2月15日、日曜日。
『次は〜、終点、長野、長野です。お忘れ物の無いよう...』
『(フランス語で上と同様の内容)』
『(英語で上と同様の内容)』
#新幹線「あさま」では日本語に加え、英語、フランス語のアナウンスが本当に流れます。
「あ、ミサトさん、そろそろ着くみたいですよ、ミサトさん」
「ふにゃ〜、もうちょっと寝かせて...Zzzz....」
「ダメですよ、もう終点なんですから、まったく、せっかくの旅行なのにビールをあんなに...ほら、アスカも、起きなきゃ」
「んふ〜...バカシンジぃ....Zzzz」
ちゃっかりシンジの腕を抱いて熟睡するアスカ。
「あぁもう、二人とも起きてよぉ〜(涙)、少しは綾波を見習ってよぉ〜」
「................(ガクッ)」
「あ、綾波、もしかして、目開けたまま寝てたの?(涙)」
というわけで、4人は長野に来ていた。唐突ではあるが。
改札を通ると、そこは戦場だった。
「うっわ〜!すごい人!!」
「本当...すごい人だね」
長野駅には西口(いわゆる正面口)と東口があり、オリンピック関連施設へのバスの大半は東口から出ている。駅構内にはボランティアの人がプラカードを持ち、各施設へのバスへの誘導を行っている。というか、突っ立っているだけなのだが。それでもご苦労様。
「どうするんですか、ミサトさん...」
「と、とりあえず、コインロッカーに荷物を預けて、ますは観光よ観光!」
「観光ですか?」
「あったり前じゃないの!私達は、オリンピックを見にきたのと同時に、長野に来たのよ!観光しないのは損よ!損!っていうかバカよ!」
「そこまで言いますか...(汗)」
「....ラーメンの香り...ニンニクラーメンチャーシュー抜き...ウケケッ」
「あ、綾波ぃ、そっちは東口だよ」
そう、東口を出たところには、オリンピック期間限定ではあるが、全国のラーメンを集めた広場があり、各店で競って(?)いる。ここも常に人の絶えない場所である。
「んもー、シンジ、ファーストはほっておいて、観光しましょ、観光」
「ま、レイなら、あの場所を動かないから大丈夫でしょ」
「そういうもんなんですか(涙)」
そんなこんなで、早速、レイ脱落(笑)
「うっわ〜、駅の外にもすごい人」
「やっぱオリンピックってすごいんだなぁ...」
そう、駅前と言えどもそこは長野、普段は少し人が多いかな、レベルなのだが、オリンピック時にはその数は異常、新宿or渋谷並みの混み方である。
ちなみに旅行者が見に来るのは「オリンピック」であって「長野」ではない(涙)
「シンジ君〜、アスカ、はぐれないようにね〜」
「アスカ、ほら、急がなきゃ」
「え、ちょ、シンジ...」
いつの間にやらしっかとアスカの手を握って先に進むシンジ。
人の波をかきわけかきわけ進む3人。
ダイエー長野店前の交差点にて。
「え〜っと、ここが善光寺大通りね」
3人の眼前にのびるゆるやかな、そして長い上り坂。
「なんでお寺に行くんですか?」
「長野の最大の観光名所だからよ、ほら、日本人としては行くべきじゃない?」
「はぁ...そういうもんなんですか」
「それよりもシ〜ンちゃん、アスカの手なんかしっかり握っちゃって、もう、あんまり見せ付けないでちょ〜だいね(ニタリ)」
「...?...っ!!!いやあのこれはその...」
「ミサト...もうちょっと黙ってなさいよ(顔真っ赤)」
でもしっかり握られたままの手。
すたすたすたすた...
「んー、け、結構長いわね、この坂....」
「そ、そうですね...あ、こんな所に広場が」
「あらホント。これが表彰式会場になるっていう『セントラルスクエア』ね」
「なんか...地面はアスファルトで...なんか安っぽいですね」
「こ、こら、シンちゃん!地元の人がいっぱい居る所でそういう事を...!」
「あ、す、すいません」
「こ、ここは、表彰式の時には人で埋め尽くされるから、問題ないのよ」
「....そういうもんなんですか」
すたすたすたすた...
「へぇ、これが善光寺の入り口、すごいですね」
「大きい門よね〜、あら、よく見るとお相撲さんの名前を書いた札があちこちに貼ってある」
「きゃ、シンジ、見て見て、ハトがあんなにいっぱい!」(ホントに腐るほどいます)
「うわぁ、ホントだ」
そんな3人から少し離れた所で、
「...ハト...ハト胸....鳥肉...肉は嫌い...」
とハトを見ながら呟く少女が居たのだが3人がそれに気付くことはなかった。
ちゃりーん、ちゃりーん
「(ビールがいっぱい飲めますように...)」
「(今年もアスカと....)」
「(今年もシンジと....)」
「(司令、交代)」
それぞれの思惑を載せて五円玉は賽銭箱(?)に放りこまれてゆく...
「あれ?綾波、いつの間に追い付いたの?」
「...飛べるから」
「「「(飛んできたのか(汗))」」」
「それにしても、ここもすごい人よね〜、シンジ、はぐれちゃだめよ(ぎゅっ)」
「そうね、長野の最大の観光名所だから...」
「(顔真っ赤)み、ミサトさん、昼食はどうするんですか?」
「(ニタリ)ふっふ〜ん、ちゃーんとおいしい店を聞いてきてるわよん」
「誰に聞いたんですか?」
「このSSの作者」
「「(それは怪しい...)」」
善光寺大門から大通りを下ること2〜3分、4人の目の前にあるのは「小川の庄」。
「ここですか?」
「そう!蕎麦(そば)を善光寺大通りで食べるなら、絶対にココ!....って聞いたわ」
「うわ〜、シンジ、見て見て、店の前にキノコが売ってる!...なんかこの袋詰め、お手製って感じしない?」
「あぁ、これはナメコだね。お味噌汁にしたらおいしそうだね」
主夫根性丸出しのシンジ。ナメコは味噌汁もいいけど、醤油と大根おろしでそのままいただいても美味。
ちなみに、この「小川の庄」の前に売ってるナメコ、作者の実家で作っているものらしい...お立ち寄りの際はどうぞ。(実家に帰ったときに聞いてマジで驚いた
(^^;; )
ガラガラガラ...
「シンジ、何これ?灰が入ってて、その上には...食べ物?」
「あぁ、これは囲炉裏(いろり)だよ。日本に昔からある暖房器具。上の網に乗ってるのは...ミサトさん、これ何ですか?」
「え〜と(と言いつつガイドブックを読む)、それは...あぁ、これこれ。『おやき』ね。長野のポピュラーな郷土食の1つよ」
「へぇ、これがそうなんですか」
「シンジ〜、1つ食べてみたい」
「そうだね。僕も食べてみたいや」
「んー。あたしも。レイも食べるでしょ?」
「...肉は嫌い」
「肉は入ってないわよ。えーと、かぼちゃにナスに野沢菜に大根...といった所かしら。面白いから、1種類づつ注文しましょ。それともちろん最大の目的、お・そ・ばも注文しなきゃね」
店員のおばちゃんに注文していくミサト。
ちなみに、ここのおばちゃん話してみるとめっちゃいい人ばっかです。話は面白いし。
筆者はちょっとフトコロあったかいとすぐいっちゃう店になってます。(^^;
「さ〜てさて、蕎麦はまだみたいだから、まずは、おやきからね」
はむはむはむ...
「ん、これは...」
「あら...」
「ほぉ〜.....」
「....」
「「「「美味しい」」」」
「本当に美味しいですね、これ。僕のは野沢菜ですけど...」
「あたしのは大根。切り干しね。シンジ、半分ずつ交換しよっ」
「あ、うん」
「お、蕎麦も来たみたいよ〜。これでビールがあれば文句無しなんだけど」
「ダメですよ、ミサトさん、せっかく作ってくれてるのに...」
「冗談よ、冗談」
「ほらシンジ、そんなウワバミは放っておいて、蕎麦食べましょ...って、何これ?大根おろすやつ?」
「あぁ、それはね、こうやって...(こしこしこし...)薬味のワサビを自分で好きな量だけすり下ろして入れられるんだよ」
「へぇ〜...でもこれ、目にクるわね」
「あらすごい、このワサビ、天然ものじゃない」
「...ワサビ...辛い...涙...目が真っ赤...それは私...」
「(汗)さてさて、それじゃぁ」
「「「「いただきます」」」」
ずるずるっ
「!」
「お!」
「くぅ〜〜!!」
「...!」
「「「「美味しい〜!!」」」」
「ちょっと...これは犯罪モノの旨さよ」
「ミサトさん、お酒ばっかり飲んでて、味わかるんですか?本当においしいけど」
「失礼ね。わかるわよん。これ、茹でた後に冷水でキュッっと絞めてあるからすごい喉ごしよね。つゆもおいしいわ。どう?アスカ」
「日本人も捨てたもんじゃないわね。でも、こういうものがあるのに、なんでハンバーガーとかに憧れるのかしら?わかんないわ」
シンジ・ミサト「「....(日本人として恥ずかしい...)」」
ずるずるずるずる....
「ぷっはぁ〜!おいしかったぁ!!」
「ごちそうさまでした」
「ごちそうさま」
「....ごちそうさま」
「さ〜て、蕎麦を食べたら、アレを忘れちゃいけないわね」
「アレって何ですか?」
「決まってるじゃな〜い、そ・ば・ゆ、よ!!」
「そば湯?」
おばちゃんに「蕎麦湯くらさ〜い!」と威勢よく声をかけるミサト。
4人の目の前に「ドン」と置かれるヤカン。
「これが、蕎麦湯ですか?」
「そそ。これをそばツユの器に入れて...」
どぼどぼ
「飲む!....(んぐんぐ)...くぅ〜!美味!」
「なんかおいしそうですね。僕もやってみよっと」
「あ〜、シンジ、アタシも〜」
「私も」
どぼどぼ×3
「...あ、おいしいですね。これ。ツユの味も楽しめるし」
「うん。おいしい」
「美味」
どぼどぼ、んぐんぐ、どぼどぼ...(以下、蕎麦湯がなくなるまでくり返し)
店から出る4人。
「あ〜、おいしかったぁ!」
「ホント、おいしかったですね。で、この後はどうするんですか?」
「ん〜、本当はまだ行きたいところは色々とあるんだけど、もうすぐ競技の時間だから、会場入りしないとね」
「あ、そうなんですか...って、また駅まで歩いて帰るんですか?」
「そう....なるわね」
善光寺から長野駅までは徒歩でゆっくり行ったとして約30分。それなりに時間を作っていかないと、ちょっとキツいかもしれないので要注意。
で−
「また人の波だ....」
再び長野駅前に戻ってきた4人。競技会場へのシャトルバスは全て東口から出ているので、駅構内を突っ切るか、地下通路を使うと最短距離で行ける。駅構内は時間によっては殺人的な混み方をしている場合があるので、地下通路を使うのが賢い行き方と言えるかもしれない。
「というわけらしいから、地下通路で東口に出ましょ」
「何が『というわけ』なんですか?」
「(汗)...んなこた、どーでもいいじゃない。ホラ行くわよ」
「だってさ。ホラ、アスカ、急がなきゃ」
「あ、ちょっと待ってよシンジぃ」
とかいいつつキッチリシンジの手を掴むアスカ。
「.......(ATフィールドをここで全開したら面白そうね)」
とかこの人混みを見つつ考えるレイ。おいおい。
「で、こっちが東口ね」
「うわ〜、こっちもすごい人ごみですね...バス乗り場はどこですか?」
「ん〜、そこにプラカード持った人がいるから、聞いてみれば?」
ちなみに、このプラカードを持ったボランティアの人は、バスの発着時刻、場所等にはきっちり答えられても、それ以外の関係ない質問をしても(たとえば新幹線のダイヤ聞くとか)答えられない(というか必要な情報しか知らされていない)場合が多いので、変な質問をして困らせないように。
ひどい客の中には、質問しても答えられないボランティアの人をイライラして蹴ったりするアホがいるとか。マジでやめような。好意でやってくれてるんだから。
ぷしゅー(ドアが閉まる音)
「ふー、どうやらちゃんとバスに乗れましたね」
「それにしても...キツいわね。乗車率200%って所かしら」
「....ATフィールド、全開したら...クックック...」
「「「(汗)」」」
そしてなんとか到着。
「うわ〜!!!見てみてシンジ〜!」
「これがアイスダンスの会場ですか」
「そう。確か...名前は、「アイスリング」だったかしら」
「長野県人のネーミングセンスを疑うわね...クックック」
レイ、問題発言。
「じゃぁあの落書きマスコットはどう説明をつけるの?」
スノー○ッツですか?いやあれはその...
「あれをフクロウだと知ってる人が何人いるかしらね...クックック」
すいません。マジでフクロウに見えません。アレ。
「何の為にマスコット募集したのかしらね...クックック」
(恥ずかしい....)
「レイー!何やってるの?行くわよ」
「ファースト、何やってるのかしら?一人でブツブツと...」
「...電波かな(汗)」
「あ、そうだ、チケット渡しておかないとね。はい」
「へぇ、これがチケットですか.....高いですね」
「オリンピックだからしょうがないのよ。ここで稼いでおかないと、長野の県民税がハネ上がるらしいわ。一人100万以上の負荷だとか」
「シビアな現実なんですね...今はお祭り騒ぎだけど...」
「そ。だから、楽しめるうちは楽しんでおくのよ」
「そういうもんなんですか...」
「もう、ほら、シンジ!早くはいろ!」
「あ、うん、今行く」
「へぇ...」
「これが...」
「会場...」
そこはリンクの氷も溶かさんばかりの熱気に包まれた場所だった。
あちこちで応援の声が上がり、各国の旗が振られる。
「これが、オリンピックなのね...」
アスカが呟く。
「うん...」
シンジもただ圧倒されるばかりだった。
「ほら、シンジ君、アスカ、早く席探さないと、始まっちゃうわよ」
「あ、ほら、もう選手が出てきちゃった」
「あ、あそこ空いてる!」
「もぅどこでもいいからすわりましょ」
そして−
アイスホッケーが「氷上の格闘技」なら、このアイスダンスは「氷上の舞踏会」。
その優雅さを表わす言葉は無い。
言葉ではあまりに役不足なのだ。
ここで、その内容を書くのは控える事とする。
作者の力不足が露になるからである(笑)
「日本、金メダル取れなくて残念でしたね」
「ん〜、でも、頑張ってたから全然オッケーよん。参加することに意義がある!ってね」
「....(ぽわ〜ん)」
「?どうしたの?アスカ」
すっかり「夢見る乙女」モードに暴走中のアスカ。目がキラキラと輝く。
「.....シンジ」
「な、何?」
「...特訓よ」
「...はぁ?」
「あんな風に踊れるように特訓するのよ!」
もうアスカの頭の中にはシンジと二人で華麗に踊る姿が勝手に展開されていた。
(貞本エヴァ4巻、STAGE25の扉絵がここにあると思いねぇ)
「ええ〜?なんでまた...」
「アスカ、その気持ち、よ〜くわかるわ。女の子だもんねぇ」
「ミサトさんは女の子ってトシじゃ...」
「(ぎろ)...シンちゃん、なんか言った?」
「(ぞくぞくっ)い、いえっ!!」
「(あぁ〜、そして完璧な演技の後、シンジは優しく微笑んで、アタシをそっと抱きしめてくれて..その後.....きゃーきゃー)」
アスカ、ちょっと暴走中。
「9時半...あら、もうこんな時間?」
「どうしたんですか?」
「いや、このままだと最終の新幹線、ちょーっちヤバいかなー、てね」
「え?日帰りだったんですか!?」
「(汗)しょーがないでしょ、忙しかったんだから...」
「...で、最終の新幹線は、何時なんですか?」
「(ぱらぱらぱら)....10時3分」
「「ええっ!?」」
「どーゆーことよミサトっ!あと30分しかないじゃない!バス乗り場は大混雑だし、こんなんじゃ間に合わないわよっ!?」
「んー...しょーがないわね。走るわよ」
「「ええ〜?」」
ちなみに、アイスリングから長野駅東口までの距離は相当ある。常人が走って30分で行ける距離ではないので、要注意。おとなしくシャトルバスに乗るようにしよう。
だだだだだだだだ
「ほら、早くしないと電車に遅れるわよ〜!」
「はぁ...はぁ...げ、元気ですね、ミサトさん...」
「ほらシンジ、ペースが落ちてるわよ...って、ファーストは?」
「はぁ...はぁ...上」
「え?上?...げ、ラクしてるわね...」
「.....(飛んでる)」
で−
「Zzzzzz....むにゃむにゃ....えびちゅ〜...Zzzz」
「.....(ガクッ)」
「あぁ〜、またミサトさんは新幹線に乗れた途端にビール飲んで寝ちゃうし、綾波は相変わらず目明けたまま寝てるし....(涙)」
「い〜じゃん、私が起きてるんだから」
「そりゃそうだけど....(涙)」
「でも楽しかったわよね、シンジ」
「え?あ、そうだね」
「また...来よう」
「うん」
「今度は、二人っきりでね」
「え(顔真っ赤)」
20世紀最後のオリンピックは、こうして幕を閉じて行く−
あとがき
どうでしたでしょうか、地元民にしか書けないオリンピックLAS(笑)めっちゃ無謀でしたね。競技よりも観光に重点を置いて書きましたが、お泊まりになるとなかなか終わらないので急遽変更しました(笑)
やはり、長野県民としてはこういうのを1本書いておかないと気が済まないってのがありましたので...あ、それと、このSSに出て来るウラ話的な内容は全て真実です。県民税がハネ上がるとかス○ーレッツはフクロウだとか....
こういう情報はなかなか雑誌に出ないので、敢えて書いてみました。
あ、1つ書き忘れてた。長野駅の外観が数年前に大きく変わったのですが、これは市民に「ものすごく」不評である事を付け加えておきます。以前は善光寺をモチーフにした外観で、格好良かったんですがねぇ....
#何の変哲もないただの駅になっちゃったんですよ(涙)
...とかこんな事を書いてるうちに、ジャンプ団体で日本が金を取りました!すげぇぜ日本!泣かせるぜ原田!完璧だよ船木!ナイスだ岡部!安定してるぜ斉藤!
今回のBGM−CD:「遠い音楽」(ZABADAK)