NERV本部内に、ひそかに遺体が運び込まれているのと同時に、空港からの
客は、本部内碇ゲンドウの執務室に到着した。
「若宮リサ、入ります。」
軍隊式に、挨拶をすると室内にはいっていった。
「若宮リサ、本日着任いたしました。」
敬礼をしながら、ゲンドウに向かって挨拶をする。
サングラス越しなのでよくはわからないが、こちらを見たに違いは無い。
微妙な眉の動きでそう確認すると、リサは手を降ろした。
「君の部署の上司を紹介する、楽にしろ。」
ゲンドウがぶっきらぼうに言うのを聞き楽な姿勢でまつ。
と、すぐに扉がひらいた。
「葛城ミサト、出頭いたしました。」
「彼女が君の上司になる、葛城三佐だ。」
「所属は、戦略作戦指揮部ですか?」
ミサトは、ゲンドウに聞いた。
「来月からだ、それまでは作戦部だ。」
そういうと、初めてゲンドウはリサの方に顔をまともに向け
「航空支援隊の隊長をしてもらう、若宮一尉。」
と、告げた。
「よろしくたのむわ、若宮一尉。」
右手を差し出すミサト。
「こちらこそお願いします、葛城三佐。」
国連軍第6特務部隊潜入要員、若宮リサ大尉はリストにあったデータを思い出しながら
その右手を握り、微笑んだ。
デイタとラ・フォージュはサンプルとして持ってきたものの分析を行っていた。
血液類似、もしくは本当に血液かもしれないがそれが帯磁していることを説明するなにかを
さがしていた。
「ジョーディ、もしかしたら我々の検査は間違っているのかも知れない」
デイタは、背後でセンサーの検査範囲を操作していたラ・フォージュに振り返りながら言う。
「間違っているって、どういうことだい?。」
怪訝な顔で答えるラ・フォージュ。
「この時代でありえそうな生化学現象をかたっぱしから調べて、そのうえ遺伝物質も調べた。
どこに間違いがあるって言うんだ?。」
デイタの言葉に納得がいかないラ・フォージュはさらにそう続けた。
「そこなんだ、ジョーディ。
私達は生物的な能力ということでそのことについてのみの調査しかしていない。」
デイタは、ラ・フォージュに近づきながら話を続けた。
「ひょっとすると、これらの能力を使わせる何か別の要因があるのではないだろうか?」
調査の邪魔になると考えて感情チップのスイッチを切っているデイタの話し方は相変わらず
字幕の必要そうなしゃべり方ではあったが、ラ・フォージュは納得した。
「そうだな、そっちのほうでもしらべてみよう。
コンピューター、センサーの探知レベル、スキャンマテリアルのレベルを無制限に。
それと、現場周辺の大気成分、土壌成分、および植物の状況もくわしく調べろ。」
ラ・フォージュは即座にコンピューターにそう指示するとすぐに回収したサンプルの再検査を開始した。
血液類似物質、その他にも後で回収されこちらに回されてきた祭壇のような台に置かれていたものなど
それらが、次々と調べられていった。
二人は、次々にモニターに現れる文字を注意深く見た。
渚カヲルは、NERV本部内を当ても無くあるいていた。
当ても無く、あるいている風に見える、というのが正しいだろう。
彼には明確な目的があった。
本部内、エヴァンゲリオンの格納庫。
そこに向かって歩いていたのだが、昨夜の騒ぎの所為で本部内でも自分の監視の目が厳しい。
これか行うべき事を考えるとこの監視、護衛とミサトは称していたが、は不都合この上なかった。
カヲルは、最初監視の目から逃れることを考えたのだが、むしろ今は関係ないように思っていた。
自分は、パイロットなのだし本部内をうろつきまわっていてもさして問題はないのだと言うこと。
そして、この監視はヘカテなる者に対して取られている。
自分は、保護されている立場なのだからこの監視が最初のステップの邪魔になることはない。
少し、本部内を歩き回ってそのことを確信した。
アスカは、その日緊急事態による準待機ということで学校には行かずなにするでもなく本部内にいた。
もはや、本部内では必要ないのか見せ掛けのギプスもはずしている。
本部内にいることから、NERVの制服を着ている。
そのため、銃のヒップホルスターがどうも違和感を感じさせている。
だが、それだけでない違和感、と言ったものも感じていた。
まるで、うなじのあたりに静電気がはしるような、そんな感じだった。
その違和感、というか、いらだつような気持ちの原因を探すかのように、アスカは格納庫内に
固定された、弐号機をみていた。
自分以外が、コアの換装もなく起動した。
そのことから、違和感の原因がそこにあるかのように手すりによりかかり、その姿を凝視していた。
ピカードは、バークレイを呼び出した。
すでに、センサーは全て調整済みだった。
昨夜の状況から、全センサーの検査や再調整が行われているが、もうバークレイはいなくても大丈夫だろう。
「あ、あの艦長、なんの御用でしょうか?」
まだ、センサーの調査が残っている。
早くそれをやり終えてしまいたかった。
「そんなに緊張することはない、大尉。」
ピカードは、努めて温和な雰囲気を出すために苦労しながら話した。
「センサーのことに関してだが、よくやってくれた。」
センサーと聞いて、バークレイの体が一瞬びくっと震えるたがその後に続く言葉でふっと体から緊張がぬけていく。
「あ、ありがとうございます艦長、しかし、昨夜は結局…。」
「いや、大尉、あれは君の所為ではない。」
ピカードはバークレイの言葉を途中でさえぎった。
バークレイは狐につままれたような顔でピカードの顔をみた。
「あの、現象をおこした者がいる。
それを、探知するために、地上におりてもらいたい、かまわないか?」
ピカードが、そういうとバークレイの顔に徐々に驚きと喜びと困惑の表情がめまぐるしく現れてはきえた。
「問題ありません、艦長。」
そういうと、回れ右をするとあしばやに出ていこうとしてあわてて振り向き
「失礼します。」
と一言いい、艦長室からでていった。
シンジは、突然背後からカヲルに声をかけられてさすがに驚いた表情で振り返った。
「どうしたんだい、シンジ君、なにもそんなに驚くことは無いだろ。」
問い掛けるような、困っているような微妙なニュアンスで語りかけてくる。
「急に声をかけられてびっくりしない人ってそんなにいないよ、カヲル君。」
シンジは、そういうと再び目の前のノートPCに目を戻した。
NERVの制服をきて中学校の勉強をするといういささかアンバランスな感じのシンジに微笑みかけながら
向かいの席に腰をおろす。
「カヲル君は、NERVの制服を着ないの?」
シンジは、カヲルが来たときのままの中学の制服なので聞いた。
「衣服なんかには意味はないんだ、僕にはね。」
「ふうん。」
シンジは、ただ相槌を打った。
もっとも、カヲルがなにを言いたいのかは理解しかねていたのだが。
「シンジ君はなんで、制服を着ているんだい?」
質問されて、シンジはカヲルの顔を見た。
「これからは、基地内ではこれに着替えろと言われたから。」
そういいおいてから、ちょっと間を空けて
「でも、少しは自分のためなのかもしれない。
よくは、わからないけれどね。」
あいまいに微笑みながらシンジは、そう言った。
カヲルは、シンジの言葉に軽く頷くと、
「やはり、君は鋼のように純粋だね、好意に値するよ。」
「はぁ?」
「好きってことさ、シンジ君。」
「あ、その、ありがとう。」
シンジは、少し頬を紅潮させて答えた。
それに対して、微笑み返すと、カヲルは席を立ちそこから出て行った。
「変わった奴だな。」
入れ替わりにライカーが現れた。
「ライカーさん、あ、いや副長。」
シンジが姿勢を正しながら言う。
「気にするな、今は非番だ。」
うそかほんとかわからないライカーの笑顔にあいまいな返事をしながらシンジは
ゆったりした姿勢に戻した。
「どの辺から聞いていたんですか?」
ライカーの顔を覗き込むように聞く。
「そうだな、愛の告白をされたところからさ。」
ライカーのその返事に顔を真っ赤にしながら
「違いますよ、そんなことあるわけないじゃないですか!」
と、反論をする。
「気にすることはないぞ、たとえ同性でも愛は成立するんだ、細かい事を
気にしちゃいけない。」
と、顔中に軽薄な笑顔をうかべてさらにシンジをからかう。
「もっとも、俺は女性の方が好きだけどね。」
さらにだめを押すことも忘れない。
「人事だと、おもって。」
少しふてくされたようにシンジは、言う。
そんなシンジに、豪快な笑い声で答えるライカー。
「ところで、シンジ君。」
「なんですか?」
あらたまった口調のライカーに思わず、引き寄せられて顔を近づける。
「NERV一番の美人って、誰だと思う?」
ユウコは、呆れ顔で砂漠谷を迎えにきた。
営業といって出ているので、車を使っていた自分を少々のろいながらも、その携帯で指示
された場所にきたのだった。
「支店長、こんな団地の屋上で怪我をするなんて、鈍ったんじゃないですか?」
あきれているのか、心配しているのか、それともどうでもいいことなのか推し量ることの
できない声で砂漠谷に声をかける。
「いうな、オート嫌いに拍車がかかる。」
ぶっきらぼうに答える砂漠谷に
「オートが好きだったときなんてあったんですか?」
と言うユウコ。
「無い。」
しばし、沈黙してから、砂漠谷は答えた。
ユウコは、手持ちのサバイバルキットから包帯とシルクコラーゲンパットを出すと足の傷にまいた。
その様子を見ながら
「なあ、大尉、君は妖怪を信じるか?」
と聞いた。
「は?」
ユウコは意外な質問に言葉に詰まった。
「妖怪、ですか?」
「そうだ、が、まあ別に妖精だろうと魔物だろうとかまわん。
信じるか?」
すこしの間をおいてユウコは
「あったことは無いので。」
と、答えた。
「まあ、そんなとこか。」
その答えに砂漠谷は、また黙って自分の足を眺めていた。
あれが、幻覚ならこの包帯は存在しはすまい。
そう考えながら、砂漠谷は何気なく校舎に視線をうつした。
校舎は、何事も無く平穏そのものだった。
砂漠谷はユウコの肩をかりると、立ち上がり歩き始めた。
少々、足を引きずるが歩けないことは無い。
が、これでは戦闘には向かないだろう。
そんなことを考えながら、階段を二人で降りていく。
各階には、人がすんでいないのか閑散とし、埃がまっていた。
そんな中に現れたファーストチルドレンににた魔人。
「地獄の窯が開く、か。」
独り言のように言うその言葉にユウコは首をかしげながら、先にたって歩いていった。
いつまでも、眺めていても答えが出るわけではない。
そうは、おもっても気になってしまうアスカだが、さすがに答えの出ない行為に時間の無駄を
感じたのか、格納庫から歩き出した。
紅い機体が視界の隅から消えていくと同時に、自分の向う方向からくる人影に気が付いた。
「なぎさ、カヲル。」
その名を一瞬呟くアスカ。
相手、カヲルもアスカの姿を確認しているようだ。
何気なくするつもりだが、視線が強くなるのを抑えきることができないアスカ。
それでも、平然として歩いてくるカヲル。
だが、視線は自分をみている。
そのことに気づくと、眉根に力が入るような気がした。
だが、一応はパイロット仲間だ。
気に入らない、というか、肌に合わない相手だが、嫌う必要もない。
そんなことを思いながらも歩みを進める。
すれ違いざま、アスカはカヲルをにらむような状態ですれちがった。
「君は、とめられるのかい?」
視線を正面にもどした瞬間、背後からささやくように言うカヲルの声。
立ち止まり、振り向くアスカ。
カヲルとの距離はささやき声が聞こえるような距離ではない。
が、たしかに聞こえた。
いや、聞こえたような気がしたのかも知れない。
かぶりを振って再び歩きだすアスカ。
心の中のもやもやを吹き飛ばすように、軽く走り出す。
カヲルの言った言葉の意味もわからない。
それが、ちょっとしたストレスよ、それだけ。
そう、考えながら走った。
だが、走ったからといって解決はしなかった。
さすがに、あまりにふざけたライカーの言葉にシンジは憮然とした顔をした。
「いつも、そんなに張り詰めていると、いざという時に切れてしまうぞ。
もう少し、気を抜いてもいいだろう?」
睨むように上目づかいに見たシンジに落ち着いた声で言うライカー。
そんなシンジの前に、ぽんとなにか小さな光るものをおいた。
「NERVの記章でつくったコミュニケーターだ。」
シンジの目が、見開かれる。
「ケイタイ、だったか、それをもっていないときでも使えるようにな。」
そういうとシンジの方に、身を乗り出し
「碇特務少尉、真剣なのはいいことだ。
だが、なにごとも過ぎてしまうとよい結果にはならない、肩の力は抜けるときは
抜いておいたほうがいいぞ。」
ライカーのその言葉を考えて、シンジは頷いた。
「あの、ライカー中佐。」
歩き出したライカーに声をかける。
「ぼくは、その、アスカとレイが一番美人、だと、おもいます。」
シンジは、耳を赤くしながら最後の方は尻すぼみになりながらそういった。
ライカーはにやっと笑うと
「いい選択だ。」
といって、ドアの外にでた。
が、首だけ振り向くと
「俺には、ちょっと若すぎるな。」
といって、笑った。
「それと、一人にだけ言ってやるのは不公平だ。
あとで、もう一人にも言ってやれ。」
と、いいながら、ドアの向こうで固まっていたアスカの背中を押して中に入れた。
アスカは、はとが豆鉄砲をくらったような顔で、耳を真っ赤にしてふらふらと
よろめきながらはいってきた。
「転ばないように、支えるんだぞ。」
にやにやと笑いながら、もう一つのコミュニケーターをふいっとシンジに投げた。
慌ててそれをつかんだシンジは弾みでアスカのそばまできてしまった。
「あああ、あんたいったい何を副長とはなしてたのよ、そりゃわたしほどの美人は
ネルフにはいないけど、いえ、ファ、じゃないレイもいい線よ、でも一体なに考えて
そんな話してんのよ、大体なんでこんなとこであんなこといってんだかあ!」
と、一気にまくし立てた。
大きく息を吸うと
「まあ、あんたもちゃんと見る目があるんじゃない安心したわ。」
と、いって高飛車な笑い声をわざと立てた。
笑いながらも、シンジからコミュニケーターをとると、自分の制服の胸に着ける。
が、その間もストレス発散、というか八つ当たり気味というかシンジをからかう手を
緩めたりはしなかった。
「そうねえ、副長に言われたんだし、ちゃーんとレイにも言わないとねえ。
あとで何言われるかわからないわよね。」
「アスカ、まさか、言うように見張るつもり。」
「とーぜん!」
人差し指を鼻に押し付けれら、言い切られたシンジは途方にくれた。
「ところで、シンジ。」
ふと、アスカは静かな口調になって聞いた。
「な、なにアスカ?」
シンジは、ちょっとどもりながらも紅潮せずに答える。
「これ、何?」
ラ・フォージュは、デイタが言うよりも早くその共通性に気づいた。
「ジョーディ、キロナイドがこんなに検出されている。」
「確かにな。」
ラ・フォージュはそのサンプルを眺めると
「他にも精神エネルギー誘導物質は検地されているし、生命エネルギー共鳴物質も
検地されている。
地球ではありえない状況だ。」
「ああ、だがかならず共通しているのは、このキロナイドだ。」
キロナイドは特定の惑星にしか存在しない、 特殊な物質である。
「デイタ、どういうことだと思う?」
ラ・フォージュの問いにデイタは首をかしげると
「わからない。
だが、なにかの作為的な要素を感じる。」
と、答えた。
「艦長に許可を得よう。」
二人はそういって頷くと、ピカードを呼び出し作戦室へと向った。
ユウコはとりあえず砂漠谷を近くの病院に放り込むと、再び車を走らせた。
使徒も前にあらわれたとき以来姿を見せない。
もっとも、NERVは、そんなこととは関係なく何がしかの騒ぎが起きているらしい。
砂漠谷には、それとなく報告書で匂わせているが、最近の様子から彼はそんなにまめに
報告書に目を通していないようだ。
「トラの尾を踏んじゃったかな。」
背後に黒塗りのセダンが近づいてきたことで、一瞬不安がよぎった。
だが、ユウコの運転する車をまったく気にせずそのセダンは追い抜いていった。
「あいかわらず、目だつわね。」
その、NERVの公用車の堂々としたマーキングを見ながらユウコはそんなことを呟いてふと気づいた。
「変ね?」
そのNERVの車はいつものように、黒服の連中がのっていたがバックシートになにかよっかかるように
小さめの人影が見えていた。
ユウコはそれが、ヘカテに利用された子供の死体だとはまだ気づかなかった。
だが、その車の行く手をじっと凝視する黒づくめのローブの少女の存在には気が付いた。
「この暑いさなかに。」
そういいながら、車をその少女のそばに止める。
「すいません、ちょっと聞いていいですか?」
よそいきの声をだし、車から降りて近づく。
本部施設の外にはいくつかの建物が存在している。
通常、NERVはエヴァ以外使用していないため職員にもあまりしられていないが、通常兵器の格納庫も
また存在している。
その端的な例が、地底湖の艦船だが侵入されるまでは、その手の兵器は国連軍のものを使用している。
「ずいぶんと豪勢ですね、三佐。」
リサは、ミサトの方に振り向くとそういった。
幾分、あきれたようなニュアンスがある。
中には、国を問わず数種の戦闘機、攻撃機の見本市といった様相だった。
だが、あまり使われていないとはいえ、そこは一応特務機関である。
それなりの整備は常にされているため、くたびれた様子はない。
リサはそのことにだけは感心した。
「どれか、使いたいものある?」
ミサトはぶっきらぼうに聞く。
別に、リサが嫌いなわけではないが、信用していないだけである。
この時期に新たな編成の為にくる者を素直に信用できないのはあたりまえの感情ではあるが。
「まよいますね、これはなんですか?」
ミサトは質問されると手にもったリストと照らし合わせて答える。
一度は、軍事年鑑や雑誌などで見たものもあるが、リサは中には見たことも無い機種をいくつか見つけていた。
「ロシアの試作機ね、ミグとスホーイの共同開発みたいだわ。」
リストにある簡単な説明をそのまま伝える。
「あー、大分新しい年代なんじゃないですか?」
その質問に
「99年ごろみたいね。」
と、眉間にしわをよせて答えるミサト。
「やめておきましょう、不安です。」
リサのその本気で不安そうな答え方に一瞬ふきだしそうになる。
「ちゃんと整備してるわよ、リツコが聞いたら怒るわよ。」
「へ?、リツコって、どなたですか?」
ミサトはちょっと気を許したことを少し後悔した。
「赤木リツコ博士よ。」
「ああ。」
その名を聞いてリサは納得したように相槌をうった。
「これは、なんですか?」
リサは子供がおもちゃを選ぶかのように次の戦闘機を指差した。
「これは。」
ミサトは、リストをめくりながら該当する番号を見て驚いたように答えた。
「三菱と川崎の共同開発試作機ね。
一応、多目的支援戦闘機ってことになってるわね。」
その銀色のボディに試作機を示すトリコロールカラーをまとった機体を見てリサは何気に
うれしそうに頷いた。
「これにします三佐。」
その、少々平べったい機体をなでながらリサはミサトにそう告げた。
「武器のペイロードはそこそこ広いけれど、空戦能力はわからないわよ?」
ミサトはリサにそういうと、隣のF201を薦めた。
「空中戦より、支援が目的ですしその場合はこちらでしょう?。」
リサは、その比較的平たいボディに鋭角的につけられた少々変形したデルタ翼をもつ戦闘機がいたく
気に入ったようだった。
「まあ、空中の機動性はいいみたいだけど。」
ミサトはちょっと信じられないように言うと、書類に書き込みその倉庫の管理主任に手渡した。
「明日には通常格納庫に移送終了しておきます。」
管理主任はそう言うと、ミサトに控えの書類を手渡した。
「まったく、倉庫も電子ファイルにしてくれりゃいいのに。」
ミサトがぶつくさいうのを聞いてリサは
「予算がないんですかね?」
と聞いた。
「余分なとこにかねをかけたくないだけみたいよ、司令は。」
こたえると、リサを乗せて車をスタートさせた。
「ねえ、ちょっと聞いてみていい?」
発進させるとすぐに、ミサトはリサに質問した。
「いいですよ、なんですか?」
屈託の無い顔で答えるリサ。
「なんであんなのが気に入ったわけ?」
あのお世辞にも、スマートとは言い切れない機体をうれしそうに眺めていた。
それが、ちょっと気になっているだけだった。
「ちょっとしたノスタルジーです。」
そういうと、へへとわらって顔をうつむけた。
そう明るく答えたリサだが本来の目的NERVの内部調査もわすれてはいない。
どうやってその情報をつたえるか、がまだわからなかったが、相手が接触してくるということだし
それまでは気楽にやろう、と思っていた。
もっとも、使徒がきたらそれどこじゃないな、と思ってはいたが。
ピカードは二人の報告を聞き、信じられないというジェスチュアをした。
無論、当の二人もまだ信じられないようだった。
だが、データは確実に記されている。
その調査結果をみても、相手となるヘカテが異常な力を見せたことの答えに近づいている
とは考えていた。
「よろしい、デイタ、ラ・フォージュ、一時的に軌道をはなれて全惑星規模の調査を行おう。」
その言葉をきくと、二人はすぐに部屋を出て行こうとした。
「だが、その前に上陸班にそのことを伝えておかねばなるまい。
幸い、ライカー副長が今下におりている、すぐに連絡をとってくれ。」
「わかりました、艦長。」
デイタが答え、ピカードは二人とともにブリッジに向った。
「だがデイタ、本当にキロナイドが存在していたのか?」
「はい、艦長たしかに存在していました。
また、それ以外の地球には本来はありえない精神誘導物質、生命エネルギー共鳴物質などが
多数検出されました。」
「我々のすむ世界とは大分かけはなれているということだけはわかるな。」
ピカードはそういうと
「コンピューター、ブリッジ。」
と、ターボリフトを作動させた。
振り返った少女の一瞬の険しい表情を見逃さなかったユウコは、今朝方砂漠谷を襲った相手という
者のことをつかの間考えた。
「なにか?」
が、少女の言葉に
「あの、今日は占いなさらないんですか?」
と聞いた。
険しさの消えた顔は、最近評判の占い師の少女の顔であることに気がついたユウコは何気ない調子で
話かけてみた。
「ええ、今日はしないわ。」
少し、くらい感じの声で答える。
その微妙な響きに気がついたユウコは何気なく興味を引かれたことに感謝しつつ
「残念ですね、最近占いなさっていないですよねえ。」
と、さらに話を繰り出した。
何かある、とそう判断したのだが、さすがに相手もそれ以上をうかがわせるような態度はとらなかった。
実際、チルドレンとも接触をしている、なにかあれば手がかりになる、とは思う。
が、ミサもまた
「なにか、うらなってほしいことがあるのですか?」
と、聞いてきた。
占い師だし、ああいう聞き方をすれば間違いなく占ってほしいものと、判断されてもしょうがない。
ユウコは、それでもなにか違う、という印象をもっていた。
その何か、が今はわからない。
「まだ、ありませんけれども、そのうち在るかもしれませんね。」
微笑みながら、そう答える。
相手は、その無表情な顔に変化はなかった。
が、目の微妙な雰囲気から敵意は無い、と漠然とした感じていた。
「あなたには、占いよりも、お護りの方がいいのかもしれないわ。」
ミサがそういうと、すっと風が舞った。
「お守り?、ですか。」
「そう、お護りよ。」
というと、ミサは初めてユウコに笑顔を見せた。
ユウコもつられたように笑顔を見せた。
「そういうことだ、副長。地上での事は頼む。」
「わかりました、艦長、こちらはその間になにも怒らないことを祈ります。」
ピカードからの通信をうけて、ライカーはコミュニケーターを縫いこんだ服の左胸を抑えながら
答えた。
「あまり、祈ると神に目をつけられるぞ、ナンバー・ワン。
ああ、それと、その前にバークレイを地上に下ろす、頼んだぞ。」
「わかりました、艦長。
感動の再会を演出します。」
と、にやにやと笑いながら答えた。
「なにかわかったらすぐにでも連絡をくれ、こちらも急なときには連絡をいれる。
以上だ。」
そういって、通信は切れた。
と、同時に背後に転送ビームにてバークレイが到着した。
「ライカー副長、バークレイ到着いたしました。」
と、ライカーに向かい報告をするバークレイ。
「着任の許可、を、その、い、いただけますか?。」
と、きゅうにしどろもどろの言い方になってしまった。
にやにや笑うライカーの後ろには、白い水着姿の綾波レイの姿があった。
「どうした?、大尉、調子が悪いのか?」
「そ、そんなことはありません、中佐。」
そのバークレイの答えを聞くとライカーは、にやっと笑いながら
「それは良かった、調子が悪いのではNERVの足手まといになってしまうからな、大尉。」
と、言うと手振りで着いてくるようにバークレイに合図する。
「ああ、そうだ綾波特務少尉、そのコミュニケーターの使い方は碇特務少尉に聞いてくれ。
きっと、ほかにも言わなければならないことがあるはずだからな、彼は。」
歩きだす前にそういうと、バークレイを連れて屋内プールから出て行った。
後には、首をかしげてコミュニケーターを手にしたレイだけが残された。
エンタープライズが軌道を離れていくことを確認し、NERVの司令室は各観測機器の強化を
行った。
今ここで、なにかがおきたときには空からの援護は期待できない。
そのためにも、監視の目は強くしておきたかった。
特に、ヘカテに対しては用心をしてしすぎることは無い。
碇ゲンドウも、冬月も、そしてライカーもピカードもその意見には賛成だった。
だが、撃退する方法となると、皆目検討がつかない。
今のところは。
そして、
「先輩、ノイズの発生、時間、場所は特定できると思います。
ですが、それを追跡、撃退、あるいは防ぐとなると、ひどく難しいと思います。」
リツコとマヤは、ヘカテの侵入時のノイズパターンの割り出しに成功はした。
が、移動の追跡と防御、さらには迎撃のシステムにはさらに時間が掛かりそうだった。
「マヤ、簡単にあきらめるものではないわ。
なにか、方法があるはずよ。」
リツコは、昨日までのノイズのデータや情況との比較リポート、さらにはその出力数値グラフにまで
目を通しながらマヤに答えた。
その目元にはうっすらと隈がでている。
が、ここで中断するつもりはまったくなかった。
いいようにあしらわれたことと、基地内への侵入、それらを防ぐことが今は最も重要なことだとリツコ自身が
思っていることと、さらに未だ決定的な対策方法を思いつくことのできない自分達への苛立ちがあせりを
生み出していた。
だが、睡眠を削ったことにより、疲労はかなりのレベルまできている。
いまさら、コーヒーを飲んでもリフレッシュにはならない。
さらにあせりが、リツコをせきたてていた。
今、エンタープライズは居ない。
「私が、役にたちますか?、赤木博士。」
リツコが漠然と考えたそのとき、聞き覚えのある声がドアの方から聞こえてきた。
「バークレイ大尉?。」
リツコは、ほうっとした顔でバークレイの顔をみた。
地上勤務の話は聞いていないし、顔を合わせた地上班の中にはいなかった。
「いったい、なんで?」
疲れているため、平板な口調になってしまったリツコ。
「い、いえその、艦長が地上でNERVのサポートに、という事なんでしたが、その、まずかったでしょうか?。」
そのリツコの口調を勘違いしたのか、バークレイは困った顔をして答えた。
その様子をみて、くすっと笑うと
「いえ、そんなことないわ、大助かりです。
ちょうどいま、アイデアに詰まっていたところなんです。」
と、答えた。
「よ、よかった、アイデアに詰まったところって?」
ほっとして笑みを浮かべるバークレイが、リツコのそばにあるモニターにちかより覗き込む。
「あ、こちらはバークレイ大尉、こちらは伊吹マヤ、私のスタッフです。」
バークレイを凝視している、マヤに向かい紹介すると再びモニターに向う。
「あのう、赤木博士、もう聞かなくてもいいと思いますが、バークレイに手伝わせる事はありますね。」
ドアのところから、ライカーがボソッと聞いた。
モニターに向かい何事か話し始めようとした3人は、振り向くと
「いらっしゃったんですか?、中佐。」
リツコは気づかなかったため、本当に驚いた声をだした。
「まあ、最初からね。」
ちゃめっけたっぷりの声でライカーが答える。
「ああ、そうですか、そう、バークレイ大尉にはぜひこちらの作業を手伝っていただけると幸いです。」
「良かった、じゃあ、バークレイここは頼んだぞ!」
そういうと、マヤに向かいウインクしながら
「あとで、時間あいてるかい?、あいてたら食事でもどうかな?」
と、マヤにむかて声をかける。
「さあ、まだわかりませんけど、あとでわかったらご連絡します。」
ちょっと、ほほ染めてマヤは答えた。
「わかった、期待してまってる。」
ライカーはそういうと、部屋から出ていった。
「マヤ、食事の時間は結果しだいよ。」
リツコの冷静な声がマヤの鼓膜に響いた。
情況を確認するモニターは決して好意的とはいえない情況を映し出している。
ブリッジでは、ピカードが
「よし、では南極から順に調べて行こう。」
指示をだした。
「南極からですか?」
指示に対してウォーフが質問をする。
「そうだ、少佐、現在の情況の起因は南極にある。
なにかあるとしたら大きな手がかりが残っているもっとも有力な場所だ。」
と、答える。
と同時に、
「探偵の基本だよ、ウォーフ。」
と、デイタが付け足す。
ウォーフもしたり顔で頷くと
「保安官の要領ですね。」
と、答えた。
「そうだ、ウォーフ。
わずかな手がかりも見逃せないぞ。」
ピカードは答えると、
「では、デイタ、南極の真上に向ってくれ。」
と指示をだした。
ユウコは、笑顔をたもちつつミサの方へと進む。
ミサが、一瞬警戒したようなそぶりをみせたように感じたユウコだが、別に
距離をとるでもなく、そこにいるので何気ないふうを装い
「あの、そういえばお名前は?」
と、聞いた。
「ミサ、黒井ミサ。」
単純かつ無愛想な答え方のミサに対して
「そうですか、私は三笠ユウコ、」
と、自己紹介をしようとしたそのとき、驚いたように街の、第三新東京市の中心に
顔を向けるミサ。
「?、どうかなさったのですか?」
ユウコは、何事かと訊ねながらその視線を追った。
が、その視線の先にはビルがいくつかあるだけだった。
突如、警報がNERV本部施設内に鳴り響いた。
「ずぶんといいタイミングだ。」
ライカーは、憮然と呟いた。
ver.-1.00 2000/12/04公開
ご意見・ご感想・なんじゃこりゃぁとかは極東おんぷ基地まで!!
ながかったわね、これをあげるまで。
え〜、まあ、プライベートもいろいろありますしねえ。
いいことあったんですか?、SOUさん
あるわけないでしょ、シンジくん。
どっちかというと間の悪いことのつるべ落としというか、連続コンボつうか。
所詮、いいわけね。
う、するどい!
で、この後でるのはいつにするつもりなの?
いや、いつってなるべく早くだしたいですねえ、なんせね、いろいろあるし。
そんなに早く僕を殺したいのかい?、SOU・・・、
む、ナルシスイドム!
い、いどむ?
こうなったら、しかたない、いくぞシンジ君!
へ、僕?
そう、へたれ主人公つながり!、よべその名を!
って、この球体でなにを?
それは、胎曲!、それでミカヅキをよぶのだ!、今すぐ!!(12/3頃に関西方面でも放送するとさ)
み、みかづき?ぴきゅーん
なんなのよ、あのレトロなロボットは!
あ、アスカくん、君はこれ。
・・・、なにこの巨大なブリキのおもちゃは!!
これぞ、月光機。
天才女子高生社長(なんなんだ、それは)制作の戦闘ロボ!
って、君はまたその手で逃げるつもりだね。
そのとおり!
威張るな!、ソムニウム砲発射!(って、結局のってやがんの)
なんの!、イドムバリアー!
ぐぎゃ!
く、なんてことを!、ナルシス野郎を盾にするとは!
ついでに、ナルシス爆弾!
うぎゃ!
きゃあ!
か、カヲル君、アスカ、くそ、いけ、ミカヅキ!
やっつけろ!
ぼかーん