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『ウェディングベル』








オルガンがゆっくりと音を紡ぎあげる。


   何故?




静かに扉が開き新郎新婦が入場する。


   どうして?




新郎は私の幼なじみ。20年近くもずっと一緒にいた存在。あたしの事を誰よりもよく知っている男。あたしが愛している男。そして……あたしを愛していたはずの男。


   どうしてあたしはここに座っているの?




新婦はアタシの親友。空色のショートの髪と赤い眼をした女性。透き通るような肌が白いウェディングドレスにとっても似合ってる。


   どうしてあたしがあそこにいないの?

   あたしの方がずっと綺麗なのに。

   あたしの方がずっとあいつを愛しているのに。




二人が腕を組んであたしの横を通る。あたしはそれを笑って見つめている。


   あいつの横にいるのはあたしじゃなかったの?

   あいつと腕を組んでいるのはあたしのはずじゃなかったの?




   なのにどうしてあたしは笑っているの?




二人が正面の席に着く。披露宴が始まる。


   そっか、これは夢なんだ。

   だからあたしは悲しくないんだ。

   だからあたしは笑っていられるんだ。




司会が何かを喋る。宴が進行していく。


   夢じゃない!夢なんかじゃない!

   夢ならどうしてこんなに胸が苦しいの!

   握りしめた手がこんなに痛いの!




隣の友人が話しかけてくる。あたしは笑ってそれに答える。


   なのにどうしてあたしは悲しくないの?




司会が何かを喋り、新郎新婦が立ち上がる。ケーキカットが始まるみたい。


   そっか、思い出した。

   これからあたしはずっとシンジと一緒。

   だから悲しくないんだ。




カメラを持った者が新郎新婦のそばに近づく。


   そう、これからあたしとシンジはずっと一緒。

   もうシンジがあたしから離れることはない。




カメラは持っていない。でもあたしも新郎新婦に近づいていく。


   レイ、シンジをアンタにあげるのはケーキカットの時まで。

   そのあとシンジはあたしと一緒に行くの。

   アンタは連れてってやんない。




あたしは懐に手を入れ、折り畳みナイフを取り出す。


   ちょっとだけ痛いけど我慢してね、シンジ。

   出来るだけ苦しまないようにしてあげるから。




周りの者が気がつく。悲鳴が上がる。でももう間に合わない。


   この日のために十分練習してきたもの。

   シンジの心臓を一突き、あたしの喉を一突き。

   それだけでいいの。誰にも止めさせない。




シンジがこちらを向く。その顔が恐怖にひきつる。


   怖がらなくても良いのよ、シンジ。すぐにあたしも一緒に行くから。




「カッッットォォォォ!!!」


   ケーキカットはもうおしまい。

   ここからはあたしとシンジの旅立ちの儀式。




「アスカ、落ち着いて!これは芝居なんだよ、芝居!!」




   そうこれは芝居……………………………………………、!!









「あはは、何本気で怯えてんのよ、バッカねぇ。冗談よ、冗談。」

「……脅かさないでよ、アスカ。今、本気で怖かったんだから。」

「ホント、あたし本気でシンちゃんが殺されるかと思ったもの。あんな迫真の演技が出来るなんて、ホントにアスカってすごいわねぇ。」

「ま、この天才美少女、惣流・アスカ・ラングレイにとってはあれぐらい当然よ。ちょっと顔が良いだけのそこらの大根女優なんか足元にも及ばないわね。本気で女優でも目指してみようかしら?」





「どうだい、みたか、あの演技!まさにハマリ役だったろ!嫌がる惣流を説得した甲斐があったってもんさ!間違いなくこの映画は俺の撮った中でも最高のものになる!これで学園祭の最優秀賞は間違いなくウチのもんさ!!フハハハハハハハ!!!」

「……確かにハマリ役やとは思うけどなぁ、ケンスケ、あまりにもハマリ過ぎとらんか?冗談やとはゆうとったけど、さっきの惣流の眼、どう見てもマジやったで。」

「アスカもすぐに自分の世界に入り込むから……。なんかホントに冗談じゃ済まない気もするんだけど。」

「何言ってるんだよ、本気になるから良いんじゃないか。惣流は主演女優賞、ウチのクラスは最優秀賞を取り、これだけの映画を撮った監督の俺の名も上がる。まさに良いことずくめじゃないか!」

「……なんかこの先とんでもないことになるような気がすんのやけどなぁ……。」






トウジの予言は的中することになるのだが……それはまた別のお話。


(fin)


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ver.-1.00 1997-12/07 公開
ご意見・ご感想は b.cat@104.net まで!!

[後書き]

『ウェディングベル』 いかがでしたでしょうか。

う〜ん、学園ラブコメを書こうと思ったのに……、なんでこんな話になっちゃうんだろ?

なんか結構怖い話になってしまった。

さて、次は再びリツコさんのお話、今度はシリアス?になると思います。

では、B.CATでした。


 B.CATさんの『ウェディングベル』公開です。
 

 こ、怖いです(^^;

 アスカの演技、正に真に迫っていました・・
 

 冗談ですみそうでないよぉ (;;)
 

 

 真っ直ぐ一点を見つめることで
 バランスのあやしい自分の心を支える。

 そういう面がありましたよねアスカちゃんには・・。
 

 愛情の対象を失ったときに、
 そういう面が一歩間違ったら・・・。
 こ、こういう事になるかも。
 

 強烈な哀。
 

 
 さあ、訪問者の皆さん。
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