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「あなた、殺しすぎよ。」

加持は、死体を隠そうとしていた時に後ろから急に声をかけられた。

驚いて振り向くとそこにはなにか変わった感じの箱を手にしたミサが立っていた。

「確か、黒井さんだっけ?。

葛城の家であったよな。」

「そうよ、加持リョウジさん。」

「加持でいいよ、黒井さん。

でも、殺しすぎってなんかあるのかい?。」

ミサは、死体達に近づきながら加持の方を見て言った。

「別に、冗談のつもりなんだけどな。」

「冗談にしては暗すぎるな。」

「そう、やっぱり暗すぎた…。」

「まぁ、いいさ、で、それなんだい?。」

「マジックボックス、この愚かな者達の怨念を持った魂を封じ込めるの。」

そう、話しながらミサはマジックボックスを開きはじめた。

まるで、パズルか寄せ木細工のように。

「なんのために?。」

「武器よ、暗黒の月への。でも、まだ少し足りないかな。」

「暗黒の月?。」

そう、言いおわるか言いおわらないかの内に黒い突風のような物がボックスに

吸い込まれていった。

 

 

「強気だな、ピカード艦長。」

ゲンドウが、ピカードに言う。

「あなたが、弱気になったのではないですか?、碇司令。」

ピカードが意地悪く返す。

ゲンドウは弱気になっていることを認める気はなかった。

事実、焦りはあったが弱気にはなっていない。

だが、少々不利な状況にいることは認めざるをえないが。

 

 

「ここよ。」

その部屋を見て、シンジは思わず言葉をもらした。

「まるで、綾波の部屋だ…。」

 

 



第4章 My Mind PART3

 

 

 

その、部屋はまさに綾波レイのマンションの部屋そのものであった。

「な、なによシンジ、ファーストの部屋に行った事あるの?。」

少し、心に引っかかる物を感じたアスカがきつめに言う。

「い、行ったって言っても、2回だし、2度目の時はトウジも一緒だったし…。」

最初に、レイの部屋を訪れた時のハプニングを思い出し、顔を赤らめるシンジ。

「あんた、なに顔赤くしてんの!、まさかファーストと…。」

「なにも、なかったわよ。」

その、二人の様子を見てレイが言う。

すこし、笑っているようだ。

「ご、ごめん、ファースト、あんたの話聞きに来たんだっけ。」

ちょっとした嫉妬心であるため、アスカはすぐに平静を装うがまだ少し動揺している。

べつに、部屋に行く位いいじゃない。

そう、自分に言い聞かせてみても、胸のしこりが取れた気がしない。

「気にしないで、今の雰囲気、私もすきだから。」

これには、二人が顔を見合わせた。

「でも、なんでこんな部屋があるのよ。」

アスカがきく。

「私の生まれて、育った所なの。」

「え!。」

二人は声をそろえて叫んだ。

「でも、綾波、ここで生まれて、育ったって、いったい?。」

かろうじてシンジが言葉を続ける。

それに対して、レイは大きく深呼吸をしてから静かに答える。

「よく、覚えていないの。

でも、いつからか、ここで生活していた。」

二人の方を振り向く。

その顔には、薄暗くてよく見えないが苦渋に歪んでいた。

「でも、それじゃまるで、まるで…。」

まるで、エヴァに乗る為だけに育てられたみたいじゃない。

アスカはそう言うつもりだったが、言葉に出せなかった。

「エヴァに乗る為なのよ。」

レイは、自らまるで重いものを吐き出すように話した。

あくまで、静かに。

 

 

「レイは、ここの下で育てられたわ。

2番目のレイだけど。」

「2番目…。」

リツコの話は、核心に触れ始めた。

「そう、この下にある部屋は、まさにレイのマンションの部屋そのものよ。」

「なんですって?。」

「その部屋こそ、レイの精神を構成する光と水のイメージの元になっているの。」

 

 

 

「ライカー副長、現在の彼等の深度では転送ビームのロックが出来ません。」

デイタの報告に、ライカーは

「デイタ、下に降りるときに携帯型の転送機を持っていけるか?。」

「多分、必要な数は持っていけるでしょう。」

以前、ピカードをボーグから助けるために使った小型転送装置の準備をさせた。

だが、この程度の転送機ではたして役に立つような装甲かどうか。

ライカーの脳裏に疑念がうかんだ。

 

 

司令執務室の中で、ゲンドウは逡巡していた。

主導権を取られたままなのは面白くない、せめて対等の立場には持っていきたい。

実際、彼等の言う通りここで共同で事にあたれば無事に事を切り抜ける事が出来るだろう。

ユイの願いを実現させることもできる。

だが、その言葉を口にはだせない。

ここは、自分の城であると同時に敵の中でもある。

本当の目的をゼーレにはまだ、知られるわけにはいかないのだ。

壁に耳あり…、古い諺をかみ締めていた。

 

 

「リツコ、この話、シンジ君たちにもするの?。」

「わからないわ、ただ…。」

「ただ?。」

「彼等が望むなら、知っておいたほうがいいのかも知れない…。」

「あの子達が傷ついても?。」

「欺きつづけるよりいいわ。」

 

 

話を聞き終えたゲンドウは、ピカード達が敵ではないことは確信していた。

それゆえに、警備員を下がらせた。

「艦長、今回は情報戦で出遅れたようだが、次はそうはいかない。」

ピカードにそう話すゲンドウ。

だが敵でないことはわかっても、まだ体制は変えられない。

「碇司令官、本当は最初に話すべきだったかもしれませんな。

この部屋の盗聴機はすでに、妨害してあります。」

「我々を試したのか?。」

冬月が怒り混じりに言う。

「申し訳ないことをしました、冬月副司令。

ですが、私はあなたがたの資質を知りたかったのです。」

ただの冷徹なだけの人間なら、ピカード達にとっても用はない。

シンジ達三人を助けて行動すればいい。

そして、三人に危害が及ばないようにすればいいのだ。

だが、ミサトやシンジ達の話に聞いた人物と違ってゲンドウは最後まで攻撃は

してこなかった。

警備員を出してはきたが、それも現在の彼等の置かれている状況では仕方がないだろう。

それは、ゲンドウと冬月が現状を的確に判断していることを示すものである。

警戒するのも当然だろう。

「シンジ、いや、子供達を助けられるのか?。」

ゲンドウの問いに

「完全にとは言えないかもしれませんが、あなた次第ですよ、司令。」

ピカードは穏やかに答えた。

 

 

 

「我らの計画を遂行するためにも、ネルフにフィフスを送り込まねばならぬ。」

「理由は、どうつける。

セカンド・チルドレンは健在だぞ。」

「だが、重傷ではある。

その為の、予備要員として送り込むのだ。」

「忌々しい、外来者のおかげで予定が大幅に狂っているが、シナリオの変更は

もはやきかない。」

「左様、チルドレン達の一時的な奪取も失敗した為、事情を知ることすらできない。

もはや、時間が少ない、計画を実行するべきだ。」

モノリスに形を変えて会話するゼーレの面々は、事が大きく変わってきた事に

焦りを募らせていた。

「碇、貴様はなにを考えている?.」

 

 

 

「ついて来て。」

レイに言われてさらに奥の方へ進む二人。

暗がりの中に、突如零号機を思わせるような頭部を持った骨格がいくつも並んでいる

部屋に来た。

「な、なによこれ。」

「エヴァの試作モデルよ。」

アスカの震える声にレイは答えた。

「もう、何年も前に作られていた試作品。

でも、ここのエヴァには魂がないの。」

「魂?、綾波、魂って?。」

「エヴァには、人の心が宿らせてあるの。」

(心を開かないとエヴァは動かないわ。)

「ファースト、前にアタシに言った事って。」

以前言われた事を思い出し、アスカはレイに問いかけた。

「その通りよ。」

「人の心を…。」

シンジは、その言葉を一言つぶやいた。

 

 

 

「私次第だと?。」

ゲンドウはピカードに聞き返した。

「そうです、司令官。

貴方の組織内に信頼関係が必要です、ただ生き延びる為にみなが集まっている。

それだけでは、もはや対処できないのではないですか?。」

ゲンドウはピカードの話を黙って聞いていた。

「人を使うのにある程度の威圧感も必要でしょう。

ですが、これ以上自分を偽る事もないのではありませんか?。」

 

ユイが消えてもう、10年になるだろうか。

その日、シンジの心を壊してしまった。

それから10年、シンジとほとんど会う事もなくすごしてきた。

こんな仕事ゆえ、いつ死ぬか殺されるかわからない。

 

ピカードの言葉にゲンドウはつかの間、追憶に囚われた。

なにかが、心の中に一瞬顔をだす。

「だが、シンジにとって、このままの方がいい。

憎んでいる父親なら、死んでも悲しむ事はない。」

ゲンドウは、それを振り払うかのように話す。

「あなたの、ご子息はそんなに弱くありませんよ。

むしろ、今のあなたより精神的には強くなっているかも知れません。」

ディアナはゲンドウのその言葉に、答えた。

悲しい人だわ。

ディアナはそう感じた。

「ご子息の事を思うのでしたらいま一度、考えてみるべきです。」

「そうかも、しれないな。」

そう答えたゲンドウ。

過去10年間、ユイが消えてから自分は自分を偽ってきたかもしれない。

その年月にいつしか、今の自分が全てになっていた。

だが、寂しさは消せない。

いつしか、赤木リツコを求め、家族を求めていた。

だが、ユイの言葉を思い出すとそれを否定するしかなかった。

ゲンドウは、そう思ってこの10年間を生きてきた自分を見つめていた。

そうしていつしか、本来の自分の心を凍てつかせていた。

「碇司令、いつまでも本当の自分を殺していてはいけません。」

ピカードは、ここに転送してきた直後にディアナに耳打ちされた事を

思い出して話した。

 

 

 

「リツコ、もうここにはいないわね。」

「そうね、先を急ぎましょう。」

二人は、レイの育った部屋をいそいで走り抜けた。

 

次の部屋の中、エヴァの骨格のある部屋。

「これは?。」

「試作品よ、エヴァの。」

「こんなに…。」

「そう、でも全部失敗作。

ただの、がらくたよ、そしてその廃棄場、シンジ君の母親、ユイさんの消えた

所でもあるの。」

「レイが生まれ、シンジくんのお母さんが消えた所…。」

「そうよ。」

「いったい、ネルフのやってる事ってなんなの。」

二人は、三人を追うように奥へ進んで行った。

 

 

 

「だがピカード艦長、人は急には変われない。」

「無理に変わる必要は無いのですよ、碇司令。

あなたが、御自身の心に沿って行動すればいいのです。」

「そうかもしれんな。」

ゲンドウはそう答えて、どこか遠くを見るような目で虚空を眺めた。

すまなかったな、シンジ。

そう心の中でつぶやく。

「うけいれるのか?、碇、彼等を。」

「拒否する理由はなにもない。」

冬月の言葉にただ、一言答えるゲンドウ。

 

 

 

 

その時、司令執務室内に警報が響いた。


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ver.-1.00 1998+01/19公開
ご意見・ご感想はしばらくの間は sou-1701@qc4.so-net.ne.jpまで!!

ちょっと、流浪中年。

なんですか、今修羅場なんですよ。

もう、1/20で今のところおわって、翌週26日から新しいとこなんすから。

あたし達の出番がすくなかない?。

そうかもしれないっすね。

なんか、父さん達の会話ばっかみたいな気がするんですけど…。

わかったから、このあとで必ずやるから。

後始末はちゃんとつけとかなきゃいけないのだから。

でも、21日から1週間か2週間NETからはなれてるから。

じゃ。

 

じゃ、とか言ってどっかいっちゃたわね、無責任中年。


 SOUさんの『FIRST CONTACT』第4章PartV、公開です。
 

 
 お、ゲンドウが?!

 良いオヤジ化してきた?
 

 

 ミサトは
 リツコの案内で、

 アスカとシンジは
 レイ本人に。
 

 重い秘密に近づいていって・・
 

 辛い思いをしている子供達・・
 

 やっぱみんなで協力して、

 チルドレン達を守って欲しいですよね(^^)
 

 エンタープライズの面々、
 ミサト、
 リツコ、
 そして、ゲンドウ。

 守ってあげて・・
 

 

 さあ、訪問者の皆さん。
 めっちゃいそがしいSOUさんに感想メールを送りましょう!

 1週間後、ネットに戻ってきたSOUさんが
 メールボックスを見てビビルほど送ってあげましょう(^^)


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