ブリッジでは当直の士官が、一瞬で変化したセンサーの表示に驚きを露にした。
先ほどまで何事もなかったものがまさに、瞬き一瞬の間に変化したのだ。
しかも、その場所は第三新東京市。 何か、非常事態が起きたのかとも思ったのだが、
状況が従来と違いすぎた。 各センサー類の確認を手早く済ますと、迷わずにピカードへ
と連絡をした。
「なにがおきたのですか?」 状況の変化を感じた冬月が、戻ってきたピカードに
開口一番に聞いた。 「申し訳ないのですが、パーティは中止です。」
渋い顔で答えるピカード。
「ヘカテという存在に、出し抜かれてしまいました。」
そういうとそこにいた全員に、ヘカテのNERV本部への侵入とエンタープライズのセンサー にも
探知されないようにしていたことを告げた。
これには、ライカー達エンタープライズのクルーもおどろきを隠せないでいた。
「敵は、予想以上ということですか?」
ゲンドウがはじめてそこでピカードに聞いた。
「そうです、しかも機械による妨害ではないことはたしかです。」
そのピカードの答えに、ゲンドウはいぶかしげにサングラスに手をやった。
「機械による妨害なら、たとえわずかでも何某かのエネルギー反応が前後に記録されて いる
はずですが、今回それは検出されていないのです。」
ゲンドウも、冬月もそしてミサトも子供達もその言葉にだまってうなづいた。
彼らのほうが今はピカード達よりもはるかにヘカテの恐ろしさについては知っているから
だった。
吹き込んだ風の方に顔をむけると、黒井サトルはにやっと、馬鹿にしたように笑った。
「来たか、ずいぶんと遅い到着だ。」
そういいながら、魔方陣の中心に横たわる少女をすでに抱えあげていた。
「ミサかと思ったが、ちがったか!。」
双眸を怒りにもえたたせヘカテははき捨てるようにいった。
「いまさら、おまえごときに私がたおせるものか!」
いまにも飛び掛らんばかりに、肩をいからせ黒井サトルをにらみつける。
「ふん、おまえを倒すのは私のやることではない。 私は、ここでおまえの魔術回路に
使用されたものの特性をしらべるだけだ。」
黒い瞳をさらに黒く染めてヘカテがなにごとかをつぶやこうとしたとき
「小岩井君、第3級手術配備にて、待機。」
とサトルは傍らの助手につげた。
小岩井と呼ばれた男は、軽く頷くと少女を抱えさっとドアから外に駆け出していった。
「ぬぅ、逃すか!」
追おうと走りかけたヘカテの前に立つとサトルは、さっとメスを振りかざした。
月の光を反射したメスに一瞬目をくらませられたヘカテ。
光が消えるとそこにはサトルの姿も消えていた。
月明かりの中にヘカテの怒りの叫び声がひびいていた。
「おじさん、この子…。」
包帯まみれの体の上に白衣を羽織っているミサの言葉を聞き。
「知っているのか?」
と黒井サトルは聞いた。
その言葉にこくんと頷いたミサはやせて頬のこけた彼女の顔に手を添えた。
「おまえの気持ちはわかるがミサ、残念だがこの子は助からない。」
振り返ったミサの顔から目をそらさずにサトルは続けた。
「この子やほかの子の生命の力を使ってヘカテは呪術を使った。
だが、所詮ただの人間にそんなことに耐えられるだけの力はない。」
たしかに、もはや生命力の回復も難しいところだった。
しばらく彼女の顔をながめていたミサは、
「わずかな可能性もないの?」
と聞いた。
だが、サトルは手に持った眼球の模型をかちゃかちゃともてあそぶだけで答えなかった。
「山岸さん、あなたの思いが強かったのね。」
「そうだ、やつはその思いの強さを利用した。
ただそれだけであれほどの魔力を発生させることのできる原因が知りたい」
「わかったわ、でも、せめて…。」
山岸マユミは、いつものように図書室にすわり静かに本をみていた。
そう、読んでいたのではない。
見ていたのだ。
最近、ここに越してきた彼女はそれでもなんの問題もなかった。
つい数日前までは。
だが、碇シンジと偶然ことばを交わし、その後なんどか話すうちに彼女の心の中に彼が占める
割合が高くなってきていた。
無論、彼女にとってそんなことは心をざわめかせるだけで最初はわずらわしいとさえ感じて
いた。
だが、姿が見えないときにはなにか空虚ささえ感じ、今はひそかに目で追っている自分に
さえ気づくときがあった。
だが、その気持ちを口にだす勇気は彼女にはなかった。
いや、だせなかったというのが正解だろう。
なぜか、彼の周りにはいつも学校でも1、2を争うであろう美少女二人がついている。
自分と似たものをかんじさせる彼に近づきたいとは思うが、そんな二人に対抗するだけの
自信はもてなかった。
対抗する意思すら、おこがましいような感じさえした。
だから、彼女はいつもみていた。
今の所彼女にはそれでも十分だった。
だが、今日は違った。
デイタは、展望ラウンジのスクリーンに先ほどのセンサーの映像を映しながら説明していた。
「ここです、まずここで最初の変化が現れます。」
そして、すぐに変化が現れた。
といってもほかの者には急に数値が動き出したにしかすぎなかったのだが。
「よくわからんな。」
ライカーが、その場の全員の意思を代弁するかのごとく言った。
「たしかに、数字がかわっただけよねえ。」
ミサトが、首をかしげながらそれに答えるように話し出した。
「特に変わったことといえば…」
「だれも、都市の事に気をはらわなかったことだけだな。」
ピカードは、ミサトの言葉を引き継ぐ形で切り出した。
「そのとおりです、艦長。
ですが、いつから気づいたのです?」
デイタの言葉にピカードは軽く眉を上げると
「今だよ、デイタ。」
と答えた。
紙媒体の本より、電子出版による本の形態が普通になり今は図書館の中で本を読むなどと
いう行為は、よくいえば高級な、悪く言えば暗い趣味といわれている。
だが、マユミにとってそんな人も滅多にこない状況が心地よかった。
だが、
「あ、ごめん、人がいるとは思わなくて…。」
という、一見気の弱そうな声を聞き気分が高揚している自分に気づいていた。
もっとも、声のかけられ方としてはうれしくないシチュエーションであったろう。
「いえ、大丈夫ですから。」
そう答えて、頬が紅潮しているのを気づかれないようにして再び本に目をむける。
「怒ってる?」
シンジが、困ったような声でたずねる。
確かに、分厚い辞書なんぞを頭に落とされてはいい気分ではない。
だが、マユミはそんなことに気を回す余裕はなかった。
早鐘のような心臓の音が隣のシンジに聞こえやしないかという不安もあった。
考えるとさらに頬が赤くなっていくような感じさえする。
その頬の赤さをシンジは怒っているのだと勘違いしたのだろう。
少し困った様子でこちらを伺っている。
「いえ、おこってませんから。」
そういうと、そっと深呼吸をして
「大丈夫です。」
といって、にっこりと笑った。
「ここだ、見てみろ、ミサ。」
前時代的といってもいい古めかしい機材の立ち並ぶ中、サトルはマユミの頭部の透視図を
写しているプロジェクターの方に呼んだ。
いや、プロジェクターというよりは幻灯機というほうが似つかわしい形をしているのだが。
「これが…。」
目の前の透視図には、一般には理解不可能な記号が現れては消えている。
「そうだ、この子を始点につかったのはこの所為だな。」
そして二人はベッドに横たわっているマユミに視線をもどした。
その日以来、マユミとシンジはよく合うようになった。
二人とも無口な所為か、会話が弾むというような事はなかった。
だが、それでもマユミは心地よい充実感に浸っていた。
シンジが何某かの兵器のパイロットであるということは人づてに聞いている。
だが、いつもそこにいるシンジはそんなことを感じさせないでいた。
きっと、本人もその兵器が嫌いなんだろう。
マユミはそう理解することにした。
ただ、以前からきになっていたことだけは聞きたい。
マユミもそれだけは、知っておきたいと強く思うようになっていた。
「あの、シンジさん…。」
「なに?」
気のせいか、シンジに焦点が合わなくなっているような感じさえした。
「聞きたいことが。」
「今ということは、先ほどまでは気づかないことだったと?」
ライカーはピカードの言葉にますます判らない、といった感じで聞く。
「そうだ。
しかし、私もこの映像をみていて気づいたのではない。」
その言葉を聞き、はっとしたようにゲンドウが口を開いた。
「第三新東京市を本拠とするわれわれすら、戻るという選択をしなかったからか。」
その言葉に、全員の視線がゲンドウに集まった。
その事に気づいてか、それともいつもの癖でかは判らないがゲンドウは顔の前で手を組み、
顔が見えないようになった。
照れ隠しだろうか?、とデイタはその行動を見て興味を書き立てられたのだがしかし今は
そのことを探求している場合ではな。
「私達、全員の意思をそこからそらすようななにかがあるというの?、デイタ。」
ディアナが聞く。
「まだ推測の域をでませんが、恐らくそうだと思います。」
そういうと、デイタは手元のパットを操作しだした。
「もう一度、先ほどの映像を流します。
私の推測があっていれば、今度は皆さんが気づくはずです。」
そして、画面にはもう一度第三新東京市の俯瞰映像が流れはじめた。
「彼女自体がそうおもわなければ、この回路の始点には使わんかったろうな。」
サトルは、さらに調査をつづけながら言葉を続けた。
「このほかの子供までは手も回らないが、それでもすべてのポイントに合致するはずだ。」
そういうと、奇妙な針のようなものをマユミの眉間に突き刺す。
「われわれの魔法医学とて、大いなる者の力を借りるにすぎん。
だが、…」
「ヘカテは、自分の力のように考えている。」
「そうだ。」
サトルは、そこで黙ると波形モニターの前でしばらくそれを見ていた。
「自分の力とするには、こことは別の次元空間の住人になることだ。」
そういうと、先ほどさした針を再び引き抜きそばにあったトレイの上に無造作に投げ捨てる。
マユミの顔を見て、ミサは再びサトルの方を見た。
「それを誤ったヘカテはじゃあ。」
「そうだ、無限に連なる大いなる者の力までは使えない。」
「そう…。」
マユミは、その言葉をだすまでにさらに数分を費やした。
別に、それでシンジがいらだっている様子はない。
だが、ここまでいってしまったのだ。
きっと、今きかなければいけないことだ。
マユミはそう決心すると、おもいきってシンジに聞いた。
「惣流さんと、一緒に住んでるけど、なぜ?」
今まで、聞きたかったこと。
だが、それを聞くとすべてが壊れてしまいそうだった。
そのために、ひそかに心の奥底に隠してきた。
知られてはいけない。
しってはいけないことかもしれなかった。
だが、それでも今きかなければならないことだった。
沈黙が流れ、空さえも色をなくしたようだった。
「動きが、止まった!!」
シンジは、あまりの事に大声をあげてしまった。
そして慌てて、口を閉じた。
だが、だれもシンジを責めたりはしなかった。
流れる映像は、センサーの表示数値すらも固定され一見すると写真をみなでながめている、
といったように感じられた。
だが。
これはセンサーの記録映像だ。
「では、目的のところまで進めます。」
時間を節約するために、デイタがパッドを操作した。
「ここから正確に30秒後に変化が現れます。」
そして、30秒。
一瞬、画面になにか横切ったように見えたと思うと、突然数値が激しくかわり、路上で停止
していた光点が急に消滅したりと激しい変化が生じた。
「まるで、ウオホールの映画のようだな。」
冬月があきれたような驚いたような声をだした。
「でも、なんか横切ってなかった?」
アスカが、合点がいかないという顔でデイタに聞いた。
「そうだ、画面を一瞬白っぽいものが横切ったようだったぞ。」
ライカーもまたその点を聞いた。
「あれは、横切ったのではありません。」
マユミのその言葉にシンジは、すうっと言葉をつむいだ。
「パイロットだから。」
ひゅっと風が吹くとさらにシンジは言葉を続けた。
「そうする事で、うまくいくこともあるから。」
マユミは黙ってそれを聞いた。
そう、シンジは兵器のパイロットだったのだ。
ここに攻めてくるなぞの生物を撃退するためのパイロットなのだ。
「じゃあ、」
その次のことばは出てこない。
「でも、山岸さん…、マ、マユミのことが好きだから。」
顔を赤く染めて、シンジはそう言葉を締めくくった。
マユミはその言葉が自分の聞きたかった言葉なのか、と考えた。
ミサは、マユミの顔を見つめていた。
もう、長くはない。
それはわかっていた。
「なにも、言うな。
なにを考えているか、わかる。」
魔術は万能ではない。
ミサにも、その次にくる言葉は言われなくても判っていた。
だが、それでも。
スクリーンには、今度は本当に静止した画像で先ほどの場面が映っていた。
「これは?。」
レイの言葉に
「魔術に使われる記号です。
これは、人の目をごまかすための呪符であることは判っています。」
デイタは答えた、そして
「幻惑するための呪符であり、戦闘においても中世に兵士が身につけていたお守りにも似た
似たような紋様の記録があります。」
そこに映る呪符は、第三新東京市のほとんどを包み込むように描かれている。
「この紋様ですが、ここで光ってるラインにそってある種の力の流れが発生していたことは
確認できますし、この始点になるところのポイントの力が消えてもしばらくは弱い流れが
あったと思います。」
ラ・フォージュがデイタに
「どんな種類の力か予測はできてるのか?」
と質問を投げかけた。
「まだ正確なことはわからないんだよ、ジョーディ。
だが、パターンとしては亜空間パルサーに近い放射パターンだと思う。」
「探知できていなかったのに、なんでそこまでわかるの?」
ミサトが、怪訝な顔で聞いた。
それは当然のことである。
探知できずに、ヘカテの侵入を許し、施設に被害がでていたというのに今なら判明すると
いうのも、都合がよすぎると思うからだった。
「それは、この現象がおきたのはおそらく相手も予測しない事故かなにかによる中断だった
ものと思われるからです。」
そこでデイタはこの紋様が現れる寸前の始点と思われる部分に光が現れた時の場面に戻した。
「ここで、急激に放射が現れています。
そして、次にこの紋様にそって光のラインが流れていきますが、これは一種の過放電に近い
状態だと思います。」
「デイタ、そう考えることの根拠になる部分はなんだね?」
ピカードが暗に、全員にわかるように説明しろと言う。
「はい、もし安定して状態ならばこれはコンピューターすらだましていたでしょう。
そのためのものだと思われます。
ですがここで、急激にエネルギーの放出を起こさざるを得ない状態になりました。
これは、なにか事故がおきたかだれかがこれを破壊しようとしたかだと思います。」
「ミサ…」
デイタの言葉を聞いて、その名を口にしたのはアスカだった。
だが、シンジもレイもその名をふと思い浮かべていた。
「おじさん、彼女がこのまま死ぬのなら。」
ミサは、正面からサトルの顔を見据えて口を開いた。
「判っている。」
ふと、サトルは目をミサからそらしながら話だした。
「ヘカテは彼女の思いを利用した。
彼女の望む思いの中に閉じ込めることで、その力を最大に使っている。」
そこで言葉を閉ざすと、立ち上がり奥の部屋に歩いていった。
「だから、好きにしろ。」
そういって部屋の中に消えていった。
ミサは、顔をマユミの方に向けた。
もう、呼吸も浅く静かになっている。
「幸福のままでいきなさい。」
そうつぶやき、一言二言の呪文をとなえて、そっとマユミの唇に自分の唇を重ねた。
唇を離すと、マユミの顔は微笑を浮かべ、そして一筋涙が頬を伝った。
ディアナは、急に自分の中に物悲しいような、それでいて包まれるような安堵感の感覚に
捕らわれた。
「どうした?」
ライカーが自分の顔を心配そうに覗きこんでいる。
見回すと、全員がやはり心配そうな顔をしていた。
自分が涙を流しているからだと気づいたのはその瞬間であった。
「大丈夫です、ただ。」
そこで息をふっとはくと
「だれかの強い思いが、私の中を一瞬駆け抜けたせいだとおもいます。」
それが誰だかわわからないですけれど。
そう、後に続けながらも、それが複数の人の思いであるような気はしていた。
「だが、止められはしまい。」
助手の困惑したような顔をみながらサトルは、ぶっきらぼうに言った。
その手は、マユミの遺骸を丁寧に布に包みながらも心はここにないといった感じだった。
「もう、とめても無駄なんだよ、小岩井君。」
ミサは、喪服のような漆黒の服に身を包み、黒いマントをはおり夜の街中を歩いていた。
「ヘカテ…!。」
つぶやき、月をにらむ。
自分は今出遅れている。
それは焦りとなて身を焦がし始めた。
「私は…」
「なにか、あったのかな。」
シンジは眼下の地球を見ながら言う。
「判らない。」
レイが答える。
「そうね、でも…」
ミサトは黙っているアスカをみながら次のことばを捜していた。
黒井サトルは、自分の椅子に腰掛けると
「大丈夫だ、落ち着け。」
まだそわそわしている助手に声をかけた。
「もうおそいんだ、小岩井君、ミサは、」
「私は、ヘカテを許さない。」
マユミが生贄とされていた廃屋の前に立つと、ミサは虚空に向かいさけんだ。
ver.-1.00 1999_9/12公開
ご意見・ご感想・あいだ(not Kensuke)開きすぎとかはセクション32まで!!
あんたはあ!、間があいただけではあきたらずにいいい。
まあ、魔がさしたつうか
いいんですか?、山岸さんしなせちゃって?
ホラーな展開にしないっていってたじゃないの!
ホラーかなあ?、別にそんなことないとおもうんだけどなあ。
ねえ、死んだッていったてねえ、結構幸福なんじゃないかなあ。
ああ、このままだと本当に魔獣がでてきちゃいそうじゃない!
いや、でないとおもうけどなあ。
それいったらエヴァ自体魔獣やんけ
なにいってんのよ、あれは兵器でしょ!
む、人の気配!
いいかげんに…
あんた、そういえば…
む、でたな!、でゅあとすの怪獣
でゅあとす?
なによそれ?
さあ、アスカさんそれを!
戦う心で叫ぶのだ!『ハザード・フォーム!』
は、はざーど、ふぉーむ
ちぐあう!!、もっと大きい声で!!!!
はざーど、ふぉーむ!
そして君にはこれだ!
地球の光りを集めてたたかうのだ!、がいあ!
が、がいああああああ!
僕の出番がいつになったら…
ええい!、うるっさい、根源破滅天使!
だれが根源破滅てん
さあ、アスカさんいまだガサールシェーントッ!
そしてシンジ君はフォトンストリーム!
最強コンボだああああああ!
壊れてるわね。