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NEW TYPE EVANGELION

第弐拾八話
永遠への旅立ち


「さぁ、行くよ。兄弟達」

シンジの学生服を借りているカヲルは上半身裸となり、NERVのカタパルト上にたっていた。
そこは宇宙空間。
普通の人間ならばノーマルスーツ(宇宙服)辺りを着用しなければならない空間。
カヲルはそれさえも付けていない。
すなわち、普通の人間ではないことを指し示していた。

「成る程ね、僕のコピーとはよく言った物だ」

カヲルが言うとおり、ゼーレ最後のシ者は風貌をカヲルと同じにしていた。
違うのはまさに服装だけと言っても過言ではない。

「果たして・・・勝てるかなぁ」

フッとした笑みをこぼす。
余裕の現れか、それとも諦めから来る微笑か。

「さ、やろうか」

カヲルの戦いが始まる。
シンジ達は見守ることしかできない戦いが。




ヒュン・・・ヒュン・・・

コピーカヲルから繰り出され続ける光球。
その光球はATフィールドから生成されているため、一かすりすればその部分を剔りかねない。
しかし何のことはない。
カヲルは自身の翼を駆使して難なくよけている。
いや、避けるだけといっても言い。
カヲルは何の反撃もしていなかった。

「まずいねぇ。彼らの方がパワーが上だ」

力の差を認識する。
ただ逃げているだけのカヲルではあったが、こういう作業はそつなくこなしていた。

「それも当然か・・・っと、危ない」

間一髪の所で回避をする。
だが、光球は次々とコピーカヲルより放たれ続ける。

「んっ!・・・・危ないじゃないか」

避けている・・・が、当のカヲルはただ避けているだけではなかった。

「さて、そろそろ僕も反撃に映らせてもらうよ」

カヲルもコピーと同様、光球を創造する。
その大きさは異なる、光球を。

一方、その戦いを観測しているNERVでは。

「エネルギー計数が増大しています・・・観測できませんっ!」
「何なの?・・・彼は・・・」

カヲルに対し、疑念を抱き始めていた。
そこですかさずリツコが彼に対する疑念をはらそうと言葉を発する。

「知っているでしょう?彼はあの使徒と同じ」
「それくらいは分かっているわよ。ATフィールドを自在に操っているんだから」
「なら・・・何故?」
「そのATフィールドの強さに疑問を感じるのよ。今まで戦った使徒のATフィールドとは比べ物にならないじゃない!」
「そうね・・・でもそれも彼がどういう存在かで納得は出来るわ。使徒であり、かつ人間であるという事実に対して」
「人間・・・人間に直接使徒の能力を与えた結果・・・彼がその事実・・・」
「そう。おそらく彼だけが成功例なんでしょうね」
「他にも成功したら・・・」
「NERVなんてひとたまりもないわ」
「ならいま戦っている相手は・・・」
「単なるコピーね。粗悪品も良いところだわ」

リツコはコピーカヲルをそう判断した。
だが、ゼーレの側はそう思っていない。
オリジナルを忠実に複写し、なおかつオリジナル以上の力を与えた。
そう思いこんでいる。

「結果、オリジナルの力を過小評価しすぎたのね。敵さんは」

それもまた事実。

そして場面をカヲル側に戻す。

「・・・・・・消えてくれ、僕の兄弟達。その枷のため、誤って生まれた兄弟達」

カヲルの頭上には自身の2倍はあろう、光球・・・いや、光弾が鎮座している。
今まさに爆発したいと願っている光。
それは奇しくも超新星爆発を連想させる。

「・・・・消えるんだ、そして・・・さよなら、数時間だけの兄弟達」

光は5人の兄弟を包み込み、やがて辺りを宇宙の闇と同化する。
そこに彼らの肉片はひとかけらも残ってはいなかった。
光弾が爆発すると同時にディラックの海が発生。
園にある物全てを飲み込んだ後、消滅したためだ。








「・・・出せ」
「はい」








「消えたか・・・」

そう呟くカヲルの頬には涙が伝わってくる。
しかし、涙はしたに伝わることはなく、その場で水泡と化していった。
宇宙であるが故、涙はさらに哀しくなる。




「・・・兄さん・・・」
「っ!」

突如カヲルの前に現れた純白の衣装、翼、体をまといし女神。
女神と呼ぶにふさわしい彼女。
純真無垢という言葉が一番に合うであろう、彼女。

「・・・生まれるはず・・・・・無い・・・・」

驚愕の表情を生まれて初めて見せているのは、未だに宇宙空間で悲しみにふけっていたカヲル当人。

「でも私は生まれた。そして兄さんの目の前にいる」

カヲルと同じ顔を持つ。
だが、先程のコピーとは違い、カヲルに驚愕を与える彼女。
名を『カオル』。
生まれるはずのないカヲルの双子の妹。
使徒の力を得たため、女性に変化することが可能となった原因の一部。

「そして私は兄さん達を・・・殺すために生まれてしまった」

カオルの瞳はどこか哀しげだ。
何を物語っているのだろう、今にも泣き出しそうな瞳をしている。

「カオル・・・本来生まれてくるはずであったが、僕に全てを奪われてしまった妹・・・」

カヲルの母親は双子をその身に宿していた。
だが、生まれてきたのはカヲルのみ。
カヲルの特異な能力が彼女自身をこの世から消してしまった結果となっている。

「そう、奪われたわ。でも・・・あの方が私に生を与えて下さった。ガフの部屋に残っていた私の魂を拾って」
「僕の・・・コピー?」
「そう言ってしまえば身も蓋もないわ。でも・・・貴女と同じ遺伝子構造を持っていたとしても、私は女」
「決定的に違う訳か」
「そう。そしてさらに違う点があるわ。それは・・・貴男より強いということ」

カオルの周囲にATフィールドで作られた光球が無数に発生する。
カオルがそれを生成した後、右手をカヲルの方向に向けた。

ヒュンヒュンヒュンヒュン・・・

「くっ・・・!」

光球は全てカヲルの横を通り過ぎ、NERVに直撃する。
大した損害はないが、ブリッジには警報が発令された。

「直撃っ!・・・NERVの装甲が10%消失しました」

マヤが被害状況を逐一知らせる。
が、それを聞いている物はいなかった。
全員カヲルとカオルの戦いに目を奪われてしまっていた。

次々とカオルより繰り出されていく光球。
今はその全てをかわしきっているカヲルだが、かわしていく光球がNERVに当たっていることなど念頭にない。

「やめろっ!やめてくれっ!」

初めてあげるであろう、怒号。
カヲルにとって彼女はその様な存在なのである。

「だめ・・・『本心』は止めようとしているけど・・・私の『心』がそれを許さない」

この声を拾っているNERVブリッジの面々は理解していない。
だが、カヲルは思っていた。
『カオル自身はやりたくない』のだと。

「なら・・・その『本心』に負けないでくれ、カオル」
「それも無理な話・・・私の枷は絶対なの・・・」
「くっ・・・」

その間にもカヲルに向かって攻撃が繰り出され続けている。
その全てをかわしても、その全てはNERVに直撃している。
今やNERVからはかなりの白煙が上がっている。

「枷を・・・外すしかないの・・・か・・・・」

諦めの表情を見せるカヲル。
その枷を外す手段を彼は知っている。
知ってはいるが、やりたくない手段であった。

「貴男に私の枷を外すことが出来るなら・・・やってみて」

カオルもそれを促す。
自身の枷を外してくれと。
だが、言葉とは裏腹に攻撃は止まない。

「くっ・・・・わ、分かったよ・・・カオル・・・」

カヲルが動きを止める。
その間隙を縫って、カオルからの攻撃が繰り出されるがそのほとんどはカヲルに当たらない。
当たったところと言えばカヲルの頬くらいの物だった。
そのカヲルの頬からは一陣の赤いシミ・・・・カヲルの血があふれ出す。
彼のその白い頬から赤い血があふれ出している。
体外に出された血は、宇宙であるが故に下へと流れ落ちずに、そのまま球体を成す。

カヲルの髪が靡く。
カオルからの攻撃の慣性により、単に靡くように見えるだけだが、それすらもカヲルの風貌を
格好良く・・・シンジ達の目から見ればその様に感じさせていた。

「忌々しい・・・奴のせいでどれだけの人間が苦しめられたのだろう・・・」

カヲルは黙々と独白を続ける。
その間も攻撃は止まない。

「自身の飽くなき欲望、そのためにどれだけの生命が苦しめられたのだろう・・・」

カヲルが見ている物、それは妹ではなく、その後方にある輝く星。

「全ての生命の代わりにシンジ君達がやってくれる・・・僕の代わりにも・・・」

声を拾っているNERVのブリッジでは、その独白に聞き入っている。
辺りは静まり返っていた。

「・・・終わりにしよう、そして・・・僕の元へ。カオル・・・」

瞬時。
カヲルは妹の眼前に現れた。

「なっ!」

驚愕、そして怯えの表情を表すカオル。
すぐさま右手より光球を放った。
それは・・・・・カヲルの腹部を貫通する。

「くはっ・・・」

カヲルの口から血が漏れる。
しかし、それでもカヲルから笑みはこぼれない。
それどころか痛めた腹部に手をはわせることはなく、代わりに妹の頬に両手を添えた。

「カオル、止めようね・・・・・・・」

カヲルはそのまま唇を彼女の口に合わせる。
カオルの方は目を見開き、一瞬右手から光球を放とうとするが、それもかき消えてしまう。

「・・・・・・・」

何時しかカオル自身もその行為にもたれ掛かっていた。
全てをカヲルに委ねてしまった・・・・と言う感じになる。

そして一時の後、唇を離したカヲルはカオルの表情を見る。
彼女の表情は虚ろ・・・と化していた。
その体から力は感じなかった。
自身の体から力がそがれていくのは、感じていた。

「くぅっ・・・・はぁはぁはぁ・・・・ちょっと・・・やばいかなぁ・・・・これは」

腹部を押さえ、流されるまま辺りを漂うカヲル。
二人の辺りの空間は、静まり返っていた。

そして・・・

「ぁぅ・・・・・・ぃ、ぃ・・・・・・・・あぁぁぁぁぁっっっっっ!!!!」

いきなり発せられる苦悶の声。
その声はカオルから発せられていた。

「なっ!」

カヲルが見た物・・・・それは自身の妹が苦しんでいる姿。
頭を抱え、目を見開き、翼からは次々と羽根が抜け落ちていく。

「はぁはぁはぁ・・・・あっっっっっっぅ・・・・・・」

彼女が受けている苦痛。
それは『予防措置』。
カヲルの妹の魂であることを認知しているため、『裏切り』という行為に対して『予防措置』をとっていた
惑星ゼーレの思惑。
それが彼ら兄妹の苦痛となるであろう事を予測して。

「っっっ!!!」

始めてみせるカヲルの怒りの表情。
その怒りは全て、惑星ゼーレの方に向いていた。

「か・・・カオル・・・・」

その怒りを一時放ち、カオルの安否を確認するために彼女の所に行くカヲル。
そこで彼が見た物は・・・『予防措置』が取られた後のカオル、彼女の姿であった。

「そんな・・・・・・・」

彼女は既に精神を構築できるだけの心を持っていなかった。
魂はまだその肉体に宿っていたが、その心は何も求めようとはしていない。
まさに『植物人間』・・・イヤ、既に心が直る見込みはないのでそれ以下の物に成り下がってしまった。

カヲルは彼女を抱きかかえ、ただ泣く。
彼にはそれしかできなかった。








「彼の体は人間のそれと同じよっ!速くICUへっ!」

NERVに戻された彼ら兄妹は、カヲルはすぐさま集中治療室へ。
カオルは一般病棟のベッドへと移送された。
その傍らで心配そうな顔をしているシンジ。
そのシンジを見守っているアスカとレイがいることを追記しておく。

「カヲル君・・・・・」

















「全てを失う・・・・・か」
「しかし・・・我々にはまだ戦力があります。更なる作戦を・・・」
「・・・勝手にしろ。私は私でやることがある」
「御意」

既に双方とも消耗戦でしか無くなってきている。
無意味な戦い・・・・それは惑星ゼーレの王だけでなく、NERVの面々もそう感じ始めていた。

しかし、ゼーレの配下達はそう思っていない。
のこされた戦力を持って、NERVに戦いを挑もうとしている。
いかに無意味な戦いであったとしても。








「敵反応増大中っ!」
「全パターン解析・・・・パターンオールブルーっ!」
「数は・・・補足し切れませんっ!」

ゼーレ側は全戦力を今回の戦いにつぎ込もうとしていた。
それに答えるべく、ミサトは命令を下す。

「全エヴァ、発進っ!」

NERVより射出されるエヴァ。
ゼーレとNERV、その中間空域で戦おうとするが、それをさせようとしない意図が現れた。

「敵生命体よりエネルギー反応!これは・・・ディラックの海です!」

レリエルより生成されるディラックの海。
その虚数空間にシャムシェル、マトリエルと言った近接戦闘用の使徒が入り込む。
当然目的地はNERVのすぐ近く。

「使徒、ネルフに取り付いて・・・・うわっ・・・・」

いきなり起こる揺れ。
それは奇しくもマトリエルが取り付いたためであった。
そのマトリエルはすぐさま自身の武器である、溶解液をNERVの装甲に垂れ流す。

「左舷装甲破損っ!」

つづいてシャムシェルがその光の鞭で装甲を破壊する。

「上弦装甲10%ダウンっ!」

エヴァが行きすぎてしまったため、NERVが窮地に追い込まれてしまっていた。
それを確認するやいなや、全てのエヴァはNERVを目指す。




「冬月先生・・・・・」

アラームで辺りが騒然としている中、ゲンドウがいきなり口を開いた。

「そうだな・・・・分かったよ、碇」

ゲンドウの一言を理解し、冬月は次なる行動に出るための準備を始めた。
そしてゲンドウは引き出しより、一枚の布を取り出し、最愛の妻であるユイの元へ行く。

「ユイ・・・・・」
「・・・・?」

きょとんとした表情で夫を見上げるユイ。
刹那、ユイは夫の信じられない行動に目を見開く。

「済まない・・・・ユイ・・・・」

ゲンドウは布をユイの口元に張り付けていた。
奇しくもその布には睡眠薬が付着している。
すぐにユイは眠りに落ちた。

「葛城君、赤木君、ユイを・・・頼む」

ユイを預けたゲンドウは冬月と共に有る場所へと進んでいった。

「何・・・かしら・・・・」

その行動を予測できないミサトは、ユイの安否を気遣うリツコに尋ねた」

「分からないわ・・・・・私にも」








「済みませんね・・・・冬月先生」
「何、かまわんよ」

ゲンドウは慣れた手つきで計器を作動させる。
作動していった計器からは次々と光を放ち始める。

「では・・・行きましょうか」

彼らが乗ったNERVの揚陸艇はNERVの射出口より発進する。
その揚陸艇は普通の物とはちょっと違った一面を持っていた。
すなわち、『小型縮退炉』を内蔵していると言うこと。
つまり小型のブラックホールなら簡単に生成できるという点である。








そのものを見たとき、シンジは信じられない物を見た感じがした。
父親の乗った揚陸艇が敵のど真ん中めがけて発進していったのだ。

「なに・・・・何をする気だっ!父さんっ!」

『・・・・・・』

その返事を返すことはなかった。

「返事をしてくれよっ!父さんっ!」

『・・・・・・』

そして・・・敵のど真ん中にある揚陸艇は・・・・・・・

カッ!

一つの光を放ち、消えていった。

「父さぁぁぁぁぁん!!」


To Be Continued



NEXT
ver.-1.00 1999_12/31
ご意見・ご感想は y-mick@japan-net.ne.jpまで!!
次回予告

エヴァンゲリオン全機が覚醒する。
そして・・・全てが終局へと導かれる。

次回、
NEW TYPE EVANGELION 第弐拾九話 奇跡



あとがき

何とか年内に一本・・・公開していますよね?>大家さん(笑)

とにかく、これが今年最後の作品となります。

では内容について。
カオルですが・・・・・オリジナルですが、女の子バージョンのカヲル君だと思えば間違いないです(爆)
出す必要があるのか?と聞かれたら「無い」と答えるしかないのですが・・・
まぁ私の思いつきだと思って下さい(笑)

今回シンジ×アスカorレイや、トウジ×ヒカリ、ケンスケ×マイコなどの絡みは”全く”ありませんが(汗)
おそらく次回、さらに最終回では盛りだくさんになる・・・・・予定です。
その辺りは来年になってしまうでしょうね。

では、みなさん、Y2KでPCを壊さないよう・・・・(ぉ
また来年です。






 Y-MICKさんの『NEW TYPE EVANGELION』第弐拾八話、公開です。







 カヲルく〜ん

 カオルさ〜ん


 そして


 ゲンドウさ〜ん

 コウゾウさ〜ん




 佳境です。
 エンディングへまっしぐらです。



 これからは次々にこうなるのかな



 大丈夫だよね?大丈夫だよね?大丈夫だよね?

 ってことで次回を待つのです。




 さあ、訪問者の皆さん。
 1999の締め、Y-MICK さんに感想メールを送りましょう!









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