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「♪〜」
「(じーーーーーーっ)」
「..........ふぅ」
「(じーーーーーーっ)」
「...................♪〜」
「(じーーーーーーっ)」
「.............はぁ...」
父の日記念SS
「June
21st,Sunday」
「....だぁっ!もうっ!」
「え?どうしたの?アスカ」
「どうした、って、あんた今自分が何してたかわかってるの?」
「え?何...って?」
「急にため息なんかついたと思ったら今度は鼻歌なんか歌っちゃって。端から見てると気味悪いわよ」
「えっ...そうなの?」
「まったく、自分でも気づいてないあたりがシンジらしいわね。で、何かあったの?」
「何か、っていうか...もうすぐ、その...21日だから」
「21日?」
「そう。あんまり知られてないんだけどね。6月の第3日曜日は「父の日」なんだ」
「父の日、ねぇ...で、それと今のシンジの状態と、何か関係あるわけ?」
「あ、うん...その、父さんに、何かプレゼントを、その、贈ろうかな...って」
「ステキじゃない。シンジにしては珍しく」
「なんだよぉそれ」
と言いつつも苦笑するシンジ。
「だって、いつものシンジなら、あの司令絡みのコトになるとすぐに尻込みするじゃない。今回は、一体どういう風の吹き回し?」
「うん...」
言葉を止め、ふと窓の外に目をやるシンジ。
どこか遠くを見つめ、何かを思い起こすような表情...
「.......シンジ」
「ん?」
「この前、アタシの父親の話は、したわよね」
「あ...うん」
それは、決して幸福な物語ではなかった。
しかしアスカは辛そうにしながらも、シンジには全てを知っていてもらいたいという一心で話し続けた。そんなアスカの様子を見ながら聞く事は辛かったが、それを真剣に聞く事でアスカが何かから解放されるなら...と黙って聞いた。
「今度は...シンジの話、聞かせて」
−例え、それがどんなに辛い話であろうとも。
−その辛さを共有することで、少しでも負担を軽減できるなら。
「.....うん」
「....ごめんね」
「いいんだ。アスカには知っておいて欲しいし。それじゃ、そこに座ろう」
ソファーに寄りかかるようにして並んで座る二人。
「僕が、最後に父さんを見たのは...いくつの時だったかな。今から、10年くらい前になると思う」
「えっ?それじゃぁ...」
「うん。その時から、この前にこの街に呼び出されるまで、一度も会ってない」
「そう...」
「父さんは、どこかの駅で僕に待つように言うと、僕を置いてどこかに歩いていってしまった。今でもそれだけは、あの背中だけは、はっきりと覚えてる」
「......」
「その時、僕はこう思ったんだ。『やっぱり僕は、いらない子供なんだ』って」
「......」
「それから10年、田舎の先生の所で暮らしてたけど、ずっと父さんの事を考えてた。憎いとかそういう感じじゃなく、『なぜあんなことをしたの?』とか、『僕は父さんにとって不要だったの?』って事ばかりだった」
「....シンジ」
だんだんと辛そうな表情になっていくのが目に見えてわかるシンジに「もうやめよう」と言おうとするアスカ。
しかし、シンジはそっとアスカに無理に微笑み返すと、言葉を続ける。
「だから、父さんから「来い」って手紙が来たときは、悔しくてその手紙も1回破っちゃったんだ。でも、よく考えて、確かめたくなって...あの時の、父さんの真意を。それから、本当に、僕はいらない子供だったのか」
「...どうだったの?」
「...わからなくなった。再開した時は、いきなりエヴァに乗れって言われて、道具としか見られてないのかと思ったけど、あの時の言葉を聞いたとき...」
シンジの脳裏に過るゲンドウのあの言葉。
−よくやったな、シンジ
「父さんに対する認識がちょっと変わったような気がする。よく考えたら、ほとんど話もしてないし...だから、今回の父の日で、何か話ができればな、と思って...」
「...そうなの。でも、さっきの様子を見ると...」
「うん...不安なんだ。ちゃんと話ができた時の事を思うと、少し心が浮き立つ感じなんだけど、でも、いつものように拒絶されたら...」
そこまで言った時、突然アスカが隣のシンジの頭を片腕で引っ掛けると、そのまま抱え込むように抱く。
「...?アスカ?」
「....シンジ、逃げちゃダメ。そこで逃げたら、何も変わらないじゃない」
「...アスカ」
「今日だけは、どんなに恐れても、大丈夫だから...その代わり、怖がるのも今日までよ」
「ごめん...やっぱり、怖いや...」
「大丈夫....」
そう言って、ギュッとシンジの頭を強く抱くアスカ。
「ありがとう、アスカ...」
−そう言って、シンジは声を上げないように、そっと泣いた。
そして、6月21日。
「アスカ...大丈夫かな....」
「大丈夫よっ!アンタ、いつまで自分の親を恐れてるつもり?ここで頑張らなくていつ頑張るのよ!ほらっ、あそこに司令いるから、行ってきなさい」
「そう...だよね...」
「あー、もう、なんかシャキっとしないわね...ほら、こっち向いて...」
「...え?....んっ」
詳しい描写は避けるけど、そういうことです。
「(真っ赤)」
「(真っ赤)」
「....ほら、今のは、景気付けよ。これで頑張らなかったら承知しないからね」
「...そうだね。ありがとう、アスカ」
そして、踵を返し、駆け出すシンジ。
「あのっ...父さん!」
−ここから、始めよう
Fin
NEXT
Version-1.00 1998+06/21公開
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あとがき
ども。連載がすっかりご無沙汰のさんごです。(切腹)
母の日LAS書いたなら、父の日LAS書かなきゃいかんだろ〜。
ってなわけで書いてみました。アスカの父親の話は、突き詰めるとなんとなく辛いし痛くなりそうなんで書きません(爆)
タイトルはぜんぜん捻り無しです。
#ちなみに、父の日は6月の第3日曜日ですから、勿論2016年では6月21日ではありません。
いかがでしたでしょうか。あくまで父の日ネタですから、アスカの中の母性的な部分を強めに描いてはいますが、ちょっと力不足の感もあります。精進精進。
ちなみに、今回シンジがゲンドウに贈った物は、スタンダードにネクタイです。
ゲンドウ、ネクタイしませんが (^^;
感想メールお待ちしております。最近またとみに少なくなってきて悲しいです。(;_;)
「○○が○○だからつまんな〜い」や「もちっとLAS強くしてよ」てな要望でもいいですから、どんどん下さい。感想ってのはすごく参考になるんですよ。
それでは、次回作でお会いしましょう。
さんごでした。
今回のBGM-CD:「らじまにCD3号」(まにきゅあ団)