空港ロビーの雑踏の中、ひときわ目立つ紅茶色の髪の少女は、目の前で泣いている二人の幼馴染みにそう云った。
(別れにくくなっちゃうじゃない。あたしだってホントは泣きたいのに・・・・・・)
だが、そんな内心はおくびにも出さず、俯いて泣きつづける少女の顔を上げさせる。
「ほら、レイ。あんた目が真っ赤よ。せっかくこのアスカ様の旅立ちなんだから、笑って送り出しなさいよ」
「・・・・・だって、だって・・・・・・」
空色の髪をした少女――レイは、普段から紅味がかった目をこれ以上はないというほど真っ赤にしてしゃくりあげる。
この子はあたしの前では、いつも泣き虫。守ってあげたくなる、かわいい妹のような存在。
レイの泣き顔を見てアスカはそう思った。
その髪と目の色のために昔からいじめられること――実際のところは、レイが可愛いのでちょっかいを出したかっただけなのだが――の多かったレイ。その度にアスカは取っ組み合いの喧嘩をし、いじめっ子たちを黙らせてきた。そのおかげか、小学校でレイの外見のことをからかう者はいなくなった。
だが中学校にあがれば、今まで知らなかった子供たちと一緒になる。自分が一緒にいてあげることは、もうできない。また以前のようなことにならないだろうか?そう考えるとアスカは少々不安になった。
そして、自らの不安を打ち消すような口調で、もう一人の幼馴染みに話しかける。
「シンジもよっ。あたしがいない間はあんたがレイを守んなきゃなんないのよ。めそめそ泣いている場合じゃないでしょうが」
「う、うん・・・・・・」
アスカに発破をかけられ、シンジと呼ばれた少年が小さく答える。実際にはアスカと同い年なのだが、アスカよりも頭半分ほど背が低く顔も子供っぽいため、周りからはアスカの弟のように見えるかもしれない。が、こちらは黒髪と黒い瞳の持ち主だ。男の子にしては奇麗な顔立ちをしている。
「まったく、どうして二人ともこう手がかかるのかしら。こんなんじゃ安心してパパのところに行けないじゃない」
「・・・・・・いっちゃやだぁ」
アスカの上着の裾を掴んでレイが云う。
「もう、聞き訳のないこと云わないの。あんたは、その甘えん坊とすぐに泣くところを直しなさい。あたしが帰ってくるまでにね。いい、約束よ?」
と、アスカは有無を云わさず約束にしてしまう。
「それからシンジもね」
「・・・・・・僕?」
「そ。あたしが帰ってくるまでには、もうちょい男らしくなっていなさい。なんたってこのアスカ様の幼馴染みなんですからね。ちゃんとあたしに見合ういい男になっていないと承知しないわよ」
そう云って極上の微笑を浮かべると、目の前の少年はたちまち真っ赤になった。
「・・・・・・わかった、約束するよ。だからアスカも早く帰ってきてね」
真っ赤な顔をしてぐすぐすと洟を啜るものだから何とも情けない姿ではあるが、とりあえずシンジは泣くことを止め、アスカのために精一杯笑おうとした。
「よしっ、それでこそあたしの幼馴染みよ」
「「うん」」
「じゃあ、これは二人へのおまじない。あたしがいなくっても大丈夫なようにね」
そう云うとアスカはちょっと顔を赤くしながら、レイとシンジの頬にキスをした。
レイはますます目を真っ赤にし、シンジはびっくりしたように自分の頬に手を当てる。だが確かにアスカの
想いは伝わった。たとえ離れていても、心はいつも三人いっしょ・・・・・・アスカのキスにはそんな想いが込められていた。
――ドイツ行き738便にお乗りのお客様・・・・・・
アナウンスが流れる。もう行かなければならない。
「それじゃあ、行ってくるわね。二人とも元気でやんのよ。おじさまとおばさまにもよろしくね」
そしてアスカは機上の人となった。
「アスカ、行っちゃったね・・・・・・」
アスカの乗った機が見えなくなると、シンジがそう云った。
「うん・・・・・・」
「約束、守んなきゃね・・・・・・」
「うん・・・・・・」
「帰ろっか」
「うん」
――そして、四年の月日が流れた。
F01号室にご入居された新住人さんは
めぞん通算86人目、
四号館4人目、
今回の引っ越しラッシュ○○人目。 誰か数えてください(^^;
リョウさんいらっしゃいませ〜♪
『そして僕らは恋におちて』プロローグ、公開です。
アスカは去る。
レイは残る、シンジと共に・・・
LRSなのかな?!
と、おもいきあ。
あとがきをみて(^^)になりました。
LASですよね(^^)
ま、まさかそう言っておきながら・・・??
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