闇にうごめく黒い影。
...といってもここは別に悪の秘密結社でもなければゼーレの本拠地でもない。
3バカトリオの一人、相田ケンスケの自宅の写真現像用の暗室である。
その中央に座りこんで怪しげな笑みを浮かべる一人のミリタリーヲタク。
「うくくくくくくくく....」
キラリと光るメガネ。口元は先ほどから緩みっぱなし。
そう。まさに「イっちゃってる」表情を絵に描いたらこうなるかのように。
クスリをやってるわけでも変なモノを食べたわけでもなく、コレが素なのだから恐ろしい。
...あぁもうなんで冒頭からこんな描写をせにゃならんのか。
めぞんEVA 100万ヒット突破記念SS
「そして、これからも...」
「めぞんが100万ヒット...そう、時は来た!」
おもむろにスックと立ち上がり、右手を高く掲げよう...としたのだが、見事に頭上に合った灯かりに頭をぶつける。が、イっちゃてる彼にはお構いなし。
「今こそ!LAS等という俺にとって不愉快かつ不利な文化を排除!しかるのちシンジから惣流をひっぺがしてLAK文化を普及させる!そしてゆくゆくは...うふふふふふふふふふふふふふ(以下飽きるまで)」
この時点でかなり多くのLAS読者を敵に回していることに相変わらず気付かない相田ケンスケ(14歳独身)。悪は果たして滅びるのだろうか。
と、それはさておき−
そんなヲタクの悲しい独り舞台を横で眺めていたもう一つの影があった。
「ふふふ...LSKはいいねぇ...僕とシンジくんによるお耽美SS文化の極みだよ...そう感じないかい?相田ケンスケくん?」
そう、LAS文化の第2の敵とも言える、アスカをして「ナルシスホモ」と言わしめた第17番目の使徒、渚カヲルその人である。
しかし、彼は死んだはずでは...?
「ふっふっふ...甘い、甘いねぇ...使徒はコアを潰さない限り、再生するんだよ...そして、僕のコアはここ、オツムの中にあるのさ...つまり!頭を潰さなければ僕は永遠に死ぬことはないのさ!言うなれば!...」
「ゴキブリ、だろ?」
少しだけ正気に戻ったケンスケが冷ややかにツッコミを入れる。
フッ、と笑ってカヲルは肩を竦めえる。
「もう少しスマートな言い方はないのかい?相田くん。それにゴキブリはクレゾールを分泌するのでとても清潔な生き物なんだよ。そこだけは好意に値するねぇ」
「...まぁいい、と・に・か・く・だ!」
急に真剣な面持ちになるケンスケ。それを受けてカヲルも表情を引き締める。が、悲しいかなギャグ要員の彼らにそんなシーンは似合わない。
「打倒LAS文化!そして惣流・アスカ・ラングレーを我が手に!手に入れたあかつきには...うくくくく」
再び妄想を始めるケンスケ。すでにこの時点で死亡確定。
「おいおい、相田君、妄想は後回しにしてくれないかな。問題はどうやってあの二人の仲を引き裂くか、だよ」
「ふふふふふ...『策士、策に溺れる』という諺がある...俺はそうならないように、見よ!この膨大な量の資料と作戦書を!」
部屋の片隅にドッサリと積まれたプリント用紙。
「...なんだい?これは」
「見てのとおり、今まで各所で発表されてきたLAS小説のプリントとそれの傾向と対策をまとめた文章だ!...くっ、長かった...これをまとめるのは骨が折れたぜ...セーブしてShiftJISに変換してタグを全て排除してPlainTEXTにして...」
それは作者。
「しかし相田君、この作戦は心の問題だよ。こんな資料が役に立つのかい?」
「うっ、うるさい!世の中、マニュアルが全てだ!マニュアルさえあれば万事オッケーだ!」
「ふぅ...すっかり策に溺れてるね...」
「というわけで、だ。作戦を今から説明する!...それには渚、お前の尽力が必要なんだ」
「ふむ...まぁ、惣流さんをシンジ君から引き離せば、シンジ君が僕のものになる確率も高くなるということだし、利害は一致しているね...わかった、協力しよう」
「よし、まずは渚、お前、女装しろ」
「.....は?」
「作戦はこうだ。女装した渚があの二人にさりげなく通行人のフリをして近づく。道をシンジに聞いて、御礼の代わりに、と、いきなり大胆な行為をすれば...嫉妬に狂った惣流はシンジと喧嘩をする!とまぁこういった感じかな」
「...単純だねぇ...」
「単純なものほど真理に近いのさ。とにかくインパクトがあればあるほどいい。いきなり...(ごにょごにょ)したり...何をしてもいいんだぜ?(ニヤリ)」
ゴオウッ
それを聞いた瞬間、灼熱の壁がカヲルの周りに張られる!
「え、ATフィールド!?いや、違う、これは...」
そう、言うなればそれは煩悩と欲望が具現化した、別の意味での心の壁!
「うふふふふふふ....そうか、そういうことかリリン!!そうとなれば善は急げだよ相田君!女装でもなんでもしてあげるから早く衣装を持ってきてくれたまえ!!」
普段の温厚な表情はどこへやら。すっかり豹変したカヲルの口は釣りあがり、目は袋小路
に追い詰めた小動物を見る獣のそれである。
「ひゃ、はいっ!!」
その様子にすっかりビビっているケンスケ。「組む相手を間違えたか?俺」と後悔を始めるがそれはアフターカーニバル(死語)ってなもんである。
と、怪しげな会話が某所で交わされている頃、問題の我らLAS文化の希望の星、シンジとアスカは、といえば−
「ねぇ〜ん、シンジぃ〜〜」
相変わらずイチャついていた(笑)
「何?アスカ」
左手に買い物袋を下げたシンジは、上目遣いに自分を見上げるアスカに優しく微笑みつつ答える。
「ん〜〜、何でもな〜い。呼んでみただけ」
「ふふっ、何それ」
シンジの右腕を1日中といっていいほど掴んで離さないアスカ嬢。もし仮にこのポジションを他人が取ったら、おそらく血を見るくらいではすまされないであろう。
「ねぇ、今日はたくさん買いこんでたけど...何かあるの?」
「え?ああ...えっとね、『めぞんEVA』が100万ヒットを突破したんだ。だから管理人の神田さんにお礼の気持ちとして、お祝いの料理でも届けてあげようかな、と思って」
「へぇ〜、そうなの。確かにそれはめでたいわよね。でもシンジ、アタシの好物を作るのも忘れないでよっ」
「はいはい」
そんな会話をしながら二人は夕暮れの道を帰路につく。
「ねぇ、シンジ...」
「ん?」
「.....」
「どうしたの?アスカ...」
シンジの目から見たアスカは、急に先ほどまでの強気な雰囲気が消えうせ、逆にとても儚げに見える。
「アタシね...怖いの。幸せ過ぎて。いつかこの幸せが壊れて、シンジがどっかに行っちゃうんじゃないかと思うと...不安なの」
その言葉にハッとなるシンジ。今まで自分が抱えていた不安、それを彼女も持っている。
それを改めて思い知らされたシンジは、彼女の折れそうに細い腰にそっと手を回し、優しく抱き寄せる。
「きゃっ」
突然のシンジの行動に驚きの声をあげるアスカ。
「アスカ....」
「どうしたの?シンジ....」
「僕も....不安だった。アスカがいつか僕を置いてどこかに行っちゃうんじゃないかって...でも、アスカも同じ不安を抱えてたんだね...」
「シンジ...」
「でも、大丈夫。僕は絶対にアスカを見捨ててどっかに行ったりはしない。絶対に」
「シンジぃ...嬉しい....」
ぎゅうっと強く抱擁を交わす二人。感動もののシーンではある。
が、そんな場にそぐわない二人組がその様子を茂みから眺めていた。
「くっそぉぉぉぉぉ、おいしすぎるぞシンジぃぃぃぃ(血涙)」
「ああ...シンジ君、僕というものがありながら、なぜそんな...」
「よし、もう躊躇している暇はない!渚、作戦実行の時だ...って、え?」
「?どうしたんだい、相田君」
「な、渚...お前...」
もともと中性的な顔立ちの渚カヲル。今の服装は、どこから持ってきたのか長スカートにカーディガン、目線を隠すための麦藁帽子、という所謂おとなしい深窓の令嬢、と言ったところか。ここまで完璧に女装が決まると感嘆せざるを得ない。この辺が全国のおねーさま方を虜にして話さない所以であろうか。
で、ケンスケは不覚にもその奇妙な作られた美しさに目を奪われてしまった。
一歩間違えればかなり危ないシチュエーション、いや、すでにその一歩を踏み出してしまっているのかもしれない。
「(そ、それは反則だろう...)」
「??.......あぁ、僕のこの美しさに見とれてしまっているんだね...やはり美しいという事は罪だねぇ...でも残念ながらこの美しさは愛しのシンジ君の為にあるのさ」
その言葉で、あっちの世界に行っちゃってたケンスケがはっと目を覚ます。
「(ぶんぶん)ば、ばかっ、いいからとっとと行けっ」
その様子にカヲルは肩を竦めて少しおどけた感じで苦笑する。
「ふぅ....それじゃぁ、行ってくるよ」
「ミスは許されないぞ」
「わかっているさ。さぁ、待っていてくれよ、シンジ君!うふふふふふふふ....」
再び獣の目で離れた所を歩いて行くシンジを見つめるカヲル。それを見たケンスケは、先ほど見た深窓の令嬢は幻だったのか、と目をパチクリさせた。
が、数瞬の後、深窓の令嬢(でも目は獣)のカヲルはアタックを開始すべく茂みから踊り出る。そしてそれを合図として、ケンスケの思考もオペレーションモードに切り替わる。
「.....はっ、そうだ、俺は決定的瞬間をこのカメラに収めるべく、奴らの背後に回りこまねば...そしてその写真をあとで全校にばらまいて....ふふふふ、外堀と内堀、両方埋まった城ほど脆いものはない!」
独り言のようにそう呟くと、ケンスケも所定の位置につくべく行動を開始した。
抱擁を解き、再び手を繋いで歩き始めたアスカとシンジ。
「シンジ...」
「ん?」
「ずっと...一緒だよね」
「.....勿論さ。アスカがいやと言うまで、僕はずっとアスカの傍にいるよ」
「それじゃぁ一生アタシの傍にいてくれるんだ...だってアタシは絶対にシンジの事イヤだなんて言わないし」
「あ...アスカ...」
思わず繋いだその手をぐっと握り締めるシンジ。男冥利に尽きる。
が−
「あの....すいません、駅までは、どう行けばいいんでしょうか?」
そんな二人の前から一人の女性が歩いてきたかと思うと、突然声をかけてきた。
「「はい?」」
少し照れて俯き加減だった顔を上げるシンジ。その瞬間ハッとなる。
顔は帽子の影でよく見えないが、やたらと白い肌、目立つ銀髪、その華奢な体つき...
−カヲル君に似ている....
無論本人だから似ていて当然なのだが、シンジはなぜか気付かない。
この瞬間、カヲルは「もらった!」と心の中で歓喜の歌を歌っていた。
「ちょっと.....」
その様子を横で見ていたアスカが憮然とした表情で横槍を入れる。
「は?」
「....アンタ、カヲルでしょ。こんな所で、そんな格好で何やってるのよ?」
「えっ?アスカ、まさか、いくら似てるからってそんな...」
カヲルの額につつーと流れる冷や汗。
「カヲル...?他人の空似だと思いますが」
それでも必死になって役になりきるカヲル。
「そう...それじゃ、1つ問題を出すわ」
「は、はぁ...」
問題:ガイナッ○スがPSで出した「エ○ァと愉快な〜」について思うところを述べよ(10点)
「...まずゲームとしての基本システムがなっていないね。25インチでもパイが見にくいしデモ画面が飛ばせないしリーチのメッセージのたびにCD読みに行くし流局のたびにCD2回読みに行くし相手のチー、カンのパイが画面を切り替えないと見えないし対戦中点棒がいくらか分からないし顔を表示する時いきなり1コマで表示するしボタンの配置が変えられないしなぜかメモリブロック3ブロック使うしセーブしたのかどうか良く分からないし配パイの効果音がどう考えてもBeepだし、そもそも僕とシンジ君によるお耽美大サービスシーンがないというのが最大の難点だね」
「......」
「......」
「....はい、よくできました。10点満点よ。そして、あんたはやっぱりカヲルよこのナルシスホモっ!!!」
明らかに狼狽の色を見せるカヲル。すでに作戦はこの時点で半分失敗である。
「う....なんでわかったんだいっ!?」
「バレバレよ(汗)」
「か、カヲル君...なの?」
「くっ....こうなっては仕方ないっ...相田君っ!!」
その声に応えるが如く、影のように近づいて来ていたケンスケが、素早くシンジを羽交い締めにする。
「任せろっ!!シンジ、覚悟ぉっ!!」
「わっ、ケ、ケンスケ!!なんでここに!何するんだよ!!」
「ふはははははは、今すぐLAS文化など崩壊させてやる、そしてこれからLAK文化による新世紀が始まるのだぁぁぁぁっ!!」
「ナイスだよ相田君...ふふふふふ..貰ったぁっ!」
猛烈な勢いでシンジに飛びつく女装のカヲル。目指すはシンジの唇ただ一点。
「(あぁ待っていてくれよシンジ君っ!!いますぐその口を僕のこの熱い接吻で清めて上げるから...そして僕と一緒にお耽美な世界へレッツラゴーだ!!)」
....なんだかキャラクターが変わっているような...気のせいか。
「(あぁ...もうダメだ....アスカ....)」
観念してシンジが目をぎゅっと瞑ったその瞬間!!
ドゴォ!!
「うわっ!!」←ケンスケ
「げふぅ!!!」←カヲル
突然の衝撃で吹っ飛ばされる二人。
来るべき衝撃が来ないのを疑問に思ったシンジが恐る恐る目を開けて見ると...
そこにはアスカの背中があった。
しかもシンジが今まで見たことも無いような気迫に満ち溢れている。
「あいたたたたた...」
「もう少しでシンジ君の唇を...って、そ、惣流さん?」
二人の目の前に立ちはだかるのは、まさに、「鬼」。
怒りが頂点に達したのか、すでに怪しげなオーラまで迸っている。
「あ、いや、これにはな、色々なワケがあってだな...な、渚(激汗)」
「そ、そうなんだよ惣流さん...ははは(激汗)
「ねぇ...シンジ....?」
アスカの背後でその様子を眺めていたシンジに急に話しかけるアスカ。
「な、何?アスカ」
「アタシさぁ...最近、ネルフの軍事教練で習った八極拳、使ってみたかったのよね〜〜...シンジ、手だし無用よ」
「...(汗)...はい」
八極拳!真の熟練者はどんな相手でも「暗勁」と呼ばれる「通し」で一撃で沈める事ができる王者の風格を持つ中国拳法である。
「....相田、立ちなさい」
地獄の底から湧きあがるような低いトーンの声。
「は、はい...」
そこにすかさず踏みこんで強烈な肘打ちを下から突き上げるように容赦無く水月の部分に打ちこむ!(マジ痛いです)
ドガシィ!!!
「う...あ.....かはっ」
「.....これが『頂心肘』.....次、ナルシスホモ、立ちなさい」
「ふっ、僕にはATフィールドがあるんだよ?手出しはできな...がはっ!!」
気がついたときにはアスカの拳がカヲルの顔面にクリーンヒットしていた。
「ま、まさか、ATフィールドを突き破るなんてそんなマンガみたいな...ぶっ(鼻血)」
「.....これが『衝捶』....」
この時シンジはマジで二人の死を予感したという。
「手加減無しで行くわよ...」
その声が、ケンスケには三途の河の向こうでおいでおいでしている先祖の声に聞こえ、カヲルにはサキエル達の声に聞こえたらしい。
「「うぎゃあああああああああああああああああああっ」」
平和な昼下がりの公園に、哀れな野郎二人分の悲鳴が響いた。
「んも〜、本当にあのバカ二人組には参るわね!!」
「うん。アスカが助けてくれなかったら、危ないところだった。ありがとう、アスカ」
「それじゃ、お礼に今日の夕飯は、ハンバーグねっ!」
「あ、丁度そうしようと思ってたんだ。アスカの大好物だもんね」
「ホントッ!?シンジ、大好きっ」
「それじゃ、早く帰ろう。神田さんにも作ってあげないといけないしね」
「うんっ!!」
「う.....ぐは.....本当に...手加減なし....だ..った......」
「.....シ、シンジ君.....ぐはっ......」
死して屍拾うもの無し。
LAS文化を崩壊させようとした男たちの、哀れな末路である。
「ね....シンジ.....」
「ん?」
「.....だーい好きだよ!!」
「(真っ赤)......僕もだよ、アスカ」
彼らに幸あらん事を。
そして−
めぞんEVA100万ヒット、おめでとうございます。
おわり。
あとがき
めぞんに投稿するのは2ヶ月ぶりくらいでしょうか。お久しぶりです。
いや、本当にスゴイですっ!100万ヒット!(^^)/
私が入居したのが30万ヒットの頃ですから...早かったですね〜。
それだけめぞん自体に勢いがある、ということでしょうか。
なんかていうんでしょうね.....タンスの角に小指をぶつけた、感想メールがなかなかこない、自転車で狭い道を走ってて徐行してるのに向かいから来たおばちゃんがヤな顔して降りた、小説書いてたら一般保護違反が出た、床屋に意気込んで行ったら定休日だった、LAS小説を読んでるつもりだったが実は全然そうでなく痛い思いをした、深夜の空腹のピークに丁度米が切れていた、眉毛が書いてある犬を見た、批評家がでかい顔をしている、楽しみに取ってあったサンドイッチにカビが生えていた、テレホーダイタイムでなかなか接続できない、電波入ったキチガイメールが来た、メールサーバが落ちている.....等の日常生活で溜まったモヤモヤが一気に晴れるような気分です(爆)
え〜、この2ヶ月、遊んでいたわけでは...多分ないと思いますが(爆)、あちこちで物書きをしたり、自分のページでEOE後の連載を始めたり、とスキルアップに専念していました...というと聞こえはいいかな (^^;
またじゃんじゃん投稿しますので、乞うご期待!ってとこです。
今回のBGM−CD: ZABADAK「ディケイド」
めぞんに戻る
/ TopPageに戻る/ [さんご]の部屋に戻る