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しくしくしくしくしくしく…。
時は日暮れ。所は碇家の居間。泣いているのはこのシリーズの準主役にしてヒロイン(おい)、碇シンジくん。
どういう訳か膝を抱えて落ち込んでいるシンジをアスカが慰めている。
そこへ帰宅してきたのは碇家の主、碇ゲンドウ。
「あ、おじゃましてます、おじさま。」
「うむ。」
「……あの、ユイさんは?」
「ユイか、ユイなら今日は研究所に泊まりだが。」
「えぇ〜?!」
「どうかしたのかね?」
ここにいたってやっと落ち込んでいるシンジに目をやるゲンドウ。相変わらず息子には限りなく冷淡のようだ。
しばらく目を細めてシンジを見つめていたが、かすかに鼻をかぐと何を思ったか突然 ニヤリ と、かの悪名高きゲンドウスマイルを浮かべる。
思わず身を引いてしまうアスカ。
「そうか、そういうことか。」
渚カオルかお前は。
「ど、どうしたんですか、おじさま。」
「フッ、問題ない。」
「?」
「これでシンジも遂に一人前の女か。これはめでたい。赤飯を炊いて御祝いをせねばならんな。」
そう、別に命に関わるわけじゃ無しと忙しい両親に女性バージョンのまま放っておかれた不幸な彼、じゃなくて彼女に、遂に月のお知らせが来てしまったのだ。う〜ん、「3」を書いたときはあの話限りの予定だったんだが…
それはさておき。
グシャッ
アスカの投げつけたトースターがゲンドウの顔面に炸裂する。将来のお義父さん相手に容赦ないな、あんた。
「ふざけてんじゃないわよこのヒゲメガネ!バカなこと言ってる暇があったらとっととシンジを元に戻しなさい!」
ニヤリ
しかし怒り狂ったアスカを前にゲンドウは不敵にもゲンドウスマイルを浮かべている。凶暴無比の歩くN2爆雷生体重戦車狂乱の活火山暴走ダンプトラック一人コンボイを相手に勝算があるというのか?
そして…ゲンドウが動いた!
「フッ、さらばだ。」
アスカの一瞬の隙をついてダッシュで逃げ出すゲンドウ(こらこら)。
さすがにシンジの父親、逃げ足にかけては天下一品である。だが…
ドカゴシャグチャ
アスカの椅子・テーブル・電子レンジの三連打により逢えなく撃沈される。
しかしいくら何でも最後の グチャ は拙くないか?
いや、さすがシンジの父親、まだ何とか動けるようだ。
「だ、だからだな、ユイが……お、落ち着けアスカ君!私が悪かった、頼むから落ち着いてくれ!!」
「だ、駄目だってアスカ、冷蔵庫なんか投げつけたら!! 」
そんなもんぶつけたら死ぬってば。
シンジもアスカを止めに入る。これだけの目に遭わされてもまだゲンドウを庇うお人好し、とてもゲンドウの血を引くとは思えない。この辺りがシンジがシンジである所以であろう。
まあとにかく、ゲンドウもこのままでは自分の命が風前の灯火であるということを理解したようだ。
「わ、わかった、ちょっと待ってくれ。」
そう言って自分の書斎に入るゲンドウ。しばらくして毒々しい紫色をした液体入りの小瓶を持って出てきた。
「シンジ、これを飲め。一晩寝れば元に戻っているはずだ。」
少し疑わしそうにゲンドウを見たものの、素直に飲むシンジ。
ゴゴゴゴゴゴ
膨れ上がる殺気。はっとゲンドウがそちらを見るとそこには怒りのオーラをまとったアスカの姿が。
「アンタ…こんなのが有るんなら何でもっと早くシンジを治さないのよ!」
「い、いや、まだこれは試作品でな、どんな副作用が出るか予想がつかんかったものでな……」
「ちょ、ちょっと父さん、そんなことは早く言ってよ!もう飲んじゃったじゃないか!」
「フッ、問題ない。」
「無いわけあるかぁ!!!」
垂直落下式のブレーンバスター!!!
かくしてゲンドウは居間の床にめり込んだまま翌朝を迎えることとなった。
この一連の出来事こそが碇シンジをさらなる悲劇へと導いた事件の発端であった……って、これ全部前置きかい。
「無敵のアスカちゃま5」
遥かなる六分儀の呼び声
いつものようにシンジを起こしにやってきたアスカ。いつもよりかなり時間が早いようだ。
ダイニングの床にめり込んでいるゲンドウを無視して二階のシンジの部屋へと向かう。
静かにシンジの部屋に入ってシンジの顔を覗き込むと、念のため下の方でもアレが膨張しているのを確認する(こらこら)。
「……よかった、ホントに治ってる。」
いつものようにシンジを(文字どおり)叩き起こすのかと思いきや、急にきょろきょろと辺りを見回してだれも見ていないのを確かめる。
「久しぶりよね。」
ゆっくりと自分の顔をシンジの顔に近づけていき、そしてその桜色の美しい唇がシンジのそれにそっと触れる。
と、その時シンジがぱちくりと目を開いた。
『えっ』
動揺して一瞬動きの固まるアスカ。シンジはそのアスカの頭を抱きかかえる。
『えっえっ』
と、次にはなんと舌まで入れようとする。シンジとは思えない大胆かつ積極的な行動である。
「んーっ、んーっ!」
ぽんっ
「ぷはっ!」
ようやく我に返ってシンジから離れるアスカ。
「な、なにすんのよ! このバカシンジ!!」
「なにすんの…って、アスカの方からしてきたんじゃないか。」
「う、うるさいわね! 口答えするんじゃないわよっ!!」
怒りのためかそれとも照れのためか、アスカの顔はかなり赤い。
「今更照れなくても良いのに。今までも僕が寝てると思って時々やってたじゃないか?」
成る程。どうやらアスカはシンジが寝ているのを良いことにしょっちゅうこういうことをやってたようである。
「ま、まさか、知ってたの!?」
「うん♪」
にこっ…と綺麗な笑顔で笑うシンジ。それを見たアスカの顔は茹で蛸のように真っ赤になっていく。
「いや〜〜〜!!!」
思わずシンジの部屋から逃げ出すアスカ。
そのまま通行人や自動車をはね飛ばしながら突っ走っていく(おいおい)。
どこへ行くつもりなんだか。お〜い、そっちは学校じゃないよ〜。
さて、残されたシンジ。彼とも思えない積極的な行動は一体どうしたことであろうか。
と、アスカを見送ったシンジの表情が突然ゆがむ。
ニヤリ
おお、その顔に浮かぶ邪悪な笑み、それこそは正にゲンドウスマイルではないか。懸命な読者の皆さんにはもうお解りであろう。そう、薬の副作用で今まで彼の中で眠っていた外道の遺伝子、呪われた六分儀の血が目覚めてしまったのだ。ああ、6月6日に生まれし彼はやはり悪魔の子供、ダミアンの生まれ変わりなのか?
こうして血の囁きに導かれ、六分儀なシンジが邪悪な活動を開始したのだった。
「おっはよー、シンちゃん。」
通学途中の彼に声を掛けた彼女は誰あろう、ストーリーに登場するのは実に丸3話ぶり、最初の設定ではアスカのライバルのはずだったのに気がつくとケンスケ並の脇役になってしまった薄幸の美少女綾波レイである。
「おはよう、綾波。」
「珍しいわね、今日はアスカが一緒じゃないんだ。」
「う、うん。ちょっといろいろあって。」
そういって俯くシンジ。
「何、また夫婦喧嘩でもしたの〜?駄目よ〜奥さん泣かせちゃあ。」
そういってキャハハハとノーテンキな笑い声をあげるレイ。
「……どうしてそういう事言うんだよ。」
「あ、ごめん、もしかして怒っちゃった?」
俯いたまま呟いたシンジにやっぱり笑ったまま謝るレイ。
「そうじゃなくて!」
そういって顔をあげたシンジはレイを壁に押さえつける。
「シ、シンちゃん!?」
「そうじゃないんだよ! アスカとはただの幼なじみなんだ! わからないの、僕が本当に見てるのは、本当に一緒にいたいと思っているのは…」
そういってレイの目をのぞき込むシンジ。レイは思っても見なかったシンジの積極さと予想外の成り行きに動揺してしまい普段のようなノーテンキな反応が出来ない。
「ちょ、ちょっと待って、確かにあたしシンちゃんの事嫌いじゃないけど…」
「……ごめん。やっぱり迷惑だよね、僕にこんな事言われても。」
そう言うと押さえつけていた手を離し辛そうな顔をして顔を背ける。
「あ…」
そんなシンジの姿に罪悪感を感じてしまうレイ。
「違うの。急に言われて驚いただけなの。今までずっとシンちゃんにはアスカがいると思ってたから…」
ああ、この『アスカちゃま』と思えない展開は一体何なのか?まさかナンセンスギャグを止めて本格三角関係恋愛モノに移行しようとでも言うのか!?
んなわきゃ無い(笑)。
レイに見えない様に背けたシンジの顔が ニヤリ とゆがむ。
そう、ユイのそっくりさんである綾波レイを見て六分儀の血が騒いでいるのだ!(おい)
このままレイはゲンドウ化したシンジの手に落ちてしまうのか?
事態は更に展開する。 ドドドド
「でもごめんなさい。今は返事できないの。」 ドドドド
「どうして?」 ドドドド
「…それは…」 ドドドド
「それは?」 ドドドド
「あっち。」 ドドドド
そう言って右の方を見る。
「あっち?」 ドドドド
右に振り向いたシンジが目にしたのは勿論この方。やっと通学路に戻ってきた途端にこの状況を目撃し、激怒に燃えて突っ走ってきた惣流・アスカ・ラングレイである。
「このド浮気モンがぁぁ!!!」
加速をつけたアスカ渾身のレッグラリアートがシンジの顔面を直撃する!……スカートでは止めなさいね、そういうことは。
「うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜」
さすがに朝一で濃厚なディープキスをされたその当の相手にこんな光景を見せられただけあって、パワーが普段の3倍比は出ているようだ。
時速150km錐揉み状態で吹っ飛んでいくシンジ。
そこへ走ってきた白いライトバン。
ドカッッッ ヒュ〜〜〜〜〜
「うわっ、またやっちまった!」
更に吹っ飛ばされ遠くへ消え去るシンジ。
「しまった、逃げられたわ!」
「いや、あの、たぶんああいうのは逃げたとは言わないと思うけど…」
「うう〜ん、はっ?」
シンジが目覚めたときに見たもの、それは見慣れた天井だった。
これでもかと云うほど清潔感溢れる白い壁、立ちこめる強い薬品臭、ここは彼がアスカに殴られ蹴られ叩かれる度にお世話になっている保健室であった。普段と違うのはアスカが側にいないところか。
「あら、気がついた様ね。」
声のした方に目をやると、そこにいたのは久々の登場、三十路過ぎてが女の華と開き直ったその姿は、纏う白衣はマッドの証、世間の迷惑顧みず狂気の実験繰り広げ、誰が呼んだか“悪のドラえもん”、そう遂に復活した“白衣の魔女”化学教師赤木リツコである。(ああっごめんなさいリツコさん、お願いだから殺さないで…)
何故化学教師であるはずの彼女が此処にいるのか、それは彼女が保険医を兼任しているからだ。技術は大学病院の医師以上、医師免許やカウンセラーの資格も持っており腕に問題はない。問題があるのは性格だけだ(おい)。
なにしろ勝手にけが人や病人が転がり込んでくるのである。試作した薬品や開発した人体改造技術の実験台に事欠かないのだ。というわけで保健室は彼女に乗っ取られ、“一人で入ったら五体満足には出られない”と噂される恐怖の部屋となったのだった。
それはともかく。
「え…と、僕は一体…?」
「びっくりしたわよ、登校の途中でいきなり目の前に空から降って来るんだもの。思わずそのまま頭から轢いちゃったじゃない。」
シンジじゃなかったら死んでるよ、いくらなんでも。
「で、どうしてあんな事になったの。また惣流さんに苛められたの?」
その言葉にシンジは悲しそうな顔をして俯く。
『あら?いつもと様子が違うみたいね。』
「どうしたの?悩みがあるのなら相談に乗るわよ。」
「いえ、いいんです。赤木先生に心配をお掛けしたくはないですから。」
そう言って寂しそうな笑みを浮かべる。その儚げな表情に思わず『ドキッ』としてしまうリツコ。“ショタコン殺し”の異名に恥じない実力である。
「ち、ちょっと待ってなさい。とりあえず落ち着いて話しましょう。」
そう言ってコーヒーを入れに行くリツコ。その背中を見つめるシンジの顔に邪悪な笑みが浮かぶ。
ニヤリ
そう、今、六分儀の血が金髪の熟女という“脂の乗ったこってり味のステーキ”を求めていたのだ!(おいおい)
そして彼は今のやりとりで確実に手応えを感じていた。後は時間の問題か。
だが、そのゆとりが彼に致命的な誤りを犯させた。
「くっくっく、ちょっとバーサンなのが気に喰わんがな。」
チュドドドド〜ン!!
呟いたシンジを一瞬にして爆炎が包み込む。赤木女史お得意のニトログリセリン同時多発攻撃である。
リツコの耳はたとえ1km先で呟かれようとも「バーサン」などという単語を聞き逃すことはないのだ。
「あうあうあう…」
「爆発には相当耐性があるみたいね。」
いつの間にか手にしたノートに何かを書き込むリツコ。既にシンジを見つめる瞳は、先程までの“慈しむべき可愛い男子生徒”から“腹を割かれて内臓がピクピクしている解剖中のウシガエル”を見る目へと変化している。
そう、彼女は今マッドサイエンティストモードへと移行しているのだ。現在移行率16%。
「なら、高熱にはどうかしら?」
懐から出された左手には直径10cm長さ50cm程の、大きくN2と描かれた白い円筒。そんな大きな物をどうやって白衣に入れてるんだ?
それをシンジの方へポイッと投げる。
カァッ …… ドッゴォォォォン!
輝く閃光、立ち上る火柱とキノコ雲。
それが消えた跡には黒こげになってピクピクしている物体が一つ(まだ生きとんかい)。
「10秒でもう皮膚が再生を始めている。さすがシンジくん、プラナリア並の生命力ね。」
そう言って再びノートに書き込んでいく。
「さてお次は…新開発の陽電子ライフルでも試してみようかしら。」
そう言って白衣の裾から引っぱり出したのは長さ2mはあろうかというSFチックなシルエットのライフル。ホントにどうやって入れてるんだ?
「それともこっちかしらね。」
そう言って白衣の袖から手首を出すと指に挟まれて現れたのは毒々しい程の原色の薬品が込められた注射器3本。
「せっかくの機会なんだし…どうせなら試作品全部試してみるべきよね。」
さようならシンジ、君のことは忘れない。
放課後。
全身ボロボロになりながら廊下を歩いているシンジ。赤木女史の各種新兵器の実験台になるという栄誉を担いながらも、どうやらかろうじて生き延びたようだ。
なんとか教室の近くまで帰り着いた彼が目にしたのはいつもの光景であった。
「待ちなさい!どうしてあんたはいつもいつも週番をさぼろうとするの!」
「すまん、イインチョ。今日は、今日だけはあかんのや!」
イインチョこと洞木ヒカリに耳を引っ張られながらも懸命に逃亡しようとしているのは勿論この人、ジャージ一筋14年黒いジャージは男のポリシー、ただでさえシスコン&露出狂の病気持ちなのに更に『アスカちゃま』シリーズでは渚カオルの同類にされた悲運の男、人呼んで“変態三冠王”鈴原トウジその人である。
「勝手に妙な称号つけんなぁぁ!!!」
「訳のわかんないこと叫んで誤魔化そうとしないで! ちゃんと週番の仕事をやんなさい鈴原!」
「ち、違うんやイインチョ。」
「何が違うのよ、今日の週番は間違いなく鈴原よ。」
「い、いや、その、頼むイインチョ、今日だけは勘弁してくれ!ハルカ(仮名)が風邪引いて寝込んどるんや!」
ハルカちゃん(仮名)とはトウジの妹。ちなみに何故(仮名)かというと…読者の皆さんもご存じかと思うが、この娘はEVA小説ごとに名前が違うという、正に七色の名を持つ少女なのだ。そんなんで一体どうしろと言うのか。
それはともかく。
勿論重度のシスコンである彼は学校を休んででも看病したかったのだが、ハルカちゃん(仮名)に叱られて仕方なく学校へとやってきていた。おかげで授業にも身が入らず(それはいつものことか)、学校が終わるのを今か今かと待っていたのだ。
「そ、そう、それなら仕方ないわね。」
愛しい鈴原トウジの家族構成など当然チェック済みである。ヒカリは知っていた。トウジの両親は共働きで帰りが遅く兄妹は二人きり、つまり今ハルカちゃん(仮名)は今一人きり、おそらく昼御飯も抜きで寝ているのだ。
「でも鈴原、あんた料理なんか出来るの?」
「あ、ああ、まあ出来んことは無いんやけど…な。ホンマはもっと旨いモン作ってやったらハルカ(仮名)も食欲が出て早よ良うなるんやろうけど。」
その言葉を聞いてヒカリの瞳にある思惑が浮かぶ。
「じ、じゃあさ、あの…」
「ん、どないしたんやイインチョ、そんな赤い顔して。もしかしてまだ怒っとるんか?」
相変わらずの鈴原トウジ、さすがはステゴザウルス並と称される鈍さである。
「あの、わ、わたしが…」
がんばれファイトだ委員長、世界は君を待っている。
「わたしが一緒に行ってご飯を作ってあげ…」
だが時既に遅し。トウジは最早聞いていなかった。
「おう、シンジやないけ!」
そう、帰ってきた“料理の鉄人”碇シンジを見つけてしまったのだ。
「ちょうど良かったわ。あんな、ハルカ(仮名)が風邪で寝こんどんねん。済まんけど一緒に帰って飯作ってやってくれんか?」
「え、うん、もちろんいいよ。」
「そうか、ホンマ済まんな。ハルカ(仮名)の奴もシンジのこと気にいっとるみたいやし、きっと喜ぶ思うわ。」
「え…」
絶句するヒカリを余所にトウジは話を進めていく。
「ほな善は急げや。じゃあな、後頼むわイインチョ。」
「さよなら、洞木さん。またね。」
『そ、そんな、やっぱり鈴原はわたしよりも碇くんの方が良いっていうの…』
こうして二人は去っていった。傷ついた少女一人を残して…(ああっ、何かシリアス)。
「ごちそうさまぁ。」
「どや、うまかったか。」
「うん、やっぱりシンジ兄ちゃんのご飯はおいしいわ。」
というわけで鈴原宅。時は1時前。シンジの作ったお粥はハルカちゃん(仮名)のお気に召したようでぺろりと平らげてしまっている。
「ほな薬飲んで早よ寝とけ。そやないといつまで経っても良うならへんで。ちゃんと兄ちゃんが看病しとったるし。」
「うん、ほなおやすみ。」
すやすや。
布団に入った途端眠りにつくハルカちゃん(仮名)。やたら寝付きが良くないか? 確かに大阪人はパッと寝てパッと起きるらしいが。
「あ、しもた! 今日はお母んが帰るん遅いからワシが買いもんしとかなあかんかったんや。シンジ、済まんけどちょっとハルカ(仮名)見といてくれへんか? すぐ帰ってくるさかい。」
「うん、いいよ。別にそのぐらい気を使わなくても。」
「おおきに。ほなちょっと行って来るわ。」
出ていくトウジ。それを見送ったシンジの顔に邪悪な笑みが浮かぶ。
ニヤリ
そう、またも六分儀の血が騒いでいるのだ。今回の指令は“お子さまランチ”……ってちょっと待てい! 確かに中年のゲンドウだったらレイで充分ロ○コンでも、中学生のシンジとなったら小学生でないとロ○コンにならんだろうが……それはいくらなんでもやばすぎるぞ、おい。
そして勿論神はそんな外道な行為を許すことなく、邪悪を滅するために正義の使者を使わしたのであった。
ドコォッ!
後頭部を鈍器で殴られ吹っ飛ぶシンジ。
「痛たたた。」
頭を押さえながら振り向いたシンジが見た正義の使者の姿は……学校指定の制服に身を包み、右手にバットを持ってマスクを被った謎のおさげ髪の女性の姿であった(笑)。ちなみに被ったマスクは引退間近のアントニオ猪木の顔を模したモノ、“あごマスク”というやつである。
「……そんな格好して何してるの、洞木さん。」
「そ、そんな人は知らないわ。私の名前は謎の正義の使者、マスク・ザ・イインチョーよ!!! 」
………
そのネーミングセンスはいくらなんでも…もう少しなんとかならなかったんですか?
………
大体そのマスクにしても…一体どんな趣味をしているんですか?
………
「そ、そんなことはこの際関係ないわ!とにかくおとなしく正義の裁きを受けなさい!」
「正義の裁きって……僕は何もしていないと思うんだけど……」
む、言われて見れば確かにシンジはまだ何もしていない。ニヤリと笑っただけだ。しかも彼女はそれすら目にしていないはずだが。
「いいえ! 鈴原の心を盗んだ罪、たとえ天が地が人が許してもこのマスク・ザ・イインチョーが許さないわ!!」
そんな理由かい。
「ちょ、ちょっと待っ…」
「問答無用、天誅!!!」
……かくして悪は未然に防がれたのであった。いいのかそんなんで。
「シンジ、留守番させて済まんかったな……って、あれ?」
そこには既にシンジの姿はなく、何故か(笑)洞木ヒカリがハルカちゃん(仮名)の看病をしていた。
「なんでイインチョがここにおるんや?」
「何でも碇くんに急用が出来たらしくて。それで代わりにわたしが……」
「そうか、それは済まんかったな。イインチョにも用事があったやろうに。」
「ううん、気にしないで。これも委員長の務めだから。」
「ほうか、ほな甘えさせてもらうわ。……ところでイインチョ、何か血の臭いがしとる気がすんのやけど?」
その言葉にヒカリは真っ赤になる。
「バ、バカ! 何を言うのよ。」
「な、何って別に…」
「女の子には月に一回そういうときがあるのよ。鈴原だって知ってるでしょ!」
「月に一回って……あ! す、すまんイインチョ!」
ニブちんの彼もようやく気づいたようだ。
「もう、女の子に変な事言わせないでよね。」
顔を赤らめてそう言いながら、彼女は血のこびりついたバットをトウジに見えないようにそっと隠すのだった…(おいおい)。
2時過ぎ。
学校から帰ってきたアスカ。左手に大きな生ゴミ、もといシンジを引きずっている。1時間前にマスク・ザ・イインチョーから引き渡されたモノだ。どうやら彼女とアスカは交友関係があるらしい(笑)。
「ただいまぁ。」
玄関を開けると、中から立ちこめてくるどんよりとした空気。
『げ、まずい、ママが帰ってきてたんだわ。』
とりあえず居間のソファーにシンジを放りだしダイニングへと向かう。
ダイニングへ入るとテーブルの上にはおいしそうな料理が。だが問題はその向こう、暗黒の空気が湧き出している所。
そこには膝を抱えて壁を向いて座り込んでいるキョウコの姿があった。アスカそっくりの容姿に落ち着きと穏やかさを加えたその美貌。40歳前とは思えない張りのあるボンボンなバディ。だが今彼女の周りには陰の雨が降りそそぎ、滅の風が吹き荒れていた。
「た、ただいま、ママ。」
「……アスカちゃんと一緒に昼御飯食べようと思って待っていたのに。」
暗〜い声で呟くキョウコ。
「え、え〜と…」
「せっかくの土曜日、アスカちゃんとスキンシップ取らなきゃと思ってわざわざ仕事早退してまで腕によりを掛けてご飯作って待っていたのに。ママの事なんて忘れて全然帰ってこないんだもの。もうママの事嫌いになったのね。」
「ご、ごめんね、ママ。ちょっとシンジをお仕置きしてたから…」
「やっぱり片親で育てたせいなのかしら、スキンシップが足りないと親子の断絶が起こるって言うものね。ママはいつもアスカちゃんの事考えて愛情を注いでいるつもりだったけどまだ足りなかったんだわ。ごめんなさいアスカちゃん、ママが仕事に夢中になりすぎたのが悪いのね。ああ、まさかアスカちゃんがグレちゃうなんて。」
「あの、別にグレたとかそんなんじゃないんだけど…」
「そのうち悪い遊び覚えてお金が足りなくなってブルセラで制服とか売ってそれでも足りなくて援助交際始めて『おじさん5万円でどう?』なんて言ってホテルに連れ込んだと思ったら後ろから殴り倒して財布奪ってやらずぼったくりで逃げてしまうのね!」
「……ママ、アタシの話聞いてる?」
「そして好奇心から覚醒剤に手を出してその時知り合った悪いチンピラにだまされてシャブ中にされてさんざん弄ばれた挙げ句に最後はアフリカのンポポ族の王様に売られて28人目の妻にされてしまうのねっ!」
「何よそのンポポ族っていうのは……」
「ああっ、せっかく手塩に掛けて育てた可愛いアスカちゃんがそんな目に遭うなんてっ!そんなことになるくらいならいっそママがこの手で!
アスカちゃん、ママと一緒に死んで頂戴っ!!」
「いいかげんに人の話を聞けぇ!!!」
暴走したキョウコを落ち着かせるのに要した時間、約20分。
「……というわけでシンジにお仕置きをしてたら時間の事を忘れちゃったの。ごめんなさい、ママ。」
「そうだったの。良かったわ、アスカちゃんがママの事嫌いになっちゃったのかと思っちゃった。もう、どうしようか途方に暮れちゃったわ。」
『途方に暮れたのはアタシの方よ。』
思わずそう突っ込みたくなるアスカだが、そんなことを言おうモノなら先程の二の舞になりかねない。大体、大抵のEVA小説を見ればアスカも他人の話を全然聞かない妄想暴走マザコン娘である。所詮は似たもの親子、言えた義理じゃないのだ。
「じゃあアスカちゃん、ご飯にしましょうか?」
「……その前にちょっとシャワー浴びてくる。」
疲労の色を滲ませながらバスルームに向かうアスカ。
「あまり調子が良くないみたいね。やっぱり勉強が大変なのかしら?」
疲れてるのはたぶんアンタのせいだと思うぞ。
「さてと、じゃあ今の内にシンジちゃんの手当てでもしておこうかしら。」
可哀想にどうやら今までずっと放っておかれてたらしい。
キョウコが居間に入ると、ソファーの上には未だ生ゴミ状態のシンジ。
一つ、レイを口説いていた罪。
一つ、そのあとアスカから逃げ出した罪。
一つ、アスカを置いて勝手に帰った罪。
以上の罪状において1時間にも及ぶ過酷なお仕置きを受けていたのだ。その過酷さは不死身のシンジが未だ生ゴミ状態なのからも伺いしれる。
「あらあら、また酷くやられたわね。ホントに生きてるのかしら?」
「うう〜ん、はっ?」
その言葉に反応したのか目を覚ますシンジ。
「シンジちゃん、大丈夫?」
聖母のような慈愛の表情を浮かべるキョウコ。
「あ、キョウコさん。え…と、僕は一体…?」
「ごめんなさいね、またアスカが酷い事したみたいで。ホントに困った娘ね。」
アンタがそういう風に育てているんでしょうが。
「いえ、良いんです、慣れてますから。」
そう言って弱々しく笑みを返すシンジ。
「あの、アスカは?」
「アスカならシャワーを浴びてるわよ。シンジちゃんちょっと待っててね、今救急箱取ってくるから。」
そう言って立ち上がってあっちを向くキョウコ。その背後でシンジはまたも ニヤリ とゲンドウスマイルを浮かべる。
お解りだろうか?そう、今、六分儀の血は“親子どんぶり”を求めているのだ!
やはりこの展開でこのネタを外すわけにはいくまい。
「キョウコさん!」
その声に振り向いたキョウコをいきなり押し倒すシンジ…っておい、いきなりかい!
「ちょ、ちょっとシンジちゃん?」
「ごめんなさいキョウコさん。こんな事しちゃいけないのは判ってます。キョウコさんが僕を子供としか見ていないのも。でも、僕は前からキョウコさんのことが…」
いいのか、こんな展開で?
「あのね、シンジちゃん。シンジちゃん位の年頃の子が年上の女性にあこがれるのは判るわ。でもね、そういうのはやっぱり一時の気の……ンッ?!」
キョウコの口を自分の唇で塞ぐシンジ(何か展開が前回に似てるような…)。
しかし今回はやたら行動が積極的である。どうやら過去の失敗の経験から、邪魔が入らないようアスカがシャワーを浴びている内に決めるつもりらしい。
だが、愛しのキョウコさんをむざむざGシンジの餌食にさせるわけには行かない。当然邪魔が入るのだ。
シンジの背後から漆黒の影が疾風のごとく襲いかかる!
ドゲシィィ!
「はうっ。」
強烈な蹴りがシンジの側頭部に決まり壁まで吹き飛ばす。
壁に叩きつけられたシンジが見たモノは…モノクロのボディにつぶらな瞳を持つ身長80cm位の人影ならぬ鳥影。
彼は忘れていたのだ、この家にはもう一人(一羽?)住人が居たことを。
そう、その鳥影こそ地上最強生物(おい)、温泉ペンギンのペンぺンだ!
その目は明確に『他人の女に手を出すんじゃねぇ、このくそガキ!』と告げていた。
ペンペンはシンジに近づくと左の翼でシンジの胸ぐらをぐいっと掴みあげる。
そして右の翼で……
ビンタビンタビンタビンタビンタビンタビンタビンタビンタビンタビンタビンタビンタビンタビンタビンタビンタビンタビンタビンタ
「あうっあうっあうっあうっあうっあうっあうっあうっあうっあうっあうっあうっあうっあうっあうっあうっあうっあうっあうっあうっ」
マヤの時よりもペーストとフォント、もとい、回数と威力が共に倍加しているようだ。
そして玄関までシンジを引きずっていきフルパワーで蹴り出す!
「うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜」
地平線の彼方へ消え去るシンジ。それに向けてペンペンは右翼の三本爪の真ん中を上に向け突っ立てる(まぁお下品)。
さて危機を救われたキョウコの方はというと…
「……もうちょっとだったのにぃ……」
おいおい、あんたもかい。
夕方6時過ぎ。
ペンペンに天空へ蹴り飛ばされ、ようやく自分の家へと帰り着いたシンジが玄関を開けると、何故かそこには仁王立ちのゲンドウの姿があった。
「ど、どうしたの、父さん。」
「飯を作れ。」
「え?」
「ユイはまだ帰っておらん。代わりに飯を作れと言っておるのだ。」
碇家の婿養子という立場上ゲンドウも料理ぐらい出来る。いや、それどころかシンジはおろかユイすらも上回る技術の持ち主である。だがそこはゲンドウ、面倒なことは全てシンジに押しつけているのだ。
「早く作れ、作らないなら帰れ!」
シンジの家は此処だろうに。一体何処に帰れと言うのか。
「わ、わかったよ。さよなら父さん。」
おい、ホントに帰るつもりかおまえは?
「ま、待てシンジ、今のはお約束というやつだ。帰らなくて良いから早く飯を作れ。」
そらそうだろう。本当にシンジが何処かへ帰ってしまったら困るのはゲンドウの方だ。
ともかくゲンドウのために夕飯を作るシンジ。
「はい、お待たせ。」
「うむ。」
ガツガツと凄い勢いで食べ始めるゲンドウ。昨晩からつい先程まで三食抜きで気絶していたのだから当然である。
だが、突然食べるのを止めるゲンドウ。
「ムッ、この味は?!」
「気づくのが遅かったね、父さん。その料理にはネコイラズが隠し味として加えてあるんだよ。」
いきなり先程までのおどおどした態度を豹変させるシンジ。
「しばらくは動けないと思うから、その間に航空便にして南極に送ってあげるよ。ゆっくりとアダムでもロンギヌスの槍でも好きなだけ探してきたら。」
またも ニヤリ とゲンドウスマイルを浮かべる。
「さよなら父さん、もう二度と会うことはないと思うよ。後は母さんと二人で幸せに暮らすから。……ジーさんはもう用済みなんだよ。」
ああ、外道の限りを尽くしてきたゲンドウにも遂に報いが訪れたのか?
だが…
いきなり平然と立ち上がるゲンドウ。
「えっ?!」
「ふん、ネコイラズがどうした。ユイに浮気がばれた時に食わされた地獄の料理の数々に比べれば、そんなもの蜂に刺されたほどにしか感じぬわ。」
それって実は結構効いているとか言わないか?
「どうやら六分儀の血に目覚めたようだが私に逆らおうなど10年早い。覚悟は出来ているな、シンジ。歯を食いしばれ!」
「ぐふうっ!!」
強烈なボディアッパーをシンジの腹に叩き込むゲンドウ。……今、歯を食いしばれとか言わなかったか。
「フッ、勿論フェイントだ。こうした方が苦しみが倍加するからな。」
やっぱり外道だアンタは。
そんなことを言いながら苦しんでいるシンジの襟首を掴んで持ち上げる。
「今度こそ二度と男に戻れないよう身も心も完全な女にしてやろう。そしてフリーになったアスカくんは私の2号さんに……ついでだ、キョウコくんも3号にしてやろう。フッ、完璧なシナリオだ。」
さすがは本家本元、骨の髄まで外道な男ゲンドウ。いつものごとくやたら自分勝手な虫のいいシナリオを考えてほくそ笑む。だがそこに隙が生じた。
がしっ!
シンジの両腕がゲンドウの腰をロックする。そして…
捻りを加えたバックドロップ!!!
かくして悪は滅びた。
……って終わってどうする。
脳天から血を流してゆっくりと倒れるゲンドウ。そこに更に蹴りを叩き込むシンジ。
「このこのこのこのっ、これでもかこれでもかこれでもかこれでもかっ!」
さぞ恨みが積もっていたのだろう。正に因果応報、外道の報いは外道によりて訪れたのだ。
その時シンジの背後から声が響いた。
「シンジ、何をしているの!」
そこには音を聞きつけてやってきたアスカと、そして遂に帰ってきたユイの姿があった。
「き、気をつけろユイ。今のシンジは六分儀の血に支配されている。」
げしげしげしっ!
まだ話す余力があるゲンドウにトドメを刺すため更に蹴りを叩き込むシンジ。
「止めなさい、シンジ。」
「良いじゃないか、こんな男もう何の役にも立たないよ。」
またも ニヤリ とゲンドウスマイルを浮かべるシンジ。
「これからは僕が母さんを満足させてあげるよ。」
おお、何という事であろうか。この男は実の父親を追い出して母親を自分の女にしようと言うのだ。正に外道の極みである。
「あのねシンジ、確かにこの人は人相は悪いし、髭は変だし、笑顔は不気味だし、しょっちゅう浮気するし、役に立たないシナリオばかりたてては失敗するし、腹黒くて悪いことばっかり考えている外道だし、夜は5分も持たなくて全然私を満足させてくれないし、百害有って一利無し、いない方が世のため人の為かもしれないわ。」
ユイさん、アンタって……哀れなり、ゲンドウ。
「でもねこんな人でも結構可愛いところがあるのよ。シンジ、ついていらっしゃい。あなたにもそれを教えてあげるわ。」
「ユ、ユイさん?!」
「大丈夫よ、アスカちゃん。ちゃんとシンジを元に戻すから安心して待ってて頂戴。」
そう言って寝室へ消えるユイ。一瞬驚いたシンジも ニヤリと笑ってそれに続く。
「ホントに大丈夫かしら…。」
「フッ、心配いらん。六分儀の血はユイには逆らえん。そういう風に出来ておるのだ。」
ゲンドウを抱き起こしながら呟いたアスカに言うゲンドウ。
「そう言えばおじさま、『今のシンジは六分儀の血に支配されている』とか仰有ってましたけどどういうことですか?」
「うむ、どうやら昨日の薬の副作用で今まで碇の血に抑えられ眠っていた六分儀の血が目覚めたらしいのだ。今のシンジはシンジであってシンジではない。いわばもう一人のシンジなのだ。」
「つまり今日のシンジがずっと変だったのはそのおかげって訳ね…。」
がしっ。
「む、どうしたアスカ君、急に抱きついてきて。そうか、遂に私の魅力に気が…」
「全部お前のせいかぁ!!」
必殺のノーザンライトボム!!!
かくして本当に悪は滅びた。
診断:碇ゲンドウ 全治4週間
がちゃ。ずるずるずる。
縄で縛られたシンジを引きずって出てきたユイ。
床に座らせ活を入れる。
「うう〜ん、はっ?」
「目が覚めたようね。」
ユイを目にして顔が恐怖にひきつるシンジ
「あら、何をそんなに怯えているの。あの人にしてるのと同じ事をしただけなのに。」
「ご、ごめんなさい、すいません、僕が悪かったです。もう生意気な口も叩きません。二度と出てきませんからお許し下さい。」
……一体何をやったんだ、ユイさん。
「よろしい。じゃ、これを見つめなさい。」
シンジの目の前に人差し指を突きつけるユイ。
「3つ数えるとお前は元のシンジに戻ります。1、2、3、はいっ!」
シンジは電撃に打たれたかのようにビクンと震え頭を伏す。そして…
「シンジ、起きなさい、シンジ!」
いつものようにアスカの声に目を覚ますシンジ。
「うう〜ん、はっ?」
時刻は朝7時30分。
「大丈夫?ホントに元に戻ってる、シンジ?」
「え、え〜と……あ、ホントに男に戻ってる!」
どうやら六分儀の血に支配されていた時の記憶はないようだ。
「バカ、そうじゃないわよ!……良かった、ホントに戻ってるみたいね。」
「え?」
「いいのよ、覚えてないのなら。ほら、さっさと着替えて学校へ行くわよ、バカシンジ。」
かすかに顔を赤らめて、そしてほんのちょっぴり残念そうな顔をしながら言うアスカ。
そのまま部屋を出て階段を下りていく。
その背後で……シンジは ニヤリ と笑みを浮かべたのであった……。
(おしまい)
[後書き]
大変長らくお待たせいたしました(え、誰も待ってないって?)。
三ヶ月ぶりの『無敵のアスカちゃま5』 シンジくん外道編 お届けしました。
しかしとことん不定期連載。何か話もだらだら長くなってしまったし、最後まで読んでもらえるのだろうか?。
次回はもっとすぱっと短めに切り上げますので、今回よりは早めにお届けするつもりです。
ではまたお会いしましょう。 B.CATでした。
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