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『ある日の朝』












彼の1日の始まりは早い。







午前六時、目覚ましが部屋の中に鳴り響く。

頭を振って目を覚ましつつ部屋の扉を開ける。

まずダイニングルームに出て確認する。ビールの空き缶が大量に散乱しているところを見ると、どうやらミサトは帰って来ているようだ。それにしても最近特に空き缶の量が増えた気がする。そんなことだから逃げられるのだ。

とりあえず片づけは後にしてバスルームへと向かう。うるさい同居人達に邪魔されずゆっくりと浸れる朝一番の風呂、それこそが最高の幸福の時間だ。

浴槽に湯を張る間に、脱衣所に脱ぎ散らかされた衣類を洗濯機に放り込みスイッチを入れておく。普通女性はこんな事は恥ずかしいと思うのが人間の常識のはずだが……。やはりあの二人はまっとうな人間ではないと改めて認識する。

そのうちに風呂が入ったようだ。温泉の元を入れ、熱い風呂にゆっくりと浸かる。

ゆっくりと30分はその至福のひとときを楽しむ。

上がった後はちゃんとお湯を抜き、浴室を掃除しておく。同居人の一人である赤毛の少女は、我が儘なことに常に自分が一番風呂でないと気が済まないのだ。もし自分が一番風呂でないと気づけばそれこそ猿のようにキャッキャキャッキャとわめき散らし、そしてその後ほぼ間違いなく暴力の嵐が吹き荒れる。不必要な危険に身をさらす必要はない。

気分がスッキリしたところで朝の仕事を始める。

まず居間へと向かう。

予想したとおり、そこには菓子の袋やジュースの空き瓶、そしてゲーム機などが散らかされたままになっていた。食べかけの物も残っている。おそらく赤毛の少女の仕業だろう。しかし、こちらも最近お菓子の量が増えているな。これだけ飲み食いしてよく太らないものだ。

まとめて掃除する。

ゲームや空き缶などの大きなゴミを片づけた後、居間とダイニングに掃除機を掛ける。かなり大きな音がしているのによく眠っていられるものだ。まあそれぐらいの神経をしていないと他人に家事を全て押しつけて平気でいられないだろうが。

とりあえず綺麗になった。尤も二人が起き出してきたらすぐに散らかっていくのだが。かといって放っておいたらすぐに人外魔境になってしまう。

かつてミサトとここに住み始めた頃、試しにしばらく放っておいたら……3日と経たずに地獄と化してしまった。しかも一旦そうなると片づけるよりも散らかるスピードの方が上回ってしまうのだ。あの時のことは思い出したくも無い。

掃除が終わってとりあえず一息つく。冷蔵庫を開けると中身の2/3はビールの缶で占められている。酒は人が生み出した文化の極みだ……と云う意見には賛成するが、かといってミサトの様に朝からビールを5缶も6缶も空けているようでは地球上の生命体として失格だろう。

そんな思いを抱きながら小さな牛乳のパックを取り出し飲み干す。

そろそろ二人が起きてくる頃だ。朝食の準備をしないといけない。

とりあえずパンをトースターに放り込む。ミサトは口に入るものならたいていOKだが、赤毛の少女の方はちょっとした焼け具合の加減にもうるさいので気を付けないといけない。

そう言えば飲み物も用意しなくては。赤毛の少女は紅茶党なので湯を沸かしておく。ミサトはどうせビールだろう。

さて、問題は何を作るかだ。家政夫はかなりのレパートリーを持っていたが自分に出来ることはたかがしれている。とりあえず目玉焼きを作ることにする。どうも共食いをしているみたいであまり好きではないのだが。

ちょうど食事の準備が出来た頃、二人が起きてきた。しかしこれだけ苦労してやっているのに、部屋が綺麗になっているのにも食事の準備が出来ているのにも感謝の言葉すらない。いったい誰のおかげでまともな生活が出来ていると思っているのか。家政夫が逃げ出した気持ちがよくわかる。

ん、なんだって、ミサト。

そうか、やっと帰ってくるのか。やっとこの苦難から解放されるんだな。

1ヶ月か、結構長かったな。これからはいろいろと手伝ってやることにしよう。何しろ後の二人はこき使うだけだから、自分が気を使ってやらないと。また逃げ出されたら大変だからな。











「やっとシンジくんがサルベージされるのよ、嬉しくないの、アスカ。」

「ふん、別にあんなバカがどうなったって知った事じゃないわよ。」

「相変わらず素直じゃないわねぇ。ペンペンなんかこんなに喜んでるのに。」

「クェックェックェックェックェッ。」







(fin)


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ver.-1.00 1998+01/10公開
ご意見・ご感想・苦情その他は b.cat@104.net まで!!

[後書き]

『ある日の朝』 いかがでしたでしょうか。


このSSは、ふっと思いついた 『シンジが初号機に溶けていた時、いったい誰が家事をしてたのだろう』 という疑問から始まりました。残ったメンバーを考えてみると……ペンペンしかいないじゃないか(笑)

というわけで出来たちょっと短めのお話。光景を思い浮かべてみると結構シュールかも。




ではB.CATでした。


 B.CATさんの『ある日の朝』、公開です。
 

 シンジの居ないあの日々・・・

 葛城家を生活できる環境に保っていたのは彼でしたか(^^;
 

 日光猿軍団も足元に及ばない素晴らしい芸!

 あ・・芸ではないですよね、
 純粋に知能が高くて、
 生きるための必要に迫られての行動ですから・・
 

 ペンギンに支えられている葛城家の女性陣・・
 お、おまえらは〜(笑)
 

 

 

 

 ミサトの酒量だけでなく、
 アスカのお菓子の量が増えていたって所に
 LAS人である私はちょっと嬉しかったりして(^^)
 

 

 

 さあ、訪問者の皆さん。
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