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真っ暗な空間。

世界のどこでもない場所。

この空間の主、紫漣は3つの立体映像と向かい合っていた。

左は、20歳くらいの黄色い髪の男、右は、17歳くらいの、燃えるような真紅の髪の少女。

そして真ん中は、16歳くらいの、紫漣と同じ様な紫色の髪を持つ少年だ。

やがて、真ん中の紫の少年が口を開いた。

「謎なのは、このセカンドインパクトですね。
 正直、私たちには全く原因が分かりません」

「いや、それはちょっとは分かってるんだ。
 セカンドインパクトが起こったのは南極大陸だ。
 そして、あの大規模な爆発。
 ついでに、同じようにして起こったサードインパクトが、この『独立次元泡』にまで影響を及ぼしたこと。
 そのあたりを合わせれば、何となくの想像はつくよ」

答えたのは紫漣だ。

しばらくして、右の真紅の少女が言う。

「それでは問題は、一体誰が起こしたのか、ということですね。
 私には全く分かりませんが」

「私にも分かりません」

さらに、右の黄色の男も言った。

紫の少年は黙っている。

そして、紫漣が言った。

「・・・・・・サードインパクトを起こした本人は分かっている。
 後はセカンドインパクトなんだけど、気を付けないと。
 両方とも、何か裏がありそうだからね・・・」







「無限のむこうは」
第弐話”約束”







シンジは、眠れないでいた。

実を言うと、昼間のように何者かに襲われるのは、多いとは言えないが全くない訳でもない。

研究のため、世界制服(?)のため、宗教関係・・・その動機は様々だ。

それよりも、昼間に自分を助けてくれた、あの紫の髪を持つ少年のことが、頭から離れないのだ。

確かに視界から消えていたはずなのに、いつの間にか戻ってきていた。

それも、誰にも悟られずに。

助けてもらったとはいえ、シンジには彼が敵なのか味方なのか、判別できなかった。

でも、必ずもう一度会うことになる。

何故か、シンジには分かっていた。

そしていつの間にか、シンジは眠りへと落ちていった。




シンジの朝は、かなり早い。

2人の同居人が全く家事をしないからだ。

まず2人分の弁当を作って、3人分の朝食を作る。

それから、同居人を起こさなければならない。

まずはアスカからだ。

トントン

ノックして、ドアの前から話し掛ける。

「アスカ!朝だよ。早く起きないと、学校に遅刻するよ」

すると、中から眠たそうなアスカの声が聞こえてくる。

「ん〜〜・・・、分かったわよ。
 分かったから、早くあっち行って」

返事を確認すると、次はミサトだ。

シンジは、ミサトの部屋へ向かった。

ところが。

「おっはよ〜、シンちゃん」

いきなり後ろから声がかかる。

「ミ、ミサトさん!?」

シンジは、心底ビックリした。

あのミサトさんが、こんな時間に、自分から起きている!

そんなことは、今までに無かったのだ。

「一体、どうしたんですか?ミサトさん。
 何か悪い物でも食べたんですか!?」

シンジの疑問は、もっともだ。

何もないのに、こんな早くに起きるはずはない。

「あのね〜・・・、今日から、新しい職場に行くことになってるのよ。
 いくら何でも、初日から遅刻する訳にはいかないわ」

ミサトは、笑いながら説明する。

しかしシンジには、その笑いがなんだか不気味に思えた。

「あ、新しい職場って?」

おそるおそる訊ねる。

「それは見てのお楽しみ(はあと)」

ミサトは何故か楽しそうにしている。

シンジは考える。

見てのお楽しみ?・・・と言うことは、今日またどこかで会うのかな?
でも、今日は学校以外にはどこにも・・・って、もしかして!!

「ミ、ミサトさん!
 まさか、教員免許なんて、持ってませんよね・・・?」

「あ〜ら、シンちゃん、結構いい勘してるじゃない。
 もちろんクラスは2−A、シンちゃん達のクラスよ」

笑って答えるミサト。

「えぇ〜〜!
 ミサトさんが担任!?」

「そうよ。
 それから、今日転校生が来るわよ。
 仲良くしてあげてね」

転校生か・・・どんな人だろう。

シンジは、そう思いながら朝食を作り始める。

「グーテンモルゲン、シンジ」

ちょうど出来上がる頃に、アスカが部屋から出てきた。

「おはよう、アスカ。
 もう出来るころだから、あっちで待ってて」

「分かったけど、早くしてよね!」

そう言い残して、アスカは食卓の方へ行った。

皿に盛りつけていると、

「えぇ〜〜!な、なんでアンタが・・・」

と、向こうから、大きな声が聞こえてくる。

どうやら、ミサトが担任になることを聞いたらしい。

葛城家は、今日も平和だ。





シンジとアスカは、学校へ向かって歩いていた。

時間はたっぷりあるので、歩き方はゆっくりだ。

少し行くと、前の方に、青い髪の少女が見えてくる。

「おはよう、綾波」

「おはよう・・・碇君」

シンジが挨拶すると、こちらに気付いて、挨拶を返してくる。

「綾波、今日からミサトさんが担任だって、知ってる?」

シンジがレイに話しかける。

「ええ、赤木博士から聞いてるわ」

「それから、転校生が来るっていうのは?」

「そんなことは聞いてないわ」

レイはちょっと首を傾げていたが、首を振って答えた。

リツコからは、ミサトが担任になるのでいろいろ時をつけるように、とは言われていたが、転校生があるという話はなかった。

もっとも、リツコといえども、最近増えてきている転校生を全てチェックするわけにはいかないだろうから、特に気にすることはないのだが、なぜかシンジには気になった。



「おい、シンジ。
 今日、新しい担任と、転校生が同時に来るって知ってるか?」

教室にはいると、ケンスケが話し掛けてきた。

「うん、ミサトさんから聞いてる」

「ミサトさんから?」

ケンスケが、不思議そうな顔をする。

「この俺ですら、先生達の話を偶然聞いて知ったというのに、何でミサトさんが知ってるんだ?」

「新しい担任って、ミサトさんなんだ」

「は?」

今ひとつ、シンジの言ったことが理解できないケンスケ。

「だから、なんて言うか・・・ミサトさんが、このクラスの新しい担任なんだ」

「なるほど。
 それなら、シンジが知っていても不思議じゃないな」

そのとき、教室に、見慣れた担任ではなく、副担任が入ってきた。

「おっと、じゃあな、シンジ」

ケンスケは、自分の席に戻る。

そして、副担任は教卓まで来ると、学活を始めた。

「起立、礼、着席」

委員長であるヒカリが号令をかける。

「それでは、今日からみんなの担任になる、葛城先生です。
 どうぞ、入ってください」

ガラガラガラ・・・

「おぉっ!」

男子の間から声があがる。

ミサトは、もうすぐ30とは思えないほど美人だ。

それがいきなり、自分のクラスの担任になったのだから、喜ぶのも無理はない。

「おはよう、諸君!
 今日からこのクラスの担任になる、葛城ミサトよ。
 よろしくっ!」

「おおぉ!」

再び、男子がどよめく。

「それでは早速、担任の仕事を始めるわよぉ!」

ミサトは、一回り教室を見回してから言った。

「喜べ、女子!
 噂の担任に続いて、噂の転校生を紹介する!
 それじゃあ、入って!」

ガラガラガラッ・・・

扉が開き、1人の少年が入ってくる。

もし、彫像が動き出したとしても、これほど美しくはないだろう。

髪と瞳の色は、光線の加減によって微妙に色合いを変える、プリズムパープルだ。

そのあまりの美しさに、クラス中が息を飲み、静まり返った。

「あっ、あの時の・・・」

シンジが呟く。

その少年は、教卓の前まで来ると、黒板に名前を書き、自己紹介を始めた。

「みなさん、はじめまして。
 風島 シレンです。
 この町に来たのはつい最近なので、まだ分からないことも多いんですが、よろしくお願いします」

そして、ようやくシンジに気付いたようだ。

「おや、あなたは・・・。
 どうも、ありがとうございました。
 おかげで、道に迷わずに済みましたよ」

にっこり笑って話し掛ける。

その笑みは、(一部を除く)クラス中の女子を虜にした。

「あ〜ら、シンジ君、シレン君と知り合いなの?
 それじゃあ、席はシンジ君の隣ね。
 それから、後でこの学校を案内してあげて」

あっさり席を決めてしまったが、その決め方がいかにもミサトらしい。

ちなみに、お約束と言えば余りにもお約束だが、シンジの隣は空席だった。

「は、はい」

答えたシンジに、女子の羨望の眼差しが集中した。





突然、第3新東京市全体に、警報が鳴り響いた。

「どういうこと!?」

ミサトが携帯電話で、リツコに怒鳴り散らしている。

「使徒よ」

リツコはあっさりと答えるが、それがまたミサトの神経を逆なでする。

「どうして!
 使徒は17体で終わりじゃなかったの!?」

「私にも分からないわ。
 死海文書に記されていたのは、確かに17体だけだったわ。
 でも、現在第3新東京市へ向かっている物体の固有波形パターンも、確かに青なの。
 これだけは、避けようのない事実よ」



「ミサト、これは一体どういうこと?」

シンジとレイとアスカは、突然ネルフ本部へ呼び出されていた。

そこへ、厳しい顔をしたミサトが出てきたのだ。

「何故かは分からないけど、使徒が現れたわ。
 詳しいことは後で話すわ。
 急いでプラグスーツに着替えて、そのまま待機してちょうだい」

「「「はい」」」


発令所では、ゲンドウとコウゾウが話していた。

「碇、使徒は全部で17体ではなかったのか」

ゲンドウは、いつもの手を組んだ姿勢を崩さずに答える。

「分からん。
 だが、死海文書に記載されているのは、”約束の時”までだ。
 その後のことは、いっさい記されていない。
 さらに使徒が来ても、不思議ではない」

「しかし、ゼーレが黙ってはいないぞ」

「問題無い。
 既にEVAはこちらにしかない。
 老人達には何もできんよ」



使徒は、ゆっくりだが確実に、第3新東京市へ向かっていた。

その姿は、大雑把に言えば、銀の巨人。

早い話が、初号機の全身が銀色になって、フォルムがある程度丸くなったような物だ。

ミサトは、スクリーンに映ったそんな使徒を横目で見ながら、シンジ達に作戦を説明していた。

「敵の能力は全く不明。
 だから、アスカは陽電子砲、レイはパレットガン、シンジ君はプログナイフを改良したプログソードをもって待機して。
 まずは残っている兵装ビルで一斉攻撃。
 ATフィールドの強度等、敵の能力を観察するわ。
 どうせ効くはずはないから、シンジ君がATフィールドを中和して、アスカの陽電子砲、レイのパレットガンで攻撃。
 いいわね」

シンジは、エヴァ無しでもかなり強力なATフィールドを展開できるため、初号機と協力すれば、レイとアスカを合わせた物よりも強力なATフィールドを造り出せるのだ。

ミサトはそのことを知っているため、シンジをATフィールドの中和に回したのだ。

そして、作戦が開始された。


ドォォン・・・

白銀の使徒に、兵装ビルから発射されたミサイルが命中する。

「だめです!
 すべてATフィールドで防がれています!
 ATフィールドの強度は、第4使徒程度だと思われます!」

マコトが報告する。

「第4使徒・・・その程度のフィールドなら、シンジ君1人で中和できるわ。
 でも気になるのは、使徒が全く攻撃してこないことね・・・。
 今までは、兵装ビルに反撃していたのに・・・」

リツコが呟いた。

確かに、これまでの使徒のほとんどが、攻撃してきた兵装ビルに反撃していた。

だが、この使徒は兵装ビルなどには目もくれず、ただ第3新東京市の中心部を目指していた。

「これ以上の通常攻撃は無意味ね。
 アスカ!陽電子砲で攻撃してみて!
 くれぐれも注意して。
 あの使徒の攻撃能力は、全くの未知数よ」

ミサトがアスカに指示を出すと、弐号機は、待ってましたと言わんばかりに陽電子砲を構えた。

「エネルギー充填完了。
 発射準備完了しました」

マヤが告げる。

「行くわよ、アスカ」

アスカは自分を奮い立たせ、陽電子砲のトリガーを引く。

「発射!」

陽電子の束が、使徒へ向かって襲いかかる。

ズドォン!

あっさりと使徒のATフィールドを突き破り、命中した。

「やった・・・か?」

発令所の誰かが呟いた。



その頃紫漣は、そこから500メートルと離れていない空中にいた。

「あれが噂に聞く、エヴァンゲリオンと使徒・・・。
 エヴァンゲリオンの方も知ってるような気がするけど、あの、使徒・・・。
 確かにどっかで見たような・・・?」

そう呟いて、考え込んだ。

それにしても、エヴァと使徒にこれだけ接近しておきながら、ネルフのセンサーに引っかかっていないというのは、並大抵のことではない。

その紫の瞳には、白銀の使徒が映し出されていた。


NEXT

ご感想、誤変換、脱字、ここが日本語になってない、等のご意見はcorundum@geocities.co.jpまで!!

あとがき(?)

どうも、紫漣です。
五○木の模擬テスト、実力テストなどのため、非常に遅くなりました。
タイトルの意味、分かりますよね?
俗に言う、「お約束」と言うやつです。
ともあれ、ようやく使徒が出せました。
中途半端なところで切れたので、次はもう少し早く書こうとは思ってるんですけどねぇ。
いったい、いつになるやら・・・
とりあえず、次は一週間を目標にして、がんばりたいと思います。
それでは笑○(?)ここらでお開き、また来週(^_^;のお楽しみ。
ありがとうございました。

 群咲 紫蓮さんの『無限のむこうは』第弐話、公開です。
 

 紫蓮につづきシレン。

 彼もとってもなんやかやと格好良いという事なので、
 やっぱりその繋がり?
 

 ミサトさんの教師就任、
 使徒の再侵攻。
 

 色々動きがありましたね。

 謎解きは次回に、
 更にその前に使徒撃退を・・

 さあ、訪問者の皆さん。
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