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NEW TYPE EVANGELION
第弐拾七話
ゼーレ
「パターン青っ!」
青葉シゲルから発せられた言葉は、あたりを静まらせる。
周りの人間からは驚きの表情を隠せない。
無理もない。
先程まで死闘を演じていたのだから。
「日向君、使徒の固有パターンは?」
「はい・・・MAGIによると『ゼルエル』との一致率が99.89%。ほぼ間違いないですね」
「そう」
ミサトは自身の指を顎に当て、作戦部長としての仕事、すなわち作戦立案に没頭する。
しかし・・・
「・・・・マヤちゃん、各エヴァの状態はどう?」
「そうですね・・・エヴァ初号機改以外は中破ですから・・・」
「成る程ね・・・分かったわ」
ミサトの中で結論が出た。
そして日向マコトの脇にあるマイクを取ると、少年に向かって命令を下す。
「シンジ君、ケイジにて初号機改に搭乗、良いわね?」
『・・・・はい』
控え室で椅子に座り、目を閉じていたシンジに動きが出る。
シンジはすでに先の戦いの結果、内容を把握している。
それをふまえた上でのシンジの表情。
何か『決意』と呼べるものを発しているようであった。
「エヴァンゲリオン初号機改、発進!」
初号機改がカタパルトデッキに出される。
使徒との距離は約2000。
カタパルトによって射出されることにより、その距離は約500まで縮まる。
そこが、戦闘空域となりうる場所。
『・・・・・』
しかし、当のシンジは落ち着いている。
そこが彼の死に場所となるかもしれないと言うのに・・・
「距離を保ち、パレット・ライフルWの一斉射撃、良いわね?」
ミサトからの命令は彼のエントリープラグまで聞こえているはずだが、
彼は目を閉じ、復唱をしようとしない。
「どうしたの?シンジ君。聞こえないの?」
『・・・・・・』
「・・・初号機のエントリープラグ、どこか故障している?」
「いえ、何処も故障はありません。全て正常に作動しています」
「・・・シンジ君?聞こえているはずよ。復唱をしなさい」
業を煮やしたのか、ミサトの声が高まる。
『そんなに声をあらげないでも聞こえていますよ、ミサトさん』
「シンジくんっ!あなた何を考えているのっ!」
『心配しないで下さい。ただ・・・ミサトさんの作戦ではダメです。効果がありません』
「作戦部でもないあなたに何が分かるの?良いから言うとおりにしなさい!」
『分かりますよ。アイツは・・・こうしないと倒せないっ!』
シンジが唐突に気合いを出し始める。
その気合いに応じてか、初号機からも気が発せられる。
ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ
いつしかその『気』は、初号機を包み、初号機を黄金に輝かせ始める。
そしてその背中には6対、12枚の羽・・・堕天使ルシフェルを彷彿とさせる容貌へと変化していた。
「分かっている・・・分かっているよ・・・・『初号機』」
未だに目を閉じているシンジ。
だが、すぐにそれは開始される。
戦闘という彼にとっては忌まわしき演舞が。
ガキィガキィガキィ
キィン・・・キィン・・・キィン・・・
戦闘開始よりすでに10分。
パイロットのシンジはもう既に息をあらげ始めていた。
初号機改がその手より光球−ATフィールドの弾丸−を放てば、ゼルエルはそれを難なくかわす。
時には自身の手で弾いたりしている。
一方、ゼルエルが光線を発射すれば、やはり初号機改も難なくかわす。
はやり時にはATフィールドで防いでいたりしている。
初号機改が殴りかかれば、ゼルエルはかわしたり手でなぎ払ったりする。
ゼルエルもカッター状の手を初号機改に向ければそれがやはりふせがりたりしている。
一進一退の攻防・・・ではなく、戦闘は消耗戦と化していた。
だが、S2機関搭載のゼルエルに対し、初号機改はパイロットが居る。
そう、シンジの方が消耗率が高い・・・すなわち一方的に消耗している。
分が悪いのは誰の目から見ても明らかだった。
「(どうする?・・・・ここはニュー・エヴァ弐号機を出す・・・・?ダメだわ。それではかえってシンジ君の足手まといになってしまう・・・)」
思案に暮れる葛城ミサト作戦部長。
「(ならば損傷の少ない参号機を・・・これもダメね。鈴原君じゃ・・・)」
一方、司令の席に座っているゲンドウも同じように思案に暮れている。
「(いかんな・・・おそらく奴らは我々の消耗を狙っている・・・となると考えられるのは更なる戦力)」
「いかんぞ碇・・・このままでは・・・」
とうとう冬月が口を出し始めた。
「あぁ・・・冬月、初号機改が落ちるようなことが有れば・・・」
「分かっているよ、”縮退砲”、準備させておこう」
「・・・たのむ」
ニュー・エヴァ初号機のブラック・ホール・キャノンとはその威力を異なる縮退砲。
前者は惑星を破壊しかねない兵器だが、後者は惑星を”消滅”しかねない兵器。
ゲンドウや冬月が使用をためらう理由もうなずける。
”消滅”により、星系の重力バランスを狂わしかねないのである。
一方、初号機改とゼルエルとの戦いは15分に及んでいた。
「はぁはぁはぁ・・・くぅっ!」
次第にゼルエルの方に分が上がっていくこの戦闘。
いい加減、シンジも疲れを感じ始めていた。
「くそっ・・・ダメなのか?これでもっ!」
シンジは考えられる限り最大の攻撃を繰り出し続けている。
しかしゼルエルはそれを物ともしていない。
逆にゼルエルの方は余裕さえ伺えるほどであった。
「あああっっっ!!」
初号機改の両腕より光球が放たれる。
だが・・・
・・・・・・・
損傷すら与えられない初号機改の攻撃。
仮に当たったとしてもゼルエルの自己修復により、たちまち元通りになってしまうだろう。
「くそっっ!」
あきらめかける・・・
シンジの顔に失意が現れ始めた。
「(どうする?どうする?どうする?どうする?・・・・・・)」
ミサトに考えは浮かばない。
何も浮かんでこない。
ブリッジに鳴り響く初号機改からのアラーム音が、さらにミサトを圧迫し続けていた。
「ダメか・・・・もう・・・・いやだな・・・・」
決着はついた。
初号機改の惨敗。
ゼルエルの側は傷一つついていない、まさに一方的な戦闘であった。
「ごめん・・・・・アスカ・・・・・・レイ・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
次第に意識が混濁していくシンジ。
徐々に閉じられていく瞼。
彼の搭乗しているエントリープラグは、所々に亀裂が発生していた。
そしてシンジの意識が完全に闇へ落ちた後には、プラグから発生されるアラーム音のみ、その空間を支配していた。
肩口より腕が崩壊する。
腹部より爆発が生じる。
頭部は既に半壊。
あたりは青色の体液が取り囲んでいる。
目は既に光を失っている。
MAGIはその戦闘箇所からの生体反応を関知しなかった。
既に・・・・
戦闘は終結していた。
使徒ゼルエルの自己崩壊により。
「リツコ、先の戦闘の詳細、分かる?」
安息の雰囲気が漂うNERVブリッジ。
傷ついた初号機改及びシンジを収納した後、シンジはすぐにNERV内の病院へ直行。
当然アスカとレイがいの一番に駆けつけたのは言うまでもない。
そして一息ついたところで、ミサトがリツコの元に雑談のためやってきたという次第。
「そうね・・・あなたはどう感じるの?」
「ん・・・自爆ね」
「そう。それで大方間違っていないわ。詳しく言えば自己崩壊。何らかの過負荷により、自滅したのね」
「その過負荷の原因、分かっているの?」
「完全には分からないわ。予想は出来るけど」
「その予想でかまわないから話して頂戴」
「分かったわ・・・その前に」
リツコは席を立ち、珈琲を入れ直す。
自分の猫のイラストが入ったマグカップに並々と注ぐ。
「・・・・ふぅ」
珈琲を口に入れ、語りの準備が整う。
「前の戦闘は覚えているわね?ミサト」
「えぇ。アスカが縦横無尽に駆けめぐり、勝った戦闘でしょ?」
「違うわ。さらにその前。シンジ君とゼルエルとの第1戦闘よ」
「あぁ、そっちね。確かあの戦闘はシンジ君の勝利だったわよね?で、ゼルエルが命辛々逃げ出した・・・」
「そう。その命辛々って言うのが私の予想」
「?・・・どゆこと?」
「ゼルエルは命辛々母星へ逃げ帰った。その母星で待っていたのは当然パワーアップ。短期間の」
「成る程・・・そのパワーアップが敗因ね」
「確かに初号機改に勝つには自身のパワーアップしかないわ。でもそのパワーアップが問題ね」
「短期間に行ったため、今回のようになった訳ね」
リツコがここで珈琲で喉を潤した。
それにつられてミサトも一口珈琲を飲む。
「でも・・・」
「でも何?」
「あちら側だって無茶なパワーアップだというのは理解しているはず・・・それをあえて行ったと言うことは・・・」
「考えられるのは2つね」
「聞かせて頂戴」
「一つはあちら側にもう戦力が無く、危機に迫って仕方なくパワーアップを行った。こちらならまだ私たちに勝機はあるわ」
「えぇ」
「もう一つは危険ね。単なる時間稼ぎのため」
「時間稼ぎ?」
「あちらの最大の戦闘能力を持つ物がまだ完成していなく、時間が欲しかった場合・・・最悪よ」
「ゼルエル以上の敵が待ちかまえている・・・」
ミサトの機具はまもなく実現する。
最後の使徒・・・ゼーレからのシ者により。
「惑星ゼーレよりATフィールドを感知っ!」
「その数5つ!」
「パターン解析・・・・パターン・・・アンノウン・・・解析できませんっ!」
ATフィールドのパターンを検知しているメータは、振り切られていた。
先の戦闘におけるATフィールドでもそのメータの半分あたりまでしか届いていない。
それが今回は振り切られている・・・しかもそれが5つ有る。
「・・・来たわね・・・さぁ、どうしましょうか・・・」
NERVが保有している戦闘能力のうち、およそ80%は使用不能に至っている。
唯一使用に耐えられる兵器はニュー・エヴァ初号機、縮退砲、エヴァ参号機+E−BIT、
残っている陽電子砲10門ほどであった。
「さて・・・どうする?”縮退砲”、使うかね?」
「そうだな・・・」
『少々お待ちを。碇司令』
「?」
突然、ブリッジのスピーカーから音声が届く。
その声は聞き覚えがあった。
「誰だ?」
ぶっきらぼうに尋ねるゲンドウ。
「誰よ」
ミサトも同時に尋ねる。
『いやですね・・・僕の存在を忘れていたんですか?』
その姿がメインスクリーンに映し出される。
銀髪、紅眼、白く透き通った肌。
そして一番目を引くのが真っ白な翼。
『あいつらは僕が何とかします。ですからそこでお茶でも飲んでいて下さい。みなさん』
悠々。
まさにこの言葉がぴったりな口調でしゃべるカヲル。
そこへタイミング良く飛び出してくる声もある。
「カヲル君っ!」
メインスクリーンに向かって怒号を発するシンジ。
彼は気がついたと同時にここ、ブリッジに向かって駆け出していた。
もちろん、彼の息は荒い。
そしてアスカとレイもまた、息荒く、シンジについてきた。
「カヲル君っ!何をしているんだよっ!」
『シンジ君・・・心配してくれるのかい?』
「そう言う事じゃないんだよっ!何でカヲル君が戦いにでるんだよっ!」
『そうだねぇ・・・シンジ君のため・・・っていうのはどうかな?』
「巫山戯ないでよっ!カヲル君っ!」
『巫山戯てなんか無いさ。僕は真剣だよ?』
「じゃあ何で・・・戦うなら僕たちだけで良いのに・・・カヲル君が戦う必要はないのに・・・」
『必要はあるさ。元々この戦いは僕らが引き起こしたんだ。だから僕も戦うのは当然だよ』
「そんな・・・カヲル君・・・死ぬかもしれないんだよ?」
『死なないよ・・・シンジ君に抱いてもらうまではね』
顔を赤くするシンジと、にっこり微笑むカヲル。
そこへ当然のようにアスカが割り込んできた。
「ちょっと!シンジに抱いてもらうのはアタシ達だけっ!アンタはダメよっ!」
『何故だい?良いじゃないか、僕もシンジ君に抱かれたいからね』
「ダメったらダメ!シンジはアタシ達だけの物よっ!」
『ふぅ・・・君たちも頑固だねぇ・・・』
「当たり前よっ!」
『ま、その話はこの後だ。いい加減彼らも待ちくたびれているからね。そろそろ行くよ』
「カヲル君・・・・頑張って」
『ありがとう。シンジ君』
遠き星、惑星ゼーレから地球にやってきた少年(?)カヲル。
彼の戦いが始まる。
この戦いが彼が彼足る理由の一つとなっていくために。
「さぁ・・・行くよ、兄弟達」
カヲルの向かう先には彼と同じ風貌の人間(?)が5人。
全て銀髪、紅眼、白い肌、そして純白の翼を携えている。
「良くやってくれたな・・・ゼルエルは」
「はい。良い時間稼ぎでした」
「で、肝心の『カヲル』達の出来は十分だな?」
「はい。マインドコントロールは完璧です。彼らの思考は完全にこちらでスキャン、コントロールできます」
「当然、戦闘能力はオリジナルの『カヲル』より上だな?」
「もちろんです。先のゼルエルより戦闘能力は153%アップしています」
「いい加減あの戦艦も目障りだからな。良いか、塵一つ残すな」
「御意」
空間が暗転し、コピー『カヲル』が映し出される。
戦闘はまもなく開始される。
To Be Continued
次回予告
惑星ゼーレからの猛攻撃。
戦艦NERVは反撃に移るが、それも間に合わないでいた。
NERVが沈もうとするとき、命を賭(と)した攻撃が繰り出される。
次回、
NEW TYPE EVANGELION 第弐拾八話 永遠への旅立ち
次回、命の駆け引きが行われる。
あとがき
作者もてっきり忘れていた(爆)カヲル君で”つづく”です。
戦闘の方は次回につづくカヲル君vsカヲル君、そして当然、ラスボスはおります。
まぁ・・・誰だかはすぐにわかるでしょう。
その戦闘の前にもう一つ、戦いを入れて、エンディングへ走ります。
全参拾話。残り3話です(汗)
Y-MICKさんの『NEW TYPE EVANGELION』第弐拾七話、公開です。
無理しちゃいかん。
そう、無理しちゃいかんのよ〜
仕事も家も、
親にも友達にも。
ゼルエルどん、仕事に無理すると身を滅ぼすよって、・・(^^;
使命か
指令か
守る物のためか、
ゼルエルさん・・・・
今まで主力だと思っていたゼルエルがただの時間稼ぎの捨てごま。
いや〜、これは大変ッス。
コピーカヲルの力とは!?
オリジナル、頑張って下さいです。
自分のために友のために。
さあ、訪問者の皆さん。
佳境、Y-MICK さんに感想メールを送りましょう!
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