TOP 】 / 【 めぞん 】 / [さんご]の部屋に戻る/ NEXT


長野で初雪降ったよ記念あっさりLAS風味SS
「そんな僕らの不器用な生き方」


































どんっ

目の前に置かれたワインとビールの瓶。

「な....なにこれ?」

どんな回答が返ってくるか予想はついていたが、一応シンジは聞く。

「何って?あんたこれが「メッコール」「プラッシー」「ウィリー」「あめゆ」にでも見えるというの?」

「いや...そうじゃなくて...どうするの?これ(それにしてもマニアックすぎるよ...アスカ)」

「飲むに決まってんじゃない!こないだの使徒に勝ったお祝いよ!」

「そ、そうなんだ...で、でも、僕ら未成年だから...」

「そんなの関係ないわよっ!じゃあなに?未成年は養命酒や玉子酒や正月のおとそも飲んじゃいけないというのっ!?」

「いや...その...何でそんなに日本の文化に詳しいの?」

「い・い・か・ら、明日は休みだし、今日はと・こ・と・ん飲むわよ!」

「はぁ...ミサトさんが見たら何て言うか....」

「今日はミサトはネルフに泊まりよ」

「え?本当?」

「そ。だからファーストも呼んだわ」

「え?綾波も来るの?.....そっか」

ふっと顔を綻ばせるシンジ。レイとアスカの仲が少しづつ良い方向に変化していくのが嬉しくてしょうがないのだ。

「ま、まぁ....いつも一人みたいだし、あたしも鬼じゃないから、仲間として....その....」

そんなシンジの顔を見て、言葉に詰まるアスカ。

そこへタイミングよく玄関のチャイムが鳴る。

「やぁ、綾波、いらっしゃい、上がってよ」

「....おじゃまします」

「あ、来たわね、ファースト、ほら、ぼーっと立ってないで、そこにすわんなさいよ」

アスカの言葉通り、レイはテーブルの横にちょこんと座る。

「ほらっ、シンジも座りなさいよっ」

クッションをぱんぱんと叩きながらアスカが言う。

「あ、ちょっと待って、もうすぐできるから」

手持ちぶさただったシンジは簡単なつまみを作っていた。だが「簡単な」というのはシンジから見たレベルであり、普通の人から見ればその凝った味付けは、ちょっとした「ごちそう」であった。

「うっわー、いい匂い、さすがはシンジね」

「えっ...いや、そんな誉められると...照れるよ」

「さて、料理もできたし、ほら、コップ持って」

アスカが二人にコップを手渡し、有無を言わさずそこにワインを流し込む。
アスカは手酌で自分のコップにワインを注ぐ。

「それじゃ、かんっぱーい!!」

「か...乾杯」

「乾杯」

「もうっ!なんであんたたちはそんなに辛気臭いのよっ!こういう席ではもうちょっと元気よくやってもバチは当たらないわよ!」

ぐいっとワインを煽りながらアスカがボヤく。

「そ、そんな事言われても....」

「..........おいしい」

「「へ?」」

アスカとシンジが呆気に取られた瞬間、レイがアスカに負けないくらい勢いよくワインを飲み干す。

「「おお〜」」

思わず拍手などしつつ感嘆する二人。

「....おかわり」

ずいっとコップを差し出すレイ。

「え?あ、はいはい」

そこでシンジが気付いた。レイの様子が変なのだ。

「...もしかして、綾波、酔ったの?」

「....」

なぜか無言でシンジをじっと見据えるレイ。その視線には威圧感すらある。

「ちょ、ちょっと、ファースト、どうしちゃったのよ、まさか、ワイン1杯で...」

再びぐいっとワインを煽るレイ。味わいもへったくれもない。

「あ、綾波?」

「...........電波が..」

「「へ?」」

「モーセは言ったのよ、『主なる神はあなたの子孫によって祝福を語ることには長官たちが聞くには聞くがわが国民に対してもなんの文書も受け取って願いを聞き入れ一緒にいるときでも重みがあって力強い一同のものから信仰の弱いものを食べるものをさばくあなたは何人にも借りがあってはならない』」

「ふぁ、ファースト、ちょっと、どうしちゃったのよ、ねぇ」

再びぐいっとワインを煽るレイ。

「....ふふ....ウケ....ウケケケケケ」

突然「つよいぞ!シンジ君」((C)K-tarowさん)状態になるレイ。

「あ....綾波が壊れた....」

「ウケッ!ウケケケケケケケケケケケッ!!」

そのまま窓から飛び出すレイ。

「あ、こらっ、ファースト!.....何だったのかしら....」

「..........飛んでいっちゃったね」

呆気に取られたまま窓の外を見ている二人。

「ま、いいわ、しょうがないから二人で飲みましょ」

「う...うん」











ゆっくりとした時間が流れる...










二人の目の前に置かれたワインとビールも底をつきかけている。

「ほぉらぁ、ぶわかシンジぃ、もっと飲みなさいよぉぉ」

「も、もう勘弁してよぉ....ふにゃぁ」

「なぁにぃ、アタシのお酒が飲めないってぇのぉぉぉぉ」

「ほぉらぁ、こうやって飲んでるじゃないかぁぁ」

すでにかなり酔いが回っている二人。

アスカの白い肌も酒の影響のせいか、ほんのり朱色を帯びている。

「(ん...アスカ...なんか奇麗だなぁ...)」

「?どうしちゃったのよぉ、ジロジロ見ちゃって」

「えっ!?あ、いや、その....なんか、えっと...アスカ、奇麗だな...って」

「えっ!?」

突然のシンジの言葉に真っ赤になるアスカ。いや、まぁ、元々赤かったのだが。

「と、突然、何を言い出すのよっ」

「だってさぁ...そう思ったんだからしょうがないじゃないか」

明らかに酒の影響で饒舌になっているシンジ。

「.....(バカ。そういうのは素面の時にいいなさいよ)」

ぼそりと呟くアスカ。

「え?何?」

「な、何でもないわよっ!!」

「そう?なんか顔が赤いよ、大丈夫?」

「.....(この鈍感っ!!)なんでもないって言ってるでしょっ!!」

なぜか咄嗟にシンジに平手打ちを浴びせるアスカ。

バシン!!

.....といい音がするはずだったのだが、狙った目標を逃さないはずのアスカの右手が空を切る。

「...へ?」

どさっ

カーペットの上に倒れるシンジ。完全に酔いつぶれていたのだ。

「あ、こら、ちょっと、シンジ、大丈夫?」

「.....うう〜....Zzzzz」

「......(やれやれ、ね)」

その無防備な、安心しきった安らかな寝顔を見た瞬間、怒る気も完全に失せてしまった。






















朝日が窓から差し込む。

「う......」

まだ少し意識がはっきりしない。ここは?

....あ、そうか、お酒飲んで、酔って....あれ??

シンジは頭の下の感触が変なのに気付いた。

「.........???.....................!!!!」

上を向いた瞬間、視界いっぱいに飛び込んでくるアスカの寝顔。

「(こ、これは.....)」

そう、男なら一度は憧れるであろう行為、「膝枕」だっ!しかもアスカのっ!
この幸せ者。

ぼんっ

という効果音がぴったりな勢いで真っ赤になるシンジ。

「ん?...あ、シンジ、おはよう」

「あ、あ、あ、アスカ、お、おは、おはよう」

「....まったく、酔ってその場で寝るなんて、あんたも非常識よねぇ、感謝しなさいよ」

そのままの体勢でこくこくと肯くシンジ。

「ほらっ、いつまでこんな事やらせてんのよっ、片付けするから起きなさい」

少し赤くなりつつアスカが言う。

「あっ、ご、ご、ごめん」

慌てて起きるシンジ。

「ほら、あんたお皿洗って、あたしは瓶片付けるから」

「う、うん」

「それと、今日は買い物に行くから、あんたも来るのよ」

「え?僕が?何で?」

「決まってるじゃない、荷物持ちよ」

「ええ〜?」










にぃっと笑ってアスカが言う。

「アタシの膝枕は高くつくわよ、覚悟しておきなさい」



















おわり




NEXT
Version-1.00 1997-12/04公開
感想・叱咤・激励・「おいおいこれで終わりかよバカたれ」等は こちらへ

あとがき

とうとう長野にも12月2日、初雪が降りました。やっぱ奇麗ですね。雪は。
なぜか雪を見ていると、ビールが飲みたくなってきません?(←お前だけだって)

ま、そんなこんなでその思いをそのまんまSSにしてみました。
まぁ、この3人が酒を飲むというネタはいつか書こうと思っていたんですが。

でもこれでまた1つ持ちネタを使ってしまった....ストックないのに(笑)

「或は〜」の方がLAS要素いまいち薄くてLASな人に申し訳ないので、サービスの意味もあります。けど....えらくあっさり風味だな、これは(笑)

#おそらく「物足りねぇぞ」の声多数と思われる。どきどき。

でも、彼らにはこうして不器用ながらも平凡な日々を生きて行って欲しいんです。ええ。
それにしても....マフラーもいいが膝枕もいいなぁ...(寂しすぎるぞ→俺)

今回、電波来ちゃってる綾波のセリフは、たまたま手元にあった「NEW TESTAMENT(新約聖書)」から引用しました。たまには役に立つじゃん、聖書(笑)

#昔、英語の授業で配布されたんです。俺はクリスチャンじゃないよ。

このSS執筆時のBGM−CD:「A(エース)」(電気グルーヴ)

さんごでした。


 さんごさんの『そんな僕らの不器用な生き方』、公開です。
 

 長野では雪が降りましたか。

 大阪では雪は無かったものの
 いきなり冷え込んで・・・。

 前の日まで「上着を着るとちっと暑いな」でしたが、
 今日は「セーター欲しいぃぃぃ」になりました(^^;
 

 たぶん長野の方にいわせると
 全然大したことのない寒さなんでしょうね。
 でも、
 堪えました・・。
  真っ赤なジャンバーを衝動買いしてしまった(^^;;;

 うう、鍛えなければ。
 

 

 ひざまくら・・・

 あぁ・・暖かいんだろうなぁ
 体も、そして何より、心も。
 

 ストレートな言葉が出せない二人ですが、
 今日はちょっと素直になれたかな(^^)
 

 レイちゃんのことはこの際忘れておきましょう(爆)
 

 

 さあ、訪問者の皆さん。
 記念SSをいっぱい書いているさんごさんに感想メールを送りましょう!


めぞんに戻る/ TopPageに戻る/ [さんご]の部屋に戻る