Written by Zenon
渚カヲルとの出会い・・・そして最悪の結末。
しかしシンジが死を覚悟した瞬間、彼は再び現れたのだ。
そして彼の働きによって、最悪の瞬間はおとずれなかった。
・・・人類は未来への道を手に入れたのだ。
「えぇ、本当ですよ。まだ『使徒』は滅んではいません。4年後、再びやってくるでしょう」
「そうです。・・・しかし、もう僕は『使徒』じゃない」
「・・・どうしろと言うのだ?」
「まずは『エヴァ』を僕に貸していただきます」
「!?・・・」
「・・・・・・」
「・・・僕を信用してもらえませんか?」
数分後、男はようやく口を開いた。
「ありがとうございます」
そして少年はその笑みを残したまま、部屋を出ていこうとした。その背中に声がかかる。
「ちょ、ちょっと待ってよ、アスカ・・・」
「あんたがのろのろしてるから悪いんでしょ!!」
「そんなこと言ったって・・・アスカがまともに起きてくなかったのが悪いんじゃないか・・・」
「な、なんですってぇぇ〜!!」
しかしお互いの声も怒濤の勢いで繰り出される。
口では喧嘩をしながらも、足は確実に学校に向かって走っていた。
行ってもまだ8分はかかる。
授業の開始は8:30だった。
「きゃあ〜!!あと5分しかないじゃないの!!全てはアンタの責任よ!!」
「分かった。・・・分かったから真面目に走ろうよ、アスカ」
「しょうがないわね。ほら全力よ、バカシンジ!!」
「ちょっ!!手を引っ張らないでよぉ〜!!」
「全くだ。シンジ達には学習能力っていうものは無いのか?」
「・・・仕方ないだろ。アスカが起きないんだから・・・」
1人はいつもジャージ姿の鈴原トウジ。そしてもう1人は眼鏡の相田ケンスケだ。
「そやそや」
「やったさ。・・・でもアスカは結局いつもと同じ時間に起きるんだよ」
その音にクラス中が静まり返る。当のシンジは机に耳をつけていたので、机からの衝撃に頭を抱えていた。
「へぇ〜、アンタの方法で起こしてるって言えるの?アンタはただアタシを軽く揺さぶって『起きてよ、アスカ・・・』って言ってるだけじゃない!!あんなのでこのアタシが起きるわけないでしょう!!」
「だってそうしないとアスカは怒るじゃないか!!大体、それは胸を張って言える事じゃないだろ!!」
シンジは『しまった!言い過ぎた!!』と思ったが、時は既に遅かった。
「全くだ」
まだ学校も完全に再開していない。
あの最後の戦いから、まだ1ヶ月しか経っていないのである。
当然といえるだろう。
あの戦いで町の多くが潰れたかといえば、そうでもない。
意外に倒壊した建物などは少なかった。
ただ避難した人たちがまだ帰ってきていないだけである。
しかし、日々着々とこの危機の去った第3新東京市には人々は戻ってきていた。
「あぁ〜、眠ぅ〜」
「全く・・・鈴原はさっきあれだけ寝てたでしょう」
「そう言うたかてなぁ、いいんちょ」
「ほんとに良くそれだけ寝られるわね、ねぇ〜ヒカリ」
「えっ?あぁ、ごめん」
「トウジ、当たり前だろ。愛する2人にこれからの家に帰ってからの時間は、それはそれは夢のようなひとときなんだから」
「惣流。お前、思いっきりドモッとるで」
「そうそう。シンジもまんざらじゃなさそうだし・・・」
「な・・・何を赤くなってるのよ!!バカシンジ!!」
「あ・・・その・・・ごめん・・・」
「まぁまぁ、みんなそれくらいにして帰りましょう。ほら鈴原もいつまでも子供みたいな事言ってるんじゃないの」
「分かっとるがな、いいんちょ」
その時に突然、シンジの携帯電話が鳴った。シンジはすぐに電話に出る。
『あっ、シンちゃん!!』
「どうしたんです?ミサトさん。慌てて・・・」
『どうしたもこうしたもないわよ!!今すぐアスカを連れてネルフへ来てちょうだい!!今すぐよ!!』
「えぇ、・・・分かりました。でも、何があったんですか?まさか・・・『使徒』・・・」
「何だったの?シンジ」
「理由は分からないの?」
「うん・・・でも僕らにとって嬉しいことだってミサトさん言ってたけど」
「そう・・・なら一安心ね。アンタが『使徒』なんて言葉を使うからびっくりしたじゃないの」
「ご、ごめん・・・」
「まぁ、いいわ。ほら、とっとと行くわよ」
「うん・・・」
『・・・ホントに強引なんだから、アスカは・・・でもアスカらしいかな・・・』と考えつつもしっかりと赤くなってついて行っていた。
「うん。ごめんね、ヒカリ」
「いいわよ、しっかりね。アスカ。また明日ね」
「また明日な、シンジ」
「うん」
表面上は今までとも何も変わってはいない。
しかし、最近は全てが秘密の組織では無くなってきていた。
今まで秘密裏に表へ出なかったネルフの名前も、今では少しづつではあるが人々に馴染んできている。
その情報公開が1ヶ月前のことなのだから、やはりネルフの力は底知れないものがあった。
当然、シンジ達やエヴァの事までは明かされてはいないが、それもそう遠くはないかもしれないとシンジは考えていた。
シンジの傷つき疲れ果てた心は戦いが終結した事と周りの人たちが全員無事で
あった事もあって、徐々に癒やされつつあった。
「しょうがないよ。ミサトさんも忙しそうだったから仕事でもしてるんじゃないのかな」
急いで来いと言ったミサトに対して、何のリアクションが無いことに腹を立てているのだ。
シンジはそんなアスカを苦笑しながら諫める事しかできなかった。
相変わらずアスカはおさまらないのだが。
普通ならば色々と検査などがあるのだが、2人は当然のように顔パスだった。
たまに顔なじみのネルフ社員たちが挨拶をしてくる。
既にネルフ内でのシンジとアスカの仲は有名だった。
本人達は否定はしているのだが、ネルフの社員たちはこの若い2人を見守っていた。
それは2人が想像を絶する戦いと苦しみの中で、共に支え合ってきたことを知っているからでもあった。
しかし大人達はそんな境遇に引き込んだ責任から、シンジとアスカにうまくいってほしかったのだ。
しばらく歩いているとミサトが2人を見つけて走ってきた。
「よく言うわね!!そんなに早く来てほしかったのならミサトが迎えに来てくれたらよかったのよ!!」
「ア、アスカ・・・」
シンジは驚いてアスカをなだめた。
しかし、ミサトは全く怯まずにシンジとアスカに近づいた。
「一体何があるんですか?ミサトさん」
「ついてくれば分かるわ」
シンジとアスカはお互い首を傾げながら、とにかくミサトについて歩いた。
さすがに不信がって、アスカがシンジの耳元で小声で言った。
「うん。確かに何か隠してるような雰囲気があるね」
「ミサトがああいう風に笑う時って、何か私たちをビックリさせようとしてる時よ」
「うん・・・怪しいね。アスカは何か思い当たることはある?」
「う〜ん・・・アタシの誕生日は済んだし、アンタもまだだし・・・」
「まぁ、ミサトさんの考えることだから、僕らが考えても分からないよ」
「そうね・・・」
その場所にシンジとアスカはあからさまに驚いた。
「・・・うん、父さんの部屋だ」
「そうよ」
「まあ、入れば分かるって・・・あっ!!ちょっち待って。心の準備はいい?」
シンジはいざ知らず、アスカは気負いなど必要ないので自信たっぷりに答えた。
「分かったわ、じゃあ空けるわね」
部屋の中は少し薄暗くてよく見えなかったが、何人かの人が集まっている。
しかし中にはいると、その場にいる人の顔がようやく見え始めた。
碇ゲンドウ、冬月コウゾウ、綾波レイ、渚カヲル、加持リョウジ、赤城リツコとそこまでは分かったが、あと2人いる。
シンジの知らない人だった。
そしてこう言った。
「えっ?」
その顔は今まで見たことの無いような驚きの表情と期待の表情をしている。
「・・・ママ・・・ママ・・・・・・ママぁーーー!!」
そしてその女性もしっかりとアスカを抱きしめる。
「ごめんなさい、アスカちゃん。今まで寂しい思いをさせてしまって」
「うわぁぁ〜〜〜〜〜」
シンジは何か信じられないようなものを見るようにアスカを見ていた。
「えっ・・・」
いや、自分の中ではとっくに分かっていたのだが、シンジは確信が持てなかっ
たのではっきりと言えなかった。
だが今度はいつの間にか流れ出た涙を拭きもせずに微笑み、そしてはっきりと
その女性に向かって言った。
第1話 「突然の再会」
・・・事件だった。それは紛れもなく、シンジの人生の中でも大きな事件だったであろう。
「・・・それは本当なのか?」
ネルフ本部のある部屋で中央の椅子に座った男と、それに向かうように立った
銀髪の少年が話をしていた。
「それは我々に対する警告か?」
そう言って銀髪の少年は座っている男の目をじっと見つめ、そしてゆっくりと
天井を見上げた。
「彼らは今までの『使徒』とは違います」
座った男の顔がぴくりと反応を示した。しかし少年はそのまま話を続けた。
「心配しないでください。何も使うわけではありません。ただお借りするだけです」
座っている男は、すぐには答えなかった。・・・無言で考えている。重い空気がその場を支配した。
「・・・分かった。信じよう」
少年はその中性的な顔を笑顔にして言った。それは誰もが心を開いてしまうような優しい微笑みだった。
「待て。・・・危険はないのだろうな」
少年は再び振り返り、一言答えた。
「えぇ、ただの4年後の準備ですよ」
「ほらぁ、バカシンジ!!早くしなさいよぉ〜!!」
1組の男女が全力で走っていた。
現在の時刻 AM 8:25
その数字は今現在の2人の状況では、最悪の数字である。学校まではこのまま
「ア、アスカ!!もう時間がないよ!!」
結局、こんな調子で走って2人は学校にぎりぎり間に合ったのだった。
「ほ〜んまに懲りひんなぁ、夫婦そろぉて」
自分の机に突っ伏すように右頬を押しつけているシンジは、2人の親友に囲まれていた。
「それならもう少し早く起こせばいいじゃないか」
その声を聞いた栗色の髪の美少女はシンジの机を力一杯叩いた。
「なんですってぇ〜!!もう1度言ってみなさい。あれはアンタの起こし方が悪いんじゃないの!!」
耳を押さえながらシンジはアスカに反論した。
「何でだよ!!僕はちゃんと起こそうと努力したじゃないか!!起きないアスカが悪いんだろ!!」
それを聞いてアスカはぷるぷると震えて、シンジを睨み付けた。
「アンタが言わせてるんでしょう!!こぉんのバカシンジ!!」
パーン!!
勢いのついた抜けの良い音がクラスに響きわたった。
「平和やの〜」
トウジとケンスケは外の景色を眺めて言った。
その日の授業は午前中だけで簡単に終わった。
「さぁて、帰りますか」
そんな声を聞きながら、シンジはぼんやりと考えていた。
『・・・本当に平和になったんだな・・・良かった・・・』
シンジはニコニコしながらアスカたち4人を見ていた。その視線にいち早くアスカが気づいた。
「アンタ、何笑ってるの?1人でにやにやと。早く帰るわよ」
照れて赤くなったシンジにトウジとケンスケがつっこみを入れてきた。
「なんやなんや。せんせと惣流は夫婦そろぉて帰って何かあんのか?」
それにアスカが真っ赤になりながら怒鳴り散らした。
「な、なんでこの惣流・アスカ・ラングレー様がこんなバカシンジとゆ・ゆゆ・・夢のようなひとときを過ごさなきゃいけないのよ!!」
その場に助け船を出したのは委員長、洞木ヒカリ。その声を聞いてみんなもようやく帰る用意を始めた。
「はい、シンジです」
シンジのそう言った言葉にアスカをはじめとする4人が、はっとなるのが分かった。
『違うわよ!不吉なこと言わないの!!あなた達にとって嬉しい事よ!!あぁ、もうじれったいわね!!とにかく急いで来なさい!!』
そう言って電話は切れた。
「どうしたんだろ?ミサトさん?」
アスカが少し心配になって聞いてくる。他の3人も不安そうだ。
「うん。何だか知らないけど、アスカと一緒に大至急ネルフへ来いって」
そう言ってアスカはシンジの手を引っ張って歩き出した。
「じゃあ、アスカ。私たちは先に帰るわよ」
そう言ってトウジ達は教室を出ていった。アスカはヒカリの『しっかりね』の言葉にすっかり赤くなっていた。
『な、なんて事言うのよ、ヒカリは・・・・・・アタシは・・・別にシンジの事なんか・・・・・・』
・・・当然、シンジにはどうしてアスカが赤くなってうつむいているかは分からなかったが、アスカ自身にも何故こんなにも恥ずかしいのかをはっきりと分かっていなかった。
第3東京市のほぼ中心に位置する国連特務機関NERV本部。
『みんなに僕たちのあの苦しかった戦いを知られるのは少し辛い気もするけど、みんなに隠し事をしないで済むのはいいな。確かにあの戦いは事実なんだし・・・』
シンジの素直な感想だった。
『そう言えば、今日は綾波とカヲル君が学校に来てなかったなぁ。・・・どうしたんだろう?』
そんなことを考えているうちに、シンジとアスカはネルフに到着した。
「まったく・・・人を呼ぶくらいならミサトが迎えにくればいいのよ!!」
アスカはさっきからかなり荒れている。
そしてシンジとアスカはネルフに入った。
「シンちゃん!!アスカ!!遅いじゃないの!!」
アスカはミサトの声を聞いた瞬間、先ほどの怒りが再沸騰して大きな声を上げた。
「分かったわ。それは謝るからとにかくついてきて」
そう言ってミサトは嬉しそうな顔をした。
不思議なことにミサトは作戦室にも、ケイジにも入らずに真っ直ぐとシンジと
アスカも滅多に歩かない場所を歩いた。
「ねぇ、シンジ。今日のミサト、おかしいと思わない?」
そうこう話しているうちにミサトはある部屋の前で立ち止まった。
「ちょっと、ミサト。ここってシンジのお父さんの部屋じゃないの?」
あっりと言葉を返すミサトにアスカが詰め寄った。
「一体何を考えてるのよ、ミサト・・・」
ミサトはシンジとアスカにそう言って間を取った。
「何のことか分からないけど、いいわ。ど〜んといらっしゃい!!」
そう言ってミサトは司令室のドアを開けた。
『あれ?・・・誰だろう?・・・でも・・・何か・・・』
シンジがそう考えた瞬間、アスカががくがくと震えながら口を開いた。
「・・・ま、まさか・・・・・・ママ?・・・ママなの?」
シンジは驚いてアスカを見る。
「アスカちゃん・・・」
アスカは信じられないような声で叫びながら、とても優しそうな女性の元に走り寄った。
『ママだ!!アタシのママだ!!・・・会いたかったママだ!!』
「ママぁぁーーー!!」
アスカはそのまま母に優しく抱きしめられて号泣した。
『アスカが・・・アスカが泣いてる。人がいるところで大声を上げて・・・』
シンジがぼーっとその様子を見ていると今度はシンジに声がかかった。
「シンジ・・・」
シンジが横を向くと、そこには綾波レイに相似した女性が立っていた。
「シンジ・・・ただいま」
もう1度そう言われてシンジもこの女性が誰なのか分かった。
「お帰りなさい・・・母さん」と・・・
ver.-1.20 1997-11/09公開 改行方法変更
ver.-1.10 1997-11/02公開 改行位置修正
ver.-1.00 1997-10/31公開
ご意見・ご感想は
zenon@mbox.kyoto-inet.or.jpまで!!
こんにちは。
いや、こんばんはかな?
いやいや、待てよ。もしかして「グーテンモルゲン」かも?(^ー^)〃
どちらにしても初めまして。わたくし「Zenon」(ゼノン 20歳 ♂)と申します。
いや〜、初登校ですよぉ!!←(えっ!?字が違うって?)
ははは、お恥ずかしい。なにぶん若葉マークなもんですみません。
今までインターネットは結構してたんですけど、メール系統は全然したことがなくって・・・
全然関係ない?
じゃあ真面目なお話を致しましょう。
実は恥ずかしながら、わたくしは「エヴァンゲリオン」を良く知りません。
(・・;)・・・シ〜ン・・・
・・・いや、真面目な話です。ははは・・・テレビも再放送を最後の方の6話ぐらいを見ただけです。
映画もゲームもコミックも良く知りません。知ったのが遅すぎました。(←シャレにならないゾ)
そんなZenonですが、経験値はつんでます。インターネットで小説を読みましたから。(笑)
しかしここだけの話、それだけで通用するのか不安で仕方ありません。
そこで皆様の感想を『激待ち』していますので、メールをうちに寄せてください。苦情でも構いません。(でも、励ましの方がうれしいなぁ〜・・・なんちゃって)
こんなヌルい私ですが、頑張りますのでよろしくお願いします。(_ _)
ではでは、また次回でお会いましょう。
本日2人目の新住人ですね。
通算88人目の御入居者Zenonさん、こんばんは(^^)
私が呼んでいるのは22時過ぎなので、
「こんばんは」です(^^;
トウジの関西弁、全く問題ありません(^^)
すらすらと違和感無く読み進められました。
私、バリバリの大阪人ですので参考になりませんね(^^;;;
カヲルがネルフ陣営についた、
アスカの母とシンジの母が復活した舞台・・。
4年後に起こる予告された危機。
どうなるのかな・・
まだ、”危機”になることさえ確定ではないですね。
さあ、訪問者の皆さん。
Zenonさんに声を届けましょう!