TOP 】 / 【 めぞん 】 / [さんご]の部屋に戻る/ NEXT




 

 

 

 


西暦2016年、サードインパクトの影響により、再び日本に「四季」が訪れる事となった。これは秋も深まり、冬の到来も近いと感じるようになったある日のお話。














「ちょっとシンジ、あんた明日ヒマ?」

いきなりだが昼休みの話。
唐突に話し掛けてくる赤い髪の少女。なぜかは知らないが顔が心なしか赤いような。

だが、今しがた名前を呼ばれた少年−碇シンジは、それに気付かない様子であった。

「え?あ、うん。まぁ、ヒマだけど」

「そう、んじゃ明日買い物に付き合いなさい」

「え?なんで僕が...?」

「あんたバカぁ!?荷物持ちがいなきゃ思いっきり買い物できないじゃない!」

「そ、そんなぁ.....僕が、荷物持ち?」

この時点で暇だと答えてしまっていた自分の迂闊さを呪った。
こうなってしまっては敗北だ。仕方ない。

「あったりまえじゃないの!まさかこのかよわいアタシに重い荷物を持たせて歩かせようってぇのアンタはっ!......ひどいじゃないの(うるうる)」

とうとう女の武器を持ち出すアスカ。
さすがにそんな潤んだ目で見上げられると男というものは絶対にイヤとは言えなくなるものなのだ。それは昔から絶対に逆らえない法則の1つとして確かに存在した。

「わ、わかったよ.....行くよ」

「ホント!今更やめるなんて言ったら殺すわよ」

にっこり笑っておっかない事を言い出す。しかしアスカならやりかねないかもしれない。その笑顔を眺めつつシンジは背中に寒いものを感じた。

その頃−

その一部始終を離れた所から横目で観察している者があった。青い髪、白い肌。全国のアヤナミストの皆さんお待たせっ!!無口朴念仁の電波系少女!

「今回は、LASだから出番これだけなのね.....」

はい、すいません。当然ながらこれだけです。

........おっと、そろそろこの辺でタイトルってもんだね。


















もうすぐ冬ですね記念ほのぼのSS(しかもLAS)



「My Desire」





















その夜の事。
アスカは没頭していた。今まで暇を見ては少しずつやっていたのだ。その苦労ももうすぐ報われようとしている。傍から見れば上機嫌にも見えるかもしれない。

よっぽど集中しているのか、シンジが「ご飯だよぉ」と台所から呼び掛けても聞こえないようだ。「?」な表情のシンジはやれやれ、という感じでアスカの部屋のドアをノックする。ここん。

「アスカぁ、ご飯だってば.....入るよ?」

そっと戸を開けると、アスカは背を向けたままだ。ますます理解できない。今度は少し大きな声で呼び掛けてみる。

「アスカ、ねぇ、アスカってば」

その声に少しビクっとなる。ようやくアスカは気付いたようだ。
心なしか少し、いや、かなり慌てているようだ。何か悪い事でもしたのかな?僕。

「どうしたの?アスカ?ご飯だよ」

「あ、あんた、ノックもなしに何勝手に人の部屋に入ってきてるのよ」

「え?いや、ノックはちゃんとしたんだけど」

「うっさいわね!いいからちょっと出てって。すぐに行くから」

????釈然としない表情のシンジ、無理もない。
それでもこれ以上彼女を怒らせるのは得策でないと踏んだのか、おとなしく部屋から出て行く。それを見届けるとふぅ〜っと息を吐くアスカ。

「....危なかったわ」

何が危ないかはさっぱりだがとにかく危機は去ったようだ。
安堵の表情が浮かぶ。手元の物をじっと見つめて少し口元がほころぶ。

(あぁ、もうオチが予想できた方、その通りです。ガシガシ読み進んでください)


「で、シンジ、今日のおかずは何?」

「あぁ、アスカの好きなハンバーグだよ」

「え?何でアタシの好物しってるの?」

「そういう設定のSSが多いからさ」

「......シンジ、時々変な事言い出すのね」

今日はミサトも帰ってこないので(っていうかLASにこの人は不要じゃん)とても静かな夕食だ。こうしていつも通りの夜が更けて行く。唯一いつもと違うのはアスカが自分の部屋にさっさと入って行ってしまったことだ。いつもならTVをゴロゴロしながら見てるのに....










そして夜が明ける。東の空から太陽が自己主張を始める。
よく晴れ渡った空だが、さすがにそのせいか朝は少し冷えこむ。

時刻は午前7時。全国的に日曜日ではあったが、主夫となってしまったシンジの朝は早い。暖かい布団に今生の別れを告げ、今日も朝食を作るために台所に立つ。

トーストの準備をしている所で彼は背後に人の気配を感じ、そして驚いた。
アスカが、日曜日だというのに、こんな朝早くに、起きている!

「ふぁぁ、おはよ」

「あ、うん.....おはよ。どうしたの?随分早いじゃない」

「....ちょっとね。それよりも、今日の約束、覚えてるでしょうね?」

「うん。まぁ」

ミサトはどうやらネルフに泊まりのようだ。主人のいない万年床がどことなく寂しげではある。二人分の朝食を作るシンジ。

朝食を早々に澄ませ、さっさとアスカは自分の部屋に行ってしまった。女の支度というものは時間がやたらとかかる。今から準備してもいつも多少予定より遅れてしまう。
シンジは青のジーンズにチェックの柄の上着、上にパーカーを羽織った。表は少し風があって肌寒いようである。



午前10時を回ったあたりで二人は街へと出かけた。ちなみにこの時のアスカの服装だが、作者は女性の格好に全然詳しくないのであえて言及は避ける。(スマヌ



驚いた事に、今日のアスカは思ったよりも買い物をせずに、ウィンドウショッピングをメインに楽しんでいた。荷物があまりないので楽は楽だが、「??」という表情を時折浮かべるシンジ。アスカはアスカでシンジを引っ張りまわしてはあれがいいだの、これがいいだのと言うが、大体は買わずに通り過ぎる。ますます「???」のシンジだ。

「ねぇ、アスカ」

「何よ」

「今日は、思ったより少ないね。買い物」

「何?もっと荷物持ちたいの?」

少し小悪魔的な表情を浮かべるアスカ。

「いっ、いや、別に、そういうんじゃなくて、いつもと違うから....」

「べっつにぃ〜。理由なんてないわ」

「そ、そうだよね」

それでもいまいち釈然としない。昼食をファーストフードの店で取り、午後もウィンドウショッピングは続く。アスカは実に楽しそうでよく笑っている。その笑顔を見ていると、ま、いいか、と思ってしまうシンジであった。




楽しい時は過ぎるのが早い。日はすでに西の空に傾き、空似も赤みが差してきた。
その日の様子はシンジの両手に下げられた大きな買い物袋で一目瞭然である。

帰る途中で休憩として公園に立ち寄った。夕方なのですっかり冷えこみ、人の姿も非常にまばらである。少し寂しげな光景であった。
シンジは手に持った缶コーヒーの1本をアスカに手渡す。

「はい、アスカ。あったまるよ」

「ん。ありがと」

一口飲み、ほーっと一息つく二人。

「....................シンジ」

「ん?なに?」

「悪かったわね、今日は1日中つきあわせちゃって」

「え!?いや、そんな、僕も、その、楽しかったし....」

「....ありがと」

「(へ?)」

これは一体どうしたことか、あの高飛車な彼女が、素直に(少なくともそう見える)話している。いつもとは違うその表情に少しドキっとなるシンジ(くぅ、青春だねぇ)

すると急にアスカは出かけた時から手元にしっかりと抱えていた袋をじっと見る。


そしてしばらくの間。

そして何やら決心した表情になると、その袋をシンジにつきつける。

「......これ」

「?」

「いいから、受け取りなさいよ」

「う、うん....あ、開けても、いいのかな?」

「そ、そりゃ、か、かまわないけど.....」

がさごそ。

「!!.................これ.......」

中から出てきたのは、アスカを象徴するかのような真っ赤なマフラーだった。
隅の方に「S.Ikari」と筆記体で刺繍がしてある。手作りだ。

「これ、アスカが?」

「そ、そうだけど、気に入らなかった?」

「とんでもない!すごく嬉しいよ.....本当に、ありがとう」

あまり器用でない彼女の事だ、ものすごく苦労したに違いない。その証拠と言わんばかりにアスカの手にはポツポツと赤い点があった。針で刺した跡だ。

「アスカ、その手....」

「そ、そんなことどうでもいいから、ちょっと首に巻いてみなさいよ」

アスカは努力というものを他人に見せないようにしてきた。それを察して手の事はあまり聞かないようにしよう、と考えつつマフラーを首に巻く。

シンジは少し目が潤んでいる。感ここに極まれリ、といった表情だ。この幸せ者。

「うん。とてもあったかいよ。ありがとう」

「そう、それならよかったわ」

「うーん、何かお礼しなきゃいけないな。何がいい?何でも言ってよ」

「え?いいわよ、お礼なんて....」

「ダメだよ。アスカがこんなにいいものをくれたのに、僕はお返しもしないなんて...」

「.....................そうねぇ..................!...」

アスカは何か思い付いたようだ。ニヤっと笑う。???



「寒くなってきたから、あたしを暖かくしなさいっ」



そう言ってアスカはマフラーの片側を自分の首に巻いてぐっとくっついてきた。

「..........ん。あったかい。結構結構」

僕はただ、真っ赤になってうつむいているしかなかった。

「ふわぁ、寝ないとやっぱきついわね。しばらくこうしてて。寝るから」

「えっ!?アスカ徹夜したの!?」

それで今朝ちゃんと朝早くに起きてたのか....
もう言葉じゃこの感謝は言い表せないな.....

そして僕はアスカに風があまり当たらないようそっと抱きしめる。
その寝顔は、とても穏やかだった。










冷たい風が二人に当たる。

冬はもう、目の前に迫ってきていた。



























NEXT
Version-1.00 1997-11/02公開
感想・叱咤・激励・「綾波をないがしろにするなコラ」等は こちらへ



あ・と・が・き

どうも、はじめまして。新参者の[さんご]と言いますです。はい。
根本的にLASな人なんですが、実はマヤさん派だったりなんかします(爆)

秋深し、ということで1時間半ほどでカカカカっと書いてみました。
ああ、若いっていいなぁ(←ぢぢい)。俺にもマフラー誰か編んでくれっ!(爆)

えーとですね、この話のタイトルは「SINGLIKE TALKING」の同名曲からです。
冬の歌なんで、今回のこの話にピッタリかな。と。
名曲なんで、一度は聞いてみる事をお勧めします。

あぁ、これから寒い冬だってぇのに一人はやっぱさびしいなぁ(;;)

また暇があったら季節モノを書いてみようかと思ってます。反響次第ですが(鬼)
とにかく、この二人には創作小説の時くらいとことん幸せになって欲しいものです。


 おおお、90!
 ついに90人です(^^)

 切りのいい90人目のご入居、
 さんごさん、ようこそめぞんへ(^^)/
 

 投稿されてきたファイル名を見たときはシリアスものだと思ったんですが、
 中身は真っ新なLASでした(^^)

 なんせ”デザイア”ですから・・
 「げら・げら・げら・げら・ばーにら〜」なんて古い歌が頭に(^^;

 

 
 

 けなげな面を出しながらも意地っ張りなアスカちゃんと、
 あやしい情報源(^^;を持つシンジ。
 

 ペアマフラーなんて・・・可愛すぎる〜
 

 心も体もあったかですね。

 冷たい風も
 この二人を避けて吹いています(^^)  

 

 

 さあ、訪問者の皆さん。
 独り寝が寒いさんごさんにあたたかなメールを送りましょう!


TOP 】 / 【 めぞん 】 / [さんご]の部屋に戻る