「シンジ!!シンジッ!!・・・何か答えなさいよ!!シンジィ!!」
アスカは声の限りに、何度も何度もシンジの名を叫んだ。
しかし、答えは全く返ってこない。
弐号機のエントリープラグの中に、アスカのその叫び声だけが空しく響いた。
・・・突然だった。
突然目の前が赤く染まったかと思った瞬間、凄まじい勢いで吹き飛ばされていた。
アスカには何が起こったのか分からない。
分かっている事は、ただ一つ。
・・・セラフが動いたのだ。
吹き飛ばされたアスカは慌てて周りを見回すが、埃と煙のせいで何も見えない。
アスカが知る由もないのだが、地上と同じく「通信」も全て麻痺していたのだ。
そのアスカの心に、言い様のない不安と容赦ない重圧がのし掛かってくる。
「ママ!!ユイおばさま!!・・・無事なら返事を・・・」
上を見上げたアスカの声が途中で止まった。
「・・・そんな・・・・・・何であんな大きな穴が空いてるのよ!!」
肉眼でも確認できるほどの大きな穴。
ジオフロントからは少し離れてはいるが、その上の天井に直径200mほどの大きさの穴が空いている。
そしてその真下、ジオフロントの地面にも同じ大きさの穴が空いていた。
それはまだまだ下に繋がっているようだ。
それは明らかに何かが凄まじい勢いで落ちてきた事を意味する。
ジオフロントの天井の岩盤は幾重にも重ねられた堅い防御壁の階層によって守られている。
さらに、このジオフロントまでの深さである。
アスカにはそれが一瞬で破られた事など、とてもではないが信じられなかった。
4年前の戦いの中でも、最後までジオフロントを守り抜いた『壁』が壁としても役に立たなかったのだ。
しかし幸いなことに、まだ何かがここに進入したという気配はない。
アスカは瞳を閉じ、一つ大きく深呼吸をした。
「・・・たとえ今は1人でも必ず守り通して見せる。アスカ様をバカにするんじゃないわよ・・・」
沸き上がる不安を無理矢理振り払い、アスカは空いた穴の方へ進んだ。
Written by Zenon
シンジはそう判断した。
セラフは段違いの力でシンジとレイをねじ伏せてくる。
もはや、そう決断する以外に方法がなかった。
シンジはレイに向かって叫ぶ。
「レイ!!このままじゃ勝てない!!全力で行く!!」
「ダメよ、碇君。・・・敵は1体じゃない」
レイはシンジの言葉を聞くと、すぐに冷静な声で答えた。
「どうして!?・・・このままじゃ勝てないよ!!」
「ここで全力を出せば次は戦えない。後をアスカたちだけに任せる気なの?」
「・・・・・・でも!!」
「分かってるわ。・・・私は動けなくなっても大丈夫」
「レイ!?」
レイの言葉が途切れるとともに、零号機が強いATフィールドを放った。
零号機が飛ぶように走る。
一瞬の間にセラフに迫り、肩からセラフの顔面に体当たりをした。
さらに仰け反るセラフの腹部に強烈な回し蹴りが入る。
ドゴォォォーーーン!!!
その攻撃にセラフは信じられないほど吹っ飛び、周りのビルを壊しながら倒れた。
・・・あまりの衝撃にすぐには起きられない。
「碇君、早く!!私のATフィールドはそう簡単に破られないから」
「・・・レイ」
『真のシンクロ』
意図的にEVAを暴走状態にし、それをパイロットの発する微弱なATフィールドでEVA自体に干渉。
そして無理矢理押さえ込み、暴走状態の制御を行う。
EVAの限界の力をコントロールする唯一の方法であるが、パイロットには常に危険が及ぶ。
いつEVAに取り込まれるかも分からない微妙な状態。
制御出来なくなってもおしまいである。
軽々しく使える力ではない。
レイはそれをよく理解していたからこそ、シンジには使わせなかった。
そして、自分がそれを一番制御しやすい事も知っている。
『同じ者』だから・・・
「碇君!!敵はまだいるのよ!!・・・アスカを助けてあげて」
「・・・・・・」
シンジは初号機を穴に向かって走らせる。
そして、穴の手前で立ち止まった。
「レイ・・・信じてる・・・・・・後は任せるよ」
「・・・うん。ありがとう、碇君」
レイは必死にEVAを制御しながらも、苦しむ表情も見せずに微笑んだ。
レイの笑顔は、シンジが初めてを見た時と何も変わっていない。
心からの笑顔だった。
すぐに初号機は穴の中に消えていった。
レイはそれを見送るとセラフに再び振り返る。
セラフはゆっくりと立ち上がり、ジッと観察するように零号機を見る。
レイは間を空けずにセラフに挑み掛かった。
ビシッ!!
零号機とセラフが激しく交錯する。
そのまましばらく動けない。
セラフは素早くロンギヌスの槍で零号機の脚を払い、片手で大きく投げる。
単純な力で負けている零号機は、為す術もなく投げ出された。
倒れた零号機の重さに耐えきれずにビルが崩れる。
「く・・・」
目を瞑り衝撃に耐えるレイ。
全力を出しているとはいっても、シンクロ率が高まったわけではない。
あの独特の痛みはそれほどではないのだが、制御が狂う恐れがあるのだ。
レイは必死に零号機を押さえ込む。
セラフは倒れた零号機に向かって無数の光を放った。
凄まじいスピードで迫る光を、レイは転がって避ける。
セラフがロンギヌスの槍を構えて低く飛んで迫った。
レイはセラフの持つ槍を押さえる。
「負けない!!」
そして槍を掴んだまま頭突きを突き入れた。
セラフの片手が槍から離れる。
それを見たレイは無理矢理に槍をもぎ取った。
ザスッ!!
渾身の力で槍をセラフの肩に突き刺す。
しかし、セラフも全く怯まずに零号機の右腕を掴んだ。
「負けないっ!!」
レイは右腕の痛みを堪え、さらに槍を深く刺し込む。
しかし、セラフの力は異常なまでに強まった。
レイの表情が強い苦痛に歪む。
メリ・・・・・・バキ!!・・・ブシュッ!!
零号機の右腕が激しい音を立てて潰れた。
さらにセラフはそのまま腕をもぎ取る。
しかし、レイは声を上げることもなくジッとセラフを見続けていた。
決して精神の集中をゆるめるわけにはいかないのだ。
「・・・私は自分のやるべき事を見つけた・・・・・・こんな私でも心から信じてくれる人たちがいる」
零号機はロンギヌスの槍を引き抜き、セラフの首に突き刺した。
セラフの動きがとたんに鈍る。
「私は負けない!!・・・負けられない!!・・・何も失いたくないっ!!!」
レイは声の限りに思い切り叫んだ。
信じられない力が沸いてくるのを感じた。
それと共に零号機が強い光を放ってセラフを包み込み出した。
セラフはその光に包まれ完全に動きが止まる。
その瞬間、セラフから別の光が立ち上った。
『・・・強い願い。・・・強い想い。・・・そして強い意志。我々の目的に意味があるのか』
『・・・何?・・・この声は・・・』
レイの心に響く透き通った声。
『疑問は解けた。間違いは正さなければいけない・・・それこそが我々の役割・・・さあ、こちらへ』
レイの心にそんな声が届いた瞬間、セラフの放つ光が消える。
セラフの抵抗が無くなり、零号機は勢い余って倒れ込んだ。
ピカッ!!
音は無かった・・・
そこにあるのは光だけだった。
それに伴い、レイは自分が消えるような感覚を感じる・・・
今まで味わったことのない不思議な感覚だった。
『・・・碇君・・・・・・みんな・・・・・・わた・・・し・・・・・・』
最後に残ったモノ・・・・・・
白い輝きの涙・・・・・
平静を装おうとしているのだが、孤立状態だという焦りと突然の攻撃に多少混乱をしているのだ。
不気味な静けさが漂っている。
弐号機とセラフはジオフロントとセントラルドグマの間のかなり広い階層に立っている。
セラフの押しに、弐号機は押さえつつも徐々に後退しているのだ。
「・・・やってくれたわね・・・」
気が付けば、自分の目の前に1体のセラフが立ちはだかっていた。
大きな長い槍を携えた赤い装甲の巨人。
その姿はどことなく『EVA』を感じさせる。
弐号機の左肩から赤いモノが流れ出ている。
それに伴い、アスカの左肩も痛みに痺れて全く動かなくなっていた。
しかし、それでも右手にソニックグレイブを堅く握りしめてセラフに向き合っている。
アスカには、今の状態での自分の敗北がNERVの敗北であることを感じ取っていた。
この場でNERVを守ることが出来るのはアスカだけなのだ。
その考えが今のアスカを動かしていた。
「余裕を見せてるんじゃないわよ!!」
弐号機は左腕をだらりと下げたまま、ソニックグレイブをセラフに向かって薙払った。
だが、それは上手く交わされる。
そしてそのまま動きの鈍い弐号機の首元を槍の柄で押し倒す。
セラフは弐号機を弄ぶように肩の傷を強く踏みつけた。
「あぁぁーーーっ!!!」
アスカは大きな悲鳴を上げた。
何とか逃げようと身体を動かすが、思い切り踏みつけるセラフの足から逃げることが出来ない。
そして、ますます傷に食い込む。
ガガンッ!!
「アスカちゃん!!」
「それ以上はさせないわっ!!」
そこにアスカの声を聞きつけたキョウコとユイがようやく駆けつける。
2人掛かりでセラフに攻撃を仕掛けた。
その攻撃で、セラフはようやく弐号機から足を離す。
「ママ・・・ユイおばさま」
「ごめんね、アスカちゃん。発見が遅れちゃって」
「大丈夫?」
アスカはややゆっくりとだが、弐号機を再び立たせる。
肩の痛みも耐えることの出来る範囲である。
しかし、セラフはその3体揃ったEVAを見て、静かに『笑った』・・・
シンジは槍が本部を直撃していないことを願う。
そして穴の反対側に出ると、それが杞憂であった事を知って少しホッとした。
最悪の事態だけは免れたのだ。
しかし、アスカ達の姿が全く見えない。
穴に入って行ったはずのセラフの姿もだ。
ゴゴゴゴ・・・
時折、ジオフロントの地面が激しく揺れている。
「・・・地震?・・・違う!!下!!・・・・・・セントラルドグマ!?」
初号機は穴からジオフロントに向かって飛び降りた。
ここからの穴はセラフが通った時に塞いだのだろうか? ここからでは下へ降りる手段がなかった。
シンジはセラフが別に空けたであろうさらに下に繋がる穴を探した。
『・・・シンジ君!!シンジ君っ!!・・・答えて!!シンジ君!!』
「ミサトさん!!」
今まで全く繋がらなかった通信がようやく繋がる。
しかしそれは本部とだけで、他のEVAには未だに繋がらなかった。
『シンジ君!?無事なのね!!・・・急いで下に降りて来て、シンジ君。アスカ達が大変なの!!』
「今、本部の外にいます!!」
『じゃあ、下までの直通の高速リフトを出すわ』
「分かりましたから、早く!!」
ミサトの声が切れると同時に、本部の側に少し大きめのリフトが出てくるのが見えた。
シンジはそこまで急いで走る。
「降ろして下さい!!」
答えが返ってくる代わりに、高速リフトが凄まじい勢いで降りだす。
シンジは突然の衝撃に歯を食いしばった。
「くっ!!」
周りの景色が目まぐるしく変わり、高速リフトは一気に下っていく。
シンジは、闘いの場が近づいているのが分かった。
それに伴い、体中に緊張が走る。
『みんな、どうか無事で・・・』
シンジは焦る気持ちを抑えつつ、一心にそれを祈った。
・・・不意に、雑音と共に通信に声が入ってきた。
『・・・ママァ!!・・・・ばさまっ!!・・・・・・』
「アスカ!?」
『・・・よくも・・・・・・よく・・・も・・・』
シンジは通信の声を聞いただけでアスカと分かった。
しかし、どういう状況になっているのかまでは正確に掴めなかった。
それでもシンジはアスカに呼びかける。
「アスカッ!!」
『たとえ・・・1人でも・・・・・・』
次第に声が鮮明になる。
そして高速リフトがゆっくりと止まった。
そこはまだセントラルドグマまで達していない階層。
シンジはその階層に降りると、初号機を勢いよく走らせた。
しかし、すぐに非常用のゲートが全て下りている事に気付く。
『マギ』が侵入者を拒むために下ろしたのだろう。
シンジはもはや迷うこともなく、非常用ゲートをぶち抜きながら歩き出す。
「くっ・・・・・・アスカァーーーー!!!」
シンジは通信回線に向かって呼びかけるが、こちらからの声は向こうには聞こえていない。
微かな闘いの音と、アスカの悲痛な声が聞こえるだけである。
『くぅっ!!・・・・・・まだよっ!!・・・まだ死ねないっ!!』
「待ってて、アスカ!!すぐ側に居るよ!!」
シンジは必死にゲートを破りながら大きなゲートのある方に進んでいく。
正確な場所が分かっているわけではない。
しかし、シンジは自分の勘を頼りに迷うことなく進んだ。
やがて一番大きなゲートにたどり着き、それを思い切り突き破った。
今までと違い、目の前一杯に広い空間が広がった。
そこにはまだ健在の弐号機とセラフが居た。
シンジは初号機をセラフに向かって勢いよく走らせた。
「それ以上はさせないっ!!!」
「・・・シンジっ!!」
シンジはセラフの横からその頭部を思い切り掴み、そのまま引っ張って走った。
そして、そのままセラフの頭部を思い切り壁に叩きつける。
バアァァアァァーーーーーーンッ!!!!
凄まじい音を立て、セラフは壁にめり込む。
「うあぁぁぁぁーーーっ!!!」
シンジはセラフの頭部を思い切り握り潰すかのように握力を加える。
まるで軽い地震が起こったからのような衝撃音がセラフの頭部から聞こえた。
バシンッッッッ!!!
明らかに頭部が砕けた音。
シンジはそれを感じ取って一度セラフから離れた。
セラフは倒れたそのままで動かない。
「アスカ!!大丈夫だった!?」
「シンジ・・・・・・・・・うん」
シンジの声に、アスカは少し涙声で答えた。
「でも、ママとユイおばさまのEVAが完全に動けないのよ・・・」
「無事なの?」
「うん。エントリープラグは傷ついてなかった」
「・・・そうか」
「シンジッ!!使徒が!!」
シンジがホッとしたのも束の間、セラフが立ち上がろうとしていた。
「アスカ!!弐号機はまだ戦える?」
「大丈夫よ。まだ限界じゃないわ」
「敵はアイツで最後。全力で行くよ」
「うん。分かった」
初号機と弐号機が一気に力を解放されていく。
シンジとアスカは、EVAの暴走状態を己の精神力だけで押さえにかかる。
2機のEVAは強いATフィールドを放ち、立ち上がろうとしているセラフに飛びかかった。
「「はあぁーーー!!」」
シンジとアスカは完全にシンクロした攻撃を繰り出す。
初号機が攻撃を加えると、弐号機は片腕を使えないながらもその隙をついてさらに攻撃を続ける。
そこに初号機の次の攻撃が入る。 そのようにして、2人の攻撃は見事に切れ目なく続くのだ。
しかし、セラフはそれでもほとんどの攻撃をガードしている。
それでも交わすことは全くできない。
この至近距離では、ロンギヌスの槍も逆効果である。
まったく何の役に立っていなかった。
たまらずセラフは距離を取ろうと飛び上がった。
そして、さらに大きな穴を上に飛んでいく。
「何!?・・・逃げる気!!」
「上へ行くよ、アスカ!!」
初号機と弐号機は、穴の壁を左右に飛び移りながらセラフを追って登り出す。
セラフは視界から見えなくなるかならないかの所で辛うじて見えている。
シンジにはその姿がただ単に逃げているようには見えなかった。
『また何かやるつもりか!?』
やがて、セラフはジオフロントに階層に来たところで地面に降り立つ。
2機のEVAもそこまで上がって来る。
シンジはアスカを連れ、本部との通信が可能な地点へと移動をした。
「ミサトさん!!母さんとキョウコさんのEVAの回収を急いで下さい!!」
『大丈夫よ。現在回収中。2人とも軽い怪我をしただけで助かったわ。今は使徒に集中して』
「「了解!!」」
「・・・はい。マギの機能は90%以上が停止しています。通信も一部の回線以外は使用不可です」
冬月の問いにリツコが正確に答える。
「本部内でさえそういう状態ですから、外の状況は全く掴めません」
「零号機の状態も掴めんのか?」
「残念ながら・・・」
リツコはスクリーンを見ながらそう言った。
「どうする?碇・・・」
「・・・・・・渚はどこへ行った?」
「いや。私は知らんが?」
「・・・・・・」
ゲンドウは何事か深く考え、命令を出した。
「本部内の状況はどうでもいい。外の状況を早急に調べろ」
「分かりました」
「渚はどうするのだ?」
「アレはアレで動いているのだろう。我々が口を出しても仕方がない」
「なるほどな。・・・しかし、危機的状況な割によくそうも落ち着いていられるな」
「まだ危機ではない。ヤツの狙いは別のモノのようだからな」
ゲンドウと冬月がそんな会話をしていると、マヤの突然の悲鳴が響いた。
「上空から降下中の使徒を確認っ!!・・・このままだとそのままEVAに突っ込みますっ!!」
「なっ!?」
「何だとっ!?」
その場の者が驚く中、ゲンドウが立ち上がり叫んだ。
「2機のEVAに一時退避命令っ!!これ以上の相手は無理だ!!」
「・・・ダメですっ!!先ほどの妨害が入っています!!EVAとの通信不能!!・・・来ますっ!!」
「シンジ君!!!アスカッ!!!そこから離れてっ!!!」
ミサトは声の限りに叫ぶ。
しかし、返答は聞こえなかった。
その声は強烈に頭に響いた。
『シンジ君!!アスカ君!!上に気を付けるんだ!!』
「カヲル君っ!?」
「カヲルの声!?」
シンジとアスカが頭上の穴を見ると、真っ赤に光ったモノがこちらに向かって落ちてきているのが見えた。
「アスカ!!避けるんだ!!」
「分かってるわ!!」
ガシンッ!!
「アスカッ!!!」
弐号機は運悪く無理な体勢から逃げようとした隙をつかれ、セラフに後ろから羽交い締めにされた。
そのまま弐号機は、落ちてくるモノの盾の様な体勢にさせられる。
落下物は、もうすぐそこまで迫っていた。
「あ・・・あぁ・・・」
「アスカァァァーーーーーーーー!!!!」
シンジは叫びながら弐号機の前に立った。
「シンジッ!!!ダメェーーーーーーーー!!!」
弐号機を押さえていたセラフは、それを見ると瞬時にその場から消え去った。
・・・・・・後は落ちるだけだった・・・・・・
『カ・・・ヲル君?』
「キミは耐えてくれるよね?・・・僕を信じてくれるよね」
『・・・うん。信じるよ。・・・・・・耐えるよ・・・』
「次に会える時は・・・・・・僕がちゃんと生きていられればいいんだけど」
『・・・・・・ゴメン、カヲル君。・・・とても・・・とても眠いんだ・・・』
「お休み、シンジ君。・・・・・・さあ・・・しばらく『元に戻る』時間だ・・・・・・」
アスカは目を瞑り、涙を流して心から叫んだ。
心の中に何回も何回も同じ言葉が浮かぶ。
『シンジが・・・・・・死んじゃう!!・・・・・・シンジが・・・死んじゃうっ!!!』
アスカはもう前も見れない。
落ちる瞬間が何時間にも感じられた。
とても長い時間に。
『・・・お休み・・・アスカ・・・』
「シンジッ!?」
『しばらく寝させてもらうよ・・・・・・ゴメン・・・』
「シンジィーーーーーーーーーーーーー!!!」
不意にアスカの目の前が明るくなった。
瞼を閉じていても分かる。
それほどの明るさだった。
アスカはゆっくりと目を開く。
「・・・・・・シ・・・シンジ?・・・」
黄金に輝く6枚翼。
初号機の形のまま真っ白に輝き、眩しくて見えない機体。
その場を取り巻くATフィールドらしき光の帯。
アスカは言葉を失って、その光景を後ろから眺めている。
今まで見たことのないような眩しく美しい光景が広がっていた。
『な・・・なぜ、ここで!!・・・なぜここでお前が!!・・・・・・』
激しく苦しみ藻掻く声が、はっきりとアスカの頭にも響いた。
『・・・そうか・・・・・・貴方だったのか・・・・・・我らは・・・騙され・・・たのか・・・』
そんな言葉を残して、空から振ってきたセラフが崩れ去っていく。
最後は痛みも苦しみもないような穏やかな声で呟いた。
『・・・・・・ありがとう・・・』
そして、セラフは完全にその姿を消した・・・・・・
「脳波レベル、マイナスに入ります!!」
「急げっ!!早くっ!!」
手術室の扉の上には、『手術中』の赤いランプが真っ赤についている。
その端っこの、手術室から一番遠い長椅子にアスカは座っていた。
まだ赤いプラグスーツを着たまま、両手を額に付けている。
声もなく、ただ座っていた。
「・・・・・・」
「・・・・・・」
そこにミサトと加持が静かに歩いてきた。
なにも言わずにアスカの両横に座る。
それにアスカは反応さえ見せなかった。
「アスカ・・・・・・」
ミサトはアスカの肩に優しく触れた。
アスカはそれでも動かない。
そこで加持が手術室を見つめながら言った。
とても言いにくそうに・・・
「・・・・・・レイが・・・死んだ・・・・・・」
「・・・・・・・・・・・・」
無言の時間が流れる。
・・・アスカの涙の音は、そのまま止まることなく続いた。
どうも、お久しぶりのZenonです。(^^;)
果たして続きを読んで下さる方が居られるのか不安です。(笑)
・・・遅くなっちゃいました。
待って下さっていた方は、本当にすみませんでした。(_ _)
遅い春休みがようやくやってきたんですよ!!(笑)
これから約1ヶ月は長期休みなので、また少しは書けると思います。
では前回のあとがき通り、2話分のあとがきです。
今回、途中で話を変えることが4,5回ありました。
書き直しはないんですけど、そのシナリオ変更で手間取っちゃって・・・(^^;)
もう途中でどうしたらいいのか分からなくなっちゃったくらいです。(爆)
でも、何とか最良のパターンを見つける事ができました。
いろいろと出したい事柄が多かったんですよねぇ〜。
まだ纏まりきらなかった部分もありますが、そこは何とかします。
んで、セラフは今回で2体が消えました。
本文で出さなかったので名前を書いておくと、最初のが「ガブリエル」で後のが「ウリエル」です。
残っているのは、「ミカエル」と「ラファエル」ですか。
そして、レイちゃんが・・・・・・
さらに、シンジ君が・・・・・・
ユイさんとキョウコさんのEVAも完全に潰されちゃって・・・・・・
残ったのは、アスカ様だけ・・・・・・
・・・がんばれ!!アスカ様!!
頼みは貴女だけです!!(T-T)
今話が2部の山場だったんですが、これまた次回で第2部が終わっちゃう予定です。(おいおい・・・)
次はどうなるんだろうか・・・(^^;)
・・・なんかすんごく変なあとがきですね・・・(笑)
前回の事が書いてない。
・・・まあ、いいでしょう。(爆笑)
ということで、宜しければ次も読んでやって下さい。
ではでは、また次回でお会いしましょう!!