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「ちょうどこんなバカらしい会話にも飽きてきたところですし、言って信じない相手にとくとくと説明するつもりもありません。
 何なら、1つお見せしましょうか?」

言って、紫漣は美しいながらもちょっと不気味に微笑んだ。






「無限のむこうは」
第伍話“古代の遺産”






そして、紫漣の口が、流れるように呪文を紡ぎ出す。

思わず身構えるミサト達。

しかし、それは全くの無駄だった。

《轟風弾(ウインド・ブリッド)》!

紫漣が叫んだ次の瞬間、ミサトとリツコは、強烈な風に吹き飛ばされ、壁に叩きつけられた。

2人の体に、衝撃と激痛が走る。

「うぅっ・・・」

ミサトは痛みに耐えて体を起こそうとするが、その時には、もう紫漣は次の呪文を唱え始めていた。

・・・空と大地を 渡りしものよ 優しきながれ たゆたう水よ・・・。
 《氷の矢(フリーズ・アロー)》!

ぎぎぎぎぅんっ!

空間が歪んだような音を立てて、紫漣の周囲に8本の氷の矢が現れる。

そして、壁に叩きつけられたミサトとリツコの、手足に襲いかかった。





「何なんだ・・・? こりゃ・・・」

水中探査員の男は、潜水服の中で、思わずそう呟いた。

ここは、ハワイ諸島の東南東およそ5800キロ・・・早い話が、ハワイ諸島とガラパゴス諸島のちょうど中間辺り・・・の海底だ。

何か大きなものが沈んでいる。

しかし、太陽の光が全く届かないので、いくつものサーチライトに照らされながらも、ほんの一部しかその形が分からない。

しばらくそれを観察した後、彼は海上の船と連絡を取った。

「・・・こちら探査員No.8。
 ポイント4の海底に、巨大な、おそらく正二十面体とみられる物体を確認・・・」

それに対する船からの返事は、非常に簡単なものだった。

『よし、目的は達成できた。撤収しろ』

「了解・・・」





SEELE 05と書かれたモノリスが、報告を始めた。

「・・・第3調査団が、ポイント4の海底で、正二十面体の物体を発見しました。
 ほぼ第5使徒と同じくらいの大きさです」

「それで、その物体は第5使徒と同種のものなのかね?」

リーダー格のモノリス・・・01と書かれたもの・・・が訊ねる。

そして、その答えは、およそ常識では考えられないものだった。

「間違い在りません・・・。
 確かに『彼』の言う通り、第5使徒と同種のものです。
 そして、古代魔導王国の機動要塞の1つ・・・。
 となると、やはり第5使徒も、古代魔導王国の機動要塞である可能性は高いと思われます」

その05の言葉に、01はしばらく考え込んだようだったが、やがて言葉を発した。

「・・・第5使徒と同種のものなら、扱い方もある程度は解明されている。
 ならば機動要塞を起動。
 目標は、ジオフロント中央、ネルフ本部だ。
 機械文明以前の要塞の力、そして、前回の魔導兵器を破壊した方法、見せてもらおう」

「了解しました・・・。
 それでは、ただちに機動要塞の始動にとりかかります・・・」

モノリス達は消え、再び闇と静寂がその場を支配した。

・・・・・・はずだったのだが、どこからともなく中性的な声が響いた。

「"魔導王国"・・・とは、ねぇ・・・。
 まぁ、知らなかったらそう思っても無理はないか。
 似たようなものだし・・・。
 権力・・・と言うか、支配力・・・は比べ物にならないけど・・・。
 それじゃ、とりあえず"女王"陛下に報告に行きますか・・・。」





ミサトとリツコは思わず目を瞑った。

ビシビシビシビシッ!

何かが凍り付く音が部屋中に響く。

しかし、何も変化がない。

おそるおそる目を開けてみると、放たれた氷の矢は全て、ミサトとリツコの手足ぎりぎりの所を凍結させていた。

「いかがです?
 風や炎や雷撃は科学でもなんとかなりますが、氷の塊を一瞬で創り出すことは出来ないでしょう?
 これが魔・・・」

話の途中で、一瞬、紫漣の声が途切れる。

「これは・・・!
 ・・・愚かな者達ですね・・・。
 ただの魔導兵器では飽き足らず、縮小版とはいえ、四神要塞の1つを動かすとは・・・」

呟いて、紫漣はミサト達の方へ向き直った。

「葛城先生、赤木博士・・・。
 次の敵には、あなた方では絶対に勝てませんよ。
 なにせ、"ラピュター"の守護機動要塞の1つですから。
 それも、〈東神要塞〉・・・、いわゆる“青竜”です・・・。
 以前にあなた方が破壊した〈西神要塞〉・・・いや、第5使徒ラミエルよりも、かなり強力ですよ。
 私は、自分の技術に自信を持っていますから・・・」

そう言って、紫漣は扉へ向かう。

「四神要塞・・・?
 ラピュターって、ガリバー旅行記の?」

「第5使徒が、要塞って・・・?
 一体、どういうこと?」

ミサトとリツコが問いかけると、紫漣は少しだけ振り返った。

「・・・ラピュターは、かつてこの世界に存在した、空中国家の名です。
 第5使徒ラミエルと、これからあなた達が第19使徒と呼ぶことになる物は、そのラピュターの東西南北を守護する機動要塞の、縮小版・・・。
 つまりはミニチュアです。
 それでも、あなた達では絶対に勝てません。
 私なら、簡単に止められるのですが・・・。
 そんなわけです。
 今回こそは、手出ししないでくれますよね・・・?」

リツコはその問いに、首を横に振って答えた。

「・・・やっぱり、それは出来ないわ。
 あなたの話は、そう簡単に信じることが出来るものじゃない。
 魔法に関しては、信じざるを得ないけれどね」

「・・・そう言うとは思っていましたけど。
 それなら、諦めて勝手に動かせてもらいます」

紫漣はミサトの言葉に、がっかりした様子で出ていこうとしたが、突然振り返る。

「あっ、そうそう。
 ネルフの保安諜報部は優秀ですが、私を拘束できるとは思わない方がいいですよ。
 そんなことをしも、怪我人が出るだけです。
 場合によっては、死人や廃人も・・・ね。
 もちろん、邪魔さえしなければこちらから危害を加えることは、たぶん無いでしょう。
 私の目的は、基本的に2つだけ・・・。
 まず1つ目は、家族を守ること・・・。
 そして2つ目は・・・、暇つぶしです」

真剣に話を聞いていたミサトとリツコは、最後の一言でコケかけた。

もっとも、既に立ってはいないのだが。

「暇つぶし?
 それなら、家でゲームでもするか、本でも読みなさい。
 家族だって、私たちが守るわ。
 あなたが戦う必要はないのよ」

ミサトがあきれたように言う。

しかし、紫漣は首を振った。

「ゲームは飽きましたし、本に至っては、ここ20年ぐらい中に居ましたよ」

「20年?
 あなたは14歳でしょう?
 それに、本の中ってどういう意味かしら?」

訝しげに、リツコが問いかける。

「ん〜・・・まあ、こっちの話です。
 あと、私の家族はあなた達が守るということでしたが、それが駄目なんです。
 私があなた達にしつこく『手出しをするな』と言い続けているのは、あなた達がいることで相手が倒しにくくなるからではありません。
 そう言う時にあなた達がとる行動によって、私の家族がより危険にさらされるからなんです」

「それは、どういうことかしら。
 あなたの家族は、ネルフの職員なの?」

「・・・ちょっと違うかも知れませんが、ネルフのなかでも1,2を争うぐらいに危険にさらされる立場では、あります。
 さて、とっとと準備しましょうか。
 あなた達も、早いうちに準備した方がいいんじゃないですか?
 明日にでも、太平洋から"使徒"が来ると思いますから・・・」

「それはそれは、どうもご忠告ありがとう。
 でも、あなたの話が本当だという証拠は、どこにもないわよ」

ミサトが、皮肉げに答えるが、紫漣は全く気にしていないようだ。

「でも、準備しないと、大変なことになりますよ。
 〈東神要塞〉は、機動力、防御力、攻撃力ともに〈西神要塞〉・・・第5使徒をかなり上回りますから、ヤシマ作戦レベルの攻撃では、傷つけることすらできませんよ。
 あなた達が負けても、私が止めますから、人類が滅びることはありません。
 でも、その場合に死ぬのはあなた達ではなく、碇君達なんですよ。
 ちなみに、一番強いのは、南極・・・と言っても旧南極・・・からラピュターを守っていた、〈南神要塞〉です。
 そいつが動けば、たとえミニチュア版でも、全人類を滅ぼすことが出来ますよ。  もちろん、ラピュターを除いて、ですが・・・。
 今もラピュターを守っている実物の守護要塞は、ミニチュアの3倍の大きさと、それを遙かに超える能力を持っています。
 実物の〈南神要塞〉なら、太陽系を跡形もなく破壊するだけの能力を持っているんです」

「いくら何でも、それは信じられないわね。
 『今もラピュターを守っている』って言ってたけど、この地球上にそんな技術は存在しないし、ラピュターなどと言う国の実際の記録も、全く無いわ」

一応、ガリバー旅行記には出てくるのだが、実際の記録ではないので、リツコは無視している。

「ほんっっとに、物分かりが悪いですね。
 確かに、地球上には存在しませんよ・・・今はですが。
 ですがね、遙か昔・・・だいたい1万2000年ぐらい前でしょうか?・・・には、今の太平洋のちょうど真ん中あたりに、にオーストラリア大陸ぐらいの島が浮いていたんですよ」

いくら何でも、ここまで来ると嘘っぽい。

これならまだ、“ミステリーサークルは地球外生命体が残したメッセージだ!”と言われた方が信じやすい。

太陽系の外から来たというのなら、まだ人類未到の空間であるだけに、完全にその存在を否定することは出来ないだろうから。

だが、これは地球上での話だ。

「・・・リツコ・・・。
 精神科医、呼びましょう。
 これ以上はつき合ってられないわ」

「そうね。
 普通ならこんなこと、真面目に言える訳がないわ。
 そんなの、本の中でしか有り得ないわ。
 ・・・!!・・・もしかして・・・さっきの、『本の中』って・・・!」

「・・・ご想像にお任せしますよ。
 とにかく、さっき言ったことは、全て事実なんです。
 出来るからといっても、あの娘はそんなことはしないと思いますけど・・・。
 まあ、せいぜい頑張ってください。
 ちなみに〈西神要塞〉は、ほぼ正八面体ですが、明日来る〈東神要塞〉は正二十面体、〈北神要塞〉は正六面体、〈南神要塞〉は正十二面体です。
 参考までに・・・。
 それでは、私には私なりに準備があるので失礼しますよ。
 ・・・さぁって、ずいぶん動かしてないから、かなり調整しなきゃならないなぁ・・・」

紫漣は、そんなことを呟きながら部屋から出ていった。



「疲れたわね・・・」

リツコは、ため息をついて目を閉じる。

「いきなり壁に叩きつけられて、荒唐無稽な話を聞かされて・・・。
 あの子を呼び出して話をするなんて、もう二度とごめんだわ・・・」

少なくとも、"魔法"という、よく知られてはいるが認められてはいない、未知の力が存在することはいずれ認めざるを得なくなるだろう。

その時こそが、これまで自分たちの信じてきた"科学"が根底から覆される時なのだ。

そう考えると、これまで科学に尽くしてきた自分の人生が、無意味な物に思えてくる。

「同感ね・・・」

ミサトも、言って床に突っ伏したが、科学に携わるものではないミサトには、そのリツコの言葉の表面だけしか理解できなかった。





1人の白衣を着た男が立っている。

デスクをはさんだ向かい側には、バイザーを着けた男が座っていた。

世界広しと言えども、ゼーレのトップであるキール・ローレンツと直接会うことの出来る者はほとんどいない。

それは、白衣の男がゼーレの幹部並みの力を持っており、かつ直接会っても安全だとキールに判断させるほどの人物だと言うことだ。

「先ほど、機動要塞及び第3魔導兵器の制御に成功しました。
 これが基本性能のデータです」

そう言って白衣の男が、デスクに数枚の紙を置いた。

バイザーの男・・・キール・ローレンツは、一通り紙に書かれた内容をみてから、感嘆の言葉を吐き出す。

「・・・大した物だ。
 現代文明に迫るどころか、それを遙かに凌駕している。
 我々人類よりも前に、これほどの文明が地球上に存在したとはな・・・。
 我々ゼーレとしては、このような物の存在を認める訳にはいかん。
 しかし素晴らしいのは、資料がほとんど無かったにも関わらず、このような物の制御方法を解明した、ポール・マーカンド博士・・・君だ」

ポール・マーカンドと呼ばれた白衣の男は、全く表情を変えずにキールを一瞥した。

「私の生涯目標は、超古代文明とでも言うべき"ラピュター"の謎の解明と、それを超えることです。
 そもそも、“魔導兵器”と呼ばれ、ラピュターの物と思われている遺産は世界各地に点在するというのに、その中心地がどこにあったのかさえ、全く分かっていません。
 逆に言うなら、遺産があまりに偏り無く世界各地に分布しているため、中心がどこにあったのかが分からないのです。
 その全てが謎に包まれているのです。
 まるで、かつて海底に沈んでしまったという伝説の大陸、ムーのように・・・」


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ver.1.00 1998+01/26公開
ご感想、誤変換、誤字脱字、ここが日本語になってない、等のご意見はcorundum@geocities.co.jpまで!!
紫蓮:はぁ〜、終わった。
   いや〜、今回も、やったらと時間が掛かったなぁ。

紫漣:まったくです。

紫蓮:うわぁっ!・・・あぁ、びっくりした。
   なんだ、紫漣か。
   ・・・って、コラコラ。
   お前さんは、後書きに来ちゃいかんだろうが。

紫漣:まぁ、そう堅いことを言わずに。
   後書きを手伝ってあげるんですから、良いじゃないですか。

紫蓮:・・・別に良いけどね。
   さて、気を取り直して。

紫漣:そうですね。
   それじゃ、今回の話ですけど。

紫蓮:ふむふむ。

紫漣:・・・良いんですか?今までさんざん秘密にして引っ張ってきたことを、こんなに早いうちにばらしちゃって。

紫蓮:いいの、いいの・・・たぶん。
   ホントは、紫漣の家族とか、ラピュターのことなんかは、もっと後の方で出てくる予定だったんだけど・・・。

紫漣:ここで出してしまった、と・・・。
   ところで今、思ったんですけど、紫漣と紫蓮って、妙に似てますね。
   字も、読みも。

紫蓮:実はこれ、元ネタはオリジナルの小説だったんだ。
   その頃は、"紫漣"が僕が考えてたペンネームだったんだな。
   でも、アニメとエヴァ小説を見て、そのストーリーと、魔法なんかはスレイヤーズを使ってみたら、そっちの方がよかった。(T_T;

紫漣:まぁ、あなたの実力じゃ、所詮はそんなものでしょうね。

紫蓮:・・・・・・・・・・・・。
   まぁいい。
   ところが、書いてる途中に、メインキャラクターの名前を、『しれん』にしたくなってしまった。
   そこで、さんざん悩んだあげく"紫漣"はお前さんに譲って、よく似た"紫蓮"を使うことにした、と・・・まぁ、こんなことがあったわけだ。

紫漣:なるほど。
   つまり、新しい名前を考えるのがめんどくさかった、と。
   実にあなたらしい理由ですね。
   ところで、次回ですが。

紫蓮:・・・・・・・・・・・・。
   さて、それでは笑○ここらでお開き、また来週(^^;のお楽しみ。

紫漣:ごまかしましたね・・・。
   無理矢理終わらせるつもりですか?
   まさか、次回から先のこと、何にも考えてないとか?

紫蓮:(ぎくっ)
   ・・・・・・・・・・・・。(汗)

紫漣:ふぅ・・・。
   ここまで愚かな作者を持つと、苦労しますね。
   それでは皆様、このような話につき合っていただき、まことにありがとうございました。

紫蓮:(ぼそっと)お前さんも、"このような話"を構成する者の1人なんだぞ・・・。

紫漣:《火炎球(ファイヤーボール)》!

どがぁぁん!

紫蓮:ぐはぁっ・・・


 群咲 紫蓮さんの『無限のむこうは』第伍話、公開です。
 

 

 フムフム、そういう設定でしたか。

 読み手の方はこれである程度分かったかな?
 

 ネルフの女性二人は全くのワカランチンですが(^^;

 ここまで理解力無いと、
 不自然でもありますが?!
 

 次来る敵に対して、
 少しは学習したところを見せてくれるでしょうか、ミサトさん達は〜
 

 

 さあ、訪問者の皆さん。
 あなたの感想メールをしれんさんの元へ!


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