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無意味にだだっ広い空間。

その場には、3人の人間しか居ない。

「・・・回収班がたどり着いたときには、すでに風島 シレンは現場から消えていたそうです。
 唯一目撃したサードチルドレンによると、魔法で飛んでいった、と言うことですが・・・」

「もう良い、下がりたまえ・・・」

「はっ」

パシュ・・・。

ミサトは、一礼すると出ていった。

残ったのは、コウゾウとゲンドウだけだ。

「魔法・・・か。
 まったく、世の中というものは何があるか分からんものだな・・・。
 どうする、碇?」

「世間から見れば、我々がやっていることも、魔法とたいして変わらんだろう。
 問題ない・・・」







「無限のむこうは」
第四話“時を越えた再会”







「ア、アスカ〜、ちょっと休もうよ〜・・・」

「何言ってんの。
 あっ、次、この店行くわよ」

「そんな〜・・・」

今日は日曜日。

シンジは、アスカの買い物に引っぱり出されていた。

もちろん、荷物持ちである。

今は午後4時。

朝の10時から、少し昼食をとっただけで、後は延々荷物持ちである。

「僕、外で待ってるから」

シンジはそう言うと、店から出ていった。

そして1分ほどたった頃・・・。

「あの〜、すみません・・・」

突然、後ろから声がかかった。

「え?」

後ろを向くと、そこには、淡いグリーンの髪の毛の少女が立っていた。

その髪は、肩の上で切り揃えられている。

歳はシンジと同じくらい。

そして何より、レイやアスカとまともに張り合えるほど整った顔立ちだ。

「このあたりに、図書館はあります?
 あるのなら、道順を教えていただきたいんですけど・・・」

なんか、ついこないだ、同じ様なことがあったような・・・。

クスッ

あまりにパターンが似ているため、シンジはつい笑ってしまった。

「どうかしました?
 どこか変ですか?」

「いや、別にそんなことはないよ。
 ただ、ついこないだ、ほとんど同じことを聞いてきた人が居たものだから。
 それで、図書館だったね?」

「はい。
 私を育ててくれた人が、いつも、
 『知らない土地へ行ったら、まず、図書館か役所へ行ってみるんだ』
 と言っていたものですから」

‘育ててくれた人’・・・。

この子にもいろいろあるんだな・・・。

そう思いながら、図書館への道順を説明する。

それが終わってから、シンジは言った。

「本当に似てるね。
 その人も、市役所と、図書館の場所を聞いてきたんだよ。
 歳は、僕や君と同じくらいだったよ」

「・・・歳が同じくらい・・・市役所と図書館・・・ついこないだ・・・」

少女はしばらく考え込んだ後、質問してきた。

「その人の髪の毛、なんて言うか・・・不思議な紫色じゃありませんでしたか?」

シンジはびっくりした。

「あれ、風島君と知り合いなの?」

「風島・・・。
 名前は、なんというのですか?」

やっぱり知らないのかな?

そう思いながらも、シンジは答える。

「風島 シレン・・・だけど」

シレンという名前を聞いたとたん、少女の顔一面に、喜びの表情がひろがった。

「シレン・・・・・・紫漣!
 やっぱり!
 よかった・・・。
 やっと、やっと見つけた・・・!
 住所は、住所は分かりますか?」

「う〜ん、そう言えば、知らないなぁ・・・。
 あまり話したことがないから」

「そうですか・・・。
 それじゃあ、【ルビー】にでも探してもらうしかないですね・・・」

「はぁ・・・ルビー?」

今ひとつ意味が分からないシンジ。

「あ、いえ、気にしないでください。
 どうも、本当にありがとうございました」

少女はそう言うと、図書館の方へ去っていった。

その時、ちょうど店からアスカが出てきた。

「ちょっとシンジ、今の誰?」

「あぁ、アスカ。
 ちょっと、道を訊かれたんだ。
 風島君の知り合いみたいだけど・・・」

「風島って、こないだの使徒を一人で倒したって言う、あの?」

アスカが、声をひそめて言う。

「多分そうだと思う。
 髪の毛、紫だって言ってたし、あんまり紫色の髪の毛って見かけないから」

「ふ〜ん、でも、緑の髪っていうのも珍しいわね・・・。
 まあ、この話はこれくらいにして、次の店行くわよ!」

「えぇ〜〜!?
 まだ行くの!?」

「あったりまえじゃないの!」

アスカはシンジを引きずって、次の店へと向かった。

がんばれ、シンジ。







真っ暗な部屋。

そこには、人間は存在しない。

在るのは、ただ文字が描かれただけのモノリス。

やがて、長い沈黙の後、モノリスの1つが声を発した。

「・・・予想外の事態だ。
 あの古代の魔導兵器が、こうもあっさりと破壊されてしまうとは・・・」

それが合図だったかのように、モノリスが次々に話し始める。

「その通りだ。
 これはあるまじき事態だ」

「理論上、あれを破壊できるものは無い・・・。
 ネルフに、魔導兵器を破壊する術は無かったはずだ」

「だが、実際に破壊されているではないか!」

そのとき、さほど大きくはないが、威厳を持った声が響いた。

「静まれ!」

それまでざわついていたモノリス達が、一斉に沈黙する。

このモノリスがリーダー格らしい。

「いずれにせよ、このまま黙って見過ごす訳にはいかん。
 一刻も早く、魔導兵器が倒された原因を調査するのだ」

「確かに・・・」

「そうですな・・・」

この言葉が決め手となったらしい。

モノリス達は、次々と消えてゆき、リーダー格のモノリスだけが残った。

「・・・17体の使徒のみならず、古代文明の魔導兵器までも・・・。
 碇め、どこでそんな力を・・・?」

そして、ただ1つ残っていたモノリスも消え、あたりには真の静寂だけが残った。







キーン コーン カーン コーン・・・

8時35分のチャイムが鳴り響く。

風紀委員が、小さなプリントを配り始めた。

シンジ達の学校では、8時35分から、教室に先生が来る40分までの間に、朝の学習・・・略して"朝学"(あさがく)と呼ばれるプリントをする事になっている。

もちろん、きちんとするのは一部の真面目な者達だけで、たいていの者にとっては休み時間も同然だ。

シンジ達3バカトリオも例外ではない。

そしてトウジがヒカリに引っ張って行かれ、ケンスケが「平和だねぇ」と呟く。

それが日常だ。

しかし・・・

ガラガラガラッ・・・

この日は、40分にならないうちにミサトが教室にやってきた。

「喜べ男子ぃっ!
 またしても、我がクラスが転校生を獲得したわ!
 留学生、それもとびっきりの美人よ!
 それじゃあ、入って!」

ちなみにこの学校では、転校生はくじ引きでどのクラスに入るのかを決めている。

そして、1人の少女が入ってきた。

次の瞬間、(一部を除く)男子のほぼ全員が歓声を上げた。

肩の上で切り揃えた、緑色の髪。

誰かを捜すような仕草をしている。

−間違いない−

シンジは確信した。

彼女は、昨日道を訊いてきた子だ。

−そう言えば、風島君の知り合いだったっけ−

そう思ってシレンの方を見てみる。

その間に、少女は黒板に名前を書くと、簡単に自己紹介をした。

「シンシア・ラインハルトです。
 どうか、よろしくお願いします」

そう言って、じっと1点を見つめている。

その視線の先にいるのは、そう、紫漣だ。

ガタッ

紫漣が立ち上がり、信じられないと言った顔で呟いた。

「シンシア・・・、本当にあのシンシアなのか!?」

それを聞いて、シンシアの方も嬉しそうな顔になる。

「紫漣・・・やっぱり紫漣なのね!」

「あの〜・・・2人とも、お知り合い?」

ミサトが雰囲気に飲まれながらも声をかけた。

それにシンシアが答える。

「あっ、はい。
 昔、ずっと一緒に暮らしてたんです」

・・・約3秒後。

「えぇ〜〜!」

クラス中に絶叫が響きわたった。





「ふう・・・、やっと終わった・・・」

最後の授業と終学活が終わり、紫漣は机に突っ伏した。

あの後、紫漣とシンシアは質問責めにあった。

転校してきた土曜日には、その独特の雰囲気からほとんど話し掛けられることがなかった紫漣だが、今日は2日経ったのと、紫漣の人間的な1面が知れたこともあり、話し掛けやすくなったのだろう。

女子からの質問がやたらと多かった。

シンシアの周りには、特に男子が集まっていた。

彼等はまだ諦めてはいないらしい・・・。

「風島君」

ミサトが紫漣に近づいて来る。

「はい、何でしょう?」

紫漣が答えると、ミサトは真剣な表情で言った。

「4時30分ぐらいに、相談室まで来てちょうだい。
 訊きたいことが山ほど在るわ」

「はぁ・・・。
 別に良いですよ。
 内容の見当はついてますし」

紫漣は厳しい顔のミサトに物怖じもせず、にっこりと笑って言う。

「それなら話が早いわ。
 それじゃあ、後で来てね」

「分かりました」

ミサトは教室から出ていった。

「紫漣・・・」

振り向くと、いつの間にか、シンシアが近づいてきている。

また、何かしたの?」

「また、って・・・。
 まあ、ちょっとね。
 僕もついこないだこっちに来たばっかりなんだけど、いきなり目立つことをやっちゃってね・・・」

言って紫漣は苦笑した。

「しかしシンシア、君も大変な時に来たもんだ。
 どうしてこっちへ?
 それに、国の方はどうしたんだい?」

「国の方は、グレイシアに任せてきたわ。
 あの子なら大丈夫だと思うから・・・。
 こっちへ来た理由は、私にもよく分からないわ。
 ただ、あなたに会いたかっただけかも知れない・・・」

言って、シンシアは紫漣に微笑みかけた。





ガラガラガラ・・・

「失礼します・・・」

相談室に、紫漣が入ってきた。

相談室とはその名の通り、教師と生徒が相談するときに使われる教室である。

「いらっしゃい、風島君」

中には、ミサトとリツコがいた。

「おや、赤木博士。
 葛城先生だけかと思っていましたが、あなたもいらっしゃったんですね」

「えぇ、あなたに訊きたいことがあってね」

紫漣が2人の向かいにあった椅子に座ると、リツコが口を開いた。

「まず訊きたいのは、マギのことよ。
 一体どうやって、マギをハッキングしたのかしら?」

紫漣はしばらく話すか話さないか迷っていたが、やがて話し出した。

「・・・簡単なことですよ。
 ただ、マギよりも遙かに高性能のコンピューターを使っただけなんですから」

「マギよりも高性能?
 まさか、あなたが創ったなんて言わないでしょうね。
 マギは世界でも最高級のコンピューターシステムなのよ」

ミサトが問いかける。

すると紫漣は、微笑んで言った。

「・・・確かにあなたの言う通りです。
 ・・・ただし、『世界でも』という言葉の前に、"この"という連体詞がつきますが・・・ね。
 どういう意味か、お分かりですか?」

それを聞いて、リツコが眉をひそめる。

「"この世界"?
 まさか、あなた、異世界から来たなんて言うつもりじゃないでしょうね。
 そんな話、信じると思ってるのかしら?」

「・・・別に、信じていただかなくても結構ですよ。
 私は別に困りませんから。
 信じずに痛い目を見るのはあなた達なんですよ。
 あなた達が信じようと信じまいと、私がマギをあっさり乗っ取れることに変わりはありませんからね。
 それで、次の質問は何ですか?」

リツコは今の話をほとんど信じていないようだ。

「それじゃあ、一体どうやって使徒を倒したのか、教えて欲しいわね。
 まさか、本当に魔法を使った訳じゃないでしょうね」

「残念ながら・・・」

「ながら?」

ミサトが続きを促す。

「本当に、間違いなく、混じりっけ無し、正真正銘の魔法です。
 正確に言うなら、魔術・・・それも黒魔術ですね」

「ふざけないで!」

リツコは、やはりカケラも信じようとしない。

しかし紫漣は怒った様子もなく、それどころか笑みを浮かべながら続けた。

「まあ、普通はいきなり『魔法』や『魔術』だなんて言われても、信じることは出来ないでしょうね。
 ちょうどこんなバカらしい会話にも飽きてきたところですし、言って信じない相手にとくとくと説明するつもりもありません。
 何なら、1つお見せしましょうか?」

言って、紫漣は美しいながらもちょっと不気味に微笑んだ。


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ver.1.00 1997-12/25公開
ご感想、誤変換、誤字脱字、ここが日本語になってない、等のご意見はcorundum@geocities.co.jpまで!!

作者のたわごと

どうも、紫蓮です。
いや〜〜、きつかったです。
これだけの内容で、2週間以上かかってしまいました。
一回、気に入らなかったので書き直しましたし。
ちなみに、シンシアのモデルは、錬金術の妖精を育てる、とあるゲームのヒロインです。
育成シミュレーションです。
でも、何度やっても女王様になる〜・・・。
やっと違うのになったかと思えばヴァーチャクリスタル・・・。(泣)
難しいです。
って、単に私が下手なだけだとは思うんですけどね。
よ〜し、もう一回挑戦だ〜!
というわけで、次はもっと遅くなるかも知れません。(爆)
それでは○点ここらでお開き、また来週(^^;のお楽しみ。
ありがとうございました。

 群咲 紫蓮さんの『無限のむこうは』第四話、公開です。
 

 

 シレン君、
 アンタが凄いのはよ〜く分かった!

 何をしたいんだ〜
 教えてね(^^;
 

 力の披露はもういいよ〜
 

 

 

 主役は完全オリジナル、
 世界観も限りなくオリジナル、
 「EVA小説」ギリギリかも(爆)
 

 

 さあ、訪問者の皆さん。
 紫蓮んさんに感想メールのクリスマスプレゼントを!


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