ネルフ本部、セントラルドグマ。
その薄暗い通路を小走りに駆ける人影。
まだ若いショートカットの女性−伊吹マヤ。
「はぁ....こんな閉鎖区画で何をやってるんですか...せんぱぁい」
世紀のマッドサイエンティスト、赤木リツコが唐突に姿を消して3日。
その行方は誰に聞いてもさっぱりで、MAGIに至っては所在情報にプロテクトがかかっている始末。
いくら相手がMADでもさすがにこれは心配というものだ。
ところがつい先程、LAS小説ばっかり表示されているマヤのCRTに、電報が飛び込んできた。差出人は赤木リツコ。所在は現在閉鎖されているはずの78番区画。
そこには一言「すぐこい」と、どっかで聞いたことあるような言葉があった。
ちなみに彼女が最近注目しているのは「か○しEVA」だ。1〜5部までのアーカイブを読んだきりだったが最近第6部が終わり、圧縮ファイルが置かれ、再びその展開にドキドキする次第だ。やっぱ圧縮されたファイルがあるとオフラインで読む気起こるってば。
念のため、彼女の行動は作者とはなんら関係ない。多分。
さすがに閉鎖された区画だけあって人影はまったくなく、明かりは非常灯のみという、恐がりなマヤにとってはあまり来たくない場所ではあった。
しばらくびくびくしながら進む。
長い通路をしばらく歩いて行くと、頼みの綱の非常灯すらなくなってしまった。
「こんなことなら、懐中電灯持ってくればよかった...ふぇぇん」
とうとう半泣きになってしまうマヤ。
壁の区画情報を見る限りでは、このすぐ先に目的の部屋があるはずだ。
ありったけの勇気を振り絞って進む。
そして、角を曲がった瞬間−
目の前にぼうっと浮かび上がる人の顔。
「ヒッ!!!!!!!いやぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!!!!」
絶叫。
「いやっ、いやっ、いやぁぁぁぁ!!!」
「ちょ、ちょっと」
「やぁぁぁぁっ!!!」
「こら、マヤっ」
「いやいやいやいやいやいやいやいやぁぁぁっ!!!」
「やかましいっ!」
すぱーん
なぜか手に持っていたスリッパでマヤの頭を思いっきり叩くリツコ。
「痛っ!............あ、センパイじゃないですか」
「...まったく...人の顔見て驚くなんて失礼ね」
「...だってぇ、恐かったんです...ふぇぇぇぇぇん」
まるで「つよいぞ!シ○ジ君!」に出てくるアスカのような泣き方のマヤ。
「しょうがないわね...ほら、行くわよ(すたすた)」
「あっ、待ってくださいよぉぉ。ひっく」
すたすたすたすたすた
「...で、3日も何をしてたんですか?心配したんですよぉ」
「あら、そうだったの。すまないわね...まぁ、いつもの研究、って所かしらね。もっとも、今回はひときわ大掛かりだったけど。うふふふふ」
「は、はぁ、そうだったんですか....(汗)でもどうしてこんな場所で?MAGIにプロテクトまでかけて....」
「今回の研究は特に機密性が高いからよ。その意味は、アレを見た時にわかると思うわ」
そして大きな扉の前に立つ二人。
リツコは白衣のポケットから特製IDカードを取り出し、更にパスワードを片手で猛烈な勢いで打ち込む。
それを見ていたマヤはその機密の厳重さに驚く。
「す、すごいですね....何ケタのパスを使ってるんですか?」
「...一応、100桁の素数2個の積に対して15回平方を取った数の整数部分を使っているわ。1時間おきに変更させているの」
「!そんなに厳重に....そういえば、昔は何の部屋だったんですか?ここは」
「....母さんの、思い出の場所なのよ、ここは。....MAGIの生まれた場所でもあるわ」
「!!ここで作ったんですか!MAGIを!...それでこんなに...」
「...その時私はまだ高校生だったわ」
人に歴史あり。影を帯びた表情を見せるリツコ。
それを見たマヤは、何を言っていいものか思案する。
.....いかん、このままではシリアスになってしまう。
しかし心配御無用。このお話は「リっちゃんと愉快な下僕たち」です。(ニヤリ)
がこん....ういぃぃん
重厚な音を響かせつつ扉が開く。
つかつかと中に入るリツコ。慌ててマヤもそれに続く。
「ずいぶん広い部屋ですね...!!これは....」
部屋の中央に設置された巨大なタワー型のコンピューターが3台。
なぜそれをすぐに「コンピューター」と判断できたかと言えば...
....そう!まさに「悪の秘密結社」のコンピューターそのものだったのだ!
「...ご、ごるごむ....」
「?何か言った?マヤ」
「い、いえ!...こ、これなんですか?研究していたものって」
「そう。これも思えば長かったわ...母さんが死んでから、MAGIを超える物を作ろうと思ったの。今までの全てのノウハウがここに蓄積されているわ」
「そうなんですか...で、もう起動実験は済んでいるんですか?」
「ええ、昨夜行ったわ。問題はなさそうよ」
「うわぁ、すごいですね。私にも見せてもらえます?」
「その前に、基本的な説明を済ませておくわ」
「あ...そうでしたね。すいません」
「えーと、まず、マンマシンインターフェイスから行くわよ。基本的に操作はキーボードから。一応音声認識も可能よ」
「えっ!ボイスオペレーションもできるんですか!すごいですっ!」
「まだ今の所決まったワードにしか対応してないけどね。キーボード、OS、その他周辺機器は、私の嗜好に沿って作られているわ。これはまともに動かせるのがおそらく世界で私一人だけだと思うから」
そのセリフを聞いて「ピン」と嫌な予感が頭をよぎるマヤ。
「あの....それで、このマシン、名前はなんて言うんですか?」
「ふっふっふ、よく聞いてくれたわ。MAGIの後継機でもあるこの3基1体型のマシンの名は.....そう、『NYAGI』よっ!!!!」
「..........................にゃぎぃぃぃ???」
一気に脱力するマヤ。「やっぱダメかも、この人」とか思ってるに違いない。
「名前の由来は、これを見ればわかるわ」
そう言ってデスクの上の小さな赤いスイッチを押すリツコ。
すると、3基のタワーから「フィィィィィ」という軽快な音が聞こえてきた。どうやら電源スイッチだったらしい。
そしてデスクの上ににゅっと出てくるキーボード。
「な、なんですかこれっ!?」
驚愕するのも無理はない。それを果たしてキーボードと呼んでいいものか!?なぜなら、キートップの部分が「ネコの掌(無論レプリカ)」でできていたのだっ!
「ふふふ...キー入力の際の精神的疲労を減少させるための工夫よ。キーを押すたびに、にくきうがぷにぷにと...あぁ、考えただけでも楽しくなってくるわね(うっとり)」
完全にイっちゃってるリツコ。
「す、素敵ですぅ、せんぱぁい。これだと確かにプログラミングも楽しそうですね」
彼女もネコは嫌いではない。
「ふふ。その通りよ」
「あ、開発言語はMAGIと同じフルアセンブラなんですか?」
「....違うわ」
「えっ!?じゃあ一体...」
「わかりやすさを追求した究極の簡易言語、NM−ベイ・シッ・クよ!!!(ちなみにNMは「NEKO−MASSIGURA」の略だ)」
「べ、べーしっくですか...」
「あら?あなた、BASICをバカにしてるわね。あれほど構築が簡単な言語はないわよ。FBASICしかり、XBASICしかり、Ko−BASICしかり...」
どんどんマニアックになってゆく会話。
慌てて会話を遮るマヤ。
「あの...それは後でゆっくりと...」
「そしてっ、これがOS起動画面よっ!」
「げ......」
画面に映しだされたのは、わっかの中で「がおーん」とかやってるネコのアニメーションであった。(アメリカ映画でライオンがやってるアレです)
そのあまりにもベタな展開に、さすがに困惑するマヤ。
「あの...これって版権、大丈夫なんでしょうか....」
「版権!?あなた、まだこんなへっぽこSSの中でウダウダ言うつもりっ!?そんな偉い人がこれを読んでるわけないでしょっ!」
「あぁ...せんぱい....何を言ってるのかさっぱりです...」
すでに疲れてきているマヤ。
『にゃにゃーん』
その呑気な起動音が部屋に響く。
続いてテクノ調のどこかで聞いたような、それでいて微妙に違う曲が流れてきた。
ちゃーちゃーちゃー、ちゃーちゃちゃっちゃかちゃっちゃっちゃー、ちゃーちゃーちゃー、ちゃちゃちゃちゃっちゃかちゃっちゃっちゃー(以下略)
「この曲...どこかで、でも違う...」
「あぁ、これは最近の作者のお気に入り、OMYの「Ryzeen」よ」
「...マニアックな選曲ですね」
「おそらく、このネタに付いてこれる人は、『ま団』とか『トルバ』とかのキーワードにも敏感なはずよ。わかる人はメール頂戴」
マジで下さい。ええ。
「あの...センパイ、MAGIの後継機って事は、それぞれに名前がついてるんですか?」
なぜか筆者の思惑通りの質問をするマヤ。
にっと笑ってリツコが応える。
「よくぞ聞いてくれたわっ!左から順に紹介するわよっ!」
「はぁ....」
「まずっ!!NYAGI−1『バントライン』っ!!」
にゃーにゃにゃにゃー
「次っ!!NYAGI−2『ドルバッキー』っ!!」
にゃにゃーにゃにゃー
「最後っ!!NYAGI−3『テブクロ』っ!!」
にゃにゃにゃーにゃー
「うう〜、せんぱぁい」
「どうしたの?マヤ?」
「名前がマニアックすぎますぅ...」
「何ですって!?旧約聖書がどうたら言ってるMAGIの方がよっぽどマニアックじゃないのっ!それに比べたらまだこっちの方が解りやすいわよっ」
「でも...せめてネコだったら『プチ』とか『パチ』とか、もう少しかわいい名前を...」
「あの作品はネコが2匹しか出て来ないのにどうやって名前を3つ付けるというの?」
「....それを言ったらおしまいです、センパイ....」
というわけなんです。
と、その時!
『びーっ、びーっ、びーっ』
本部内に派手な警報が鳴り響いた。御都合主義。
「まさかっ、使徒っ!?」
急に元気になるマヤ。彼女は使徒なしでは本領が発揮できないのだ!(マジ?)
リツコは急いでNYAGIからMAGIにアクセスを試みる。
にゃー。
「なるほど....この間のウィルス型使徒の生き残りがいたようね。MAGIが確実に汚染されていってるわ」
「ええっ!?大変じゃないですかっ!!急いで発令所に戻らないとっ!!」
「今から戻っても間に合わないわ。このNYAGIをMAGIに直結して、ここから殲滅するしかないわね」
「できるんですか!?そんなこと」
彼女の眼鏡の淵ががキラリと光る。
「この天才科学者、赤木リツコに不可能はないわ」
そう言ってる間にもモニターに映ったMAGIの状態はますます劣勢になっていく。
「早くしないと、また自爆決議させられちゃいますよっ!?」
「まぁそう慌てないでちょうだい....確かに今から新しくプログラムを組むのはキツいわね....仕方ないわ。あのコマンドを使いましょう」
「コマンド?何をするんですか?」
「....ふふ、さ・い・しゅ・う・へ・い・き。よ」
マヤの方を向いてにっこり笑うリツコ。
う〜ん、らぶりぃ
それを見て背筋が凍り付くマヤ。
「え、そ、その、さ、最終兵器って、な、な、何ですか?」
「以前使った自滅促進プログラムを大幅に改良したものよ」
「あ、なんだ、プログラムなんですか」
「....何だと思ったのよ」
とても「核兵器」とか「フォーマット」とか考えてたとは言えない。
「ま、いいわ。早く始末しないとね。えーっと、マイクは...」
「あ、音声認識を使うんですか?」
「そう。これは非常時にしか起動できない上に管理者の声紋を認識させないといけないの」
「へぇ〜...あ、早くしないと、カスパーがもうすぐ!」
「はいはい。それじゃコマンドを言うから、静かにしててね」
「(ごくっ)」
「あんたたち、やーっておしまい!!」
「(せんぱい、ベタすぎますぅぅ....)」
その声に呼応するかのように、NYAGIの動作音が少し高くなる。どうやら無事にプログラムは起動したようだ。
にゃーにゃーにゃにゃにゃにゃにゃー
にゃーにゃにゃにゃーにゃにゃー
にゃにゃーにゃにゃーにゃーにゃにゃにゃ
にゃにゃー
にゃにゃにゃにゃにゃにゃー
『にゃ』
「ふ.....勝ったわ」
何がどうなったのかさっぱりだが、MAGIの表示がオールブルーに戻って行く。
「す、すごい.....センパイ、すごいです!!」
その頃、発令所には使徒が現れて急に消滅したのであっけにとられた表情のミサトの姿があったのだが、それはまた別の話。
「さて、今の事件に関する報告書をまとめようかしらね。さっきエディタをインストールしておいたから.....あら?」
「どうしたんですか?」
「ない!ない!OS以外全部消えてるのよっ!」
「ええっ!?」
「どういうことかしら、こんな事、ありえないわ....」
「....!!センパイ、もしかして....」
「何?思い当たる事でもあったの?」
「これ.....『ネコ』なんですよね....」
「あっ」
この後、彼女は再び一週間ほど姿を消したそうな。
あ・と・が・き
まず、めぞんEVA40万ヒット突破、おめでとうございます!
「オチがわかんねぇぞ」と言う方、いると思うんですけど、一応解説しておきますと、「ネコは3歩歩くと喧嘩の原因を忘れる」という話をどこかで耳にしたのがきっかけです。
つまりリっちゃんは膨大な記憶量のRAMを使っていたわけですね。わははは。
(ちなみにOSは「本能」の部分に書き込んだので消えなかったのだ)
...うーむ、今回はちょっとマニアックすぎた上に、テンション低めでしたね。すいません(笑)
これは....大家さんもコメント付けづらいだろうなぁ....
さんごでした。
さんごさんの『リっちゃんと愉快な下僕たち』第3回、公開です。
相変わらずLAS小説を読んでいるマヤちゃん、
相変わらずMADなリツコさん。
ネコの肉球付きキーボードですか。
それなら文章書きも楽しくなりそうですね(爆)
さしもの使徒もリっちゃんの敵ではありませんでしたね!
さぁ、訪問者の皆さん。
マニアック過ぎるさんごさんに抗議のメールを!(^^)
めぞんに戻る/ TopPageに戻る/
[さんご]の部屋に戻る
........うそです。大家さんが肉球好きかどうかは知りません。
1回これやってみたかったんです。すいません (^^;;;
それでは大家さん、コメントをどうぞ(笑)
さんごさんのめぞん400000hit記念『リっちゃんと愉快な下僕たち』リっちゃんと猫編、公開です。
閉鎖区画。
プロテクト。
複雑かつ執拗なプロテクト。
どんどん高まる緊張感と共に、
いやな予感もガンガン上がっていく・・・(^^;
新式コンピュータ
性能はいいようですが、
”マニアック”で”どこか抜けている”・・・
りっちゃん炸裂でしたね。
マニアックネタ、
全然分かりませんでした (;;)
天才は遠い存在です(爆)
がんばれりっちゃん! 突っ走れ!!
さあ、訪問者の皆さん。
さんごさんに通じるモノを感じた方はぜひぜひ連絡を!