いね。」
ドアをばたんと閉めるアスカ。
大きくため息を吐くシンジ。
「じゃーん。」
アスカが急にリビングのソファに座っている
シンジの前に飛び出す。
「うわ!びっくりするじゃないか。」
バスタオルを体に巻いただけのアスカはシンジに微笑みかける。
「ね、シンジ。今この下どうなってるか分かる?」
「え?」
顔が真っ赤になるシンジ。
「ね、どうなってるか見てみたい?」
「え?」
シンジは答えられない。
「さてここで問題です。バスタオルの下はどうなってるでしょうか?
いっちばーん、下着だけ。にっばーん、はだか。
さーてどっちでしょう?」
おっかなびっくり答えるシンジ。
「いち…ばん。」
アスカはにっこり微笑むとバスタオルの端を持つ。
「せいかいは…」
バスタオルをシンジにかぶせるアスカ。
「え?」
慌てて、バスタオルを取るシンジ。
すると、シンジの部屋に入っていくアスカの後ろ姿がちらり見えた。
しかし、シンジには十分ショックを与えたようだった。
と、アスカがドアから顔だけを出す。
「正解はにっばーんのはだか。でしたー。
間違った答えを選んだシンジ君には何もありません。」
アスカはそれだけ言うとドアを閉めてしまった。
「何がどうなってるんだ?」
アスカはベッドで毛布に包まっていた。
そして、ぼおっと窓を見つめていた。
するとドアが少しだけ開いて、シンジが覗き込んでくる。
「アスカ。起きてる?」
「起きてる。」
アスカはベッドに横になったままシンジの方を向く。
毛布に包まっているのを確認して安心したのか、
シンジはゆっくりと部屋に入って来た。
「ね、シンジ…」
シンジは床にひざまづいて、アスカの顔を見る。
少しためらってからアスカの髪に手を伸ばすシンジ。
「まだ、少し濡れてる。」
アスカは目を閉じながら答える。
「大丈夫、いつもこんな感じだから。」
「寒くない?」
ふるふると首を振るアスカ。
そのしぐさが子供っぽい。
「ううん。大丈夫。」
「そうか…」
アスカは右手を出す。
「ね…手握ってくれる?」
「うん…いいよ。」
シンジはやさしくアスカの手を握る。
「ありがと…今日はごめんね。」
いつになく素直にアスカは謝った。
シンジは少し驚いたようだ。
「なんか、いつものアスカらしくないよね。」
「うん…ちょっとヒカリに怒られて。」
「そうなんだ。」
「うん。それで少し反省して。」
「そうなんだ。」
「うん。」
沈黙が降りる。
しばらくして、アスカは少し眠そうな声で
シンジに話し掛ける。
「アタシが寝るまで握っていてくれる?」
「わかった。」
ゆっくりうなずくシンジ。
「ありがと…」
目を閉じて、小さくため息をつくアスカ。
「おやすみ、アスカ。」
それが、この日の二人の最後の会話だった。
Episode.2 "Beach Side/Summer"
「シンジー。こっちこっち!」
シンジは声の方に目を凝らす。
辺り一面は人の山でどこから声が聞こえてきたのか
わからず、きょろきょろち声の主を探すシンジ。
と、また同じ声が聞こえてくる。
「ここよここ。」
シンジは背伸びしてこちらに手を振っているアスカを見つけ出す。
そして、Tシャツに水着でビーチパラソルを抱え、
アスカの手を振る方に歩いていく。
「ここでいいの?」
シンジはアスカに確かめると、ビーチパラソルを開く。
アスカはレジャーシートを引いて、荷物を乗せる。
そして、自分も腰を下ろす。
「さすがにお昼前だと人が多いね。」
シートの上に座って、周りを見回すシンジ。
アスカも辺りを見回す。
海岸には大勢の人が繰り出してきていた。
「ほんとね、みんな他にやる事無いのかしら。」
「それは僕らも同じなんじゃないの?」
シンジは苦笑する。
アスカは首を振って立ち上がるとシンジを見下ろす。
「こうしててもしょうがないから、とりあえず泳がない?」
そう言ってアスカは着ている上着を脱ぐ。
「そう…だね。」
シンジは口篭もったのは、アスカの水着を見たからだ。
アスカはきれいな水色のビキニを着ていた。
まわりの男達の視線がアスカに注がれる。
「どうしたの?シンジ?」
アスカはからかう口調でシンジの方に屈み込む。
いつものことだが、泳ぎに来るとアスカは決まってこういう
態度を取る。
「な、なんでもないよ。」
シンジはアスカの方を見ないようにして答える。
「ね、早くいきましょ。」
アスカはシンジの腕を取って引っ張る。
からかうだけ、からかっておいて、
アスカは何事もなかったかのように振る舞う。
「はいはい、わかったよ。」
シンジは立ち上がり、Tシャツを脱ぐと
アスカと一緒に浜辺の方に歩いていく。
今日は沖合いからの風が強いのか波が高めにみえる。
波打ち際まで来て二人は足元を覗き込む。
二人の足は、打ち寄せる波で洗われていた。
「結構澄んでるね。」
「そうね、思っていたよりは全然良いわ。」
そして、二人は一歩ずつ海に入っていく。
遠浅の海岸で、しばらくは膝丈ぐらいの海の深さだった。
その時、
「きゃっ!」
アスカがいきなり立ち止まる。
「なんか、足元にいる。」
アスカは海の中を指し、シンジに手招きをする。
シンジはアスカの側に行ってアスカの足元を覗き込む。
すると、いきなりアスカがシンジの頭を押さえる。
大きな水飛沫を上げて転んでしまうシンジ。
「ぶはっ!!」
シンジは慌てて顔を上げると、アスカを睨もうとしたが、
「えいっ!」
シンジは顔に水をかけられた。
「こ、こら、アスカやめてよ。」
シンジは顔を腕で隠しながらアスカの方へ近づいていく。
「いやだよーだ。」
アスカは水をかけるのをやめない。
「もう、勘弁してよー。」
「仕返ししない?」
アスカは水をかけるのをやめて尋ねる。
「しない、しないから。」
「…わかった。」
やれやれとばかりに首を振ると、シンジはアスカに近寄ってくる。
そして、アスカの側に来て、にやりと笑う。
「アスカもまだ甘いよ。」
そう言ってアスカの右膝の後ろを軽く引っかけて、アスカの体勢を崩す。
「あー!!きゃああああ。」
アスカは体制を崩し、盛大な水飛沫をあげて倒れてしまう。
水面から顔だけ出して恨めしそうにシンジを見るアスカ。
「ね、気を付けないと。」
シンジはしてやったりと言う表情でアスカにつかまるようにと右手を出す。
「ぶー。」
アスカはそれだけ言うと、そっぽを向く。
そして、そのまま海に浸かっている。
「どうしたの?」
「ぶー。」
シンジは苦笑して尋ねる。
「ぶーだけじゃわからないよ。」
「ぶー。」
シンジは後ろを向いているアスカ肩を抱くように顔を覗き込む。
と、アスカは突然シンジの右足を掴んで立ち上がった。
当然シンジは体勢を崩し、さきほどより大きなしぶきを上げて倒れる。
「…シンジも甘いわね。」
慌てて起き上げるシンジを見て、満面の笑みのアスカ。
「むむむ。」
シンジはしてやられたという表情で立ち上がる。
アスカは大きなため息をつき、額にかかった前髪をはらう。
「はぁ、ちょっと疲れちゃった。」
シンジはやれやれといった表情で首を振る。
「はしゃぎすぎだよ。」
「ふーん。そんな事言うわけ。」
アスカが身構える。
また水をかけようとする姿勢だ。
「もう勘弁してよ。」
シンジが苦笑する。
と、何気なく二人は顔を見合わせる。
「ふふ…」
「ははは…」
二人はお互いの顔を見ておかしそうに笑い出した。
夕日に赤く染まる海岸を二人は歩いている。
アスカは打ち寄せる波を器用によけながら波打ち際を、
シンジは波打ち際から少し離れ、アスカに少し遅れてついていく。
太陽は水平線に消えていこうとしていた。
水面が太陽の光を反射してきらきらと輝く。
沖から吹く風が、アスカの髪をゆらゆらをそよがせている。
シンジの前髪も風で揺れている。
二人はそのまま海岸沿いを歩いていく。
散歩をしている老人とすれ違い、
浜辺をジョギングしている青年が二人を追い抜いていく。
波は規則正しく浜辺に打ち寄せ、アスカはそれを見ている。
ふと、アスカは立ち止まり、砕けた波涛が夕日を反射する様を眺める。
風でそよぐアスカの髪をぼんやり見つめるシンジ。
アスカの髪も夕日を写してきらきら輝いている。
沈んでいく夕日に目を奪われ、じっと見つめるアスカ。
と、打ち寄せた波がアスカの足を洗う。
「きゃっ!」
アスカが上げた声でふと我に返るシンジ。
「濡れちゃった?」
「うん。ぼんやりしてたから。」
アスカはまた浜辺沿いを歩きはじめる。
少し離れてついていくシンジ。
ふと、楽しそうに波と戯れていたアスカがシンジの方を振り返る。
「ねぇ、シンジ。」
シンジは水平線を見ていたが、アスカの方を向く。
「どうしたの?」
アスカは両手を後ろに組んでシンジの方に歩いて来る。
シンジからは太陽の光でアスカの表情が見えなかった。
こちらに向かって歩いてくるアスカの輪郭に向かってもう一度聞く。
「どうしたの?アスカ。」
シンジまで二、三歩のところに来てアスカは立ち止まる。
アスカは微笑んだまま、答えない。
シンジをじっと見つめたまま立っている。
その瞳が一瞬きらりと光ったのは、
沈みゆく夕日の残光を映したのだろうか?
「アスカ…」
シンジが一歩アスカの方に踏み出す。
と、アスカは一歩後ずさる。
「どうしたの?」
シンジはまた一歩踏み出す。
アスカは一歩後ずさる。
そして、アスカは意を決したように口を開く。
「これが、二人の距離。」
「へ?」
アスカは少し悲しそうに首をふるふると振って繰り返す。
「この距離が二人の関係。」
アスカはじっとシンジの瞳を見る。
「アタシ達はずっとこのまま?」
「…」
「シンジはどう?ずっとこのままで良い?」
シンジは顔を伏せる。
砂浜には無数の足跡があった。
シンジとアスカの間にも、誰かの足跡がある。
顔を上げてアスカを見る。
アスカは悲しそうに微笑んでいる。
その瞳が曇っているようにシンジは感じた。
その表情に後押しされて、
シンジは無意識にアスカに一歩踏み出す。
アスカは逃げずにそのまま立っている。
シンジはもう一歩踏み出す。
アスカは逃げない。
もう一歩。あと一歩で…
シンジはアスカを見つめる。
アスカもシンジを見つめる。
ずっと、一緒にいた二人。
でも、いつの間にか二人は壁を作っていた。
お互いをよく知っているから。
傷つけるのは恐かったから。
そして、心の奥底の本心を知るのが恐かったから。
相手の本当の気持ちを知るのが恐かったから。
だから二人は距離を作った。
でも本当は二人とも知りたかった。
二人はどうなるのかを。
このままなのか。
それとも…
そして、シンジは最後の一歩を踏み出した。
シンジはアスカの目の前に立って、
両手でアスカの両手を包み込むように取り小さく囁く。
「僕はこの距離がいいよ。」
そして、アスカに微笑む。
いつもの少しはにかむような笑顔。
「…アタシもこの距離がいい。」
アスカも微笑む。
少し挑戦的で、見る者全てを魅了する笑顔。
二人はお互いに手を出す。
シンジはアスカの左手をしっかりと握る。
アスカもシンジの右手をしかっりと握る。
「帰ろうか?」
「うん。」
二人は砂浜を戻りはじめた。
Episode. 3 "Play Truant/Autumn"
校舎を見下ろせる高台に二人はいた。
芝生やクローバー等が植えられており、
ちょっとした公園になっている。
アスカは芝生の上に座り、シンジは寝転がっている。
天気は少し雲が出ているが、快晴と言っていいだろう。
風は少し強いが、さわやかに感じられる。
十月ということもあって、日差しは強くもなく弱くもなく、
シンジ達を包み込んでいた。
近くの木に小鳥達が止まり、何かさえずっている。
両手を足の下側で組んでいるアスカがシンジの方を向いた。
「ねぇ、シンジ。」
シンジは気持ち良さそう寝転がって、空を見上げている。
その二人の頭上を、雲が通過していく。
二人は雲が作った影に座っていたが、
もうすぐ影を作っているその雲も行ってしまうようだ。
「うん?」
シンジ達の回りが明るくなる。
太陽が顔を出して、暖かい日差しをシンジ達に投げかける。
「午後の授業サボっちゃおうか?」
少し強い風が吹いたため、髪が顔にかからないように
右手で押えながら、アスカはシンジに微笑む。
「ね、シンジ。そうしよ。」
シンジは近くにアスカの顔が来たため、
少しどきどきしながら答えた。
アスカの髪から、甘い香りがする。
「次の授業はミサトせんせだよ。」
にっこり微笑むアスカ。
かわいいというよりは小悪魔的といった表現が
ぴったりと当てはまる笑みだ。
「いいじゃない。たまには。」
シンジはわざとしかめつらをする。
「たまって、確か三日前は数学の授業サボった気がするんだけど。」
アスカは唇に指を当てて、考えるそぶりを見せる。
最近、アスカとシンジは授業をサボってここに来ることが多かった。
アスカは視線をシンジに向けて答える。
「そうだった?」
シンジは上半身を起こし、アスカの方を睨む。
「もう。とぼけるのもいいかげんにしないと…」
そのシンジを遮るようにチャイムが鳴る。
「げーっ、授業が始まっちゃったよ。」
シンジはやってもうたという顔をしてアスカを見る。
「もう、いいじゃない。サボリけってー。」
アスカが嬉しそうににっこりと微笑んだ。
「たくもう、いつもこうなんだから。」
そういうとシンジは両手を頭に組み、
また寝転がり、空を見上げる。
空はどこまでも高く、澄んでいた。
「そう言いながらつき合ってくれるシンジが好きよ。」
「また、心にもないことを。」
シンジは内心、どきっとしたが、
それを顔に出さないように努力して答える。
しかし、動揺しているのはアスカにはバレてしまっている。
「そんなことないよ。」
アスカはシンジにかがみ込む。
見つめ合う二人。
そして、唇が触れ合う。
「たまにはこうやってのんびりするのもいいわね。」
「アスカっていつものんびりしてなかったっけ?」
寝転がったままアスカを見るシンジ。
「へぇ、そんなことこのアタシに言うわけ?」
にっこり微笑むアスカ。
「い、いや前言撤回しますです。はい。」
背筋に寒いものを感じて慌ててシンジは答える。
「よろしい。」
寝転がって、背伸びをするアスカ。
「いい天気ね。」
シンジもアスカと同じように背伸びをする。
「そうだね、こんな日はどこかに行きたいね。」
二人は仲良く空を見上げた。
空に雲がぽつり、ぽつりと浮かんでいる。
と、二人の頭上を小鳥が囀りながら飛んでいく。
「例えば?」
シンジがアスカの方を見る。
「どこかの公園で昼寝とか。」
「それって今やってる事じゃない。」
アスカがおかしそうに笑う。
「そうとも言う。」
シンジも目を閉じて、くすりと笑う。
「もう、シンジったら。」
吹き抜ける風、
暖かい日差し、
小鳥達のささやき。
それらを感じながら二人は寝転がっていた。
どこからか子供達の笑い声が聞こえ、
車がどこかに走り去り、
シンジ達の上空を飛行機が飛んでいく。
こうしている間にもたくさんの人が今を生きている。
抜けるような青い空、
駆け抜けている白い雲、
風でざわめく木々。
自然もまた、今を生きている。
「平和ね。」
アスカは空を見つめてぽつりつぶやく。
「…」
シンジは寝転がって目を閉じている。
眠っているようにみえたが、
ふと、目を開けてアスカに話しかけた。
「…一年後に僕達は何やってるのかな…」
アスカは起き上がり、シンジを見た。
「なんだかんだ言って、
あんまり変わってないような気がするんだけど。」
そして、くすくす笑いながら言う。
「やっぱり大学とかの講義をさぼって遊んでるような気が。」
「…そうか、そうだね。」
「どしたの?」
アスカが不思議そうな顔をしてシンジを見る。
「ううん…なんでもないよ。」
シンジは起き上がってアスカに微笑みかけると、
ゆっくりと視線を街並みに向ける。
そして、数分後、学校のチャイムが鳴る。
「はぁ、授業終わったね。」
アスカは校舎の方を見てため息をつく。
「どうする?教室に戻る?」
シンジは小さく伸びをして言う。
「さすがに続けてサボリっていうのはまずいよ。」
「そうだね、じゃあ行こうか。」
二人は立ち上がり、校舎に向かった。
その日の夜、
シンジは一人、自宅のベランダに立って、星空を見ていた。
「一年後…か。」
シンジは手すりにつかまり頭上を見上げる。
「どうなってるのかな?」
そう呟くシンジ。
その声に答える声があった。
「どうなってるの?」
シンジは声の方を見る。
隣の部屋のベランダにはアスカがいた。
「どうなってるの?」
アスカはもう一度尋ねる。
すこし、からかうような微笑み。
でも目は真剣だ。
「今日の昼間も同じ事聞いたわよね。何かあるの?」
アスカは首をかしげてシンジを見る。
「どうなってるのかな?」
シンジは辺りを見まわす。
地上五階の高さだったが、
まわりに高い建物がないせいか見晴らしは良い方だ。
「アタシ達二人が?」
アスカは聞き直す。
「そう。アスカはどう思う?」
シンジはアスカの方を見る。
「何か不安なの?」
くすりと微笑むシンジ。
そんなことは考えてもいなかったから。
「そうだね、どうしてだろう?」
「もう。どうしてそんなに気になるの?」
アスカは少しやさしく尋ねる。
「なんとなくね。これからどうなるんだろうって。」
「二人が?」
「そう二人が。」
「どうして?」
「…アスカだから。」
「変な答えね。」
「僕にとっては納得ができる答えだよ。」
「でも、アタシには納得ができない答えなの!」
「そう?」
「そうよ。」
「そうか。」
「だから。勝手に一人で納得しないで、説明しなさい。」
「…うまく説明できないよ。」
「どうして?」
「うーん。どうしてだろ?」
「もう、はっきりしないわね。」
「そうだね。」
そのまま沈黙する二人。
月の光が淡く二人を照らし出す。
弱い風が二人の頬をなでる。
虫たちの泣き声が風に乗って聞こえてくる。
「僕たちはどうなるのかな?」
「これから?」
「そう、一年経って、二年経って、十年経って…」
「そして、おばあちゃんになるわけね。」
「そうだね。」
「そうよ。」
「僕はずっとアスカと一緒にいるのかな?」
「どうして?」
「今の僕はずっとそうしていたいから。」
「…そう。」
「でも、十年先はどうなんだろう?」
「自信が無い?」
「そんなこと無いけど…」
「じゃ、いいんじゃない。」
「そうかな?」
「アタシのこと嫌いになってる?」
「そんなことはないよ。」
「じゃ、いいんじゃない。」
「そうかな?」
「そうよ。シンジはアタシの事がずっと好き。
アタシはシンジの事が…」
そこまで言って、黙り込むアスカ。
少し上目使いでシンジを見る。
「…ずっと好き。それでいいんじゃない?」
「そうか。」
「そうよ。」
二人は再び沈黙し、しばらく星空を眺め続けた。
Episode. 4 "Misunderstanding/Winter"
「あ…雪だ。」
アスカは空を見上げて、落ちてくる雪に手を伸ばす。
「ほんとだ。」
シンジも空を見上げる。
二人は歩道橋の上で立ち止まり、しばらく雪を眺めていた。
「ね、シンジ。今日は楽しかった…ありがと。」
少しうつむき、シンジの方を見ないでアスカは言った。
「…うん。僕も楽しかったよ。」
シンジは少し寂しそうな表情だ。
その表情を見てアスカは悲しく考える。
でも、その表情が本心なのかはもう
アタシには分からなくなってしまった。
二人の間にはもうどうしようもない、
亀裂が入ってしまったのだろうか?
シンジは本当はどう思ってるのだろうか?
アタシの留学の話を。
「アスカが行きたいって言うのだったら…」
いつもシンジはそう言ってたね。
あれから二週間、結局シンジは行くなって
言ってくれなかった。
ほんとにアタシの事を思っててくれるの?
アタシと離れて大丈夫なの?
一日、二日じゃないんだよ。
アスカは顔を上げて、さみしそうに微笑む。
「…今日の事、ずっと忘れない。」
普段とあまり変わらないデート。
でもアスカにとってはそれが大切に感じられた。
じっとシンジの顔を見詰めるアスカ。
シンジの表情が少しだけ変わる。
寂しそうな、それでいて、何か諦めているような。
「…そうだね。」
どうしてそんな他人事みたいに言うの?
二人の事なのに。
ちょっとした好奇心だったの。
シンジはどういう反応するか見てみたかったの。
少しでも困った顔したら、
「シンジはアタシと一緒にいないと駄目だから。」
って断るつもりだったの。
なのにシンジは…
シンジはもう…
シンジはどうでもいいんだ。
アタシのことなんか…
「ね、シンジ…」
「…ん?」
アスカの瞳は涙で濡れていた。
頬を伝う涙が、道路を走っている車のライトできらり、きらりと輝く。
シンジは驚いたように何かを言おうとした。
と、急にアスカはシンジに駆け寄り抱きつく。
慌てて抱きとめるシンジ。
道路を照らす街灯が、降ってくる雪を照らし出し、きらきらと輝かせる。
涙が止まらない。
アスカはシンジの胸の中で泣きじゃくった。
シンジはアタシを引き止めてくれない。
何故?
どうして?
シンジはアタシのこと大切に思ってくれてないの?
アタシはこんなに好きなのに。
卑怯だよ。
アタシの隣にいてくれるって言ってくれたのに。
あんな事言われたら、誰だってそう思うじゃない。
この人はアタシのこと好きなんだって。
この話だって、シンジが行くなって一言言ってくれれば、
アタシは行かないのに。
どうして?
どうして行くなって言ってくれないの。
今だって、そ知らぬ顔で「そうだね。」なんて。
ひどい。
ひどすぎるよ。
こんなにもシンジのこと好きにさせておいて。
シンジはもうアタシの事は関係ないって顔して。
アスカは必死に涙をこらえるが、どうしても涙は止まらなかった。
「アスカ…」
やさしく背中を抱くシンジ。
雪は二人をゆっくりと白く染め上げていった。
「アタシ、シンジと離れたくない。」
顔を上げるアスカ。
やっと言えた。
ずっと言いたくて、でも言えなくて。
絶対シンジの方から言わせてやるんだって、
ずっとこらえてきたのに。
もう駄目、これ以上我慢できない。
シンジの服をつかむ手に力がこもる。
「ずっと、一緒にいたい。」
アスカゆらゆら揺れる髪に雪がかかる。
そう、アタシはドイツになんて行きたくない。
アタシがいたいのはシンジ、あなたがいるところなの。
「シンジがいなきゃ、アタシは生きていけないの。」
シンジの腕を掴みくず折れるようにしゃがみこむアスカ。
そう、シンジが側にいてくれれば、アタシはなんだってできる。
シンジさえいてくれれば…
「アタシが愛しているのはシンジだけなの。」
シンジの顔を見上げるアスカ。
涙がアスカの頬を伝う。
シンジの瞳にはアスカが映っていた。
「シンジの本心が聞きたい。アタシと離れてもいいの?
アタシを好きじゃないの?アタシの事、もうどうでもいいの?」
それだけ言うと、アスカはうつむく。
シンジの腕を放し、路上に座り込んでしまう。
「アスカ…」
シンジはアスカの腰に腕を回して抱きしめたまま、
アスカを立たせる。
そして、耳元に少し怒ったように囁く。
「アスカと離れたくないに決まってるよ。
どうして、そんな当たり前の事聞くの?」
アスカは泣きじゃくり、うつむいたまま答える。
「だって…シンジは…アタシの好きなよ…ようにすればいいって、
突き放すように…言うんだもん。」
アスカを抱きしめたまま、大きくため息をつくシンジ。
そして、アスカの耳元に顔を寄せる。
「だって、アスカがそうしたいって言うのだったら、それが一番かなって思ったんだ。
ほら、アスカだって、ドイツに言ってみたいって言ってたじゃないか。」
「そ、それは…そうだけど…でも、シンジと一緒じゃないとアタシは嫌だもん。」
ふるふると首を振るアスカ。
そして、シンジの瞳を見つめる。
瞳いっぱいに溜まった涙を見て、シンジはふっと笑みをもらす。
「僕はアスカのそばにいたいよ。ずっとアスカを見ていたい。
そう思ってた、アスカと離れたくない、行かせたくないって思ってる。
だって僕は、アスカを…」
そこで言葉を切って、アスカを見つめるシンジ。
そして、言葉を続ける。
「愛しているから。」
アスカはぽろぽろと涙を流し、黙って、シンジ胸に顔を埋める。
「もう、アタシ心配してたんだから。もう、アタシの事好きじゃないんだ。
もうアタシの事はどうでもよくなったんだって。」
「…僕だってずっと迷ってたんだからね。
僕のわがままでアスカを困らせるのは嫌だし。
でも、アスカとは離れたくないし。」
すこしからかうようにシンジは言った。
アスカはそれを聞いてあきれたような表情をする。
「それなら…そうと早く言ってよ…ぐずなんだから。」
「はいはい、これから、こういう話が出たら、即答する事にするよ。
絶対行くなって。」
落ち着こうと、うつむいて深呼吸するアスカ。
雪が地面を白く染めていた。
そして、ゆっくりと顔を上げ、シンジの顔を見つめる。
「じゃ、シンジは行って欲しくないの?」
しばらくアスカの顔を見詰めた後、シンジはゆっくりと肩をすくめる。
「そりゃ、そうだよ、やっとお互いの気持ちを確かめ合って、これからって時に。」
「これからって何するつもりなの?」
「そうだな…さしあったてはこれかな?」
と、シンジはいきなりアスカの額に軽くキスすr。
「!!」
「これで、少しは気が済んだかな。」
にやりと笑うシンジ。
「はあ、なんかどっと疲れたわ。あんなに悩んだのに…」
アスカはため息をついてしゃがみこむ。
「それはこっちの台詞。」
シンジはため息をついて、アスカに手を差し伸べる。
「ほら、ずっとこんなところに居ると風邪ひいちゃうよ。」
アスカはシンジの手を握りながら答えた。
「もうひいてるかも…くしゅん!」
そのアスカを見てシンジが慌てる。
「やばい、早く帰ろう。」
シンジの差し伸べる手をアスカはしっかり握る。
「行くよ。」
「うん。」
二人は駆け出した。
歩道橋を降り、歩道を駆ける二人。
「ねぇ、シンジ!」
シンジに引っ張られながら駆けていたアスカは、
大きな声でシンジに呼びかける。
「うん?」
アスカは満面の笑みを浮かべて言った。
「アタシ、ずうっと、シンジと一緒にいる!」
Prologue
「ほら、シンジ行くわよ。」
「もう、最後の日ぐらいゆっくり寝かせてよ。」
「最後じゃないの、今日から始まるの。」
「なにが?」
「二人の新しい生活が、よ。」
「だってまだ二週間もあるじゃないか。」
「だって、いろいろと準備しなきゃ。引越しは一週間後なのよ。」
「それはアスカに任せるよ。」
「何言ってるの?カーペットとカーテンはシンジ担当だからね。」
「えー?僕が選ぶの?」
「二人の部屋ですもの当然です。」
「…はぁ、こりゃ先が思いやられるな。」
「アタシも、これから、毎日シンジを起こさないといけないなんて。」
「いっそのことドイツに行かせてれば良かったかな?」
「なんですってぇ!!」
「いや、何でもないです。はい。」
「わかったなら、いきましょ。卒業式に遅刻なんて最悪よ。」
「はいはい。」
そして、その頃。
「はぁ、卒業式に遅刻なんて、かなりやばいって感じだよねー。
みんなに何言われるか。」
もぐもぐとトーストを食べながら時計を見る。
「うーん。間に合いそうで、間に合わない時間ね。
遅刻常習犯のまま卒業するのも気分が悪いし、
ここは一つ近道と行きますか。」
路上を疾走する一人の女の子がいた…
End
あとがき
どもTIMEです。
かーなーり遅れてしまいましたが、
ミリオンヒット記念SIDE B "ASUKA"をお届けします。
SIDE Aと似た展開にしつつ、でも、違う話にしようと言う事で
書いてみましたが、なんとか書き分けは出来たのかなと
思っています。
今回もあまりバックグランドを書いてませんが、
SIDE Aと設定は変えていません。
二人とも幼なじみの高校生。親も仲が良いということです。
ドイツ留学事件とか、花見でアスカはヒカリと何を話したのかは
詳しく書こうかどうしようか迷ったのですが、
SSとゆーことでやめておきました。
これも読者の方の想像におまかせするという事で。
今回書いてて思ったのですが、
台詞に色付けてますが赤と青が交互に来ると目に悪いですね、
少し考えないと。
では次は連載の方でお会いしましょう。