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「「いっただっきま〜す」」

 

 

 

 

 

 

 

 


仲良くユニゾンする二人の声。

実に平和な朝。相変わらずネルフに詰め通しのミサトは今日も帰ってこず、今朝も二人だけの朝食となってしまっていた。

「それにしても、ミサトも大変ねぇ」

「うん。さっき電話があって、今日も徹夜みたい」

「ふ〜ん、でもそのおかげで二人っきりでいられるんだもんね♪」

「えっ....そ、そう...なのかな」

「そーよ。この際、ずっとこうならいいのに」

「アスカ!」

「わかってるわよ、冗談よ、冗談」


そう言ってケラケラと笑うアスカ。シンジも、「しょうがないな」といった表情で苦笑する。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『さて、今日は5月の第2日曜日!といえば母の日ですが...』

 

 

 

 

 


母の日記念SS 

In the blue sky   


 

 

 

 

 

 

 

TVから何気なく流れてきた声に思わず「ぴくり」となる二人。

 

 


お互いに母親を亡くした身の上なので、こういう話題には敏感になってしまうのは悲しいことだがしょうがない。

「そっか...今日母の日だったっけ...」

どこか悲しげなアスカの目。
シンジも確かに少し寂しい気分ではあったが、そんなアスカの目を見て、胸が締め付けられるような感覚を覚えた。

「(僕はほとんど物心ついてなかったから覚えてないけど、アスカは...)」

アスカから、以前に詳しく話は聞いていた。
母親の死の光景を直視してしまったアスカの、心の傷は深い。

「(僕が、支えなきゃいけないんだ)」

そう思ったら、自然に手が動いた。


テーブルの上に置かれたアスカの右手にそっと自分の手を重ねる。


「....シンジ...」


シンジの気遣いが痛いほどよくわかって、思わずアスカは一粒の涙を落とす。


「その.....うまく、言えないんだけど....僕が、傍に居るから..」


「うん....わかってる。気使わせちゃって、ゴメン」


そう言って、アスカは微笑んだ。それは思わずはっとするような美しさを持ち、ガラスのような脆さも兼ね備えた、本当に儚げな笑顔だった。


「.........」

「..........」


「.....そうだ!」

「え?どうしたの?アスカ」

「シンジのお母さんに会いに行こっ」

「え?僕の母さん?」

「そ。私の場合はドイツに行かなきゃいけないけど、シンジのお母さんのお墓なら、この近くにあってすぐに行けるんだし...」

「そっか...そうだよね....うん、この機会に、お墓参りしておこうかな」

「そうと決まれば、すぐに行こっ!」





 

 




そして−

 

 

 








「なんか...寂しい光景ね...」

二人の眼前に広がるのは、数え切れないほどの墓標。

見ているだけで...セカンドインパクトの時の無残な様子が眼前に展開されるようで、背筋に寒気が走り、アスカは無意識のうちに隣に居るシンジの服の袖をぐっと掴む。




寄り添うように、二人は碇ユイの墓標の前まで歩く。



 

 





そっとカーネーションの花を置き、ゆっくりと墓標に語りかけるシンジ。

アスカは、その後ろでじっとシンジの背中を見つめている。

 


「母さん...久しぶり。今日は...母の日だったから、ここに来たけど...いつもなら、来る事すら思いつかなかっただろうけど...アスカのおかげで、ここに来る事になったんだ」


「....」


「そっか...アスカをここに連れてきたのは初めてだから...紹介するね...名前は惣流・アスカ・ラングレー...エヴァ弐号機のパイロットで...」


「....(シンジ...)」


「そして、僕の一番大切な女性(ひと)なんだ」


「!」


「辛い時、悲しい時にも、彼女がいれば、なんとかやって行けると思う。だから、母さんも....安心して..くれるかな。母の日のプレゼントってわけにもいかないから、今日はこれだけだけど...」

 

 


そこまで言って、どこかすっきりとした表情になったシンジは、アスカを待たせてしまっている事に気がつき、後ろを振り返った。


「ごめん、待たせちゃって........アスカ?」

シンジの視界に入ったものは、肩を小さく震わせるアスカ。
うつむいて表情がわからないが、一つだけわかる事は...泣いている。


「シンジ...その...アタシ....うまく言えないけど....嬉しいの...」

「うん...何も言わなくていいよ」

そう言って優しくアスカを抱きとめるシンジ。

「シンジ.....」

「.....」

「.....」


「今度は.....」

「ん?」

「今度は、ドイツの、アタシのママの所に、いつか...行ってくれる?」

「...うん。勿論だよ」

「...ありがとう」

「さ、そろそろ帰ろうか。もうすぐお昼だし」

「うん!」




 

 

 




また来年も、きっと二人でここに来るのだろう。



 

 






二人の心を投影したかのように、空は蒼く、どこまでも高かった−





 






おわり


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Version-1.00 1998+05/10公開

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あとがき


母の日に間に合わせるために、必死で書きました。
本編の方、進んでませんが、これで許してください(爆)

さて、母の日LASですが...本当は母の日の花って、カーネーションでなくてもいいらしいですね。TVで見たような気がしますが。あと、当然2015年の5月10日は母の日ではありません。こっちの暦にあわせてありますので、そこ、突っ込まないように(笑)


母の日だってのに何もできなくてごめんよぉ(;_;) >遠い実家のおかん
みなさんも、できるうちに親孝行はしておきましょう(←お前が言うな)


さんごでした。





 さんごさんの『In the blue sky』、公開です。




 お墓参り・・・


 私も母さんの墓に行かないと・・・・  なんちって(爆)

  ”母の日”にトンでもない冗談をかます−−馬鹿者ですね、私(^^;




 母の日に
 母の墓前に

  大事な人を紹介する。



 シンジらしい
 不器用な優しさがのぞく


 あったかくなる話でした(^^)



 食卓のシーンもいいよね♪





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