ここからは、ブラウザーの機能を使って逃げてください。

 

 

二人の葬儀当日、集まった人々は皆一様に悲しみを述べあるいは悲しむ人を慰めて

そして、またすぐ自分の生活へと戻っていった。

彼等、あるいは彼女等はまるで何事もなかったかのように生活を再開した。

 

 

 

ゼーレにまたしても呼ばれて、辟易しながらも冬月はその場所にいた。

「冬月、なぜこのような事態がおきた?。」

キールは冬月を責めた。

実際彼等は、人類補完計画の成功した今そのような事態がおきるとは思っていなかった。

「わかりませんよ、議長。」

冬月は、かつての総司令ゲンドウの様に手を顔の前で隠し心を気取られないように答えた。

「とにかく、依童の子供二人の死とそこまでの行動が不可解だ。

なにかあるのではないのか?。」

委員会の一人が聞く。

「依童にされた時点であの子供達がその後どうなるかは考えてもいなかったでしょう。」

 

 

 

マヤは鑑別所のとある個室の前に立っていた。

そこには、二人を刺殺した鈴原トウジが力無く座っていた。

「鈴原君、なんであんなことをしたのか答えられる?。」

マヤは、わずかな時間で数え切れぬ程同じ質問をした。

だが、トウジは虚ろな表情のなかただ目だけを異様に光らせて座り続けている。

「いいわ、また明日きます。」

そう言って、マヤが立ち去ろうとしたとき

「伊吹さん…。」

トウジがおもむろに口をひらいた。

「なに?。」

「あいつらな、わしに刺された時、二人とも嬉しそうな顔しとってん。

なんでやろな。」

その言葉はマヤに一つの思いを抱かせた。

だが、有ってもらっては困る。

「あいつらな、わしが復讐にきたと知ってよろこんどったみたいや。」

マヤは自分の鼓動の音が体の中にいっぱいに広がるような錯覚を感じた。

ありえない。

そう思っていた。

「伊吹さん、あいつらあんときなにがあったんや。」

マヤにはその時の記憶はない。

いや、ネルフの誰もその時の記憶はなかった。

「わ、からないわ。」

その一言が精いっぱいであった。

 

 

 

翌日、マヤは同僚の元オペレータの日向マコトにあい昨日の事を話した。

だが、彼の態度は今のマヤからみるといかにも表面的に見えた。

確かに相談には乗ってくれる。

だが、親身というわけではない。

本気でなにかしてくれそうにはなかった。

マヤは、ある確信を持った。

 

 

 

その日の夕方、マヤは今は人の出入りのほとんどない旧作戦部長室に入った。

その中の葛城ミサトの使っていた机。

鍵のかけられた引き出しをこじ開けると、中に入っていた銃をとりだした。

 

 

 

冬月は、ゼーレから開放されると執務室の自席に座りもの思いにふけっていた。

そのためマヤがきた事にも気づかなかった。

「冬月司令。」

そう呼ばれて顔をあげた冬月の目にマヤが銃を構えて立っていた。

「来たか…。」

待ちくたびれた、そう言いたげに口を開く。

「私が来ることを知っていたんですか?。

あるいは、予想していたとか?。」

「予想はしていたが、誰が来るのかまでは判らなかった。

私は、加持君がくると思っていたのだがな。」

少し、意外そうにそう答える。

「では、アスカちゃんやシンジくんの変貌も予測していたのですか?。」

マヤは、いきなり核心を聞いた。

鈴原トウジの話を聞き、多少なりとも持った疑問。

その答えは司令である冬月は知っているかもしれない。

「いや、そもそも二人がここに存在することすら考えられなかった。」

マヤは昔と違い、銃を手にしっかりと握り冬月からそらすこともなく構えていた。

「伊吹君、あの時のこと、サードインパクトの時のことを覚えているかね?。」

 

 

 

マヤは、執務室を後にした。

自分達が行って来た事、そしてその結果の人類補完計画の発動。

その目的。

 

「今、ここで言った事が全てだよ。

あの二人は、その時点で依童として消えゆく可能性が高いとゼーレは考えていた。

だが、ユイ君はその計画を嫌っていたようだし、碇もそんなことを実行する気も無さそう

だった。

だが、今のこの世界は出来上がった。

伊吹君、君はここ1年他の人を憎んだり、人から憎まれたりしたか?。」

冬月の唐突な質問にマヤは言葉に詰まった。

「でなければ、自分が死にそうな気持ちになるくらい人と接した人物を見たかね?。」

「そんな事は…。」

「無いとは言えないだろう。」

冬月は言葉を足した。

「そういう事なんだよ、伊吹君。

ここには、赤木博士も葛城君もいないのは何故か判ったと思う。」

そう言うと、一呼吸おいてマヤの方に歩いて行った。

「後は、君に託されたな。」

「なんで私なんですか?。」

「わからんよ、そんなことは。」

 

そして、執務室をマヤは後にした。

そんな、大人の無計画に付き合わされて死んでいった人たちは、消えて行った人達は、

そして、壊されてしまった子供達はどうなるのか。

マヤの心を憤りが満たしていった。

 

 

「碇、お前が望んだことなのかわからないが、老人達はぬか喜びで終わりそうだぞ。」

冬月はそうつぶやくと、ボタンを一つおした。

これで、全てのセキュリティが解除される。

 

 

 

マヤは兵器庫へと急いだ。

今の世界では、もはや戦争も起きないであろうと言う国連の判断から全兵器は封印されて

いる。

世界がもう少し落ち着いたら全て廃棄処分にするとの決定もされていた。

冬月のセキュリティの解除によって、扉は難なく開いた。

中に入ると、トレーラーが数台埃を被ってとまっている。

そして、いくつかの武器。

マヤは、N2爆弾を見つけるともっとも手前にいるトレーラーに摘むことにした。

フォークリフトはなんとか動いたが、トレーラーは中々動こうとはしなかった。

「動くな!。」

やっとエンジンがかかった時、その野太い声が兵器庫内に響いた。

声のする方をみると、国連の制服に身を包んだ警備員がこちらに銃を向けて立っている。

マヤは問答無用にトレーラーを急発進させてその警備員に向かって行く。

その警備員は、死ぬことは免れたがもそれで重傷を追っていた。

トレーラーに向けて発砲しようとした彼の目に映ったのはN2爆弾を2つ搭載した荷台で

ある。

彼は発砲をやめ、無線で発令所に連絡をとって息絶えた。

 

 

 

トレーラーは、基地施設最下層部に向かい疾走していた。

不安定に詰まれて居るN2爆弾は、左右に振られていつ爆発してもおかしくはない。

信管も装備しているのだし、普通だったらゆっくりと走るだろうし、目的地につく前に

爆発してしまっては元も子もないだろう。

 

 

「マヤちゃん、どうしたんだ!、そんなことはやめろ!。」

青葉シゲルは同僚の急な変貌が信じられなかった。

だが、マヤは返答しない。

「もう一度言う、引き返すんだ。」

だが、返答はしない。

シゲルはこれ以上の説得を諦めた。

 

マヤはそのすぐに終わった説得を聞き、自分の聞いた事が全て事実であると悟った。

「これ以上かかわって、止められなかったら傷付くのは自分だものね。」

そう、一人つぶやく。

地下最下層部。

アダムが封印されているとされていたところ。

そこは、1年前からほとんど人の往来はなくまた、修復もほとんど無い。

そえゆえ、こんなトレーラーを乗り込ませる事もできる。

 

 

発令所に現われた冬月に気づき、シゲルは報告と事態への対処を聞いた。

「説得は、何回行ったのかね?。」

「は?、2回ですけど。」

キツネにつままれたような顔で答える。

結局、伊吹君だけが影響から抜け出せたのか。

冬月はそう考えた。

「警備班に追わせろ、説得も続けてやるんだ。」

指示をだしたが、別にもうそんなことはどうでもよいことであった。

「やれやれ、やっともどれるかな。」

椅子に深々と腰掛けると、目を閉じた。

 

 

 

トレーラーは、その最下層部、セントラルドグマと呼ばれていた所に到着した。

マヤは、そのなかにトレーラーを進める。

ライトに照らされた、中は1年前と同様に瓦礫にみちていた。

その、部屋の奥の巨大な十字架。

そこには、なにも無いはずである。

少なくとも1年前から。

マヤはトレーラーから持ってきたサーチライトでその十字架を照らす。

そこには、話と違い以前同様巨大な白い人型が磔にされていた。

その、顔の部分。

7つ目玉のゼーレのマスクがかぶされている場所。

そのマスクもほとんど取れかかっている。

マヤは、持っている銃でそのマスクを支えている脆弱なワイヤーを撃った。

が、普段から銃を撃たないマヤには当てる事は出来ない。

「マヤちゃん、もうおしまいだよ。」

聞きなれた声、日向マコトである。

彼は、警備班の先頭にたってやって来た。

「日向くん、もしやめなかったら撃つ?。」

マヤは聞いた。

「僕は、撃てないよ、マヤちゃんだって…。」

その言葉が終わる前にマコトの腹部を銃弾が貫いた。

「私は撃てるわ。」

そう言うと、手元のリモコンを出してスイッチを押した。

「手を離すと爆発します、さがりなさい。」

後方で、なにかが水に落ちる音がした。

見るとゼーレのマスクが落ちて砕けている。

その、マスクのはがれた場所を見る。

そこには…。

一人の警備員がマヤを捕まえようと近づいてきた。

マヤを取り押さえもう一人がそのリモコンを取り上げようとする。

リモコンはマヤの手によってLCLの中に投げ捨てられた。

同時に2つのN2爆弾がそこで爆発した。

 

マスクのはがれた白い巨人もその爆発と共に誘爆をおこした。

マヤが最後に見た、三面にシンジ、アスカ、レイの顔を持った白い巨人。

それは、巨大な逆さ十字の光を再び天に向かって輝かせた。

 

 

刃V


ver.-1.00 1998+03/16公開

ご意見・ご感想、復活のじゅ文などは暗黒物質収集所まで!!


今度は私なんですかぁ?、SOUさん。

まあ、そういう事。

だって、これっていったん作ってから再度書き直してるんでしょう?。

もうすこし良い展開になるかと思っていたのに。

そうそう、いったん書いて14日頃発送しようと思ってたんだけどねぇ。

ついうっかり、某ウルトラマンティガ&ウルトラマンダイナ見てきちゃってなんか

変えてしまった。

それでも、こんな展開なんですかぁ?。

うーん、前のバージョンにする?、君が冬月殺したり、トウジを手伝わせるとか、

最後には…。

いいです、これで。

そう、んじゃここらで光よおっ!



光よおっ!
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